プロムン二次創作 暗明の銀   作:語部歯車

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第2話

  進めば進むほど潮の香りだけが強くなっていく。眼前に広がる光景は代り映えの無い、至って普通で、むしろ普通過ぎるぐらいに感じる。わざわざここは普通ですよと主張しているような違和感を覚える空間だ。そんな路地裏の中心で、チャンは足を止めた。

 

「ここです」

 

 やはりと言うべきか。さっきからずっと、どこからか見られてるな。

 気持ち悪い、いっそ身の毛がよだつ視線が全身に張り付く。こちらを観察するような。はたまた、舐め回すような、品定めをするような視線。それを意識した瞬間、背筋に悪寒がした。

 鞘ごと剣を抜いて、周囲への警戒を強める。

 

 いつ、どこから薬指が現れてもおかしくはない。そう、こんな風に——

 

 布が剥がれるように、建物の壁が剥がれて裏から扉が現れる。剥がれた物は、布ように折り重なりながら柔らかく地面に落ちた。扉の奥には、さっきと同じように持ち慣れた武器を持った男たちの姿があった。

 

「妹の時よりも多い……」

 

 30、40だろうか。チャンの狼狽した声が横から聞こえた。先ほどのネズミと違うのは、ちゃんと組織立って動いてる点だろうか。動きが、明らかにやり慣れている人間のそれだ。スムーズに私とチャンを挟み込み、逃がさないための陣形を組む。

 

 数が多いとはいえ、チンピラと断ずるには統率が取れ過ぎだ。どこかに指揮者がいる。どこだ?

 

「……そこか」

 

 男たちの中から指揮者を探すのに、そこまで時間はかからなかった。薄汚れた服装に身を包む男たちの中で異様と言えるほど綺麗な白いスーツに身を包んだ女性。その片腕には見るからに骨と肉で構成された剣を持っており、明らかに目立つからだ。

 

 身体派……か。何故こいつらがここに居るのか。いや考えるまでもなく訳の分からないクソみたいな芸術の為だろう。

 くだらない事を考えて思考を腐らせてる暇なんてない。

 指輪は……一巻きってことはスチューデントか。正直、ありがたいな。

 

 弾かれたように駆け出し、彼女の前にいる男たちを剣で薙ぎ払う。男たちは、赤い液体と肉片へと変わり辺りに巻き散らされた。

 自分たちの前にいた仲間がいとも簡単に肉片になったのを見て咄嗟に武器で防御したが、その上から武器ごと叩き潰され、切り払われた。男たちは先ほどと違い逃げる様子はない。それどころか、潰された部分を埋めるように男たちが隙間を埋めていく。

 

 こいつら、想定より厄介だな。全員潰すのは面倒だし、下手に時間食ってチャンに何かあっても困る。

 ……仕方がない、アレをやるしかないか。

 

「チャン!目を閉じろ!」

 

「は、はい!」

 

 鞘から少しだけ剣を抜き、剣の鍔と宝石のような青い両刃の刀身の一部が鞘から露出させる。チャンが急いで目を閉じるのとほぼ同時に剣の刀身が眩く発光し、周囲を剣の発する閃光が包む。

 私とチャン以外は光に目が潰されて彼女にまでの隙間ができた。その中を駆け彼女まで肉薄し剣を振り抜く。どうやら音に反応し、手に持った剣でガードをしてきた。ガードなど意にも介さず、気持ち悪い剣ごと彼女の肋を打ち砕く。血反吐を吐きながら建物まで吹っ飛び、壁に赤い染みが飛び散った。

 男共は視界が回復したのだろう。薬指のスチューデントがボロボロになっている姿を見て蜘蛛の子を散らすようにその場から逃げ出していく。

 

 気持ち悪い視線がまだ消えない。コイツに聞いてみるか……。

 

「おい。ここで何していた?誰の指示だ?話せば楽に死なせてやる」

 

「それは、『素材集め』ですよ」

 

「ッ!?」

 

 質問の返答が返ってきたのは目の前の薬指の女からではない。私達の背後にあったついさっきまで閉まっていた扉が開く。白いスーツに見るからに人の骨で作られたであろう杖を手にした男。指には、二巻きの指輪をしている。

 

「……ドーセント」

 

「ええ、その通りですよ。Ms.エレノア」

 

「私は身体派のドーセント。イオでございます。以後お見知りおきを」

 

 深々と頭を下げて一見、礼儀正しく振る舞う。だが、男の身体は微細に動き、仕掛けて来ている。『こうしたらどう返してくれるんだ?』と、新しい玩具で遊んでいるようだ。

 真っ正面からの喉笛への杖による刺突。上部からの頭へ向けた杖の振り下ろし。仕掛けられる度に応じるように僅かに身体を動かす。

 

 次々と仕掛けられて、後手に回っているこの状況……正直鬱陶しい。無視しても良いが……それで本当に来たときに対応できなかったら終わりだ。腹立たしいことだがコイツのお遊びに付き合ってやるしかないか。

 

 ピタリと、仕掛けてきていた男の動きが止まる。頭を上げ、上機嫌そうに薄く笑う。

 

「流石です。Ms.エレノア。全て防がれてしまいました」

 

「??」

 

 チャンはなに言ってるんだという顔を浮かべる。私と目の前の男のやり取りに気付いていないような反応だった。

 

 分からないか。まあ、そんなもんだ。

 

「私は、我が師、マエストロより、あなた方2人をアトリエへと案内するように申し遣っております」

 

「罠と分かり切っている場所に、はいそうですかと行くとでも思ってんのか?それも元凶のお前達薬指の案内で、だ」

 

 その至極当然な問いに対して、演劇の中のキャストのようなオーバーアクションでわざとらしく困ったようにみせた。

 

「ええ、当然存じております。ですが、これは困ってしまいました。これでは、マエストロの指示に沿えなくなってしまいます……」

 

 姿勢を直し、ドーセントは薄気味悪く、更に口角を上げた笑みを浮かべながらこう言葉を紡いだ。

 

 

「ですから、そこの木偶の妹をこちらで預かっております。これで、私めの案内を受けてくださいますね?」

 

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