もう何度も来る台風が、ワルプルギスの夜に思えて来た中の更新です。
受け継いだ力の結晶『ワン・フォー・オール』。
それをなげうち、たった二年でも身に沁みついた残り火と、共に戦う仲間たちの力で勝利した。
『せいぜい――頑張れ』
最後の会話、最後の言葉。
交わし、受け取った彼の意識が途切れる。
彼らの戦いが終わった……はずだった。
「……えっ?」
目を覚まし視界を映したのは、椅子が沢山並んだ、倉庫のような場所。
そこは少年の受け継いだ力の結晶の精神、意識的空間内。
少年はそこに一人、立ち尽くしていた。
「ここって、『ワン・フォー・オール』の……」
少年はなぜ今ここにいるのか理解できずにいた。
何か理由があるのか、それとも予期せぬ何かが起きたのかと思考を動かす。
なげうち、残り火だけとなったそこは、面影だけであり自分以外いないということだろうと。
否、その答えは否である。
『――』
「えっ?」
瞬間、少年も聞きなれない誰かの声が彼の耳に届いた。少年は一度瞼を閉じ、眼を開く。
その瞬きの一瞬の間に、その声の主は現れた。
古代の、神話時代などで使われていたキトンと呼ばれし衣服を身に纏う謎の少女が、そこにいた。
見たことない人物、ましてやこの空間内で会う人物は限られているのを知っている少年は驚愕する。
その少女は気にすることなく少年へと告げた。
『暁美ほむらを救って、ヒーロー』
告げられた内容、頼みとも呼べる言い方に、少年は理解が追い付かない。
なぜこの空間内にいるのか、少女は誰なのか、その頼みはどういうことなんだと。
少年は少女にそれらを問いかけるも、少女は返さない。
しかし少女の答えとは別に、少女の背後、正確には――
それを見た少年の精神に、一斉にあの感覚が復活するように感じる。
少年は思わず自身の胸元位置の衣服を強く握ってもがく中、すぐに悟った。
「な、なんで…!? 君が、やったのか!?」
その問いにも少女は答えない。
すると少女は微笑みながら光に包まれ、
同時に空間が光に包まれるように白くなっていき、少年が何かをする前に、何かを言う前には既に、光に包まれた。
その光が消え、戻った視界が映したのは薄暗く鉄骨などで繋がれた工事中の建物であろう天井。
少年は理解が追い付けずにただ茫然といるだけ。
最終決戦の戦場とも、先の意識、精神的空間とは異なる、全く知らない場所で目覚めた少年は――
――
※ ※ ※
誰も足を踏み入れていないのか、人の気配がない工事中の建物の中。
気が付けば僕で倒れていた。
死柄木と最後の会話をしていて、その後……そうだ。
「さっきのは!! …えっ」
咄嗟に起き上がったけど、身体の痛みを感じなかった。その違和感にもすぐに気づいて自身の身体を見たけど、そこでも驚いた。
「傷が…それ以前に
死柄木の『サーチ』の距離誤認による不意打ちの際に塵となったグラントリノのマントすらある。
何で…いや、それよりも!
手放したはずの、なげうったはずの…"個性"を、そこにあるものを感じて、試しに発動させる。
すると身体中に熱が伝わっていって、その身に自然に纏えた。
でもここまではまだ残り火でも出来たんだ。
この感じが、死柄木の後に起きたアレが本当なのだとしたら……目をつぶって、確かめる。
あの日、まだ発現し始めた時のように、その中にあるものを意識して……!!
「……っ!!」
発動した瞬間――
数秒、信じられなくて呆然としていたけど、すぐに解除して自身の手を見つめた。
「『
それに加えて、同じようになげうったはずの歴代の……
あの光は、やっぱり継承者たちの"個性"因子だったんだ。
特に驚きなのは、
何で僕の所に戻っていてるんだ?
死柄木から奪われた時に消失したと感じたのと同じように、そこにあるのがわかるけど……なんで。
あの少女が何かしたのか?そういうことが出来てしまう"個性"なのか?
でもあの子は、分断作戦以前にあった覚えはないし、身に覚えすらない。
歴代の方々なら分かるんじゃないか?そう思ったのと、もしかしてと思って、因子に宿る歴代の意識に呼びかけてみる。
だけど、
まるで意識だけがなくなって、"個性"そのものしか残ってないような……。
「どうなってるんだ…やっぱり彼女の"個性"の能力か何かなのか? 『ワン・フォー・オール』と『オール・フォー・ワン』内で起きたことに干渉できるほどの"個性"を持っていて、実はあそこに潜伏していた? いや、
必死に整理するもあまりにも唐突過ぎることと情報の足りなさで追いつかない。
現状分かっていることは主に四つだ。
一つ、『OFA』と歴代の"個性"全ての突然の復活。
二つ、原因は恐らくあの少女であること。
三つ、ここはあの戦場とは違う場所。
四つ、少女は『暁美ほむらを救って』と頼んできた。
もしかしてあの子は、救わなきゃいけない人がいてその人の名前が暁美ほむらって人なのか?
それで僕にあのような形で頼んできた……?でも、なんであのタイミングでいきなり?
それよりもあの戦いはどうなったんだ?
皆は?相澤先生にオールマイト、かっちゃんも……皆は無事なのか?
ここが違う場所と言っても、現在地を調べればすぐにでも戻れるはずだ!
今すべきことは、今の現在地と現状の情報を調べて、すぐにでも戻ることだ!!
※ ※ ※
同時刻、とある病院。
そこに入院している一人の少女――暁美ほむら
「……また、ダメだった」
また失敗に終わった。
だから繰り返すとばかりに、今回もやり直す。
繰り返す、繰り返し続けるのみ。
ほむらは静かに眼鏡を掛け、ベットから下りた。
※ ※ ※
「………」
あの場所から移動して、
インターンの時や雄英を出て行った時とはまるで違う視線。
何だろう…変な人だって感じで見てる感じだ。
今は人の目が届かないよう、路地裏にわざわざ隠れるような形で休んでる。
道行く途中の人達に聞いて…この街の名前は聞いたことがない名前で、街の人達はトップヒーロー達の名前どころか、"個性"を知らないことがわかった。
それどころか、
嫌でもわかってしまう。
この街ってレベルじゃない……絞り出せる、導き出せる答えはたった一つだ。
「別世界……」
超常社会だから、そういったことが出来る"個性"がいてもおかしくないってのは分かってたし、そういった漫画だってあった。
でも、ここが本当に僕の知る世界じゃないってことが信じられない。
だけど、一つだけ心当たりもあった。
「彼女だ……」
『OFA』内に現れた、継承者ではない第三者。
あそこに唯一干渉できたのは死柄木とAFOだけなのに。彼女の"個性"…なのか今となっては分からないけど、彼女が『OFA』も含めて僕をこの世界に送り付けた可能性が高い。
だけど僕の知ってることがこの世界の人達は知らない。話が合わないとかそういうレベルじゃない……常識が違うんだ。
納得できるし、その仮説が一番辻妻が通ってるのもある。
普通の衣服を調達したほうがいいんだろうけど、それすら出来るのかわからない。
雄英に戻ってからも、殆ど
携帯、秘匿回線デバイスは僕の世界で作られたものだから、この世界では使えない可能性が高い。
携帯はまだ可能性が少なからずあるとしても、秘匿回線デバイスはダメだ。
そしてこの世界で僕の持ってるお札や金銭が使えるかどうかも心配だ。
僕の知ってる世界じゃない以上、警察に行っても逆に怪しまれる。
誰かに頼るにしても、
この街の通貨がどういったものなのかだけでも知れれば、普通の衣服だけでも調達して動きやすくなるけど……。
「『ワン・フォー・オール』と歴代"個性"は戻ってるにしても、どうしようもできない……」
お手上げと言わんばかりに、僕はただ腰を落として壁に寄りかかることしかできなかった。
これからどうすればいいんだろう……そう思っていた瞬間、四代目の『
とてもお世話になって、死柄木に奪われる形で別れてしまったあの"個性"の、警告の感覚。
身体がしっかり覚えてくれていたから、違和感なく馴染んでいる。
反射的に立ち上がったけど、この感知の感覚は、僕に危険が迫ってるというよりも、大きな敵意・脅威を常時発動型の『
ここがどこなのかは分からないけど、それでも誰かが大変な目に遭ってるなら救けないと。
真実はどうであれ、今僕の中になげうったはずの"個性"があるんだ。
使える、そう、使えるんだ。
あの日投げ打った歴代の"個性"が。
もうあの日のように話すことはできなくても、傍にいてくれてるような感じ。
だからこそ悔いてしまう。
歴代に、一言でも別れの挨拶を、お礼を言えなかったことを。
でも、それでもこうして僕の元にある以上、大切にする。
だって――この"個性"たちは、誰かを救って笑顔にすることが出来るから。
だけどここは僕の知る世界じゃない以上、派手に使用はできない。
グラントリノが言った通り、最悪を考えろ。
下手すれば、街の人達が僕のせいで大変な目に合うかもしれないんだ。
今は穏便に、隠し通していこう。
皆に『OFA』のことを秘密にしていた時と同じだけど、今後はそれ以上に隠していくと考えればいい。
鳴り続ける『
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