転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第7話

 翌週。

 父さんに少年野球のことを話すと、思った以上に食いついた。

「伊織、野球チーム入りたいのか?」

「うん」

「本気で?」

「うん」

「よし!」

「うわっ」

 肩を掴まれた。

「父さんも小学校の時やってたんだよ!」

「知ってる」

「言ったっけ?」

「……この前」

「ああ、そうだった」

 危ない。

 転生者。

 こういうところで地味にボロが出る。

「じゃあ母さんに相談だな」

 結果。

 条件付きで許可された。

『嫌になったらちゃんと言うこと』

『無理をしないこと』

『幼稚園を休んでまで練習しないこと』

 全部了承。

 そして。

 俺と玲は。

 週末のキッズクラスへ参加することになった。

 

◇

 

「よろしくお願いします!」

 グラウンド。

 俺と玲が頭を下げる。

 玲のお父さん。

 俺の父さん。

 少し離れたところには。

 なぜか詩織と詩織のお母さんまでいる。

「詩織、何しに来たの?」

「見学」

「毎回来る気?」

「駄目?」

「駄目じゃないけど」

 野球に興味があるわけでもなさそうなのに。

 よく分からない。

「伊織君」

「ん?」

「今日も頑張ってね」

「おう」

 詩織が笑う。

 

【藤崎詩織の好感度が少し上がった】

 

 ……なるほど。

 応援イベントみたいなものか。

 少し納得した。

 

◇

 

「今日はまず走ろうか!」

 キッズクラスのコーチが声を上げる。

 参加しているのは俺たちを含めて八人。

 年長から小学二年くらい。

 競技というより。

 野球を使って身体を動かす教室に近い。

 まずはグラウンドを軽く走る。

「玲、速っ」

 俺の横から。

 玲が飛び出していく。

「伊織君遅い!」

「うるせえ!」

 五歳児の身体。

 運動22。

 仕方ない。

 でも。

 悔しい。

 結局。

 八人中。

 玲が二番。

 俺は五番。

「……」

「伊織君」

「何」

「怒ってる?」

「怒ってない」

「顔が怒ってる」

「怒ってないって」

 玲が笑う。

 こいつ。

 昨日まで俺に憧れてたんじゃないのか。

「もう一回やったら勝つ」

「いいよ」

 この辺り。

 中身三十八歳とか。

 あまり関係ないらしい。

 負けると普通に悔しい。

 

【運動が少し上がった】

 

 人生能力にも経験が入る。

 野球と人生。

 同じ行動で両方育つこともある。

 これは効率がいい。

 

◇

 

 次はキャッチボール。

「相手の胸を狙って投げよう!」

 コーチが実演する。

 俺と玲でペア。

「いくよ」

「うん」

 投げる。

 パシッ。

 玲の胸元。

「お」

 前より明らかに投げやすい。

 コントロールF21。

 やっぱり。

 能力を上げた効果は確実にある。

 今の俺なら。

 この距離なら。

 かなり安定して相手の周辺へ投げられる。

「伊織君、上手くなった」

「だろ?」

「昨日より」

「練習したから」

 正確には。

 経験を使ったから。

 玲が投げ返す。

 パシッ。

「……」

 胸元。

「玲も上手くなってるじゃん」

「練習した」

「どれくらい?」

「毎日」

「毎日?」

「うん」

 玲のお父さんを見る。

 苦笑している。

「幼稚園から帰ると、毎日キャッチボールしろって」

「……」

 こいつ。

 才能だけじゃない。

 練習もする。

 一番嫌なタイプじゃないか。

「伊織君?」

「なんでもない」

 俺も。

 やらないとな。

 システムがあるからといって。

 何もしなくていいわけではない。

 むしろ。

 練習した分が確実に残るなら。

 やらない方が損だ。

 

◇

 

「次はバッティング!」

 待ってました。

 ティースタンド。

 前回。

 少しだけ経験した。

 今日は。

 もう少し真面目に試したい。

「成瀬君からいこうか」

「はい」

 バットを握る。

 前回の反省。

 前世のフォームを無理やり再現しない。

 五歳の身体。

 小さな手。

 弱い筋力。

 今できる範囲で。

 ボールへバットを当てる。

 一球目。

 カンッ。

 二球目。

 コン。

 三球目。

 カンッ。

「上手い上手い!」

 コーチが褒める。

「バットに当てるの上手だね」

「ありがとうございます」

 前世では。

 こういうところだけは人並みだった。

 長打力はない。

 足も普通。

 でも。

 バットへ当てること自体は嫌いじゃなかった。

 十球。

 二十球。

 少しずつ。

 身体の感覚が合ってくる。

 

【打撃練習を行いました】

 

【筋力が少し上がった】

【技術がかなり上がった】

 

 経験が入る。

 そして。

 俺は気づく。

 ミート。

 今なら。

 上げられる。

「……」

 練習中にやってみるか?

 少し迷う。

 でも。

 効果を確認したい。

 視界の中だけで操作する。

 

【ミート G 10】

【蓄積した経験を使用しますか?】

 

 はい。

 

【ミートが上がった】

【G 10 → F 20】

 

 瞬間。

「……っ」

 目が。

 少し変わった。

 いや。

 視力が良くなったわけじゃない。

 ボールと。

 バットの位置。

 その関係が。

 さっきより。

 少し分かる。

「成瀬君?」

「もう一球お願いします」

「おう」

 ボールがティーへ置かれる。

 構える。

 ボールを見る。

 振る。

 カンッ!

 今までで一番いい音。

 打球が真っ直ぐ飛んだ。

「おお!」

 コーチが声を上げる。

「今の良かったぞ!」

「……」

 自分でも分かる。

 芯に近かった。

 もう一球。

 カンッ。

 また当たる。

「これか……」

 システムによる成長。

 すごい。

 でも。

 それ以上に。

 怖いくらい気持ちいい。

 努力して。

 経験を貯めて。

 能力に使う。

 すると。

 自分が本当に上手くなる。

 ゲームでは何百回もやった。

 でも。

 自分自身で味わうのは。

 まるで違う。

「もう一球!」

 止まらなかった。

 

◇

 

「次、水城君!」

「はい!」

 玲がバットを持つ。

 俺は少し離れたところから見る。

 最初は。

 俺の方が上手かった。

 今日も。

 最初の数球は玲の方が空振りが多い。

 カスッ。

 空振り。

 コン。

「難しい」

 玲が言う。

 でも。

 見ている。

 俺がどう振っていたか。

 コーチが何を教えているか。

「玲君、バットを振る時に頭が動きすぎてるな」

「頭?」

「そう。なるべくボールをずっと見てみよう」

「うん」

 次。

 カンッ。

「……」

 次。

 カンッ。

 次。

 カンッ!

「おい」

 十球もしないうちに。

 ほとんど空振りしなくなった。

「すごいな玲!」

 玲のお父さんが喜んでいる。

 詩織も拍手している。

「玲ちゃん上手!」

「ありがとう」

 玲が笑う。

 そして。

 俺を見る。

「伊織君」

「なに?」

「今の、伊織君より飛んだ?」

「……ちょっとだけな」

「やった」

「次は俺の方が飛ばす」

「じゃあ競争ね」

「だから何でも競争にするな」

「伊織君が言った」

「そうだっけ?」

 笑いながら。

 胸の奥では。

 少し焦っている。

 俺は経験を使って。

 ミートを上げた。

 玲は。

 普通に練習しただけ。

 なのに。

 もう。

 同じくらい当て始めている。

 才能。

 その言葉が。

 少しずつ。

 現実味を持ち始めていた。

 

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