ワシはこのゲームを、Wiiリモコンが壊れてるまで遊んでたのじゃ。
何?
Wiiとは何だじゃと?
ううむ、これも時代か………
「残念ですが、貴方は次元の狭間に落ちて死んでしまいました」
「そんな事ある?」
気持ち良く散歩していたら、突然開いた穴に落ち、気付く間も無く死んでいたでゴザル。
「今回の事案は非常に稀ですね。なので、異世界転生しません?」
「何でそんな急に話変わるの?」
「良いんですよ、導入なんてこのくらい軽いノリで。読者は長ったらしい転生導入なんて望んでません」
「メタ発言やめてね」
背中に羽の生えた女神的な奴が言うには、どうやら俺は『宇宙戦艦ヤマト』リメイク版の世界へ転生させられるらしい。
「転生特典、どうします?」
「じゃあ、『機動戦士ガンダム』の空母ドロス下さい」
「はい、分かりました。おまけで大きさを百倍にして、あの世界でもそう簡単には撃沈されないよう、魔改造チート空母にしてあげましょう。私は優しいですねぇ、こんなにおまけを付けてあげて。ありがとうって言って!!!!!(クソデカボイス)」
「アザッス」
うわぁ、何だか凄い事になっちゃったぞ。
何この『時間操作装置付き全自動工場』って?
「ついでに、貴方自身も強化しておいてあげましょう。スーパーコーディネイターすら足元にも及ばない程の知力と身体能力を付与してあげます」
「おお」
「おおじゃないが?」
「これはおおだろ」
ついで感覚で、人類を超えてしまった。
「他に何か欲しい物あります?」
「んまぁ、特には無いです」
「はい、それじゃ転生どうぞ」
次の瞬間、目の前から女神的な奴が消え、周囲の景色が一変する。
瞬きを終える間も無く、俺は見知らぬ宇宙船のブリッジへ放り込まれていた。
「転生っつったら、もうちょっとこう……何かあるだろ。穴に落とすとか、扉を出すとか。いきなりブリッジに放り込まれても困るんじゃが?」
てか、何処やねん此処は。
……あ、ドロスのブリッジか!
「転生……転生か? 転移の間違いでは?」
肉体そのまんまだし。
いや、そう言えば次元の狭間に落ちて肉体ごと消滅したんだった。
じゃあ、これは新しい身体なのか?
まぁいいや。
「取り敢えず説明書よ」
コンソールやモニターに目を通しながら、広大なブリッジ内をぐるぐる歩き回る。
流石は全長40kmもある超巨大空母。
船体から伸びる棒の先っちょに付いてるブリッジだけでも、下手な建物が丸ごと入りそうな広さだ。
「ほぉん、ふぅん……成る程ね。完全に理解した」
よし。
この魔改造クソデカ空母ドロスの全てを管理・維持しているという、スーパー人工知能なる奴を呼び出してみるか。
「お、ボイス決められるじゃーん。……ゆっくり魔理沙にしとこ」
『何で?』
早速、ゆっくり魔理沙っぽい音声に設定されたAIから反応が返ってきた。
「普通こういうのは、美少女系に設定するもんじゃないんですか?」
「良いんだよ、適当で。大体、読者にはボイスなんて聞こえないんだから」
「メタ発言やめてね」
◇ ◇ ◇
――数時間後。
「ほぉん、ふぅん……成る程ね。完全に理解した」
「その台詞、さっきも言ってましたが?」
スーパー人工知能マリエモンからドロスについて一通り説明を受けたので、今度こそ本当に完全に理解した。
多分。
「ああ、ところで。この世界へ魔改造ドロスと共に転生した訳ですが、今後の予定は何か決めているのですか?」
「そうねぇ……」
『宇宙戦艦ヤマト』のリメイク版と言えば、我らが地球が数々の星間文明に滅ぼされかける世界である。
ガミラス。
ガトランティス。
その他諸々。
ロクでもねぇ宇宙である。
ふむ、ならば。
「せっかくさぁ! 宇宙戦艦ヤマトの世界に転生したんだから、流行らせたいよね! 人型機動兵器!!」
「えぇ……流行らないと思いますけど……」
「流行る流行る。有用性を示せば、きっと流行るよ」
そうと決まれば、早速作ってみようじゃないか。
人型機動兵器を!
「で、何を作るんです?」
「ザクⅠ」
「えぇ……せめてギラ・ドーガとかにしておきましょうよ……」
はぁぁぁ。
分かってねぇなぁ。
「なぁにを言っとるんだね、マリエモン君。こういうのは、徐々に強い機体へ発展していくのがロマンじゃろ!」
「はぁ、左様ですか」
「後、いきなり本命の量産機を作るより、試験機で色々試してからの方が良いと思うの」
「急に真面目な事を言うの、やめてもらっていいですか?」
さぁ!
そうと決まれば、早速MS工場へ行くんじゃ!
◇ ◇ ◇
――2日後。
「おぉ~。ガンプラ作ってるみたいな速さで、ザクⅡが組み上がっていく」
100を超えるMS生産ラインを一望出来る監視室。
その巨大な窓の向こうでは、天井から伸びる無数の機械アームが忙しなく動き回り、ザクⅡの装甲や四肢を次々とガッシャンガッシャン組み上げていた。
骨格が組まれ、内部機器が詰め込まれ、装甲板が次々と取り付けられていく。
頭部、胴体、両腕、両脚。
各工程で作られた部品が流れるように一ヶ所へ集まり、最後には見慣れた薄緑色の巨人へと姿を変えた。
1機完成したかと思えば、その隣ではもう次の機体が組み上がっている。
更に奥を見れば、同じ光景が何十列も続いていた。
巨大な人型兵器が次々と形になっていく光景は、中々に壮観である。
時間操作装置の恩恵もあり、1時間につき約50機という訳の分からない速度でザクⅡが生産されて行く。
え?
ザクⅠはどうしたのかって?
奴さん死んだよ。
俺が(試験で)殺した。
宇宙空間における耐久性能を確認する為、限界まで無茶苦茶な機動をさせた結果、両腕が吹き飛び、脚部が千切れ、そのまま機体は四散。
最後には特大の花火を咲かせ、宇宙の塵となった。
原因は至って単純。
機体強度が、推進機の加速性能に耐えられなかったのだ!
ザクⅠなのにヅダと同じような欠点を抱えるという、何とも言えない結果に終わってしまった。
やっぱり、超硬スチール合金では無理があったらしい。
という訳で、新たに装甲材にガンダリウム合金を採用し、その他諸々を改良したザクⅡを開発。
こちらは推進機の最大加速にも問題無く耐え抜き、良好な機体性能を発揮している。
勿論、武装もこの世界で通用するよう魔改造済みだ。
ザク・バズーカの弾頭を量子弾にしたり、ザク・マシンガンへ電磁加速機構と重力加速装置を追加したり。
他にも色々弄ってある。
まぁ、此処までやっておいて何だが、普通にビーム兵器を運用した方が強い。
が!
しかしだ!
ザクには、やはり実弾兵器がよく似合うのだ!
ガッハッハッハッハッハァ!!
「お楽しみのところ申し訳ありません」
「やあ、マリノジ。何かあったかい?」
「星系外からお客さんが来ています」
「客ぅ?」
急いで監視室に備え付けられた大型モニターへ、艦外の映像を表示させる。
そこには30隻の宇宙艦艇が、ドロス正面へ展開しているのが確認出来た。
どの艦も真緑の船体を持ち、艦首付近に黄色く光る目玉のような部分が存在する。
ふぅん、見覚えしかない。
「どう見てもガミラスやんけ」
現在地が大マゼラン銀河外縁部なのは分かっていたが、まさか転生から僅か2日で遭遇するとは思っていなかった。
もしかして昨日、ザクⅠが爆散したところでも見られていたのか?
相手はクリピテラ級18隻、ケルカピア級6隻、デストリア級4隻、メルトリア級2隻。
合計30隻。
編成を見る限り、哨戒か偵察艦隊といったところだろうか。
「ガミラス艦隊から通信が来ました。何やら『大ガミラス帝星に服従せよ』とか言っています」
「断っといて」
人間かどうかすら分からない見ず知らずの相手に、いきなり服従しろとは如何なものかと思うよ?
そもそも俺達じゃなかったら、言葉すら通じない筈なんだから、最初に言語データなり何なり寄越せや。
「あ、ガミラス艦隊が発砲しました」
「早くない?」
モニターの向こうで、30隻のガミラス艦が一斉に赤い陽電子ビームをドロスへ向けて放つ。
だが――。
ドロスの周囲へ展開された重力壁へ接触した瞬間、陽電子ビームは軌道を大きく捻じ曲げられ、明後日の方向へ消えていく。
一発たりとも、ドロスの船体へは届かない。
「何これ、ガミラス式の新しい対話?」
「いや、普通に攻撃しているんだと思いますよ」
「えぇ!? 我々に対する宣戦布告ってコト!?」
いくらガミラスがイケイケの星間帝国だからって、40kmを超える要塞みたいな空母に30隻で挑むのはどうなのよ!
「今出せるザクって、何機ある?」
「武装を完了した機体なら、120機が待機しています」
「じゃあ、60機出しちゃって」
「良いんですか? 本格的にガミラスと戦う事になりますけど」
「良いんじゃない? 多分」
丁度良いしね。
「それにさ、MSでガミラスを痛め付けたら流行りそうじゃない? 人型機動兵器!」
ガミラスは強大な星間国家。
そんな連中をMSで圧倒すれば、他の国家も人型機動兵器の有用性に気付き、開発を始める筈!
完璧な計画では?
さぁ、行け!
60機のザクよ!
ガミラスに、人型機動兵器の恐ろしさを叩き込んでやるのだ!!
==========
「ふむ。アレが報告にあった要塞か。大マゼラン外縁部に、あのような物が存在していたとはな」
メルトリア級航宙巡洋戦艦のブリッジ。
その中央で、神経質そうなガミラス人の男が艦隊の指揮を執っていた。
彼らの目前には、オリーブグリーンに染められた巨大構造物が浮かんでいる。
余りにも巨大。
そして、余りにも幅広い。
扁平な本体から左右へ巨大な構造物が張り出し、その表面を無数の開口部や突起物が覆っている。
全長40km以上。
ガミラス艦隊の兵士達には、それが宇宙船であるなど想像も出来なかった。
どう見ても、巨大な宇宙要塞である。
「今まで発見されなかったという事は、大方、大した文明の物ではあるまい。早速、服従を呼び掛けたまえ」
艦隊司令官は、この周辺に強大な星間国家が存在するという話を一度も耳にした事が無かった。
噂すら無い。
故に彼は、ドロスをこう判断した。
これまでのガミラスによる調査を掻い潜れる程度の、小規模な文明が建造した宇宙要塞。
大きさだけは立派だが、技術水準までは大したものではないだろう。
「しかし大佐。あの要塞を所有する文明が、我々の言語を理解出来るとは思えません」
命令を受けた通信士が、恐る恐る異議を唱える。
「構わん」
「え?」
「大マゼラン銀河の外縁部とはいえ、この宙域に存在しながら我ら大ガミラス帝星を知らぬなど、それだけで大罪である。返答が無ければ破壊してしまえ!」
残念ながら、この艦隊司令官は極めて傲慢であり、同時に大ガミラス帝星への強烈な自負を持つ人物でもあった。
そして、その傲慢さが――。
これから艦隊全体を悲惨な目に遭わせる事になる。
「要塞から返答が来ました!」
「何と言っている?」
「『こちら、宇宙空母ドロス。我が艦は、貴国の服従要求を受諾する事は出来ない』と!」
「宇宙空母……?」
一瞬だけ、ブリッジが静まり返る。
あの巨大構造物が空母?
そんな馬鹿な。
司令官は僅かに眉を顰めたものの、直ぐに怒りがそれを上回った。
「何と無礼な! 大ガミラスの慈悲を無碍にするか! 全艦、攻撃用意!」
「お待ち下さい、大佐!」
副官が慌てて制止する。
「一度基地へ帰還し、総司令部へあの要塞――いえ、空母について報告するべきです! あの規模は明らかに異常です!」
「黙っていろ!」
司令官は副官を一喝した。
「どれだけ巨大であろうと、所詮は張りぼて! 我々だけで十分に破壊出来る!」
そして遂に、攻撃命令が下された。
30隻のガミラス艦から赤い陽電子ビームが一斉に放たれ、巨大なドロスへ伸びていく。
それを見ていたガミラス軍人達の誰もが、この後に起こる光景を予想していた。
赤い光が敵の装甲を焼き払い、あの巨大構造物へ無数の穴を穿つ。
そうなる筈だった。
だが。
その予想は、完全に外れる事になった。
ドロスへ向かっていた陽電子ビームが、突如として不自然に曲がる。
ある物は上へ。
ある物は横へ。
まるで見えない巨大な壁に殴り付けられたかのように軌道を変え、そのまま宇宙の彼方へ消えていく。
「な、何だと!?」
ガミラス艦隊に動揺が広がった。
それも当然である。
これまで数多の敵を焼き払ってきた陽電子ビームが、標的へ触れる事すら出来ずに弾かれる光景など、誰も見た事が無かった。
「陽電子ビームが効かぬのなら、ミサイルと魚雷で攻撃せよ!」
「要塞――いえ、敵空母より艦載機の発進を確認!」
「何?」
ガミラス艦隊のあらゆる攻撃を弾き続けるドロス。
その正面に並ぶ巨大な発進口から、何かが次々と宇宙へ飛び出していく。
10機。
20機。
30機。
60機。
それらは、ガミラス軍人達が知る如何なる艦載機とも異なる姿をしていた。
全高およそ17m。
薄緑色の装甲に腕と脚。
頭部には一つ目のように輝くモノアイ。
巨大な銃器を両手で構えた――人型兵器。
ザクⅡである。
「人型兵器だと?」
司令官が呆れたように鼻を鳴らす。
「そんな玩具で何が――」
「敵人型兵器、急速接近!」
「何?」
「は、速い!?」
司令官の表情から、嘲笑が消えた。
薄緑色の巨人達が一斉に加速する。
60機のザクⅡは、ガミラスの主力戦闘機ツヴァルケすら凌駕する速度で、艦隊目掛けて殺到してきた。
先程まで人型兵器を嘲笑っていた司令官の顔から、見る見る血の気が引いていく。
まだ彼らは知らない。
自分達が今目にしている兵器こそ、主人公が宇宙へ流行らせようとしている。
モビルスーツという名の、人型機動兵器である事を。
ヅダは出て来ません。
理由は、ゴーストファイターだからです。
ヅダハゴーストファイターデハナイ!
陰謀おじさんは、冥府に帰って。