転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第52話

 中学校に入って。

 1か月ほどが経った。

 4月の頃より。

 少しだけ。

 制服にも慣れた。

 授業にも。

 シニアにも。

 そして。

 中学生としての生活にも。

 

◇

 

「伊織君」

「ん?」

「最近、ちゃんと寝てる?」

「寝てるよ」

「何時間?」

「7時間くらい」

「前より減ってない?」

「……少し」

 朝。

 登校中。

 詩織に。

 予定表を見られていた。

「学校。シニア。勉強。自主練」

「うん」

「ピアノ」

「うん」

「読書」

「うん」

「これ全部やるの?」

「そのつもり」

「伊織君」

「何?」

「1日は24時間だよ?」

「知ってる」

「本当に?」

「38年以上知ってる」

「?」

「何でもない」

 前世を含めれば。

 嫌というほど知っている。

 時間は。

 増えない。

 だから。

 使い方を考える。

 小学校の頃から。

 ずっとそうしてきた。

「今日は?」

「シニア」

「明日は?」

「自主練軽めだから、帰り一緒に帰れる」

「……予定に入ってる?」

「入ってる」

「そう」

 詩織が。

 少しだけ笑った。

 その笑顔を見て。

 俺も笑う。

 何が悪いのか。

 この時の俺には。

 まだ。

 よく分かっていなかった。

 

◇

 

 ちなみに。

 最後の全国大会が終わった翌日。

 約束していた通り。

 午後は詩織と出かけた。

 本屋へ行って。

 少し遠回りして帰った。

 午前中には。

 予定通り自主練をしたけど。

 約束は守った。

 だから。

 問題はない。

 俺は。

 そう思っていた。

 

◇

 

 5月12日。

「伊織君」

「ん?」

「はい」

 登校前。

 家を出たところで。

 詩織から。

 小さな包みを渡された。

「何これ」

「誕生日」

「あ」

「忘れてたの?」

「いや、日にちは覚えてた」

「それを忘れてたって言うんじゃない?」

「そうかも」

 開ける。

 中には。

 細いシャープペン。

「中学生になったから」

「ありがとう」

「勉強で使ってね」

「使う」

「野球の予定表を書くためじゃなくて」

「……」

「今、少し考えたでしょ」

「考えてない」

「嘘」

 笑われた。

 今日で。

 13歳。

 転生してから。

 13年。

 前世を含めれば。

 もう50年以上生きていることになる。

「13歳か」

「何か変?」

「いや」

 前の人生の13歳。

 俺は。

 どんなだったっけ。

 野球は好きだった。

 でも。

 レギュラーでもなかった。

 勉強も。

 普通。

 将来のことなんて。

 何も考えていなかった。

 今は違う。

 能力が見える。

 成長も分かる。

 目標もある。

「今年も育てるか」

「何を?」

「色々」

「またそれ?」

「全部」

「欲張り」

「知ってる」

 詩織が笑った。

 

◇

 

 そして。

 中学生になって。

 初めての定期テストが近づいていた。

「範囲広くない?」

 昼休み。

 同じクラスの男子が。

 テスト範囲表を見ながら。

 絶望している。

「これ全部?」

「全部」

「小学校と違いすぎるだろ」

「まだ中間だから少ない方らしいぞ」

「嘘だろ」

 俺も。

 範囲表を見る。

 国語。

 数学。

 英語。

 理科。

 社会。

 5教科。

 小学校の。

 単元ごとのテストとは違う。

 複数の範囲が。

 まとめて出る。

 さらに。

 学年順位まで出る。

「……」

 少し。

 面白い。

 100点を取るだけじゃない。

 今度は。

 同じ学年全員の中で。

 自分がどこにいるか分かる。

 ゲームなら。

 ランキング。

「成瀬、勉強できるの?」

「多分」

「多分って何だよ」

「小学校では大体100点だった」

「は?」

「テスト」

「それを最初に言えよ!」

 前世の知識。

 それに。

 今の人生で。

 ちゃんと勉強してきた積み重ね。

 中学1年の内容なら。

 まだ。

 かなり余裕がある。

 ただ。

 1つ。

 違う。

「英語か」

 前世でもやった。

 でも。

 使わなくなって。

 かなり忘れた。

 数学や理科みたいに。

 考えれば解けるものとは。

 少し違う。

「復習しとくか」

 油断はしない。

 

◇

 

 放課後。

 図書室。

「ここ」

 詩織が。

 英語の教科書を指した。

「三単現はまだ先」

「あ、そうだった」

「伊織君、たまに変なところ知ってるよね」

「予習」

「どこまで?」

「……結構先」

「ふーん」

 危ない。

 前世の知識が。

 時々。

 順番を狂わせる。

「詩織は?」

「英語?」

「全部」

「普通」

「嘘つけ」

「伊織君に言われたくない」

 問題集を見る。

 ほとんど。

 埋まっている。

 しかも。

 字が綺麗。

「これ間違ってる」

「どこ?」

「ここ」

「あ、本当だ」

「珍しい」

「伊織君」

「何?」

「嬉しそう」

「そんなことない」

「絶対嬉しそう」

 詩織が。

 消しゴムで答えを消す。

 こういう時間も。

 経験になる。

【学力経験を獲得しました】

【社交経験を獲得しました】

 視界の端。

 小さな表示。

「……」

 やっぱり。

 無駄じゃない。

 勉強もできる。

 詩織とも過ごせる。

 人生能力も伸びる。

 一石三鳥。

「伊織君?」

「何?」

「また何か考えてた?」

「効率いいなって」

「……何が?」

「勉強」

「本当に?」

「本当に」

 半分は。

 本当だった。

 

◇

 

 もちろん。

 野球も止めない。

「成瀬!」

「はい!」

 シニア。

 中学のグラウンドにも。

 少しずつ。

 身体が慣れてきた。

 ショート。

 三遊間。

 強い打球。

 踏み込む。

 捕る。

 握り替え。

 送球。

「アウト!」

「今のいいぞ!」

「はい!」

 2週間前なら。

 一瞬。

 遅れていた打球。

 今は。

 間に合う。

【守備経験を獲得しました】

「よし」

 次。

「成瀬、ブルペン!」

「はい!」

 今日は。

 俺も投げる。

 マウンドへ。

 まだ。

 長く感じる。

 でも。

 5年生の冬。

 そして。

 正式加入したばかりの頃より。

 ずっと。

 自然に投げられる。

「外低め」

 榊原さん。

 構える。

「はい」

 投げる。

 バァンッ!

「ストライク」

「もう1球」

 同じコース。

 投げる。

 バァンッ!

「ストライク」

「もう1球」

 3球目。

 少し内側。

「ボール」

「くそ」

「今の何でずれた?」

「踏み込みが少し開きました」

「分かってんなら次直せ」

「はい」

 4球目。

 バァンッ!

「ストライク」

「いい」

 前より。

 明らかに。

 投げやすい。

 シニアの距離を。

 身体が覚え始めている。

【コントロール経験を獲得しました】

【投球フォームの安定度が上昇しました】

「……」

 そして。

 もう1つ。

 表示が出た。

【特殊能力候補《リリース○》の習得条件が進行しています】

「来た」

「何?」

「何でもないです」

「集中しろ」

「はい!」

 特殊能力。

 まだ。

 覚えてはいない。

 でも。

 近づいている。

 

◇

 

 隣のブルペン。

 バァンッ!

「水城! 高い!」

「はい!」

 バァンッ!

「今度は低い!」

「はい!」

 玲も。

 苦戦している。

 でも。

 以前より。

 明らかに。

 ばらつきが減った。

「玲」

「何?」

「良くなってるな」

「うん」

「何か掴んだ?」

「足」

「足?」

「前に出す場所」

「ああ」

「少し分かってきた」

 玲が。

 投球板を見る。

「でもまだ変」

「そりゃ1か月だしな」

「早く全部投げたい」

「135を?」

「もっと」

「榊原さんに怒られるぞ」

「聞こえてるぞ、水城」

「……」

「聞こえてたな」

「うん」

「今日は球速測るなよ」

「はい」

 返事は。

 少し小さかった。

 

◇

 

 テスト当日。

 1時間目。

 国語。

「始め」

 問題用紙を開く。

 難しくない。

 でも。

 小学校みたいに。

 全部が一瞬ではない。

 文章を読む。

 考える。

 書く。

 2時間目。

 数学。

 これは。

 かなり余裕。

 3時間目。

 英語。

「……」

 1問。

 迷う。

 前置詞。

 こっちか。

 いや。

 文脈なら。

「こっち」

 書く。

 4時間目。

 理科。

 5時間目。

 社会。

 全部終わった。

「どうだった?」

 帰り。

 詩織に聞かれる。

「多分いい」

「何点くらい?」

「全部100」

「……」

「を目指した」

「びっくりした」

「詩織は?」

「私もできたと思う」

「勝負だな」

「勝負なの?」

「順位出るし」

「じゃあ負けない」

「お」

 詩織が。

 少しだけ。

 目を細める。

 そういう顔。

 珍しい。

「俺も負けない」

 野球以外にも。

 競える相手がいる。

 それも。

 少し楽しかった。

 

◇

 

 数日後。

 答案が。

 返ってきた。

 国語。

 97点。

 数学。

 100点。

 英語。

 98点。

 理科。

 99点。

 社会。

 99点。

 合計。

 493点。

「惜しい」

 100点が。

 1教科だけ。

 小学校なら。

 少し悔しかった。

 でも。

 今回は。

 これで終わりじゃない。

 最後に。

 個人成績表が配られた。

「……」

 そこに。

 初めて見る欄。

【学年順位】

 俺は。

 紙をめくる。

「1位」

 493点。

 学年1位。

「よし」

 思ったより。

 嬉しい。

 野球の大会とは。

 全然違う。

 でも。

 積み上げたものが。

 数字になって返ってくる。

 この感覚。

 俺は。

 やっぱり好きだ。

 

◇

 

「伊織君」

 放課後。

 廊下。

「何位だった?」

「1位」

「……やっぱり」

「詩織は?」

 詩織が。

 成績表を見せる。

 491点。

「2位」

「2点差」

「次は勝つ」

「マジ?」

「勝負なんでしょ?」

「そうだった」

 詩織が。

 少し悔しそうに笑う。

「数学は?」

「100」

「俺も」

「英語は?」

「98」

「100」

「負けた」

「国語は?」

「97」

「100」

「そこも負けた」

「でも理科と社会で伊織君に負けた」

「総合では俺の勝ち」

「2点だけ」

「2点でも勝ちは勝ち」

「次は負けないから」

「望むところ」

 小学生の頃。

 同じ100点を見せ合って。

 笑ったことがあった。

 今は。

 順位がある。

 差がある。

 だから。

 また。

 少し違う。

 

◇

 

 夜。

 システムを確認する。

【定期テストで学年1位を獲得しました】

【学力経験を獲得しました】

【学力 B77 → B79】

「2上がった」

 中学に入ってから。

 勉強時間も。

 少し増やした。

 テスト勉強もした。

 その積み重ね。

 さらに。

【社交 B71 → B72】

「こっちも」

 詩織との勉強。

 クラスで。

 問題を教えたこと。

 新しい友達との会話。

 全部。

 少しずつ。

 数字になっている。

【成瀬 伊織】

年齢:13歳

【人生能力】

学力  B79

運動  A89

容姿  A84

芸術  C54

社交  B72

精神  B79

「あと1」

 学力。

 80になれば。

 A。

 中学1年。

 まだ5月。

「いけるな」

 野球も。

 勉強も。

 人間関係も。

 芸術も。

 精神も。

 全部。

 まだ伸ばせる。

 俺は。

 予定表を開く。

 空いている時間を。

 探す。

 シニア。

 勉強。

 詩織との時間。

 自主練。

 ピアノ。

 全部。

 入る。

「よし」

 この頃の俺は。

 本気で。

 そう思っていた。

 時間さえ。

 上手く使えば。

 人生は。

 全部。

 育てられると。

 

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