___最後に覚えていたのは、自分の部屋の匂いと
暗闇の中で白く光るパソコンの画面だけだった。
「満たされない」なんてそんなの昔からずっとそうだ。
何枚キャンバスを塗り潰したって、
どれだけ描き続けたって、
自分を削ったって、
届かない。
評価されない。
認められない。
それでも私は描くのをやめれなくて、ただ必死に手先を動かしていただけだった。
目が覚めたとき、視界に広がっていたのは見慣れた天井でも部屋の壁でもなく冷たい汐風と、見たこともない灰色の海だった。
その後また、眠るように気絶をしていた
そして今――私は、冷え切った取調室のような部屋で、見たこともない軍服を着た大人たちに囲まれている。
「戸籍なし、身元不明。だが……精神適性値は測定不能の異常値、か」
机の向こうに座る男が、つまらなそうに書類をめくりながら私を見下ろしてきた
その蔑むような視線に、思わず奥歯を強く噛みしめる。
「少女よ。お前に選択肢はない。密入国者として処理されたくなければ、我々の指示に従え。
ある鎮守府の『提督』として着任してもらう」
何を言っているの? 提督?
意味が分からない
パニックになりそうな頭を、必死で冷やす。
軍服を着たそいつはパニックになってる私を他所に説明をし始める。
そこは過去の戦いで傷ついたとかいう「艦娘」たちが集まる場所で、要するに私は、使い勝手のいい捨て駒として送り込まれるらしい
「......断れば、どうなるの」
「言ったはずだ。選択肢はないと。まあ、お前のような小娘がいつまで保つかは知らんがね」
くそっ、何なのよ、この大人たちは
人のことを見下して、勝手に決めつけて
悔しさと恐怖で、膝の上の拳が固く震える。
逃げたい!今すぐここを飛び出して、自分の部屋に帰りたい。
ニーゴのみんなはどうしてる? 家族は?
(……ううん、泣いてる場合じゃない。逃げてたって、誰も助けてくれない)
私は深く息を吸い込みゆっくりと顔を上げた
視線をそらさず、男の目を真っ直ぐに見返してやる。
「…分かったわよ。やればいいんでしょ、やれば!」
男が一瞬、不機嫌そうに眉をひそめた。
「その代わり私は絶対に諦めないから!提督だってなんだってやってやる、絶対に私の家に帰ってみせる。――覚悟しときなさいよ」
大人たちの理不尽な言葉になんて、絶対に屈してやらない
どんなにその選択肢が私にとって過酷な場所だろうと、私は生き残ってみせる。
――こうして私は、見知らぬ灰色の海へと足を踏み入れた。
案内された荒れ果てた鎮守府の門前。
そこで私を待っていたのは、冷徹な手つきで書類を抱える眼鏡の女性――大淀と
「……あなたが、新しい提督ですか。随分と幼いお嬢様が来られたものですね」
氷のように冷たい瞳で私を見下ろす、加賀という艦娘だった。