【TS】親友に騙され殺された俺は、復讐のために今日も人型兵器でスコアを稼ぎます〜なので俺に付き纏わないでください女エースさん〜   作:⅕夜城

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EP.01 兆し、それは亡霊の如く

 

 

 

『クソ!見えない!』

『早く逃げろ!!反撃するな!』

『司令部!敵だ!〈亡霊〉が出たッ!位置は—————』

 

 爆光。

 

 赤茶けた巨大な谷間を、不恰好な編隊を組んでいた灰色の人型兵器、内の1機が爆散する。

 すれ違いざまにそれを起こした影……黒い人型兵器は、紅いバイザーを煌めかせ、反転。

 再び編隊へと急速に接近する。

 

『く、来るなぁ…!』

『バカ!反撃したらお前から…』

 

「……墜ちろ」

 

 

 仲間の制止も聞かず、怯えたように黒い機体へビームライフルを発射する1機の人型。しかし、刹那の間を置き一閃を以て両断された。

 今度は爆発は起こらず、2つに分たれた人型は静かに落下していく。それを見下ろし、黒い機体は紅いビームセイバーを残った機体群へ向け、告げる。

 

「悪いな、支配領域に侵入された以上、俺はお前らを見逃すことはない。恨んでくれるなよ」

『なっ…女、それも子供の声だと』

「だからなんだ、女のエースパイロットなんていくらでもいるだろ。……何か言い残すことがあれば聞くぞ」

『ッ…!バカにしやがって…!』

「いやバカにはしてない。ただ根拠に基づく極めて可能性の高い未来を———」

『死ね!』

 

 叫びと同時、灰色の機体達は一斉にビームライフルを発射。4機から放たれた光条は、しかし当たらず空の彼方へと遠ざかっていく。

 対する黒い機体は、既に編隊の上方にあった。

 

「〈レヴナント〉より司令部。侵攻中の敵編隊をポイントV7Rで捕捉。恐らく先遣隊だ。後続の部隊はまだ見えてないが、迎撃機を上げておいた方が良い」

『司令部了解。くれぐれも無理はするなよ』

「はっ…誰に言ってやがん…だッ!」

 

 

 言いながらの、急加速。

 重力にスラスターを合わせた高速度で一気に敵編隊へ突貫を行う。

 

『う、撃てッ!!』

「そんなヘナヘナ弾に当たるか」

 

 迫り来る応射を気に留めることなく、瞬く間に編隊内部へ侵入した彼女は斬りかかってきた1機をカウンターで両断。

 その勢いを殺すことなく機体を振り向かせ、射撃しながら離脱する。

 百発百中とまでは行かずとも高精度で放たれた紅い光条は、2機の灰色の機体を穿った。

 

『何ッ…』

『こ…ん…』

 

『クソ!お前ら!!』

 

 残された1機は激昂したように、がむしゃらにレヴナントへ斬りかかる。しかし、レヴナントは軽快な動作でこれを回避。反対に、勢い余って動きが一瞬止まった隙へ攻撃を差し込んだ。

 

『バカ、な…』

「あばよ」

 

 動力炉をビームセイバーで貫かれた灰色の機体は、人間が脱力した時のように四肢を下へ垂らし、レヴナントが蹴り下ろすと重力に従って落下していった。

 それを見送ったレヴナントは、上へ視線を向ける—————

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()頃、この世界には未だ平和が残っていた。

 2つの勢力に分たれた中であっても、辺境の訓練基地では日常が流れ、彼———〈レン・アーセナル〉と、親友の〈アルザ・フレイメン〉は互いに競い合い、切磋琢磨していた。

 

『今日こそ負けねぇ!』

『3連敗だろ、良い加減諦めたらどうだ?』

『負け越してる癖によく言う!』

 

 ある訓練ではどちらが先に標的を撃墜できるか競い、またある訓練では所定の動作をいかに素早く行えるかを。

 座学においても例外は無く、試験が返却されると決まって2人は答案用紙を見せ合い、毎回片方が、或いは両方が床に崩れ落ちた。

 

 

 ……同時に、2人は恋のライバルでもあった。

 〈ウィンディ・スロウ〉。彼らのいたクラス、ひいては学年全体のマドンナと称された金髪の美少女で、その美貌は〈連邦〉の兵役志願募集のポスターにすら使われるほど。

 

 年頃の彼らが惚れるのも無理はなかっただろう。

 

 また、レン、アルザの両者は共に容姿に優れ、実技、座学双方でトップクラスに君臨していたため、アプローチを掛けるのが比較的容易であったことも拍車をかけたと言える。

 放課後は毎回3人で過ごし、どちらかがウィンディと2人きりなった際はそう言った雰囲気になることもあったし、もう片方が妨害することもあった。

 

『やっほーレン』

『げっ…』

『ぶはっ、何だよその顔』

 

 それでも最後は、決まって笑顔を浮かべ寝床に就く。

 

 ……など、レンとアルザは順風満帆という言葉が相応しい生活を謳歌していた。

 

 

 しかし、その平穏は容易く崩れ去る。

 

 

『〈帝国〉が連邦に宣戦布告してきたらしい』

『じゃあ、俺たちもか』

 

 

 対立していた2勢力の中心たる、連邦と帝国による開戦。丁度訓練過程を終えた2人も、実戦へ出ることとなった。

 

 

 

 

 

 そしてそこで、レンは死んだ。親友であったはずのアルザに撃たれて。

 

 

『ある…ざ?なんで…』

『ずっと…ずっと目障りだった。お前さえ居なければ、全部上手くいってたのに……さよならだ』

 

 

 レンの死は、動力炉の暴走によるものとして記録され、以後語られることはなかった。

 

 ……しかし、〈彼〉は死んでなどいなかった。

 

『おめでとう、君は生まれ変わったのだ』

『これが、俺…』 

 

 無論、心臓を中心とする身体機能は紛れもなく死んだと言える。だが、彼の自我を司る脳そのものは、機体との神経接続によってかろうじて生かされており……ある強化人間計画の実験台となった。

 

〈アイアンブロッサム〉計画。

 

 人工義体に兵士の、それも体が動かなくなった者の脳を移植し、再び兵士として使う試みは、結果として成功を収める。女性体が選ばれた理由は、多用途任務に都合が良いだけでなく、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 無論代償として、彼はレン・アーセナルの名前を捨てる(殺す)こととなった。

 

 今の彼女の名は、〈ハルカ・ガントレット〉。またの名を、レヴナント(亡霊)である。

 

 

 

 

 

 

 「来たか」

 

 黒髪の隙間から覗く紅い瞳が、陽光を背に迫る「それ」を捉えた。

 

 

 ……数瞬後、ビームセイバーのスパークによる眩い閃光が、辺り一帯を照らし出した。

 上方から一気に斬りかかった〈灰色に黄土色を備える機体〉は、セイバーを押し込みつつ通信回線を開く。

 

『貴様がバンドノフの亡霊か』

「……一応そう呼ばれてるらしいな。二つ名にあまり興味はないが」

『……子供だと』

「おいこの(くだり)さっきもやったぞ」

 

 一際強く光が走り、両者———〈ドラグナー〉とレヴナントは一度距離を離す。

 互いに一切の油断は見せず武器を構え、されど対話を拒否するまでは至らない。

 

『亡霊の中身が少女とは…まぁ良い。強さに偽りがないなら、誰であろうと関係ない』

「……そうかい」

『だが、一つだけ問いたい。なぜ貴様は戦っている?家族のためか?或いは————』

「復讐だよ」

『何?復讐?』

「あぁ、復讐だ。俺には殺したい奴が1人いる。そしてソイツは今、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。もちろん、相応の守り———力押しではまず不可能なレベルを固めてだ。だから奴を殺すには、上に成り上がり、近づく必要がある。後信用も必要だ、だから俺は名乗りたくもないレヴナントを名乗って、ネームドとして戦う。そうすれば、いつかは絶対に届くと信じてな」

 

 

 吐き捨てるように言い切り、ため息を吐くハルカ。彼女の顔には苦々しい表情が浮かんでいる。視線は目の前の敵機に向いたままではあるが、その瞳には戦闘意欲以上に憎悪が燃えていた。

 

 

『……なるほど。理解も納得も出来た、感謝する。…その上で提案なんだが、我々の軍に来ないか?』

「はっ…断るに決まってんだろ。じゃなかったらとっくに寝返ってるよ」

『ふっ、まぁそうだろうな。察するに、先ほど貴様が述べたモノ以外にも戦う理由があるのだろう?』

「肯定だ。小っ恥ずかしくてとても言えないけどな」

 

 

 しばし、両者の顔に軽い笑みが浮かぶ。だが、数秒も経たないうちに緊張へと戻った。

 

「……で、だ。〈ルンブ帝国〉の……ドラグナーだったか?アンタは俺の邪魔をする、敵か?」

『そうだな、個人的には放置しておけば内部崩壊を誘発してくれそうな貴様は生かしておきたいが、生憎司令部からは遭遇した連邦軍機は全て撃墜しろと命令されている』

「だったら敵だな、単純で分かり易い……行くぞ」

『……始めよう』

 

 

 ドラグナーの言葉が終えるのを待たず、一瞬で縮まる距離。

 紅いビームセイバーと黄色いビームセイバーが交わり、離れ、また交わった。

 

 ∞の軌道を描きつつ、両者は一心不乱に相手の胴へ、脚へ、頭へ斬り込み、又は受け止める。時折ビームライフルの光条、或いは蹴りを主とする殴打も用い、レヴナントとドラグナーは互いに極限の集中を以て相対する。

 

 ……舞踏会の如きそれは、しかし長くは続かない。

 

『貰った!』

「ッ!!」

 

 レヴナントの振るったビームセイバーが空を切った隙をついて、ドラグナーは下段から思い切り切り上げる。

 対するレヴナントは辛うじてシールドで胴体への損傷を抑えるが、ビームライフルの数倍の粒子密度を持つビームセイバー相手に長くは保たない。稼げるのは精々2秒———そう判断したレヴナントは、直ちにシールドの接続部をパージ、同時にバックブーストを行う。

 

 結果、シールドを犠牲にする形で、回避に成功した。

 

「っぶねぇ…」

『…まさか、あそこから抜けられるとはッ!』

 

 

 一泊おき、再度衝突。シールドを失った事でやや消極的になったレヴナントに、ドラグナーは猛攻を仕掛ける。

 セイバーとセイバーが交わるたびに閃光が発し、また特徴的な音が谷に木霊す。双方が地面へ降りてもなお、それは続いた。

 

 

 剣閃に次ぐ剣閃。

 

 

 そして決着は——————意外な形で着くこととなった。

 

 ドラグナーの猛攻を耐えつつ、徐々に反撃を織り交ぜ始めるレヴナント。彼女の狙う時は、唐突に訪れる。

 

『なッ!?』

「ハァッ!!」

 

 直角ではなくほぼ平行にぶつかったビームセイバー同士が、滑る。

 

 ……勝敗を分けたのは、それを想定していなかったドラグナーと、()()()()()()()()()()の差。

 

 

 肩口から袈裟に大きく裂傷を負ったドラグナーに対し、レヴナントは無傷でその前に佇んでいた。

 

 

 

『ハハッ…これはしてやられたな』

 

 

 ———————爆発。

 

 

 

 「……アンタも強かった」

 

 炎上する機体を前に、コックピットの中で敬礼を行い呟くハルカ。

 

 

 手を下ろすと視線を外し、用は済んだとばかりに立ち去ろうとした……その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

『ねぇハルカ?まだ戻らないの?』

「……げ」

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