転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第48話

 年が明けた。

 6年生として過ごす時間も。

 残り少なくなってきた。

 卒業。

 中学。

 シニア。

 少しずつ。

 次の言葉が増えていく。

 でも。

 俺と玲が考えていることは。

 結局。

 同じだった。

「最後も勝つ」

「うん」

 小学生最後の全国大会。

 全国連覇。

 俺たちにとって。

 最後の目標だった。

 

◇

 

 冬の間。

 俺の身体は。

 急に変わり始めていた。

 身長が伸びた。

 脚が長くなった。

 体重も増えた。

 去年まで着ていた服が。

 少しずつ小さくなる。

 そして。

 それは。

 野球にも出た。

「成瀬、もう1回」

「はい!」

 監督に言われて。

 マウンドへ立つ。

 セット。

 足を上げる。

 前へ。

 身体を運ぶ。

 腕を振る。

 シュッ!

 バァンッ!

「121km/h!」

「っしゃ!」

 思わず声が出た。

 夏。

 111km/h。

 秋。

 114。

 116。

 117。

 そして。

 身体が大きくなってから。

 一気に。

 120を超えた。

【球速 120km/h → 121km/h】

【成長期による身体能力の向上を確認しました】

【投球動作との適応が進んでいます】

「来た……」

「伊織君」

 玲が測定器を見る。

「何?」

「速くなった」

「ようやくな」

「でも」

「言うな」

「まだ僕の方が速い」

「言うなって言ったよな?」

 玲が笑う。

「何km/h?」

「聞く?」

「聞きたくない」

「133」

「聞いてない!」

 133km/h。

 もう。

 何度聞いてもおかしい。

 でも。

 前ほど。

 遠いとは思わなくなった。

 俺も。

 120を超えた。

 投手として。

 少しずつ。

 同じ場所へ近づいている。

 

◇

 

 ただ。

 玲は。

 速いだけじゃなくなっていた。

「もう1球」

「うん」

 俺が打席へ入る。

 玲が投げる。

 ストレート。

 133km/h。

 ブンッ!

「……っ」

「遅い」

「うるさい」

 2球目。

 同じ腕の振り。

 ボールが。

 少し遅れてくる。

「チェンジアップ!」

 カンッ!

 先端。

 ファウル。

「今の当てた」

「当てただけ」

「次打つ」

「打たせない」

 3球目。

 ストレート。

 高め。

 振らない。

「ボール」

「見た」

「見た」

 4球目。

 低め。

 沈む。

「……!」

 思わずバットが止まる。

 でも。

 球は。

 ストライクゾーンの下へ落ちた。

「今の何?」

「少し握り変えた」

「チェンジアップ?」

「多分」

「多分って何だよ」

 玲自身も。

 まだ。

 はっきり分かっていない。

 でも。

 こいつは。

 投げながら。

 勝手に新しい感覚を見つけていく。

【水城玲の解析情報】

球速 133km/h

コントロール B78

スタミナ   A87

【変化球】

チェンジアップ 3

【確認済み特殊能力】

奪三振

怪童

【新たな変化の兆候を確認しています】

「……」

 また。

 先に行く。

 だったら。

 追うしかない。

 

◇

 

 全国大会まで。

 あと2週間。

 俺は。

 予定表を。

 さらに細かくした。

 朝。

 学校。

 放課後。

 自主練。

 勉強。

 筋トレ。

 睡眠。

 ピアノは。

 週1。

 友達と遊ぶ時間も。

 少し。

 全部。

 残した。

「伊織君」

「何?」

「これ、前より細かくなってない?」

 詩織が。

 俺のノートを覗き込む。

「効率化」

「15分単位?」

「無駄なく使える」

「……疲れない?」

「慣れた」

「ほんと?」

「うん」

 実際。

 数字は伸びている。

 学力。

 芸術。

 社交。

 野球。

 全部。

「全国大会終わったら」

「ん?」

「どこか行かない?」

「どこ?」

「まだ決めてない」

「いつ?」

「大会終わった次の日とか」

「……」

 頭の中で。

 予定を確認する。

 大会翌日。

 今のところ。

 空いている。

 でも。

 もし負けたら。

 練習したくなるかもしれない。

 もし勝ったら。

 もっと練習したくなるかもしれない。

「午後なら」

 俺は答えた。

「午後?」

「午前は空けときたい」

「野球?」

「多分」

「……そっか」

「午後ならちゃんと空ける」

「うん」

 詩織は笑った。

 約束した。

 予定表にも書いた。

 だから。

 今度は。

 大丈夫だと思った。

 

◇

 

 全国大会。

 1回戦。

 8対0。

 2回戦。

 7対1。

 準々決勝。

 6対0。

 去年より。

 相手の警戒は。

 明らかに強かった。

「水城には振り負けるな!」

「成瀬は歩かせてもいい!」

「3番の前に走者出すな!」

 名前を。

 知られている。

 対策される。

 それでも。

 勝った。

 玲は。

 ほとんど打たれない。

 俺は。

 勝負されれば打った。

 歩かされれば。

 走った。

 守備では。

 ショートから。

 何度もアウトを取った。

 普通にやれば。

 勝てる。

 そんな試合が。

 続いた。

 

◇

 

 準決勝。

 相手は。

 去年から全国上位に残っている強豪だった。

 先発は。

 俺。

「成瀬が投げるぞ!」

「水城じゃない!」

 相手ベンチから。

 少しだけ。

 安堵したような声が聞こえた。

「……聞こえてるんだけど」

 マウンドで。

 少し腹が立った。

「プレイ!」

 初球。

 外角低め。

 シュッ!

 バァンッ!

「ストライク!」

「122km/h!」

 相手ベンチが。

 静かになった。

「悪いな」

 玲ほどじゃない。

 でも。

 俺だって。

 去年の俺じゃない。

 

◇

 

 1回。

 三者凡退。

 2回。

 ヒット1本。

 無失点。

 3回。

 1死2塁。

 相手4番。

 強い。

 初球。

 内角。

 ファウル。

 2球目。

 外。

 ボール。

 ワンボール、ワンストライク。

 3球目。

 チェンジアップ。

 空振り。

 ワンボール、ツーストライク。

 4球目。

 低め。

 見送られる。

 ツーボール、ツーストライク。

「……」

 去年なら。

 三振を取りにいったかもしれない。

 でも。

 今は。

 玲と投げ方が違うことを。

 分かっている。

 俺の武器は。

 速さだけじゃない。

 外角低め。

 ストレート。

 カンッ!

 ショート正面。

「よし!」

 自分で捕る。

 3塁を確認。

 1塁へ。

「アウト!」

 2死3塁。

 次の打者も。

 低めを打たせて。

 セカンドゴロ。

 無失点。

【対ピンチ○】

 既に持っている能力。

 でも。

 前より。

 使えている感覚があった。

 

◇

 

 5回。

 2対1。

 1点リード。

 2死1、3塁。

 相手の3番。

 打席へ向かう前。

 監督が来た。

「まだ行けるか?」

「行けます」

「球数は?」

「大丈夫です」

「本当に?」

「はい」

 スタミナA86。

 まだ。

 投げられる。

 でも。

 少しだけ。

 腕は重い。

 去年より。

 球速が上がった分。

 身体への負担も増えている。

「無理なら言え」

「はい」

 マウンドへ戻る。

 玲が。

 ショートに入っている。

「伊織君」

「何?」

「三振?」

「いや」

「じゃあ?」

「アウト取る」

「分かった」

 それだけ。

 初球。

 外角低め。

 ストライク。

 2球目。

 内角。

 ファウル。

 ツーストライク。

 3球目。

 チェンジアップ。

 見送られる。

 ワンボール、ツーストライク。

 4球目。

 外角。

 ボール。

 ツーボール、ツーストライク。

 5球目。

 低め。

 ストレート。

 カンッ!

 強いゴロ。

 俺の右。

 抜ける。

「玲!」

 ショートの玲が。

 横っ飛び。

 捕る。

 起き上がる。

 1塁。

「アウト!」

「っしゃあ!」

 玲が。

 俺を見る。

「守った」

「ありがとう」

「三振じゃなくてもいいね」

「お前が言うと説得力ないな」

 笑った。

 

◇

 

 6回。

 最後まで投げた。

【成瀬伊織 投球結果】

6回

被安打 4

失点 1

与四球 1

奪三振 8

最高球速 122km/h

 勝った。

 4対1。

 決勝進出。

「伊織君」

「何?」

「速かった」

「122」

「僕の方が速い」

「褒めるなら最後まで褒めろよ」

「でも良かった」

「……ありがと」

 玲が。

 笑った。

 

◇

 

 決勝。

 先発は。

 玲。

 俺は。

 ショート。

 相手は。

 全国でも。

 玲の球に食らいつける打者を揃えていた。

 それでも。

 初回。

 三振。

 三振。

 セカンドゴロ。

 2回。

 三振。

 ファウルフライ。

 三振。

 3回。

 初ヒット。

 でも。

 後続を。

 連続三振。

 そして。

 5回。

「133km/h!」

「まだ出るのかよ……」

 相手ベンチから。

 声が漏れる。

 俺も。

 思う。

 本当に。

 こいつは。

 どこまで行くんだろう。

 

◇

 

 試合は。

 3対0。

 最終回。

 2死。

 走者なし。

 あと1人。

「玲!」

 ショートから声を掛ける。

 玲が。

 振り返る。

「何?」

「最後」

「うん」

「三振?」

「もちろん」

「だと思った」

 最後の打者。

 初球。

 131km/h。

 ストライク。

 2球目。

 チェンジアップ。

 空振り。

 ツーストライク。

 3球目。

 高め。

 133km/h。

 ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

「ゲームセット!」

 一瞬。

 静かになって。

 次の瞬間。

「よっしゃあああ!」

 ベンチから。

 みんなが飛び出した。

 俺も。

 玲のところへ走る。

「勝った!」

「うん!」

「2連覇!」

「日本一!」

 去年とは。

 少し違う。

 去年は。

 信じられないような気持ちだった。

 今年は。

 勝つつもりで来て。

 勝った。

 それでも。

 嬉しいものは。

 嬉しい。

 

◇

 

【水城玲 投球結果】

6回

被安打 2

失点 0

与四球 1

奪三振 14

最高球速 133km/h

【解析情報が更新されました】

【水城玲の解析情報】

球速 133km/h

コントロール B79

スタミナ   A88

【確認済み特殊能力】

奪三振

怪童

「14か」

「あと1つ」

「完全試合の時と比べるなって」

「でも日本一」

「そこは喜べ」

「嬉しい」

「ならいい」

 玲が。

 笑う。

 小学生最後の全国大会。

 全国優勝。

 2連覇。

 これ以上ない。

 終わり方だった。

 

◇

 

 表彰式。

 メダルを首に掛ける。

 写真。

 拍手。

 歓声。

 去年より。

 俺たちの名前を呼ぶ声が多い。

「水城君!」

「成瀬君!」

「こっち向いて!」

「成瀬君、ホームランすごかった!」

「水城君133km/hって本当!?」

 気持ちいい。

 やっぱり。

 そう思う。

 勝って。

 強くなって。

 認められる。

 もっと。

 上へ行きたい。

 中学。

 高校。

 その先。

 全部。

 勝ちたい。

 

◇

 

 家へ帰ったのは。

 夜だった。

 疲れていた。

 でも。

 興奮して。

 なかなか眠れない。

 ベッドに入って。

 スマホもない時代の天井を見ながら。

 明日のことを考える。

「明日……」

 午前。

 空けてある。

 午後。

 詩織。

 ちゃんと。

 予定表に書いてある。

 だから。

 大丈夫。

 そのはずだった。

 ただ。

 俺の頭の中では。

 既に。

 明日の午前中にやる自主練の内容を。

 考え始めていた。

 

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