転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第99話

「城東シニア、優勝!」

 

アナウンスが球場に響く。スタンドから大きな拍手が送られる中、俺たちはホームベースの前に並んでいた。

 

全国大会決勝。3対1で東海第一シニアに勝った。

 

全国優勝。日本一。

 

分かっているのに、まだ少し変な感じがする。

 

「成瀬」

「何?」

「顔」

「顔?」

「もっと嬉しそうにしろよ」

「嬉しいよ」

「見えねえ」

「黒田こそ固いけど」

「マジ?」

 

慌てて口角を上げる黒田を見て、思わず笑った。

 

「それ変」

「お前が笑えって言ったんだろ!」

 

前にいる高瀬の肩が揺れている。聞こえてる。

 

◇

 

表彰式。

 

名前を呼ばれ、橘さんが優勝旗を受け取りに前へ出る。大きな拍手の中、優勝旗を手にした橘さんが振り返った。

 

ニッ。

 

いつもの笑い方。

 

「橘さん、決めたな」

「うん」

 

隣の黒田が小さく言った。

 

最後の試合。勝ち越しのタイムリースリーベースを打ち、そのままワイルドピッチで3点目のホームまで帰ってきた。

 

最後に決めたのは3年生。

 

なんだか、それがよかった。

 

◇

 

表彰式が終わると、そのまま記念撮影になった。

 

「3年生、前! 2年、後ろ詰めろ!」

 

監督の声に従って、俺は玲の横へ入る。

 

グイッ。

 

後ろから押された。

 

「ちょっ」

「入らねえんだよ」

「押さなくても入るでしょ」

「成瀬細いからいける」

「意味分かんない」

「伊織、こっち」

「ありがとう」

「水城まで俺を邪魔者みたいに扱うなよ!」

 

玲が少し横へずれる。

 

「黒田、前見ろ!」

「はい!」

 

全員が前を向く。

 

優勝旗。メダル。ユニフォーム。

 

「撮りますよー!」

 

カシャッ!

 

もう一枚。

 

カシャッ!

 

「はい、OKです!」

 

撮影が終わってから、スマホに届いた写真を見る。全員、笑っていた。

 

俺も。

 

思っていたより、ちゃんと笑っていた。

 

◇

 

グラウンドを出る前、橘さんがセンターの守備位置まで歩いていった。俺も少し遅れて追いかける。

 

「橘さん」

「おう」

 

橘さんが足元の土をスパイクで軽く蹴る。

 

ザッ。

 

「ここで最後か」

「ですね」

「あっという間だったな」

「俺はまだ2年ですけど」

「来年、お前も同じこと言うよ」

「そうですかね」

「言う言う」

 

橘さんが笑う。

 

少しして、高瀬、黒田、三上、玲もやってきた。3年生も集まる。

 

「お前ら、来年連覇しろよ」

「任せてください!」

「お前が言うと不安だな」

「なんでですか!」

 

黒田の返事に笑いが起きる。

 

橘さんは高瀬を見る。

 

「キャッチャー、頼んだぞ」

「はい」

「三上、内野も」

「はい!」

「玲、来年も抑えろ」

「うん」

 

最後に俺を見る。

 

「成瀬」

「はい」

 

ポンッ。

 

肩を叩かれる。

 

「全部使える打者になれよ」

「はい」

「あと、1人で全部やろうとすんな」

「……はい」

 

今日の試合。俺が同点にして、玲が抑えた。でも、勝ち越したのは橘さんだった。

 

その前に塁へ出た7番もいる。送った8番もいる。守ったみんなもいる。

 

1人じゃ、日本一にはなれなかった。

 

「分かりました」

「ほんとか?」

「多分」

「多分かよ」

 

バシッ。

 

今度は背中を叩かれた。

 

「痛っ」

「来年頑張れ」

「はい!」

 

先に歩いていく橘さんの背中へ、今度は大きな声で返した。

 

◇

 

宿舎へ戻るバス。

 

さっきまで騒がしかった車内も、今は静かだった。寝ている選手もいる。

 

隣では玲が窓側で目を閉じている。

 

俺はスマホを開いた。家族や学校の友達から通知がいくつも並んでいる。

 

その中に、詩織。

 

『日本一おめでとう!』

 

すぐに返す。

 

『ありがとう』

 

少し考えて、もう一つ。

 

『今日も楽しかった』

 

送信。

 

ピコン。

 

すぐに返ってきた。

 

『知ってる笑』

 

「……何で」

 

思わず声が出た。

 

玲が少しだけ目を開ける。

 

「何?」

「何でもない」

「そう」

 

また目を閉じた。

 

『なんで分かるの?』

『試合見てたから』

『最近、野球してる時すごく楽しそう』

 

指が止まる。

 

最近。確かにそうかもしれない。

 

勝ったから。打てたから。能力が上がったから。

 

それもある。

 

でも、真田との試合も今日の決勝も、結果が出る前から楽しかった。

 

『そっか』

 

少しして返信が来る。

 

『うん。なんか安心した』

 

安心。何に?

 

聞こうとしたけど、やめた。窓の外へ目を向けると、街の景色が流れていく。

 

そのままスマホを閉じた。

 

◇

 

夜。

 

部屋に戻り、ベッドへ座る。机の上には金色のメダル。

 

手に取る。

 

ずしっ。

 

思ったより重い。

 

首に掛けて鏡を見る。

 

「……日本一か」

 

今度は、少し実感があった。

 

ピコン。

 

視界の端にシステムが浮かぶ。

 

【全国大会が終了しました】

【大会成績を集計します】

 

画面を開く。

 

【打撃成績】

 

13打数10安打

打率 .769

二塁打 5

本塁打 2

打点 8

四球 2

死球 1

 

「……10安打」

 

1回戦から決勝まで。真田から打った逆方向へのホームラン。今日の同点ツーベース。

 

数字にすると、全部並ぶ。

 

【投手成績】

 

12回

被安打 10

失点 3

与四球 1

奪三振 13

 

打って、投げて、守った。

 

そして、日本一。

 

悪くない。

 

いや、かなりいい。

 

【経験値を獲得しました】

【各能力に経験値が加算されます】

 

数字が並び始める。

 

いつもなら、そのまま最後まで見る。どれだけ上がったか。次はどこを伸ばすか。効率がいいのはどこか。

 

ドンドンドンッ!

 

「成瀬ー! 集合写真撮るぞー!」

「さっき撮ったでしょ!」

「宿舎でも撮るんだよ! 早くしろー!」

 

システムを見る。

 

まだ通知は続いている。

 

「続きはあとでいいか」

 

画面を閉じる。メダルを机に置き、ドアを開けた。

 

「遅い!」

「今行くって」

 

廊下の向こうでは、みんなが騒いでいる。

 

俺もそこへ向かう。

 

数字は、あとからでも見られる。

 

今日のこれは。

 

今しかない。

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