一日ごとにTSするなら男女二役VTuberになれるんじゃね?   作:ディスコ

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元の顔が悪いのに美少女になった

「元の顔悪いのに美少女になってる!?!?」

 

 朝起きて美少女になっていた俺が第一声で発した感想がソレだった。驚愕よりもツッコミが勝ったと言ってほしい。

 

 だが皆もそう思わないだろうか。

 性別が変わる現象──所謂TS。

 お決まりは美少女になる展開だが、単に性別が入れ替わるだけなら元の顔のDNAが採用していないとおかしな話だと思うのだ。

 

 別人に成り替わるのならともかくあくまで自身の遺伝子が異常を起こしたという事象であれば、イケメンでもない限り美少女になるのは道理が無い。

 

「……どうしよう。戸籍とか大丈夫なのかな。こういう時の手続きって役所で合ってる? まずは病院に行くべきか? え、何科? 何科に行けばいいの?」

 

 別にどこか体が悪いというわけではないので、わざわざ病院に行って恥をかくようなことをしたくないというか……誰がこんな症状信じてくれるんだよ。

 

 うん……一旦明日考えよう。

 まずはそうだな……自分の容姿を改めて見るか。

 

「うおっ、まつげ長。腰ほっそ、乳でっか」

 

 俺の元の顔は、下の上あたりの黒髪中肉中背の青年……といった感じだが、美少女になった俺はなんと髪の色まで変わっていた。

 金髪ロングに赤い瞳。浮世離れした美しい顔立ちと抜群のプロポーション。

 

 明らかに日本人には見えないが、今まで見てきた人間の中で最上級に美しいことだけは確かだった。

 

「……うぅむ、なんだろう。自分の体の一部だからか、こんな美少女のおっぱいを触っても別に興奮することは無いな」

  

 むにむに、むにょむにょ。

 何も感じない。

 

「まさか……」

 

 ハッ!? もしや性的嗜好まで変わっている!?

 危機感を覚えた俺は慌てて秘蔵のエロフォルダを開いたところ、無事にムラムラしてきたのでホッと胸をなで下ろした。

 そう簡単に俺の凝り固まった性癖が変わるわけねぇよな。

 

「ら〜、ら〜♪」

 

 すげぇ美声。若干アニメ声ではあるけど。

 ボイトレなんて人生で一度もしたことがないのに、まるで手足のように声質や声音を自由自在に扱うことができた。

 

「TSの付属部品みたいな感じか? 女性ボーカルの曲が歌えるようになるのはシンプルに嬉しいかもしれん」

 

 カラオケで無双する道もあるか。

 いやでも別に露出したいわけじゃないんだよなぁ……良い感じにTSしたことを上手く使ってお金稼ぎとかできないもんだろうか。

 

 モデルとか俳優とかそういうのは無しで。

 顔を晒したくないからインフルエンサーも無し。シンプルになるのが難しそうだから声優も無し……んでもって声が使える職業……まあ、今はそこまで考える必要も無いか。

 

「とりま飯食って不貞寝しよ。病院は明日行くということで」

 

 俺は適当にそこら辺にあったカップラーメンを食べ鬱陶しい髪を輪ゴムで束ねると、何も考えたくなかったのでそのまま現実から目をそらすような床についた。

 

☆☆☆

 

「戻ってるやんけ。夢……でもないか」

 

 目が覚めると前髪に輪ゴムの張り付いたオスがいた。

 朝起きてすぐにオスたる主張もしっかりしていて、どこからどう見ても何の変哲もない俺でしかなかった。

 

 夢じゃないかと疑った俺だが、日付はしっかりと1日経っている上に記念に自撮りした写真もしっかりフォルダに残っていた。

 男に戻った今ならTSした俺で抜けるんじゃないかと思ったが、残念ながら微塵も興奮しなかったのでやはり夢や幻覚の線は無さそうである。

 

「少し残念、か。こうなるんだったらカラオケにでも行っておくべきだったかなー。ま、病院に行かずに済むんだったらそれで良いか」

 

☆☆☆

 

「うせやん」

 

 次の日、俺はまた美少女になっていた。

 情報は足りていないが何となく察することはできた。

 

「これ、もしかして1日おきにTSするやつか?」

 

 う、うおおお……人間関係が面倒になる!

 いや待て判断するのはまだ早い。

 

 もしかしたら症状が安定していないだけの可能性もあるし、一縷の希望を信じて病院に行こう。

 そう思った俺は重い腰を上げて家を出る。

 

 総合病院は近所にあるから、徒歩で済む。

 目線の高さも歩幅も違うから微妙に歩きづらいが、文句ばかり言っても事態が進展するわけでもない。

 

 内心で舌打ちをしながら病院にたどり着くと、なぜかやけにジロジロと不躾な視線が飛んでくるのを感じ取った。

 その中には粘質を纏ったゾワッとする視線もあった。

 興味本位でその方向を向くと、ハゲヅラのおっさんがニタニタと笑みを浮かべて俺のおっぱいを死ぬほどガン見していた。

 

 

 ──いや分かるでぇ……見ちゃうよなぁ……。

 気持ちが分かるから気持ち悪いとは思え……思え……まあ流石にガン見すぎるし笑みがヤバすぎるからキモいわ。

 

 もっと隠れて見る努力をしようや。

 目がチンコって表現をネットで聞いたことあるけど、まんまそれやね。

 

「本日はどうされましたか?」

 

 おっさんから視線を外すと、ニコニコと笑みを浮かべる受付のお姉さんが俺に話しかけてきた。

 ……とりあえず正直に言うか。

 最悪精神科医を紹介されたとしても、ちゃんと理論立てて説明すればなんとかなるだろ……。

 

「あのぉ……その、目が覚めたら性別が変わってまして……しかも1日おきなんですよ。男と女の日を繰り返すみたいな感じでしてぇ……」

 

 随分と情けない説明の仕方になってしまった。

 流石にヤバいヤツを見るような目で見られるか……と思いながら受付のお姉さんの表情を見ると、彼女はサッと顔色を青くさせて急いでどこかに内線電話をかけると札を渡してきた。

 

「えぇ、えぇ、恐らく、はい。今朝方あがってきた症例かと。はい、一億人に一人の……はい、すぐ案内します」

「えと……」

「札の番号に該当する科の待合室でお待ちください。すぐに担当の者が来ますので、あとはそちらの指示に従ってください」

 

 テキパキとパソコンを操作すると、お姉さんは営業スタイルを浮かべて俺の保険証を返してきた。

 何がなんだかよく分からないまま言われた通りの番号の場所に向かうと、すでに待っている人がいたのにも関わらずすぐさま診察室に案内された。

 

 

☆☆☆

 

「うん、体内で何らかの力が働いて睡眠時に遺伝子異常が起こる病気だね。原因は不明。治療法は無し。日本でもようやく医学界に認知され始めた極めて珍しい病だよ。行政への報告はしておくから、後日手続きの書類が家に届くと思う。それを郵送してくれれば大丈夫だよ」

 

 酷く簡潔にあっさりと診断された。

 死ぬほど珍しい病気だが、先駆者がいるらしい。

 

「あの、何か健康に異常があったりとかは」

「無いよ。むしろ遺伝子異常が起こると健康体になる」

「えぇ……なんか、こうしろとかああしろとかは」

「無いよ。国から色々な配慮をされるし」

 

 性別が変わることさえ許容すれば良いこと尽くしらしい。問題はTSを許容できる人間がこの世にほとんどいないということだが……俺は許容できる。

 

 嬉しいとかは無いけど悲しいも無い。

 愛するムスコは1日経てば戻ってくるし。

 

「えと、じゃあありがとうございました」

「お大事に〜」

 

 極めて珍しい割にはあっさりしてんなコイツ。

 病院から無事に出た俺は、その足でコンビニに寄って食料を買い込むと家に帰る。

 

「これからどうしようかな」

 

 俺はフリーターである。

 就職浪人とも言うけれど、特段未来に希望も夢も無い。

 それなりにお金を稼ぎたいけど働きたくないとも思う。

 

「そういえば露出も無くて声でいける職業と言えば──VTuberがあったな」

 

 VTuber──バーチャルミーチューバーの略。

 イラストレーターの描いたイラストをモデリングして魂を宿し、そこに声を乗せて配信をする若者に大人気の職業(?)。

  

「……1日おきにTSする。お金を稼ぎたい」

 

 俺はふとそこで思った。

 1日も無駄にすることなく2倍金を稼ぐ方法を。 

 

「男女二役VTuberできるんじゃね??」

 

 

 そう、大手のVTuber事務所に入ることさえできれば、たとえ人気が出なくても基本給みたいな形でお給料が出るらしい。

 なのであれば、俺(♀の姿)単体でデビューするよりも俺(♂の姿)と二役でデビューしたほうが明らかに金を稼げる。

 

 

「よっしゃ!!! そうと決まれば早速応募じゃ!!」

 

 

 

 

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