演習終了のブザーが海域に響き渡る。
戦術モニターに表示された判定は_______________________
『戦術的勝利』
「な……ッ!?戦術的勝利…この私がたった5隻の、それも素人同然の小娘に戦術敗北したというの……!?」
相手のベテラン提督は、信じられないものを見る目で画面と絵名を見比べ、顔を真っ赤にして激高する。
相手の艦隊は判定の上で敗北となっただけでなく、マニュアル通りの完璧な陣形を「5人の癖を見破った奇襲」によって見事に乱され、戦術的に完全に後手に回されていたのだ。
「無礼な……!!認めないわ、こんな戦い方……!」
憤慨しながら去ろうとする提督を制するように、相手の旗艦・大和が絵名の元へ静かに歩み寄ってきた
「東雲提督……
見事な指揮でした。判定は私たちの負けです。最初は5隻と聞いて甘く見ておりましたが…
貴女のその『目』と、艦娘たちへの深い理解に脱帽いたしました」
大和は深々と頭を下げ、そして優しく微笑んだ。
「貴女の鎮守府の5人が、なぜあれほど強いのか分かりました。彼女たちは兵器としてではなく......1人の存在として、貴女に愛されているのですね」
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大和たちが去った後、波止場には沈む夕日と
ボロボロになりながらも晴れやかな顔をした5人の艦娘が立っていた。
「ヘヘッ、見たかエリートども!アタシたちの提督を舐めんなっての」
川内が快勝のように笑い飛ばす。
「ふ、ふん!引き分けなんて満足いかないわよ! 次は勝つんだからね!」
満潮は相変わらずツンツンしているものの、その目は絵名への誇らしさで輝いていた。
加賀が絵名の隣に静かに立ち夕暮れの海を見つめる。
「絵名。貴女の『目』はどんなエリート提督の戦術書よりも鋭く、そして温かい」
「...うん。私、絵はまだ描けない。
手も震えるし、スケッチブックを開くのも怖い……」
絵名は自分の震える右手を見つめ・・・それから
5人の顔を一人ひとり見つめ直した。
「でも、みんなの動きや頑張ってる姿をこうやって見てるだけで…私、みんなと繋がれるんだって分かったから」
絵名は涙をぬぐい、夕日に向かって最高の笑顔を見せた。
「私、絶対に負けない。
絵が描けるようになるその日まで…この目で、みんなのこと誰よりも見続けるからね!」
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