転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第81話

 春季大会が終わって。

 数日。

 学校生活は。

 何事もなかったみたいに戻った。

 朝。

 授業。

 昼休み。

 放課後。

 シニア。

 でも。

 俺の周りだけ。

 少しずつ。

 変わり始めていた。

 

◇

 

「成瀬」

 練習前。

 監督に呼ばれた。

「はい」

「ちょっと来い」

 事務所へ入る。

 机の上。

 封筒が。

 いくつか置いてあった。

「これ」

「何ですか?」

「高校から」

「……俺に?」

「お前と水城にな」

 1つ。

 手に取る。

 校名。

 帝陵学園高等学校。

 次。

 蒼峰学院高等学校。

 この2校は。

 春の決勝で会った。

 でも。

 他にもある。

「東央大附属……」

「そこはお前への関心が強い」

「俺?」

「野手としてな」

「野手」

「ショートとしてかなり評価されてる」

 もう1つ。

 桜明館高校。

「ここは?」

「地元の進学校だ。野球も強い」

「甲子園は?」

「毎年出るような学校じゃない。ただ、何年かに1回は県上位まで来る」

「なるほど」

「お前の場合、学力も見られてる」

「学力まで?」

「そりゃ見る学校は見る」

 机の上。

 4校。

 まだ。

 中学2年。

 それなのに。

 もう。

 選択肢が並び始めている。

 

◇

 

「推薦とかですか?」

「まだそこまでの話じゃない」

 監督が答える。

「今は、うちも見てますよって段階だ」

「なるほど」

「ただ」

 監督が帝陵学園の封筒を指で叩く。

「この辺は早い」

「早い?」

「欲しい選手には中2からでも顔出す」

「へえ」

「水城なんか分かりやすいだろ」

「140」

「そう」

 中学2年春。

 140km/h。

 投手として。

 目立たない方が難しい。

「俺は?」

「お前は逆に分かりにくい」

「え」

「悪い意味じゃない」

 監督が笑った。

「投手として見れば130。十分速い。でも水城ほどじゃない」

「はい」

「打者として見れば強い。走れる。守れる。肩もある」

「はい」

「ショートとして見るとかなり面白い」

「はい」

「で、投げさせても抑える」

「はい」

「見る側が困る」

「何でですか」

「どこで使うのが一番いいか分からんからだ」

「全部使えばいいじゃないですか」

 即答した。

 監督が。

 一瞬黙る。

「……お前はそう言うよな」

「駄目ですか?」

「高校は人数が増える。レベルも上がる。全部やらせてくれるとは限らんぞ」

「……」

 その言葉。

 少し。

 引っかかった。

 

◇

 

 帝陵学園。

 全国屈指の強豪。

 甲子園常連。

 プロへ進む選手も多い。

 資料を見る。

 専用グラウンド。

 室内練習場。

 トレーニング施設。

 寮。

「すご」

 でも。

 選手数も多い。

 毎年。

 全国から選手が集まる。

 監督から聞いた話では。

 俺は。

 ショートとしてかなり高く評価されているらしい。

 投手としても見られている。

 ただ。

「高校入ったら、野手中心の方がいいかもな」

 そんな話も。

 出ているらしい。

「……野手中心」

 悪くない。

 ショートは好きだ。

 守備力。

 今も。

 野手能力の中では一番高い。

 でも。

 投手をやめる?

「嫌だな」

 即答だった。

 

◇

 

 蒼峰学院。

 こっちは。

 投手育成に強い。

 フォーム解析。

 映像設備。

 身体測定。

 トレーニング管理。

 資料を読むだけで。

 ちょっとワクワクする。

「これいいな……」

 俺の場合。

 投手だけじゃなく。

 野手もやっていることを理解した上で。

「入学後に両方を見て適性を判断したい」

 という話らしい。

「両方」

 こっちの方が。

 今の俺には。

 合っている。

 ただ。

 最終的にどちらかへ絞る可能性はある。

 そこだけは。

 帝陵と大きく変わらない。

 

◇

 

 東央大附属。

 ここは。

 明確だった。

 俺を。

 ショートとして見ている。

「1年からレギュラー争いに入れる可能性がある」

 監督が言う。

「1年から?」

「向こうのスカウトがそう言ってた」

「……」

 かなり。

 魅力的。

 打撃。

 守備。

 走塁。

 野手として。

 全部伸ばせる。

 でも。

「投手は?」

「今のところ、野手評価の方がかなり高い」

「なるほど」

 また。

 同じ問題。

 

◇

 

 桜明館。

 ここだけ。

 少し違った。

 進学校。

 大学進学も重視。

 練習時間は。

 他の3校より短い。

 ただ。

 自主性が高い。

 自分で考えて練習する時間が多いらしい。

 場所も。

 近い。

 家から通える。

「……通学」

 寮。

 遠征。

 野球漬け。

 そういう環境も。

 悪くない。

 でも。

 今の生活。

 学校。

 詩織。

 シニア。

 全部が。

 当たり前に続くわけじゃない。

 高校になれば。

 それも。

 変わる。

 

◇

 

「伊織君」

 学校。

 昼休み。

 詩織が俺の机の横へ来た。

「何?」

「昨日、おばさんに会った」

「母さん?」

「うん」

「何か言ってた?」

「高校からいっぱい手紙来てるって」

「……言うの早いな」

「本当なんだ?」

「うん」

「どこ?」

 俺は。

 4校の名前を話した。

「帝陵って、すごいところだよね」

「うん」

「テレビで聞いたことある」

「甲子園よく出てる」

「蒼峰も?」

「強い」

「東央大附属も?」

「強い」

「桜明館は知ってる」

「近いからな」

「じゃあ」

 詩織が。

 一度。

 言葉を止める。

「伊織君、高校どこ行くの?」

「まだ決めてない」

「そっか」

「まだ中2だし」

「うん」

 少し。

 安心したように見えた。

「何?」

「何でもない」

「詩織は?」

「私?」

「高校」

「まだそんなに考えてないよ」

「そっか」

「でも」

 詩織が。

 少し笑う。

「遠いところは、ちょっと嫌かな」

「何で?」

「通うの大変だから」

「寮なら?」

「……そういう話じゃない」

「?」

「もういい」

「何で?」

「伊織君だから」

 意味が分からない。

 でも。

 詩織は。

 少しだけ。

 機嫌が悪くなった。

 

◇

 

 その日の夜。

 高校の資料を。

 机に並べた。

 帝陵学園。

 蒼峰学院。

 東央大附属。

 桜明館。

 項目を書き出す。

 

 設備。

 指導。

 練習時間。

 選手層。

 進学。

 寮。

 投手育成。

 野手育成。

 試合出場機会。

 二刀流の可能性。

 

「……」

 表にする。

 比較する。

 点数をつけようとして。

 ペンが止まった。

「まだ情報足りないな」

 学校説明会。

 練習見学。

 監督。

 チーム方針。

 先輩。

 まだ。

 見るものがある。

「全部見てからだな」

 高校。

 3年間。

 限られた時間。

 なら。

 一番。

 伸びる場所を選ぶ。

 その考えは。

 自然だった。

 

◇

 

 次の日。

 シニア。

 玲も。

 監督から高校の話を聞いていた。

「玲」

「何?」

「高校の資料見た?」

「見た」

「どこ良かった?」

「分からない」

「珍しい」

「投手として一番強くなれるところがいい」

「それは前も聞いた」

「うん」

「帝陵?」

「強い」

「蒼峰?」

「投手育成すごい」

「じゃあ迷う?」

「うん」

 玲が。

 少しだけ考える。

「でも」

「何?」

「伊織君と同じ高校には行かないかも」

「……何で?」

 本気で。

 意味が分からなかった。

「一緒の方が強いだろ」

「強いと思う」

「じゃあいいじゃん」

「でも」

 玲は。

 俺を見る。

「同じチームだと、伊織君と公式戦で戦えない」

「……」

「僕は伊織君に勝ちたい」

 その言葉。

 前にも。

 聞いた。

 でも。

 高校。

 そこまで考えているとは。

 思わなかった。

「一緒に甲子園行くとかは?」

「それも楽しそう」

「だろ?」

「でも」

 玲は。

 迷わず言った。

「甲子園で伊織君と戦う方が楽しそう」

「……」

 少し。

 笑ってしまった。

「玲らしいな」

「伊織君は?」

「俺?」

「同じ高校行きたい?」

 考える。

 玲がいれば。

 強い。

 勝てる。

 練習でも。

 競える。

 でも。

 敵として。

 140km/h。

 高速で落ちる球。

 その先。

 もっと速くなる玲。

 打席で。

 立ってみたい。

「……どっちも楽しそう」

「欲張り」

「またそれ?」

「うん」

 俺たちは。

 笑った。

 

◇

 

 その後。

 さらに。

 高校関係者が。

 城東シニアの練習へ顔を出すことが増えた。

 帝陵。

 蒼峰。

 東央大附属。

 桜明館。

 そして。

 まだ名前も知らない学校。

 目的は。

 玲。

 俺。

 時々。

 橘さんたち3年生。

 俺たち2年生を見るためだけに。

 足を運ぶ人間まで。

 少しずつ。

 増えていった。

「成瀬」

 ある日。

 監督が言った。

「また1校来てるぞ」

「どこですか?」

「今日は関西」

「関西?」

「全国で見れば、お前らを見る学校はまだ増える」

「……」

 選択肢。

 増える。

 それは。

 嬉しい。

 でも。

 増えれば。

 選ばなきゃいけない。

 全部は。

 行けない。

 

◇

 

 夜。

 システムを開く。

 能力。

 高校。

 将来。

 頭の中で。

 全部。

 繋げていく。

 この学校なら。

 何が伸びる?

 どこなら。

 投手を続けられる?

 どこなら。

 ショートもできる?

 どこなら。

 もっと強い相手と。

 毎日練習できる?

 自然に。

 そう考えていた。

 

 高校は。

 3年間。

 

 限られた期間で。

 最大限。

 自分を育てる場所。

 

 今の俺にとって。

 それが。

 一番大事だった。

 

 だから。

 

 詩織が昼休みに見せた。

 少しだけ寂しそうな顔の意味を。

 

 この時の俺は。

 

 まだ。

 

 全然。

 分かっていなかった。

 

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