転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第98話

相手は東海第一シニア。

 

派手なスター選手がいるというより、守備と走塁が徹底されているチームだ。大きなミスが少なく、少ないチャンスを確実に得点へ変えてくる。

 

ここまでの試合を見ても、接戦になればなるほど強い。

 

「行くぞ!」

「はい!」

 

先頭に立つ橘さんの声に、全員で応える。

 

城東は先攻。

このチームで戦う、最後の試合が始まった。

 

◇

 

1回表。

 

先頭の橘さんがフルカウントまで粘り、四球を選ぶ。ノーアウト1塁。

 

2番、三上はきっちり送りバント。ワンアウト2塁で俺の第1打席が回ってきた。

 

東海第一の先発は右投手。130km/h前半のストレートに、スライダーと縦の変化球を使う。

 

初球は外角ストレート。

「ストライク!」

 

2球目の低めは見送ってボール。3球目、内角へ来たストレートを振る。

 

カァンッ!

 

高く上がった打球をセンターが捕った。ツーアウト2塁。

 

続く黒田もセカンドゴロ。

初回は無得点に終わった。

 

「次だな」

「うん」

 

まだ始まったばかり。

 

◇

 

1回裏。

 

玲がマウンドへ上がる。

 

先頭打者への初球は140km/h。

バァンッ!

「ストライク!」

 

2球目は141km/h。打者が振る。

カァンッ!

左中間を破られた。

 

いきなりのツーベース。ノーアウト2塁。

 

東海第一の2番は迷わず送りバント。玲が処理してワンアウト3塁。

 

さっそく、相手の形に持ち込まれた。

 

高瀬が一度マウンドへ行き、短く話して戻ってくる。

 

3番。

 

初球の141km/hをファウル。次は少し速度を落とし、最後はチェンジアップ。

 

カァンッ!

 

センターへの大きなフライ。

橘さんが捕る。

 

3塁ランナーがスタート。

 

「セーフ!」

 

0対1。

 

少ないチャンスをきっちり得点に変えてきた。

 

でも、玲は変わらない。続く4番を速い球で追い込み、最後は141km/h。

 

ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 

それ以上は取らせなかった。

 

「1点」

「うん」

「十分」

「分かってる」

 

ベンチへ戻ってきた玲は、いつも通りだった。

 

◇

 

2回表。

 

先頭は5番、高瀬。

 

カァンッ!

 

センター前ヒット。

 

ノーアウト1塁。

 

6番は初球を打った。

 

カンッ!

 

ショート正面。

 

「セカンド!」

 

パァンッ!

「アウト!」

 

そのまま一塁へ。

 

パァンッ!

「アウト!」

 

ダブルプレー。

 

7番もレフトフライに倒れ、チェンジ。

 

走者は出た。

でも、東海第一の守備は簡単に崩れない。

 

◇

 

2回裏。

 

玲は5番から。

 

速い球を2球続けて追い込むと、最後は高速落下球。

 

ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 

6番にも141km/hを意識させ、高速落下球を挟んでから最後はもう一度速い球。

 

空振り三振。

 

7番はセカンドゴロ。

 

三者凡退。

 

初回に1点を取られたことなんて、もう残っていないように見えた。

 

◇

 

3回表。

 

8番がセカンドゴロ。

9番もライトフライ。

 

あっという間にツーアウト。

 

それでも橘さんがセンター前へ運ぶ。

 

「ナイス!」

 

ツーアウト1塁。

 

三上は四球を選んだ。

 

ツーアウト1、2塁。

 

俺の第2打席。

 

東海第一の投手が何度も2塁を確認する。

 

初球の外角ストレートはボール。2球目のスライダーも外れた。

 

ツーボール。

 

3球目、内角ストレートをファウル。

 

ツーボール、ワンストライク。

 

4球目。

 

外角。

 

ストレート。

 

「そこ」

 

踏み込む。

 

振り切る。

 

カァァンッ!

打球は右中間へ。

 

抜けた。

 

「回れ!」

 

橘さんが3塁を回る。

 

ホームへ。

 

「セーフ!」

 

1対1。

 

三上は3塁で止まる。

俺は2塁へ。

 

パァンッ!

「セーフ!」

 

同点のタイムリーツーベース。

 

拳を握る。

 

「ナイス、成瀬!」

 

ベンチから声が飛ぶ。

 

続く黒田は四球。

ツーアウト満塁。

 

追加点のチャンスだったが、高瀬はセカンドゴロ。

 

チェンジ。

 

それでも、試合は振り出しに戻った。

 

◇

 

3回裏。

 

先頭の8番にセンター前へ運ばれた。今日2本目のヒット。

 

ノーアウト1塁。

 

9番は送りバントの構え。

 

玲は速い球を続け、バントをファウルにさせる。

 

ツーストライク。

 

高瀬が低めへ構えた。

 

高速落下球。

 

ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 

4つ目。

 

1番はライトフライ。

2番はショートゴロ。

 

俺の正面。

 

前へ出る。

捕る。

一塁へ。

 

パァンッ!

「アウト!」

 

無失点。

 

1対1。

 

◇

 

4回表。

 

6番から始まる。

 

6番はライトフライ。

7番はセカンドゴロ。

8番もセンターフライ。

 

三者凡退。

 

東海第一の先発も崩れない。

 

◇

 

4回裏。

 

東海第一は3番から。

 

玲は初球から141km/h。

 

空振り。

 

もう一度速い球。

 

ファウル。

 

最後は高速落下球。

 

ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 

5つ目。

 

4番はセンターフライ。

5番はショートゴロ。

 

三者凡退。

 

試合が進むほど、玲のテンポが良くなっている。高瀬のサインを見る時間も短い。

 

《尻上がり》。

 

準々決勝で見せた投球が、今日も始まっていた。

 

◇

 

5回表。

 

9番はショートゴロ。

橘さんもセンターフライ。

三上はセカンドゴロ。

 

こちらも三者凡退。

 

1対1のまま、試合は終盤へ入る。

 

◇

 

5回裏。

 

先頭の6番にセンター前へ運ばれた。

 

今日3本目のヒット。

ノーアウト1塁。

 

7番は送りバント。

 

でも、打球が少し強い。

 

玲が前へ出る。

 

「2塁!」

 

パァンッ!

「アウト!」

 

ワンアウト1塁。

 

走者を進ませない。

 

8番。

 

高速落下球を続けて追い込み、高めの141km/h。

 

ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 

6つ目。

 

9番はセカンドゴロ。

 

三上が処理してチェンジ。

 

5回を終えて、1対1。

 

あと2回。

 

◇

 

6回表。

 

先頭は俺。

 

初球、内角。

 

避ける。

 

バシッ!

 

「デッドボール!」

 

肘のガードに当たった。

 

「大丈夫?」

「うん」

 

ノーアウト1塁。

 

黒田が打席へ。

 

カァンッ!

 

センターフライ。

 

ワンアウト1塁。

 

高瀬がセンター前へ運び、ワンアウト1、2塁。

 

チャンス。

 

でも、6番の打球はショート正面。

 

カンッ!

 

二塁へ。

 

パァンッ!

「アウト!」

 

一塁へ。

 

パァンッ!

「アウト!」

 

ダブルプレー。

 

得点できない。

 

東海第一は、最後まで守備で崩れなかった。

 

◇

 

6回裏。

 

玲の球は、今日一番強く見えた。

 

先頭の1番。

 

141km/h。

 

ファウル。

 

もう一度速い球。

 

ファウル。

 

最後は高速落下球。

 

ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 

7つ目。

 

2番はセカンドゴロ。

 

3番。

 

140km/h。

 

ファウル。

 

141km/h。

 

またファウル。

 

打者の意識が完全に速い球へ寄った。

 

高瀬のサイン。

 

チェンジアップ。

 

ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 

8つ目。

 

三者凡退。

 

あと3つ。

 

◇

 

7回表。

 

先頭は7番。

 

初球。

 

カァンッ!

 

センター前へ抜けた。

 

ノーアウト1塁。

 

8番は送りバント。

 

コツンッ。

 

一塁側。

 

「アウト!」

 

ワンアウト2塁。

 

9番。

 

粘った。

 

でも、最後は低めの変化球。

 

ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 

ツーアウト2塁。

 

橘さんが打席へ向かう。

 

「橘さん!」

 

三上が声を飛ばす。

 

「お願いします!」

 

黒田も続く。

 

高瀬と俺は、何も言わなかった。

 

昨日。

 

橘さんが言った。

 

俺たちにも仕事を残せ、と。

 

だから、ただ見ていた。

 

初球は外角ストレート。

 

ボール。

 

2球目は内角。

 

ファウル。

 

3球目。

低め。

 

振らない。

 

ツーボール、ワンストライク。

 

4球目。

 

外角ストレート。

 

橘さんが振る。

 

カァァンッ!

打球は右中間へ。

 

抜けた。

 

2塁ランナーが3塁を回る。

 

「回れ!」

 

ホームへ。

 

パァンッ!

「セーフ!」

 

2対1。

 

勝ち越し。

 

橘さんは止まらない。

 

1塁を蹴る。

2塁を蹴る。

 

「3つ!」

 

返球が来る。

 

橘さんが滑り込む。

 

ザザァッ!

 

パァンッ!

 

「セーフ!!」

 

タイムリースリーベース。

 

橘さんが3塁ベースの上で拳を握った。

 

「よっしゃあ!」

 

ベンチが揺れる。

 

続く三上への初球。

 

ボールが高く抜けた。

 

バシッ!

 

捕手のミットを弾く。

 

「行け!」

 

橘さんがスタート。

 

ホームへ。

 

ザザァッ!

 

「セーフ!!」

 

3対1。

 

ワイルドピッチ。

 

橘さんが、自分で3点目まで取った。

 

三上はその後セカンドゴロ。

 

チェンジ。

 

ベンチへ戻ってきた橘さんを、全員が迎える。

 

「ナイスです!」

「さすがっす!」

 

俺も手を出す。

 

パンッ!

 

橘さんがそのまま俺の肩を軽く叩いた。

 

「言っただろ」

「何がです?」

「仕事残しとけって」

「……本当に決めましたね」

「先輩だからな」

 

橘さんが笑う。

 

「お前、最近右にも打つようになったよな」

「はい」

「だったら全部使えよ。右も左も真ん中も」

 

少し前にも聞いた言葉。

 

グラウンド全部。

 

「全部使える打者になれよ」

 

橘さんはグラウンドを見る。

 

「野球も、お前1人でやるもんじゃないからな」

 

今日、俺が同点にした。

 

玲が抑えた。

 

でも、勝ち越したのは橘さん。

 

少しだけ間を置いて答える。

 

「……はい」

 

3対1。

 

日本一まで、あと3つ。

 

◇

 

7回裏。

 

玲がマウンドへ向かう。

 

俺はショート。

橘さんはセンター。

高瀬がマスクを被る。

 

いつもの守備位置。

 

でも、このメンバーで守る最後のイニング。

 

先頭は4番。

 

初球の141km/hを捉えられた。

 

カァンッ!

センター前。

 

今日4本目のヒット。

 

ノーアウト1塁。

 

スタンドの音が大きくなる。

 

玲は変わらない。

高瀬もタイムを取らない。

 

5番。

 

141km/h。

 

空振り。

 

高速落下球。

 

ファウル。

 

ツーストライク。

 

最後も高速落下球。

 

ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 

9つ目。

 

ワンアウト1塁。

 

6番は初球を打った。

 

カァンッ!

 

ライト。

 

「オーライ!」

 

捕球。

 

ツーアウト。

 

あと1つ。

 

7番。

 

初球、141km/h。

 

「ストライク!」

 

2球目は140km/h。

 

ファウル。

 

ツーストライク。

 

高瀬のサインに玲が頷く。

 

高速落下球。

 

カンッ!

 

バットに当たった。

 

打球はショートへ。

 

俺の正面。

 

前へ出る。

捕る。

一塁へ。

パァンッ!!

ボールがファーストのミットに収まる。

「アウト!! ゲームセット!!」

 

一瞬。

 

何も聞こえなかった。

 

そのあと、一気に音が戻ってきた。

 

「うおおおおおお!」

 

ベンチから全員が飛び出す。

 

俺も走った。

 

マウンドの玲へ。

 

高瀬が玲に抱きつく。

黒田がその上から飛びつく。

 

三上も。

橘さんも。

 

みんな。

 

「日本一だ!」

 

誰かが叫んだ。

 

3対1。

 

全国大会決勝

 

東海第一シニアに勝った。

 

城東シニア。

 

全国優勝。

 

日本一。

 

玲は7回4安打1失点。

四球0。

奪三振9。

 

俺は2打数1安打。

二塁打1本、1打点、死球1。

 

これで全国大会の打撃成績は、

 

13打数10安打。

打率 .769。

二塁打5本。

本塁打2本。

打点8。

 

そして。

 

日本一。

 

◇

 

整列を終えたあと。

 

橘さんが少し離れたところでグラウンドを見ていた。

 

「橘さん」

「おう」

 

目が少し赤い。

でも、それには触れなかった。

 

「最後、すごかったです」

「最後くらい先輩に決めさせろよ」

「決めましたね」

「だろ?」

 

橘さんが笑う。

 

「成瀬」

「はい」

「楽しかったか?」

 

答えはすぐに出た。

 

「楽しかったです」

 

橘さんがもう一度笑う。

 

「ならいい」

 

それだけ言って、みんなのところへ戻っていった。

 

俺も、その後を追う。

 

全国大会。

 

日本一。

 

その瞬間。

 

能力値のことは、考えていなかった。




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