ワルプルギスの廻天を始めてみた日に過ったクロスオーバー作品です。
勢い・乗り・前々からやりたかった。
そして隠し味程度に深夜テンションも添えて作成しました。
内容によってタグも変更や追加などあるかもしれませんが、何卒宜しくお願い致します。
灰色に暗雲渦巻く、異様な空。
瓦礫と土砂に崩れた町らしきものが広がる大地。
それは荒廃と成り果てた世界。
その一点に、二つの影があった。
ピンク色の髪をツインテールのように結んだ少女。
黒色の髪を三つ編みにまとめ、眼鏡をかけた少女。
「どうして…死んじゃうって分かってたのに…私なんかを助けるよりも、あなたに…生きていて欲しかったのに……!」
黒髪少女の足元にはピンク髪の少女の死体が転がっている。
嗚咽を流しながら冷え切ったその死体に抱きつく彼女に、一匹の獣のような使者が彼女へ問いただした。
「――その言葉は本当かい? 暁美ほむら。君のその祈りのために魂をかけられるかい? 戦いの定めを受け入れてまで叶えたい望みがあるなら――僕が力になってあげられるよ」
その不気味さを感じさせる真っ赤な瞳を向ける使者の問いに、少女は口を開く。
「あなたと契約すればどんな願いも叶えられるの…?」
「そうとも。君にはその資格がありそうだ。教えてごらん。君はどんな祈りでソウルジェムを輝かせるんだい?」
「私は…」
少女はゆっくりと立ち上がり、使者を見据え、その願いを告げた。
「私は鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなくて――彼女を守る私になりたい!」
瞬間、少女は突然悶え始め、胸元から紫色の輝きが浮き出る。
「契約は成立だ。君の祈りはエントロピーを凌駕した。さぁ、解き放ってごらん。その新しい力を!」
少女はそっとその紫色の輝きを、両手で握った。
同時に――
少女は振り散る雨の中、約束を交わした少女たちの姿を見つめ、苦痛を表すような表情を表している。
※ ※ ※
私は転生者である。
それを断言できるほど、確証があるものは『記憶』というもの。
今とは異なりながらもよく馴染み、懐かしくも思う『名』と、異なる長い人生という『記憶』。
それを人は前世の記憶と呼び、これらを持つ者を輪廻の者。
世間は転生者と呼ぶようになっている。
しかし転生にも種類がある。
1. 認識せずに、転生を終えた直後に気付くもの。
2. 何かをキッカケに前世を思い出し覚醒するもの。
3. 転生の過程すら覚えているもの。
4. そして神様と対峙し、転生される・させてもらうもの。
この中でなら、私は一つ目。
認識せずに、転生を終えた直後に気付くものである。死因は確認不足による交通事故。
13年ぶりの続編に加え、延期を繰り返しついに公開された映画を観終えた時。
盛大に満足して、入場者特典を眺めながら帰っていた結果、信号が変わってるのに気づかずに路上に出てしまうという結果の末。
一気に押し寄せた衝撃・浮遊感・落下の直後……気が付けば見覚えのない部屋で目覚めたのが私だった。
そこまでだったら、まだ病院で目を覚ましたとでも解釈はできる。
だけど病院とはかけ離れた、幼い女の子がずっと住んでる部屋。
私の知らないことや、趣味とはかけ離れた部屋の物などが広がっている。
そして記憶にない異なる記憶。
知らないのに知っている家族と私自身。
異なる肉体・外見・声帯・髪等。
それらに当たる物を一言で呼ぶならまさに転生。
そうとしか言いようがない。
加え、単なる転生とは異なる。
異世界、ファンタジーにありふれた世界?
否、それも空想だが異なる空想。
既に他の人の空想によって描かれ、世間へと知れ渡ったもの…そう、作品。
その世界に転生した。
知らないのに知っている記憶の中で、共通するものがあったから。
それを知って、それを見て私は悟った。
『私はループされる時間でただ同じ動き・台詞・思考をするだけのモブキャラ』だと。
この世界は、死ぬ直前、見たあの映画。
書き替えられる前、まだ初期かその後の繰り返される世界のごく一つ。
この世界は――
魔法少女まどか☆マギカだ。
※ ※ ※
当たり前に過ごしていたはずの一日。
己が転生者であることを自覚したその日は鬱憤とも言える長い一日。
終えても、家に帰ることを無意識に拒んだ。
完全な沈黙・静家を抱くことはない世界。
風の吹き音、草木の揺れる音、建物からの電子系の音が微かでも届くのが世界。
完全な沈黙は精神世界でしか起きることはない。
そんな真夜中の街中、ベンチを照らす街灯にて、私は一人座っていた。
帰ってもごく普通の人生を送り、災害で生と死のどちらかが決まり、生涯を終える。
モブに転生したただの私は何もできない。
「結局、何のために
「――君は自身の生まれた意味に疑問を抱いてるのかい?」
「ッ!?」
聞き覚えがあるけど、それでも聞くことはないだろう声が突然聞こえた。
最初は幻聴だろうと思いたかったけど、あまりにもハッキリと脳内ではなく耳に直接響いたせいで思わず反応してしまう。
視線の先には、見ることは絶対にないと思っていたあの生命体がいた。
「やぁ、僕の名前はキュゥべえ。僕と契約して魔法少女になってよ!」
絶句・驚愕・絶望。
それらが押し寄せた。
コイツが見えて、契約を持ちかけられた。
つまり素質があるということ。
同時に魔女になって絶望を振りまくということ。
「あんたは……」
「僕は魔法少女になって悪い魔女を退治してくれる女の子を探しているんだ。君に叶えたい願い事はあるかい? 魔法少女になって魔女を退治する代わりに、どんな願い事でも一つだけ叶えてあげられるよ!」
定番で商売上手で、実に甘い誘い相応しい名台詞。
だけどそれは書類でいれば大事な部分だけは小さく書く、小汚い詐欺師の手口。
純粋で何も知らない人間だったら、きっとある程度話した後に願いを叶えてもらうのが流れ。
だけど私は違う。
「ごめんだけど、メリットがないからいいわ」
「なんでも願いを叶えられるのにメリットがないと断言できる理由は何だい?」
「代償が大きすぎるわ。それに詳細も何もなくただ契約する馬鹿はいるにはいるんだろうけど、そう簡単にはしないわよ」
「確かに。基本すぐに契約する子がいるけど。それ以前に契約するに至ってどうなるかを聞いてくる子もいたね」
聞かれない限り答えはしない。
それがこいつらの商売スキル。
キュゥべえは私の横に来て、私を見て来た。
「普通、こういう時は僕のこと。願いのこと。魔法少女のことを聞いてくるけど君は違うね。まるでそれら全てを知っているようだ」
そりゃあね…こいつに隠し事は意味がないのも分かってるし。
「契約はしないわ」
「どうしてだい?」
「してもしなくても、私が死ぬのに変わりはないわ」
「確かに人間はいずれ寿命を迎え、必ず死ぬ生き物さ」
それはそもそも生まれた時からの大前提。
それとは違うのよここでは……言ったところで意味はない気がするけど。
「君は魔法少女としての素質がある。叶えたい願いがあるなら叶えてあげられるよ」
「そんなことではいなりますって契約はしないわよ私は」
そう言いながら立ち上がり、バックを持って歩き出す。その際にせっかくだから着いて来てと言った。
「歩きながら話しましょう――インキュベーター」
キュゥべえ――インキュベーターはパチクリと瞬きしてから私に何者なのか聞いて来た。
それに対し私は一言。
「――
この世界での私は、モブであるが同時に異なる記憶を持った異分子だ。
※ ※ ※
「つまり君は僕たちすら知りえない、こことは異なる世界。宇宙から死後迷い込んだ魂。そして肉体を得た因果の輪廻とは異なる。もしくは超えた存在ということだね」
「どういう解釈をしたのかは分からないけど概ねはそうなるわ」
走る車も少ない道路の上の橋。
そこに私とインキュベーターはゆっくりと歩きながら話していた。
「だけど君の世界では僕たちの存在はなく、人の描く空想上でしかない。そして君はこの世界に酷似した空想を見ていたと」
あくまでこの世界そのものをアニメとして見ていたことは伏せる。
場合によっては取り返しのつかないことに……いや、既になっているか。
それにこの世界でのインキュベーターの行動は変わるとしても、別世界ではそれを知りえないんだ。
彼女が逆行すれば、その時間軸でのこいつらは彼女との契約すら覚えてない…いや、知らない。
世界そのものを書き換えられた後はそのシステムすら、彼女から話を聞くまでは見出していなかったんだ。これ…もうある意味自分の人生ヤケクソってやつだよね…。
「それなら君の反応にも納得いく部分がある。だけど驚きだ。僕達の干渉なく魂を異なる世界の輪廻に加え、その記憶を持っていること。ましてや君の世界の一部の人間は、僕達と同じ考えを持っていたなんてね」
「観客に座る方々を喜ばせるためなら、人は時に心を捨てることもできる。それが作品というものよ。それらに興奮を抱くものだっている。人間にとって、人間が一番訳が分からない生き物でもあるのよ」
「君もまたそれらに魅入られ、席に座った観客の一人であると」
「そうね。そしてこの世界でも私は何もしない観客。モブに過ぎないわ」
「それはどうしてだい?
私の脚は止まった。
インキュベーターの発言によって。
「因果が異なってるって、どういうこと?」
「君の因果律は、他の素質ある魔法少女の子たちとは大きく異なっているんだ。君が異なる世界から迷い込んだ故なのか、その因果律は他よりも大きい。
世界に干渉…。
「それってつまり、魔法少女になるけど元の世界に帰れたり出来るってこと?」
「そうだね。
つまり、場合によっては他世界の能力等を得ることも出来るってこと?
そんなバカげたことが……でも、心臓病を患っていた彼女が、因果を、世界を超えて過去に戻る輪廻を契約して得たんだ。
それなら逆も、異なるのも然りってことになるわね。
「だとしても、契約はしないわ」
「どうしてだい?」
「私の見たあれは、数日か数週間かしないうちに、舞台となる街に最大の脅威が押し寄せる」
それは最大であり、彼女の宿敵。
「それに生き残れるか保証がない」
彼女が去る可能性の方が大きい。
「だったらいっそ、普通の人として終えたい。それだけよ」
この世界も、彼女が繰り返すループの一つに過ぎないかもしれないしから。
※ ※ ※
それからインキュベーターは何かしらあれば私の下に現れるようになった。
でも、メインキャラである彼女たちには私のことを話してないらしい。
私の話を信じているのか、異なる異分子が乱入して変わってしまうのを恐れているのか。
まぁせっかく得た、私がちょっと変えたとしても得た情報を無駄にしたくないのかもしれない。
あとは私が関わろうともせず、ただのモブキャラとして過ごしてるのを見てわかったのかもしれないし。一人静かにいつも通りの日常を過ごし、終えて、また過ごしを繰り返すだけ。
そんな日々を送ってついに、歯車が動き出した。
「――君の言う通り、近々この見滝原に最大の脅威が来るみたいだ」
数日後の夜。
インキュベーターがいつも通り現れたら、そう提示してきた。
「君たちの世界ではどういう名を付けられたか不明だけど、僕達はその最大の脅威をワルプルギスの夜と呼んでいるよ」
知ってるよ……その複数の魔女の融合体の正体も、その経緯も、そして見滝原に来た理由もね。
一般人からすればただの災害だろうけど、全てを知ってしまってる私からしたら、インキュベーターを認識で来ている私からしたら……結局は、どうしようともできないから無駄ね。
本編に介入して皆幸せハッピー何てご都合展開、出来るわけない。
ましてやただ知恵と記憶を持っただけに過ぎないモブには。
転生は幸運。
大好きな作品の『力』を宿したら豪運。
快適な家庭での生まれなら極運。
そう…好きな作品に転生できただけでも幸運なんだ。それ以上を求めても、得られるのなら苦労はしない。苦労して得ても、それが本当に求めたものであるかは不明。
それにそういった力には、必ずそれ相応の代償が伴うもの。
魔法少女が魔女になるように。
概念存在になり果てたように。
結局、私って何のために転生したんだろうね。
「対抗手段はあるの?」
「長いこと魔法少女として活動している巴マミ。そして先週契約したばかりだけど、鹿目まどかがいるよ」
「…!」
巴マミが生きている…?
それに鹿目まどかも魔法少女に……てことは。
「他には? 別の街にもいたはずよ」
「君の話した通り、確かに風見野市にも魔法少女はいるさ。だけど彼女は参戦しないよ。だけど一人、新しい魔法少女の素質を持つ子が現れたんだ」
……やっぱり、この世界は…時間軸は。
「――暁美ほむら。この見滝原には意外にも魔法少女の素質を持つ子が多くいるね」
そっか、始まりの時間軸なんだ。
何度目かのループとかじゃなくて、全く最初。
スタート地点的な場所なんだ。
つまり、この世界は……あぁ、笑えちゃうなァ。
転生しても意味ないって、まさにこのことを言うんだろうね。
ワルプルギスの夜が襲来したその日には、彼女も死んで…ループが始まる。
そしてこの世界は……ハハッ。
なら、どうせ見捨てられる運命なのなら。
「ねぇインキュベーター」
「なんだい?」
「災害が訪れるその日、私も一緒に傍観者になっていいかしら?」
死ぬのなら最後に、彼女の決断するその瞬間を見届けたい。
※ ※ ※
灰色に暗雲渦巻く、異様な空。
瓦礫と土砂に崩れた町らしきものが広がる大地。
それは荒廃と成り果てた世界。
その一点に、二つの影があった。
「どうして…死んじゃうって分かってたのに…私なんかを助けるよりも、あなたに…生きていて欲しかったのに……!」
魔女になり果てることもなく死んでしまった鹿目まどか。
そして、嗚咽を流しながら冷え切ったその死体に抱きつく暁美ほむら。
「その言葉は本当かい? 暁美ほむら。君のその祈りのために魂をかけられるかい? 戦いの定めを受け入れてまで叶えたい望みがあるなら――僕が力になってあげられるよ」
そんな彼女に、インキュベーターは無慈悲にも希望を抱かせるように問いかけた。
「あなたと契約すればどんな願いも叶えられるの…?」
「そうとも。君にはその資格がありそうだ。教えてごらん。君はどんな祈りでソウルジェムを輝かせるんだい?」
「私は…」
暁美ほむらはゆっくりと立ち上がり、インキュベーターを見据え、彼女自身の願いを告げた。
「私は鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなくて――彼女を守る私になりたい!」
瞬間、暁美ほむらは突然悶え始め、胸元から紫色に輝く彼女自身の魂が浮き出る。
「契約は成立だ。君の祈りはエントロピーを凌駕した。さぁ、解き放ってごらん。その新しい力を!」
そっと魂を、両手で握る。
そして輝きに包まれて、彼女はその場から忽然と姿を消した。
その瞬間を、少し離れた位置にある瓦礫の上で、静かに眺めていた。
隣には、さっきまで暁美ほむらとの契約をしていたインキュベーターが既に移動して来ていた。
「彼女の願いはいわばやり直し。故に時間に関する魔法を得て、過去へと戻った。時間遡行と言ったほうがいいかもしれないね。だけどその願い自体は叶っても、彼女がワルプルギスの夜に適う可能性は低いだろう」
「契約が最優先なあなた達が与えた力でしょうに」
「いや? 彼女の願いがその形になっただけさ」
結局のところ、私は何もできないししなかったモブ。彼女は、暁美ほむらはこの世界を去ってもう一度過去からやり直す。
その世界では私はいないし、いたとしても今と同じモブとして終える。
意味のない転生をして、暁美ほむらが捨てたこの世界で一人。
その事実を知って命が尽きるのを待つだけの人生。
結局干渉もしなかったから、これからも繰り返される世界での鹿目まどかも。
繰り返し続ける暁美ほむらも、あの結末でもあり、永遠とも呼べる続きの物語を迎える。
結局誰が悲しくて、誰が幸せなのだろう。
そう思うのは、前世からずっとだ。
「巴マミと鹿目まどかが魔女になることなく死んでしまい、暁美ほむらもこの世界から消えた。僕らのエネルギー回収ノルマの達成はまだ程遠いよ」
これらもすべて、感情がなくとも似たような場面を見て来たのだろう。
なんせこいつらは、舞台装置のことも知っているんだから。
でもこの世界じゃない……遠い遠い未来、繰り返される時間の後の話。
私からすれば、暁美ほむらが一番悲しい存在だ。
誰よりも努力して、必死に頑張っているのに。
一番つらいのは彼女なのに……いっそのこと――
「いっそのこと、
「どうしたんだい?」
自分の発言に、違和感を覚えた。
否、その発言後に急に何かを思い出したように――脳裏に存在が過った。
『君が、救けを求める顔してた』
『余計なお世話はヒーローの本質なんだって』
『そう決まっていたとしても! その未来を捻じ曲げる!』
どんな苦難でも、困難でも、大きすぎる壁でも、それを乗り越えようとする。
誰であろうと救いを求めれば手を指し伸ばして、救けようとする。
『目の前の小さな女の子一人救えないで、みんなを救けるヒーローになれるかよ!』
『泣いていた君を見なかった事にはしない』
『人だよ…人だ』
一人で頑張って、多くの人に支えられ、恵まれて来た。皆が応援してくれたからこそ、そこに辿り着けた。その人たちだけじゃない…液晶越しに見た私たちもまた同じように叫んだ。
『手を伸ばしたいんだ』
『君の悲しみに寄り添って、少しでも心が和らぐように』
『たとえそれが、余計なお世話だとしても』
完結した、最高のヒーローになるまでの物語。
その主人公、主人公たち。
あの日の感動を忘れることはなかった……あぁ、そうか。
ようやくわかった…なんで私が転生したのか。
どうして何の価値もない、ただ素質だけあったモブに過ぎない私がここにいるのか。
繰り返されるこの世界を、何度も繰り返す彼女を、強いては彼女たちを救う方法を、私は運んできたんだ。
必要なんだ。
誰よりも早く駆け付つけ、どんなに傷ついても絶対に倒れない。
きれい事を並べ立てて、余計なお世話と言われようとも。
手を指し伸ばし続ける…そう、必要なんだよ。
勝つために、
成りたい自分に、信念を貫くために。
友達、仲間、誰かの役に立ちたいが故。
道を誤ったとしても、好きだから。
過去は変えられなくても、未来に希望を繋ぐため。
いつまでも、手を指し伸ばし続けるため。
だからこそ――
――この世界にはヒーローが必要だ。
「キュゥべえ……」
「なんだい?」
「決まったよ――
インキュベーターがこっちに顔を向けた。
「契約はしないと言っていたのに、急な変わりようだね」
「えぇ…ようやくわかったの――私が
全てはこのため。
そのきっかけを、交わることのない因果を結ぶための、間の布が私の役目だったんだ。
「君もやり直しを願うのかい?」
「いいえ」
「意外だね。こういう場合はあの状態の子たちを想って願うことが多いのに」
「半分正解かな……でもね、
そう、相手を想って願う。
でもこれはこの世界ではなく、
美樹さやかが幼馴染のために願ったように。
鹿目まどかが黒猫を救うために願ったように。
そして暁美ほむらが、鹿目まどかを救うために、守るために願ったように。
でもその役目を、資格を持っていない。
私はただそれを実現するための装置であり、繋ぐための糸。
後のことは、私の願いに託す。
「
胸の奥から魂が荒ぶる。
「彼女はいずれ辿り着く結末まで、何度でも何度でも繰り返し、あらゆる可能性を、道を、結果を見出す」
胸元から、歪な光が溢れ出る。
「それでも、そこまでたどり着ける可能性があるわけじゃない。だからこそこの願いを抱く」
魂が身体から出てくる。
「例えこの願いが叶うのが、この瞬間じゃなかろうと」
魂が物質へと変換されて行く。
「いずれ彼女の前に現れ、
因果律が大きく乱れ始め、その証拠に周囲が映像の乱れのように荒れていく。
「
干渉しようとしているかなんてわからない…でも、そうであってほしい。
「いつか未来を捻じ曲げて、彼女の本当の笑顔を取り戻させる」
その時が来た時には、彼女の歩み続ける道を共に歩んでほしい。
「そんなヒーローを、悪であろうと救けを求めれば必ず救ける――」
――最高のヒーローを!!!!!
瞬間――光が私を包んだ。
「君の願いは、エントロピーを凌駕した」
露になったその身は古代の、神話時代などで使われていたキトンと呼ばれし衣服へと変わっている。
「願いは、叶ったのよね?」
「もちろんだとも。だけど君の願いには驚いたよ。全く異なる世界の、君の言うヒーローという存在を僕たちの世界ではないにしても、こちら側に強制的に引き寄せ、挙句の果てには幾度も繰り返すであろう暁美ほむらと同行するように願うなんてね。君は選ばれたその対象者に慈悲などはないのかい?」
「あなたから慈悲という言葉を聞くとは思わなかったけど……そうね。でも、きっとそのヒーローなら……それでもやり遂げてくれると思う」
私は、倒れている鹿目まどかの下へ向かう。
暁美ほむらは時間遡行でもういない。
それでもこの世界はこのまま進み続けるであろう。
ここではない別の時間軸の世界に、そのどれかにいずれ現れてくれるはず。
そう願ったんだ…信じないという選択肢はない。
鹿目まどかの傍に辿り着き、膝を着いて、彼女の頭を優しく撫でる。
こうして目の前にいると…やっぱり話して見たかったという気持ちが嘘じゃないのがわかる。
「ごめんなさい。あなた達全員を救うことを願わなくて」
その願いはとても難しい。
だけどこそ一人に絞れば、必ず現れる。
選ばれたそのヒーローが、いずれあなたの大切な友達を、強いては差し伸ばせられるだけの魔法少女たちを救うかもしれない。
「魔法少女となった私の魔力を、選ばれたヒーローが魔法少女と戦えるように」
自身のソウルジェムを外して掌に乗せる。
契約し願いを叶えられた代償、魔法少女…そして魔女と成り果てる私の魂の物体。
するとソウルジェムを中心に、糸のように宙を漂う光輪が現れる。
十重、二十重に絡まり合うそれは、まるでいくつもの因果律を束ね、一つの糸に結ばせるように。
他の世界、転生したこの世界とは全く異なる、関連性すらない世界との因果を結ばせる。
自身の前世の因果と転生したこの世界での因果……二つの因果を持つ私だからこそ成せると思えるこの本能的魔法。
異なる世界の因果に干渉し、私の魔力を全て集中させて、因果を具象化させたとも言えるこの光輪で操作し、その世界へ。
暁美ほむらが幾度となく鹿目まどかを中心としてループを繰り返した結果、無数の因果が鹿目まどかに集結し、概念へ、神へと成ることができたように。私だからこそ出来ること……
そうすることで、
出ないと彼女を救えない…寄り添うことができない。その全てを混めて、私の因果を。
すると私の二つの因果律でもある光輪が一気に膨張してからソウルジェムの中に入るように凝縮されて、一気に天高く真上へ飛び上がった。
それは先端が見えなくなるぐらい高く上がってから、やがて薄れていき消えた。
異世界…全く異なる宇宙へ向かって行った感じかな。
ソウルジェムは……たった一回だけのぶっつけ本番のせいもあってか結構濁っていた。
グリーフシードはおろか、魔女もここいらにはいないんだ……これをどうにかしなきゃいけない術は今の所ない。
まぁでも、彼女たちが必死に守った世界であり、暁美ほむらの始まりの世界でもあるんだ。
ソウルジェムが砕かれて、もう動かない鹿目まどかの身体を抱き上げる。
せめて、あなたはちゃんと埋葬してあげないと。
そしてこの、始まりの時間軸は、勝手だけど私が引き受けよう。
余計で身勝手な理由……だからこそごめんなさい…って言えばいいかな?
どんな最後になろうと、私はただ祈りながら、この街を守りながら最後の時を待つだけ。
だからさ……私の願いのせいで選ばれて、巻き込まれたどこの誰かも、顔も知らないヒーローさん。
どうか暁美ほむらを、そして欲として叶うならば――彼女の大切な人たちをも救ってあげて。
私は信じてる。
選ばれたそのヒーローであるあなたなら、やり遂げることを。
だから――
「――頑張れ、ヒーロー!!!!!」
※ ※ ※
長い、長い、長い、長い。
とても長い因果、宇宙の果て。
一本の願いによって作られた糸が迷いなくその果ての先へと伸びていく。
長い果て。一つだけの宇宙。
その先にあるのは、似て異なる別の宇宙。
交わることも、干渉しあうこともない宇宙同士。
遥か先、絶対に、確実に交わることはないはずの宇宙に、その糸は伸びていく。
そしてその糸は宇宙へ干渉し、一つの世界へと干渉する。
それは、契約と願いによって観測不可能な概念でも不可能な世界。
異分子の願い故に成し遂げた所業。
故に――因果律でもあるその糸が、最も相応しい逸材の因果に絡まる。
※ ※ ※
『ここを!! 彼の!!! ヒーローアカデミアでいさせてください!!!!!』
彼女の言葉が、僕の心を救ってくれた。
『緑谷ァ!!!! 救けに来たぞォ!!!!』
『壊理ちゃんのお歌。聴くまで死ねないぞ』
『緑谷が頑張ってっとよ…身体動いちまうんだよなァ!!!!!』
『友達がまだ戦ってんの見て…』
『行かずにいられましょうか!』
『意識がある内は…どこへだって!』
『勝つ為にここまでやってきたもんね!』
みんなが、救けに来てくれた。
『走ろう。僕らは君の力が必要だし、君も僕らの力が必要だ』
伸ばした手を取って、握ってくれた。
『デクさん!!!!』
『緑谷兄ちゃん!!!!』
『デク…!!!!』
『みんな、一緒に戦ってくれてるよ!』
短い時間でも沁みついた残り火を巡らせて、みんなで一緒に走り出した。
『頑張れ!!!!!!!!!』
『走れ緑谷くん…!! 走れェ!!!!!』
『"道"を作るんだ!!! 死柄木に至る道を!!!!!』
みんなが、道を作ってくれる。
『光線の類なら私!!』
『電磁投射砲!!』
『ウェイ』
みんなが、ボロボロになっても戦ってる。
『全身ズタボロだろ! 温存しろ!』
『あいつに届く力はお前だけだ!! 俺たちが禦ぐ!!』
『俺たちの機動力じゃ、この猛攻をかいくぐるのは難しいが…』
『少しだけあなたを運ぶことぐらいなら…!!』
『根性!!! 頑張れ!!!!』
『頑張ろ!!!』
みんなが信じて、背を押してくれる。
『頑張れ!! 緑谷ァ!!!!!』
『行けぇ!!! 緑谷ァ!!!!!!!』
『ガンバレ…!!!』
『頑張れェ!!!!』
みんなが、応援してくれる。
『頑張れ!!』
『頑張れ!!!!』
『頑張れェ!!!!』
『頑張れ。ヒーロー!!』
『初日の下校を思い出す!! 今なら、彼女の言っていた事もよくわかる気がするよ!!!』
倒れそうになったところを、今一度手を取って支えてくれる。
みんなの声が、ここにいる人たちだけじゃない。
たくさんの人の声が、みんなの声が聞こえる。
『『『頑張れ!!!!』』』 『『『頑張れ!!!!』』』
『『『頑張れ!!!!』』』 『『『頑張れ!!!!』』』
『『『頑張れ!!!!』』』 『『『頑張れ!!!!』』』
『頑張れ!!! 出久ゥ!!!!!』
僕をここまで育ててくれた人の声が聞こえる。
染みついたその力を集中してぶつける。
『たった二年…!! 八代目より少し上乗せされた…
『まだ…まだだ!!』
それでも、それでもなおアイツは抗い、無理やり崩れる身体を繋ぎ止めた。
『器をォ!!!!!!!!!!!』
『もうやめろ!!!!!』
だからもう一度…もう一度、最後の一撃を。
今度こそ、全てをぶつける。
『俺に追い越されてンなよ!! 出久ゥ!!!!!』
その時に幼馴染で、身近で凄くて憧れな人が、背を押してくれた。
みんなが繋いでくれた、紡いでくれた、押してくれた、導いてくれた"道"。
『お前を許しはしない!! けれど、理解できない化物だとも思わない!! 因子が同調したからわかる!!!!』
『……やめろ!!』
『お前は魔王なんかじゃない!!』
『見るな!!!』
『お前はただの!! 寂しがりな人間だァ!!!!!!』
その道を辿って、残る全てをぶつけた。
『――結局俺は、お前の言った通り……泣いてるガキだったって事か』
最後の精神世界。
同調したことで、最後に死柄木と話すことが出来た。
『この手を壊せなかった』
『…やった事は許せはしない。だから戦った。止めたかったし…止まってほしかったんだ。悲しみが紡がれないように』
ゆっくりと、ゆっくりと死柄木が崩れていく。
『……緑谷出久。スピナーが生きてたら伝えてくれよ。"死柄木弔"は最期まで壊す為に戦ったって』
『もう…壊したよ』
『それは……明日のお前ら次第だな』
死柄木は――笑った。
『せいぜい――頑張れ』
それが最期の会話。
長き戦いに、終止符を打った。
そう示すように、暗い雨雲が一気に晴れて、今までで一番綺麗な青空が広がった。
授かり受け継いだ力の結晶は投げ打った。
残ったのは、身体に染みついた、いずれは消えていく残り火。
僕の夢は終わった…本当に夢を見せてもらったような日々を………――
※ ※ ※
それは最も少女の願った存在に相応しき逸材。
そしてともに歩んできた力の結晶と、共に継がれた六つの異なる力。
その全てを絡み縛った因果律は、逸材の存在と共にを異なる因果・世界・宇宙へと運んでいく。
カチッ……その音は何かを起動させる音であり、時計の針が動く音。
そこは劇場・演劇の舞台にして、音は開始を始めるための
0になった瞬間、開幕のブザー音が鳴り響く。
幕が開かれ、舞台が照らされていく。
開幕の時は来た。
――ヒーローよ、どうか彼女に救いの手を。
作成理由を付け加えるなら、ヒロアカ×まどマギって、pixivでもあまり見られないからって言う欲求と願望故です。
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