【TS】親友に騙され殺された俺は、復讐のために今日も人型兵器でスコアを稼ぎます〜なので俺に付き纏わないでください女エースさん〜 作:⅕夜城
数十分後。
俺は自らの所属する基地————空中空母〈アトラス〉へと帰還していた。全長1000mを超えるアトラスは、高度3000m前後を常に移動しているため、俺含め多くのエースパイロット…〈ネームド〉達がその籍を置いている。
固定基地だと特定の地方でしか活動がしにくい上、襲撃を受けた際の脆弱性を考えたらまぁ当然だ。
そして俺が、ここにハルカ・ガントレットとして配属されたのは2年前。
当初は戦争を知らないガキが来たとバカにされたモノだが、今は違う。
「嬢ちゃん、今日もお疲れィ」
「ありがと、おやっさん」
ヘルメット片手に機体から飛び降りると、整備士長の筋肉ダルマが労ってくれる。周囲の整備士達もまた同様に、顔を煤で汚しつつ挨拶してくれた。
金属音や機械音響くアトラス艦内には、他にも様々な人間がいる。
機体をボロボロにしたパイロットへ小言を言う者。雑用させられている人型…〈
また同様に、
……刹那、格納庫に轟音が響いた。
見やると、着艦口から侵入してきた蒼いAFが、拘束装置を用いずに脚部スラスターで急制動を行い、着艦。
…あれはどやされるな。
「あんの馬鹿野郎!物資吹き飛ぶだろうが!!」
案の定、整備士長が怒鳴り声を上げながら蒼いAFへと近寄っていく。
ちなみに今帰艦した奴の名は〈ドネイル・バルスン〉。
加えて、俺含む女性陣にしばしば言い寄るのでそこそこ嫌われてたり。でもどこか憎めないのもまた事実……あ、降りた途端ぶん殴られてやんの。
まぁ、ドネイルだけじゃなくて他のネームドも、ぶっちゃけ
「あ!居た!あなたどこほっつき歩いてたのよ」
「噂をすれば出やがったな」
格納庫から繋がる通路で、一番癖強い奴にちょうどばったり会ってしまった。
「噂?まぁ良いわ、今日こそ付き合ってもらうわよ!!
「いやだ」
「拒否権はないわ!」
め、めんどくせぇ…
目の前でフンスを鼻息を吐く、赤髪赤目の少女。
コイツはこのアトラスに所属するネームドの中では最強と謳われる、
「あなたにだけまだ勝っていないもの!勝つまでやるわ!」
「はぁーーーー………あのな?別に俺に勝ってないと言ってもカミノがアトラスで最強ってのは共通認識だぞ?なんでそこまで…」
「私が尋常じゃなく負けず嫌いなのはあなたもよく知ってるはずよ?」
「……まぁ知ってるけどさ」
さて、この程度の会話でも、なぜ俺が天使と呼ばれることに疑問を抱いているかわかっただろ?
……超が何個つくかわからないほどの負けず嫌いなのだ。コイツは。どう考えても天使じゃない。
有名な具体例で言えば、狙撃によって機体を損傷させてきた敵部隊を三日三晩追い回して降伏させたとかだろうか?
で、そのカミノに申し込まれた模擬戦で勝っちゃったのが俺ってわけ。まぁその後は大変だった。
《もう一回よ!!認めないわこのままなんか!!》
《は…?嘘だろ…?》
こっちは2度とやりたくないレベルで疲弊したのに、撃墜判定後もピンピンしてたコイツは幾度となく俺の模擬戦を申し込んできた。
最近では模擬戦関係以外でも付き纏ってくるし……
後は、本気で嫌なとこまで踏み込んでこないのが余計いやらしい。そのせいでこっちも強く突き放せずにズルズルと来てしまっている。
「さぁ!やるわよ!」
………やっぱり一回ガツンとやるのもアリだろうか。……軽く試してみるか?
「黙ってどうしたの?負けるのがこわ—————」
「……おい」
「へ?」
出来るだけ声を低くし、俺はカミノの顔の脇へ片手を突く。幸い身長はこちらが5cmばかり高いため、威圧感は十分のはずだ。
そして、耳元へ口を近づけて言葉を紡ぐ。
「お前良い加減にしろよ?いつもいつも……っておい?」
「っ…あ…」
あれ、なんか顔赤くなって目回しちゃった。おーい。
◇
結局、あの後カミノは顔を赤くしたまま自室に戻っていってしまった。威圧による対応はひとまず成功と判断して良いだろう。
……と言った旨の話を、俺は食堂のテーブルで対面に座る青年に話す。白髪に紫の瞳を持つ彼は、
しかし、話を聞いたグリムは目を細め、呆れたような表情を俺に向けてくる。
「いや…カミノちゃんが照れただけじゃ?」
「そんなわけないだろ…壁ドンという行為はそれなり、いや相当好感度の高い相手以外から受ければ恐怖心しか湧かないはずだ。加えて俺とカミノは同性。プライベートを侵害したわけでもないのに羞恥や気恥ずかしさが顕現するとは考えにくい」
「それはキミの知識が偏ってるからだと思うなぁ…」
キミってそういうとこあるよね。と言われ、どうにも釈然としない気持ちになる。
仮に本当に照れていたんだとするならば、茶化したり誤魔化したりするモノだと思うんだが。これも俺の偏見か?
まぁ、かといってあの反応に対する適当な理解に及んでいないのも事実だが。
「後あれだよ、キミは顔が良すぎる。たとえ同性でも整った容姿の人間かつある程度好感を抱いているなら、照れてもそこまで不思議じゃないと思うなぁ」
「……なる…ほど」
「うん、分かってなさそうだね」
確かに、俺の容姿が整っているのは客観的に見ても事実だろう。この義体の用途の一つに、美貌を生かして敵から情報を得る……ハニートラップが含まれているからだ。
……俺がこの義体を選んだ理由の一つでもあるしな。
優れた容姿というのは、間違いなく武器になる。いずれ遺伝子操作などで自在に変えられるようになるだろうが、少なくとも今の世界に於いては有効と言える。
ただ、それとこれとは話が別だ。
例え整った容姿の人間から迫られたとしても、行動、言動、表情次第では反応は全く別のものになるはず。その上で、先ほど俺が行ったのは威圧だ。
恐怖や怯えには繋がれど、照れに繋がるとはとても思えない。
いや、世の中には一定数
ひとまず他者によらない方法でカミノを撃退できた初事例として記憶しておこう。今後同様のことがあれば近似の手段を用いて対応だな。
無論、適応された場合はもっと苛烈に出る必要があるかもしれん。ただ明確な暴力沙汰には出来ないし、したくない。違う方向からアプローチすることも視野に入れておくべきだろう。
実行できる手段は……
と、俺の思考が深みにハマりそうになった時、グリムがお茶をあおったと思ったら別の話題を振ってきた。
「……そう言えば、定時作戦計画の通達が来ないね」
「俺たちの他にも空中空母4機が戦線の浅い位置に前進してるからだろうな。低空侵入を試みてもどれか1機には必ず捕捉されるようになって、中々攻めあぐねてるらしい」
「なるほど…でも逆に言うと帝国の物量を継続的に削れてないって事にならない?あの帝国が戦力を蓄積してどれか1機に一気に叩きつけたらマズイ気がする」
「いや、そこまで心配することじゃないと思う。以前まで帝国と交易してた中立の資源国家2つが国交を断絶したらしい。だから物量の増加ペースは落ちているはずだ」
「うーん、なら良いけど……」
「逆に心配すべきなのは、帝国派の国家が実際に宣戦してくる可能性だな」
現状この戦争では連邦が優勢だ。ただ、帝国の領土に深く攻め入ったりは出来ていないため、帝国側戦力が急増すれば押し返される可能性もある。
そして、帝国側の国家は現状経済制裁等に留めているが、帝国が実際に参戦を要求した場合、乗ってくる確率は決して低くない。
帝国内部に、戦争は自らでケリをつけるべきっていう考えが浸透しているからこそ、今そうなってないだけだからな。
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