転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第96話

全国大会、準決勝。

 

3対2

 

武蔵野シニアに勝って、決勝進出が決まった。

 

試合が終わってしばらく経っても、身体にはまだマウンドの感覚が残っている。

6回2失点。真田から打った逆方向へのホームラン。そして最後は、黒田のタイムリーツーベース。

 

「成瀬」

 

荷物をまとめていると、黒田が隣に座った。

 

「何?」

「今日の決勝打、誰が打った?」

「黒田」

「よし」

「何の確認?」

「お前がホームラン打ったせいで、全部持ってかれそうだから」

「ちゃんと覚えてるよ」

「ならいい」

 

満足そうに立ち上がる黒田を見て、高瀬が笑った。

 

「最近、自己主張強くなったな」

「4番だからな」

「最初から4番だろ」

「最近やっと扱いが4番になってきたんだよ!」

 

確かに、全国大会に入ってから黒田は何度も大事なところで打っている。

高瀬もそうだ。橘さんも、三上も。

 

俺と玲だけで勝ってきたわけじゃない。

 

当たり前のことなのに、改めてそう思った。

 

◇

 

宿舎へ戻る前、監督からミーティングがあった。

 

「明日の決勝、相手は東海第一シニアだ」

 

部屋の空気が少し変わる。

ここまで来た。あと1試合。

 

「先発は水城」

「はい」

「成瀬はショート。打順は3番。いつも通りだ」

「はい」

 

昨日は玲。

今日は俺。

そして明日は、また玲が投げる。

 

監督が全員を見回した。

 

「ここまで来たら、特別なことはするな。今までやってきたことをやれ」

 

誰も声を出さない。

 

「明日は、このチームでやる最後の試合だ」

 

3年生にとっては、負けても勝っても最後。

少しだけ空気が重くなる。

 

「暗くなるなよ」

 

橘さんが笑った。

 

「まだ終わってねえんだから」

「そうっすよ。勝ってから泣けばいいじゃないですか」

 

黒田が続ける。

 

「お前が言うと軽いな」

「何でですか!」

 

笑いが起きた。

さっきまでの空気が少し戻る。

 

橘さんが俺を見る。

 

「成瀬」

「はい」

「明日も打てよ」

「もちろんです」

「でも、お前だけで決めようとすんなよ」

 

一瞬、意味が分からなかった。

 

橘さんは笑う。

 

「俺たちにも仕事残しとけってこと」

「ああ」

 

それなら分かる。

 

「お願いします」

「任せろ」

 

明日も、みんなで野球をする。

 

◇

 

宿舎へ戻ると、スマホにメッセージが届いていた。

 

詩織。

 

『決勝進出おめでとう!』

 

その下に、もう1通。

 

『今日も楽しかった?』

 

少し笑う。

 

真田との勝負。

ホームラン。

黒田の決勝打。

最後のショートゴロ。

 

全部思い出してから返信する。

 

『うん。楽しかった』

 

すぐに既読がついた。

 

『よかった』

 

それだけ。

でも、なんとなく嬉しかった。

 

少し前までなら、明日の試合のために何時に寝るか、何時間休めるか、今日の疲労をどう抜くか。

そんなことばかり考えていたと思う。

 

もちろん、それも考える。

 

でも、ほんの数分。

詩織とやり取りをするくらいなら悪くない。

 

そう思えるようになっていた。

 

◇

 

夕食後、廊下に出ると玲がいた。

壁に背中を預けながら、スポーツドリンクを飲んでいる。

 

「明日、先発だね」

「うん」

「調子は?」

「普通」

「またそれ?」

「伊織も言うじゃん」

「俺は最近言ってない」

「昨日言ってた」

「……そうだっけ」

 

玲が笑う。

 

少し間が空いた。

 

「今日、ホームラン打ったね」

「うん」

「右に」

「うん」

「すごかった」

「ありがとう」

 

玲は、自分が打ったみたいに嬉しそうだった。

 

「明日も打って」

「玲が抑えて」

「抑えるよ」

「じゃあ打つ」

 

いつものやり取り。

でも、明日は決勝だ。

 

「玲」

「何?」

「日本一になろう」

「うん」

 

迷いのない返事だった。

 

◇

 

部屋へ戻って、システムを開く。

 

【成瀬 伊織】

 

球速 130km/h

コントロール B78

スタミナ   B76

 

ミート B70

パワー B70

走力  C69

肩力  B71

守備力 B76

捕球  B70

 

パワーがBになった。

 

小学生の頃と比べれば、全部伸びた。

打てるようになった。守れるようになった。投げられるようになった。

 

少しずつ、本当に少しずつ積み上げてきた。

 

そして明日は、全国大会の決勝。

 

ここまで育ててきたものを全部使える。

 

そう思うと、自然に口から出た。

 

「楽しみだな」

 

日本一まで、あと1勝。

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