後方腕組みで傍観を決め込む背景モブの僕、【怪文書】の差出人だと密かにバレて破滅予定の悪役令嬢に粘着された。   作:ぜんはいざ

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取り巻きギャルの思い

「なんだか『すてでき』が、謎解きみたいになってきた気がする」

 

 課外授業を終え、寄宿舎のベッドに寝転がりながら、僕はそんなことを呟(つぶや)く。

 だが、ヴァイオレットの想いやエステルの態度から、『すてでき』のストーリーが正しかったとは思えない。

 

 おそらく、何か裏がある。

 僕にはそう思えてならない。

 

「……なんて、僕には関係のないことなんだが」

 

 所詮僕の存在なんて、断罪シーンでちらっと登場するだけの背景モブに過ぎない。

 そんな男が、メインキャラに混じって謎を解明するって? 馬鹿げている。

 

 だけど。

 

「『すてでき』ファンとしては、ストーリーの裏に隠された真実を知りたいに決まってる」

 

 こういうところ、無駄に好奇心旺盛で我ながら困る。

 正直、僕は気になってしょうがないのだ。

 

「まあだけど、ヴァイオレットもエステルも、お互いに嫌っていないのだったら、それぞれ事情を話して仲直りすればいいんだが」

 

 そんなことができれば、『すてでき』でも行きつくところまで行くはずもないわけで。

 主人公ヒロインと悪役令嬢の本当の気持ちに気づいているのが、この僕しかいないというのが問題で。

 

 というか。

 

「ヒーロー連中、役に立たないな」

 

 僕が【怪文書】を送ったからとはいえ、オズワルドは歓迎パーティー以降評判を落とし、正体がバレたアルフォンソは逃げるように帰国してしまった。

 カイルは何故かエステルじゃなくて僕にまとわりついてくるし、サイモンはヒーローのくせに空気状態。何一つ期待できないんだが。

 

「残るヒーローは、第二王子のエドウィンだが……」

 

 学年が一つ下の新入生ということもあり、まだ登場していないエドウィン。

 『すてでき』でも登場するのは中盤以降なので、ちょっと期待薄だ。

 

「いやいや、僕がヒーローに代わってなんとかするとか、それこそあり得ないからな」

 

 謎と真実は気になるところだが、関わりたくない。

 ここは初志貫徹させてもらうとしよう。

 

 ただし、その場合はヴァイオレットを見捨てることになるが。

 

「……そうだ。僕に、そんな力はない」

 

 前世でも余計なこと(・・・・・)をして、救うどころか結局追い詰めてしまった。

 そんな僕が、おこがましい真似をできるはずがないんだ。

 

 なのに。

 

「あたしをこんなところに呼び出して、何の用事よ」

 

 昨日の今日で、僕はどうして取り巻きのマライアを、校舎の屋上に呼び出しているんだろうな。

 これじゃ、『すてでき』の謎を解明する気満々じゃないか。

 

「単刀直入に聞きたい。ヴァイオレット様と、両親……カヴェンディッシュ公爵と、その夫人との関係を」

「は?」

 

 僕の質問に、マライアは眉根を寄せ小馬鹿にするような返事をした。

 コイツ、見た目といい態度といい、貴族令嬢よりギャルのほうが似合っているんじゃないだろうか。

 

「聞こえなかったのか? ヴァイオレット様と両親の関係を……」

「ちゃんと聞こえてるわよ! ……ていうか、そんなことを聞いてどうしようっていうの?」

「別に。ただ、僕が知りたいだけだ」

 

 そう……僕は知りたいだけ。

 ヴァイオレットがどうして、人知れずエステルを救おうと考えているのか。

 

 わざわざ悪役令嬢の仮面を被り、虐(いじ)めるふりをしてまで。

 

「前から思ってたけど、あんたってしがない子爵令息のくせに、いつも偉そうよね」

 

 それはそうだろ。

 前世では普通に社畜のサラリーマンだったわけだし、実年齢はずっと年上なんだからな。

 

 まあ、この世界では同い年だから関係ないが。

 

「そんなことはどうだっていい。早く教えろ」

「ハア……まったく……」

 

 腰に手を当て露骨に嫌な顔をするものの、マライアは彼女が知っている範囲で教えてくれた。

 

 カヴェンディッシュ夫人のブレンダが、元々は公爵の愛妾(あいしょう)で、正妻が亡くなった直後に後妻となったこと。

 亡くなった正妻の娘であるエステルは、ブレンダから冷遇されていること。

 当のカヴェンディッシュ公爵自身は、二人の娘に興味はないこと。

 

 このあたりについては、『すてでき』でも普通に語られるエピソードなので目新しさはない。

 

 だが。

 

「……王立学院への入学に当たり、ブレンダ様は、カヴェンディッシュ家傘下の貴族家の息女であるあたしとジュリアに、指示を出したの。学院では常にヴァイオレット様の傍(そば)にいて、どんな些細なことでも逐一報告するように、って」

 

 なるほど、合点がいった。

 ヴァイオレットが取り巻き二人に対して辛辣(しんらつ)なのは、ブレンダの息がかかっていることを知っているからなんだな。

 

 いずれ公爵家を手に入れようと画策している彼女からすれば、二人の存在は邪魔でしかない。

 

「だけど、その話を聞くとヴァイオレット様は信用されていないんだな」

「……ええ、そうよ。だから、あたし達を邪見にする理由も分かる」

 

 そう言うと、マライアは悔しそうに唇を噛む。

 なんだよその反応。まるで、本当はヴァイオレットに好かれたいみたいじゃないか。

 

「それで?」

「それで、って何よ」

「カヴェンディッシュ夫人のことは分かったが、君はどうなんだ? ヴァイオレット様の敵なのか、それとも味方なのか」

「っ! そんなの決まってるでしょ! あたしは……あたしは、ヴァイオレット様のお役に立ちたいの!」




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