東雲の海に、君は筆を執る   作:とばりん

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6話 波濤を穿つ描線

 

__________バシャっつ.........シャッ。

____________水飛沫が激しい音をたてる______。

 

「全艦、第三単縦陣! 西の断崖へ全速——了解デス!」

 

金剛の弾けたような叫びと共に、巨躯を誇る戦艦と重巡が海面を滑る。

 

上空からはヲ級の艦載機群が黒い雨のように襲いかかるが、西側の断崖が落とす深い陰影がそれを阻む。

 

 

「鈴谷! 崖の反射光を利用して、ル級の照準を狂わせるネ!」

「オッケー! 主砲、撃ちまくれーーっ!」

 

 

鈴谷と金剛が放つ怒涛の砲撃が海面を叩き、巨大な水柱を打ち上げる。

水沫と太陽の逆光に目が眩んだ敵戦艦ル級の砲身が、明後日の方向へと揺らぐ。

絵名の狙い通り、敵の長距離打撃は完全に封じ込まれた。

 

 

『今よ、川内! 狭水道を抜けて!』

 

通信機から届く絵名の必死な声。

 

 

「了解!‥‥‥さあ、アタシたちの時間だよ!」

 

 

水深が浅く、大型艦が入れない南の狭水道。

その激しい潮の目を、川内はまるで忍者のように舞うように疾走する。水しぶきを切り裂き、爆音と共に敵空母ヲ級の懐へ一気に肉薄する。

 

「この距離なら負けないよっ!...」

 

至近距離からの魚雷発射。

逃げ場を失ったヲ級の側腹に魚雷が突き刺さり大爆発が巻き起こる

圧倒的な空母の脅威が、たった一隻の軽巡の手によって打ち砕かれた。

 

だが、爆煙の奥から残存した敵駆逐艦が川内へ狙いを定める。

 

「くっ……!?」

 

『満潮、右! 川内のフォローに入って!!』

 

「言われなくてもっ……アンタに言われなくてもこっちは分かってんのよっ!」

 

甲高い叫びと共に割り込んだのは満潮だった。

これまで口すらきいてくれなかった少女が、間一髪で川内の盾となり、小回りの利く動きで敵駆逐艦の砲撃をかわしながら至近距離から主砲を叩き込む。

 

「私を……私たちを舐めるんじゃないわよ……っ!」

 

 

______________________

完璧な連携で敵の護衛陣を打ち崩していく

そして、逃げ場を失い孤立した敵旗艦の前へ

静かに滑り出す一影があった。

 

 

「…‥‥提督の描いた『筋書き』、見事です」

 

 

旗艦・加賀。

弓を引き絞り、矢の先を敵旗艦へと真っ直ぐに向ける。その瞳には最初に見せていた冷ややかさはもうない。

「あなたたちの進路は、すでに彼女に見抜かれている。…大人しく沈みなさい。」

 

 

放たれた矢が光の軌跡を描き、敵旗艦の艦橋を貫く。

轟音と共に深海棲艦の群れが海へと沈んでいき_______

 

__あんなに絶望的だった海域に、静寂が戻ってきた。

 

 

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