転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第68話

 秋大会が始まってからも、学校生活は止まらない。

 大会の次の試合を数日後に控えたある日、担任が教卓の前でプリントを配り始めた。

「来週から中間テストだ。部活を言い訳にするなよ」

 教室のあちこちから、嫌そうな声が上がる。

 俺は配られた範囲表を見ながら、頭の中で予定を組み直した。

 秋大会。

 シニアの練習。

 自主練。

 中間テスト。

 詩織とのピアノ。

「……入るな」

「何が?」

 前の席にいたクラスメイトが振り返った。

「いや、何でもない」

 まだ入る。

 なら問題ない。

 

◇

 

 その日の放課後。

 昇降口を出たところで、隣のクラスから来た詩織に呼び止められた。

「伊織君」

「ん?」

「テスト範囲見た?」

「見た」

「どう?」

「多分大丈夫」

「またそれ」

 詩織が少し呆れた顔をする。

「詩織は?」

「英語がちょっと不安」

「一緒にやる?」

「いいの?」

「明日ならシニア休み」

 すぐに頭の中で予定を確認する。

 朝に自主練。

 放課後に詩織と勉強。

 夜は自分の復習。

「空いてる」

「……そっか」

 詩織が笑った。

「じゃあお願いしようかな」

「任せて」

「でも、私も伊織君に教えるからね」

「何を?」

「国語」

「別に苦手じゃないけど」

「私の方が得意」

「……それはそう」

 前回の中間でも、国語は詩織の方が高かった。

「じゃあ交換な」

「うん」

 こういう時間も学力が上がる。

 社交も。

 多分、精神にも悪くない。

 そう考えたところで、詩織が俺の顔を覗き込んだ。

「伊織君?」

「何?」

「今また何か考えてたでしょ」

「テストのこと」

「本当に?」

「本当」

 半分くらいは。

 

◇

 

 翌日。

 俺の家で2人並んで問題集を開く。

 英語を一通り終えたあと、今度は詩織が国語の問題集を俺の前へ置いた。

「これ」

「記述?」

「うん。伊織君、意味は合ってるけど文章が固い時あるから」

「点取れればよくない?」

「そういうところ」

 詩織が赤ペンで俺の解答を指す。

「間違ってはいないよ。でも、この登場人物がどう感じたかを聞かれてるのに、答えが説明文みたい」

「感情を正確に書いただけだけど」

「正確だけど」

 詩織が少し考える。

「伊織君って、人の気持ちまで正解探そうとするよね」

「問題なんだから正解あるだろ」

「テストにはね」

「じゃあいいじゃん」

「……そうなんだけど」

 何か言いたそうだったけど、詩織はそのまま問題集へ目を戻した。

「次」

「はい先生」

「ふざけない」

「はい」

 少し笑われた。

 

◇

 

 中間テスト当日。

 今回は前回ほど緊張しなかった。

 問題を読んで。

 解く。

 見直す。

 終わり。

 野球と違って、突然140km/hの投手が出てくることもない。

 数日後。

 全教科の答案が返ってきた。

 合計492点。

 学年順位1位。

「よし」

 前回より1点低いけど、順位は同じ。

 放課後、廊下で詩織に会うと、向こうから答案を見せてきた。

「490点」

「2位?」

「うん」

「また1、2だな」

「2点差」

「勝った」

「嬉しそう」

「勝負だから」

「勝負って決めた覚えないんだけど」

「じゃあ次も」

「勝手に続けないで」

 そう言いながら。

 詩織も少し笑っていた。

 

◇

 

 家に帰ってシステムを開くと、すぐに表示が出た。

 

【中間テストで学年1位を獲得しました】

【学力経験を獲得しました】

 

【人生能力が上昇しました】

 

学力 B79 → A80

 

「来た」

 人生能力で、運動に続いて2つ目のA以上。

 運動はS90。

 そして学力A80。

 画面を眺める。

「あと精神」

 B79。

 Aまであと1。

 芸術はC56。

 社交はB73。

 まだ上がる。

 まだ育てられる。

 予定表へ目を向ける。

 もっとやれる。

 そんなことを考えていた。

 

◇

 

 そして数日後。

 秋大会。

 試合会場へ入ったところで、見覚えのある顔を見つけた。

 隣を歩いていた玲も、ほぼ同時に相手チームの方を見た。

「伊織君」

「うん」

「真田」

「やっぱりそうだよな」

 夏。

 132km/hを投げていた同級生。

 真田蒼士。

 向こうも俺たちに気づいたらしい。

 キャッチボールを止めて、真っすぐこちらへ歩いてきた。

「水城」

「久しぶり」

「成瀬」

「おう」

 真田は俺を見たあと、すぐ玲へ視線を戻した。

「今も135?」

「うん」

「上がってねえの?」

「まだ」

「……よし」

 真田が少し嬉しそうな顔をする。

「何がよしなの?」

「追いつける」

「真田は?」

「134」

 夏から2km/h。

 伸びている。

「速くなったね」

「その上から言う感じやめろ!」

「褒めたのに」

「お前が言うと腹立つんだよ!」

 真田が今度は俺を見る。

「成瀬は?」

「126」

「投手の話だよな?」

「そうだけど」

「……水城と9km/h差?」

「うん」

「じゃあ投手なら俺の方が速い」

「そうだな」

「何でそんな余裕なんだよ」

「別に余裕じゃないけど」

 そう答えながら。

 少しだけ、その数字が頭に残った。

 玲、135km/h。

 真田、134km/h。

 俺、126km/h。

 速さだけが投手じゃない。

 それは分かっている。

 でも。

 2人とも、夏から先へ進んでいる。

 俺はどうだ。

「まあいい。今日は抑えるからな」

 真田の声で意識を戻す。

「俺は打つ」

「それ夏も聞いた!」

 相変わらずだった。

 

◇

 

 試合前。

 監督が全員を集め、スタメンを読み上げる。

 俺は3番ショート。

 先発は玲。

 相手の先発は当然、真田だった。

 防具をつけていた高瀬が、マウンドへ向かう玲に声を掛ける。

「水城。今日は向こうも速いぞ」

「134」

「知ってるのか」

「さっき聞いた」

「直接?」

「うん」

「お前ら試合前に情報交換すんなよ……」

 高瀬が呆れている。

 俺は横から玲に聞いた。

「玲」

「何?」

「負けたくない?」

「うん」

「球速で?」

 玲は少し考えた。

「試合で」

「……そっか」

 少しだけ。

 玲も変わったと思った。

 

◇

 

 1回表。

 真田の初球。

 133km/h。

「ストライク!」

 夏より明らかに強い。

 さらにスライダーも鋭くなっている。

 先頭の橘さんが粘って四球。

 2番が送って。

 ワンアウト2塁。

 俺の打席。

 打席へ入ると、真田がマウンドから俺を睨んでいた。

「怖い顔」

 聞こえないくらいの声で呟く。

 初球。

 134km/h。

 外角。

「ストライク!」

「速い」

 夏の自己最速132km/h。

 今日は最初から134km/h。

 2球目。

 スライダー。

 外へ逃げる。

 見送る。

「ボール!」

 3球目。

 内角。

 133km/h。

 振る。

 カンッ!

 ファウル。

 ワンボール、ツーストライク。

 4球目。

 スライダー。

「っ!」

 思ったより曲がる。

 バットが空を切った。

「ストライク! バッターアウト!」

 三振。

「……マジか」

 夏はホームラン。

 秋の最初の打席は。

 真田の勝ちだった。

 ベンチへ戻る途中、もう一度マウンドを見る。

 球速が2km/h上がっただけじゃない。

 スライダーも。

 配球も。

 俺を抑えるために、夏より明らかに良くなっている。

「成瀬が三振した」

 三上が面白そうに声を掛けてくる。

「する時くらいある」

「珍しいから」

「次打つ」

 その声が聞こえたのか。

 マウンドの真田が少し笑っていた。

 

◇

 

 1回裏。

 今度は玲。

 俺はショートから、その投球を見る。

 初球。

 135km/h。

 ストライク。

 2球目。

 132km/hを外角低め。

 ファウル。

 3球目。

 130km/h。

 高速落下球。

 ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 三球三振。

 真田が相手ベンチの一番前から、玲を見ている。

 2人目。

 低めの132km/hでセカンドゴロ。

 3人目。

 135km/h。

 高速落下球。

 最後は高め135km/h。

 三振。

 三者凡退。

「玲、いいな」

 ショートから声を掛けると、玲が振り返った。

「うん」

 それだけ答えて、高瀬の返球を受ける。

 球速だけじゃない。

 低めの132。

 高めの135。

 130km/h前後から沈む球。

 夏の玲なら、もっと135を投げていた。

 今は違う。

「……あいつも進んでる」

 思わず口にする。

 速いだけだった怪物が。

 もう。

 速いだけじゃなくなっている。

 

◇

 

 3回を終えて0対0。

 真田も玲も譲らない。

 ベンチに座りながら、俺は2人の投球を見比べていた。

 真田は134km/hのストレートとスライダー。

 夏より速く。

 変化球も鋭い。

 玲は135km/h。

 でも、それだけじゃない。

 高速落下球を加えて、球の使い方まで変わっている。

「俺は?」

 小さく呟く。

 126km/h。

 コントロールB72。

 チェンジアップ5。

 緩急○。

 先発で5回無失点もやった。

 抑えられている。

 だから。

 投手として弱いとは思わない。

 でも。

 目の前で。

 同い年の2人が投げ合っているのを見ると。

「まだ足りないな」

 自然に。

 そう思った。

 もっと速く。

 それだけじゃない。

 もっと長く。

 もっと正確に。

 打者が何を待っているかを見て。

 試合の最初から最後まで。

 自分で支配できる投手になりたい。

「成瀬?」

 隣にいた三上が俺を見る。

「何?」

「今なんか言った?」

「いや」

 もう一度グラウンドを見る。

 まだ。

 俺にはできることがある。

 

◇

 

 4回表。

 俺の第2打席。

 先頭。

 真田が投げる。

 初球。

 スライダー。

 見送る。

「ストライク!」

 夏とは逆。

 最初から変化球。

 2球目。

 134km/h。

 内角。

 ファウル。

 ツーストライク。

 また追い込まれた。

「変わったな」

 真田も。

 ただ速い球を投げるだけじゃない。

 俺を抑えるために考えている。

 3球目。

 外へスライダー。

 ボール。

 4球目。

 133km/h。

 外角。

 ファウル。

 5球目。

 スライダー。

 見送る。

 ツーボール、ツーストライク。

「次……」

 夏なら。

 ここでストレートを読んだ。

 でも。

 今の真田が夏と同じことをするとは限らない。

 6球目。

 腕が振られる。

 スライダー。

「っ!」

 踏み込む。

 カキンッ!

 センター前。

「よし!」

 1塁へ走る。

 真田が悔しそうな顔をした。

「今回はシングル」

 1塁上から言う。

「聞こえてるぞ!」

「ホームランじゃないだけいいだろ!」

「良くねえ!」

 1勝1敗。

 そんな感じだった。

 

◇

 

 試合が動いたのは6回。

 0対0。

 先頭の橘さんが内野安打で出塁。

 盗塁。

 ノーアウト2塁。

 2番が送りバントを決める。

 ワンアウト3塁。

 俺に第3打席が回ってきた。

 真田がマウンドで息を吐く。

 ここまで。

 134km/h。

 スライダー。

 どちらも良い。

 俺だけで決めたい。

 そんな気持ちはある。

 ホームランなら一番分かりやすい。

 でも。

 3塁には橘さんがいる。

 必要なのは1点。

 真田の初球。

 134km/h。

 高め。

 ボール。

 2球目。

 スライダー。

 外。

 ボール。

 ツーボール。

 3球目。

 ストレート。

 133km/h。

 外角。

 振る。

 カキィン!

 高い打球。

 センター。

 外野手が下がる。

「タッチ!」

 橘さんが3塁からスタート。

 捕球。

 送球。

 ホーム。

「セーフ!」

 1対0。

 俺はアウト。

 犠牲フライ。

 ベンチへ戻ると、橘さんが拳を出してきた。

「ナイス」

「ありがとうございます」

「ホームランじゃなくて残念?」

「ちょっと」

「正直だね」

「でも点入ったから」

「それなら十分」

 橘さんが笑う。

 

◇

 

 6回裏。

 玲がマウンドへ向かう。

 その後を追う高瀬が、声を掛ける。

「水城、1点守ろうとするなよ」

「何で?」

「守ろうとすると力むだろ、お前」

「じゃあ普通に投げる」

「それでいい」

 先頭打者。

 ヒット。

 今日初めて、玲が先頭を出した。

 続く打者が送りバント。

 ワンアウト2塁。

 相手3番。

 玲の135km/hをファウル。

 高速落下球も見送る。

 フルカウント。

 6球目。

 132km/h。

 外角低め。

 カキンッ!

 打球は一、二塁間。

 抜ける。

 ランナーが3塁を回る。

「ホーム!」

 ライトから送球。

 間に合わない。

「セーフ!」

 1対1。

 同点。

 俺はショートから玲を見る。

 夏なら。

 ここで。

 もっと速い球を投げようとしたかもしれない。

 でも。

 玲は一度だけ息を吐くと、高瀬のサインを見た。

 4番。

 初球。

 132km/h。

 外角低め。

 ストライク。

 2球目。

 高速落下球。

 空振り。

 3球目。

 135km/h。

 高め。

 ブンッ!

 三振。

 5番。

 低めの132km/hを打たせてショートゴロ。

 俺が処理する。

 チェンジ。

 1失点。

 それ以上は取らせなかった。

「……これだ」

 マウンドから戻る玲を見ながら思う。

 失点した。

 走者も出した。

 それでも。

 そのあとを抑える。

 自分の一番強い球だけに頼らず。

 必要な球を選ぶ。

 俺も。

 もっとできるはずだ。

 

◇

 

 7回表。

 1対1。

 ツーアウト。

 ランナー2塁。

 打席には黒田。

 ベンチから三上が声を張る。

「黒田! 打てよ!」

「言われなくても!」

 真田はまだマウンドにいる。

 球数は多い。

 でも133km/h。

 まだ出る。

 初球。

 ストレート。

 ファウル。

 2球目。

 スライダー。

 ボール。

 3球目。

 ストレート。

 カキィィン!

「行った!」

 打球が左中間へ飛ぶ。

「抜けろ!」

 外野手が走る。

 届かない。

「回れ!」

 2塁ランナーがホームへ。

「セーフ!」

 2対1。

「よっしゃあああ!」

 黒田が1塁上で大きく拳を握る。

 俺もベンチから叫んでいた。

 俺じゃない。

 玲でもない。

 黒田が打った。

 それで。

 勝ち越した。

 

◇

 

 7回裏。

 玲がそのままマウンドへ。

 先頭。

 三振。

 次。

 センターフライ。

 ツーアウト。

 最後の打者。

 真田だった。

 代打は出ない。

 バットを持って打席へ入る。

 打席へ向かう真田が、マウンドの玲に声を飛ばした。

「水城!」

「何?」

「打つ!」

「抑える」

「それだけかよ!」

「うん」

 高瀬がマスク越しに笑っている。

 初球。

 135km/h。

 ファウル。

 2球目。

 132km/h。

 外角。

 ボール。

 3球目。

 高速落下球。

 真田が振る。

 バットに当たる。

 ファウル。

 ワンボール、ツーストライク。

 玲が高瀬を見る。

 サイン。

 高め。

 135km/h。

 玲が腕を振る。

 真田も振る。

 ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

「ゲームセット!」

 2対1。

 勝った。

 

◇

 

 整列を終えたあと。

 真田が俺たちのところまで来た。

「……負けた」

「うん」

 玲が答える。

「次は勝つ」

「うん」

「水城」

「何?」

「新しい落ちる球、何だよ」

「まだ名前ない」

「は?」

「まだ完成してない」

「完成してなくてあれかよ……」

 真田が頭を抱える。

 そして俺を見る。

「成瀬」

「何?」

「今日ホームラン打たれてない」

「打ってないな」

「三振も取った」

「取られた」

「だから今日は俺の勝ち」

「試合負けてるけど?」

「個人の話!」

「じゃあヒットも打った」

「……」

「犠牲フライも」

「……」

「どうする?」

「引き分け!」

「雑だな」

「次は全部抑える!」

「じゃあ俺は全部打つ」

「それ夏からずっと言ってるな!」

 真田が悔しそうに笑った。

 その顔を見ながら。

 少し羨ましいと思った。

 夏から2km/h。

 スライダーも良くなった。

 真田は明確に。

 投手として前へ進んでいる。

 

◇

 

 帰りのバス。

 窓の外を見ながら、今日の試合を思い返す。

 真田からホームランは打てなかった。

 三振もした。

 玲も1点取られた。

 俺たち2人だけなら、完璧じゃなかった。

 でも。

 橘さんが出て。

 俺が犠牲フライを打って。

 黒田が勝ち越しタイムリーを打った。

 玲が最後を締めた。

「9人か」

 前の席にいた高瀬が振り返る。

「何が?」

「いや」

 榊原さんの言葉を思い出した。

 何でも自分でやろうとするな。

 野球は9人。

 少しずつ。

 本当に少しずつだけど。

 分かってきた気がする。

 

 でも。

 もう1つ。

 今日、強く感じたことがある。

 投手としての俺。

 これまでなら。

 5回無失点。

 四球もほとんど出さない。

 十分だと思っていた。

 でも。

 今日。

 真田と玲の投げ合いを、ずっと近くで見た。

 2人とも。

 俺にはない球を持っている。

 それだけじゃない。

 前に会った時より。

 投手として明らかに先へ進んでいた。

 俺だって。

 チェンジアップを5まで育てた。

 緩急○も取った。

 抑え方も分かってきた。

 でも。

「まだ足りない」

 今度は。

 ちゃんと声に出た。

 高瀬が再び振り返る。

「何が?」

「投手」

「成瀬が?」

「うん」

「この前5回無失点だったじゃん」

「5回だろ」

「……」

「もっと投げたい」

「何回?」

「最後まで」

 高瀬が少し驚いた顔をする。

「完投?」

「うん」

 試合の最初から。

 最後のアウトまで。

 自分で投げ切る。

 その中で。

 打者に合わせて。

 配球を変えて。

 走者を出しても崩れず。

 全部抑える。

「俺、まだそういう試合してない」

「……」

 高瀬が少し笑った。

「じゃあ次やれば?」

「うん」

 簡単に言う。

 でも。

 それでいいと思った。

 次に先発する時。

 もっと。

 投手として上へ行きたい。

 

◇

 

 その夜。

 システムを開く。

 

【強敵との再戦に勝利しました】

【ミート経験を獲得しました】

【選球経験を獲得しました】

【チームプレー経験を獲得しました】

 

【特殊能力《チームプレー○》の成長条件を一部満たしました】

 

「チームプレー……」

 今までの俺なら。

 ホームラン。

 奪三振。

 盗塁。

 そういう能力の方が嬉しかったかもしれない。

 でも。

「悪くないな」

 少しだけ。

 そう思った。

 

 そして。

 投手能力を開く。

 

【投手能力】

球速     126km/h

コントロール B72

スタミナ   B70

 

【変化球】

チェンジアップ 5

 

【投手特殊能力】

対ピンチ○

低め○

リリース○

緩急○

 

「……」

 弱くない。

 むしろ。

 中学1年なら十分強い。

 でも。

 今日の俺には。

 この数字が完成には見えなかった。

「もっといける」

 球速も。

 制球も。

 スタミナも。

 試合の作り方も。

 

 最後に人生能力を確認する。

 

【人生能力】

学力 A80

運動 S90

容姿 A84

芸術 C56

社交 B73

精神 B79

 

 学力。

 A。

 学校では、また1つ上へ進んだ。

 

 だったら。

 野球でも。

 

「次は俺の番だな」

 

 真田が伸びた。

 玲も伸びた。

 

 2人を見て。

 悔しいと思った。

 

 もっとできるはずだと思った。

 

 なら。

 育てればいい。

 

 俺は予定表を開く。

 次の試合。

 その日付を見ながら。

 小さく書き込んだ。

 

『先発なら、最後まで』

 

 まだ。

 俺は足りない。

 

 だから。

 

 次は。

 投手として。

 一つ上へ行く。

 

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