正気を取り戻したワシが、余りにもニッチ過ぎるだろとなった為、お蔵入りとなり現在の形になりました。
ガミラスとの初接触から、大体6日後。
「俺もエースパイロットとして、歴史に名を残したいんだよォーッ!!」
「だからって、自ら出撃しようとせんで下さいよ」
新たに、120隻からなるガミラス艦隊が出現した。
ガイペロン級多層式航宙母艦6隻を中核とした、かなり気合いの入った艦隊である。
どうやら前回生き残った連中が、MSの脅威を上手く伝えてくれたらしい。
今回は対空兵装を充実させたガイデロール級2隻を配置。
更に、クリピテラ級80隻で艦隊周囲を固め、対空防御能力を大幅に高めている。
残る戦力は、ケルカピア級22隻とデストリア級10隻。
どうにも、アウトレンジ戦術を狙っている艦隊らしい。
MSを艦載機と対空砲火で足止めしている間に、遠距離からドロスへ魚雷とミサイルを叩き込む。
恐らく、そんな作戦なのだろう。
まあ、ワシらのMS。
全機にワープ装置付けてあるから、意味無いんじゃけどなぁ!
「でぇじょうぶだ! 赤い人も『当たらなければどうという事はない』って言ってただろ。当たらなければ、当たらないんだから当たらないんだよ」
「んな無茶苦茶な事を……」
さて。
現在、MS部隊の出撃準備を進めている訳だが、ここで1つ問題が発生していた。
せっかくMSを作ったのに、1度も乗らず。
1度も自分で活躍せず。
それは如何なものか!
そう思った俺は、いそいそと自分専用機を製造。
ジオン風のパイロットスーツまで着込み、意気揚々と出撃しようとした。
だが、マリーサが出撃を許してくれないのだ。
「別に遠隔操作で良いじゃないですか。そんな直接乗り込む事に、拘らなくても」
「嫌じゃあ! 遠隔操作は0.01秒のラグが有るから嫌じゃあ!」
たかが0.01秒。
されど0.01秒。
戦闘では、僅か0.01秒の差で勝敗が決まる事など、ざらに有るのだ!
「テッテレー! 阿頼耶識システム!」
「あ! アンタ、いつの間にそんな物を!?」
マリッサの妨害を掻い潜り、素早く専用機へ乗り込んだ俺は、背中に取り付けた機械をコックピット背部の接続ケーブルへ繋ぐ。
機体の感覚が、自分の身体へ流れ込んで来る。
「ふっふっふっふっ……実に良く馴染むぞ。完全に身体がザクになったようだ!」
ザクの指をワキワキと動かし、動作を確認する。
阿頼耶識システムとは!
『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』に登場した、人間と機械を直接繋ぎ、機体を自分の身体のように感覚的操作出来るインターフェースである!
最初はリユース・P・デバイスにしようかとも考えたが、まだ手足とはさよならしたくない。
なので、こちらを身体に取り付ける事にした。
「はぁ……無茶はしないで下さいよ。死んだら終わりなんですから」
「ははは、こんな所じゃ死なないさ」
ザク・バズーカを右肩へ担ぐ。
ザク・マシンガンは腰部ラックへ固定。
予備弾倉は……まあ、1個で良いや。
俺の専用機。
深緑色に塗装された高機動型ザクⅡを、だだっ広いドロス格納庫の一角に設置されたカタパルトへ移動させる。
「さぁーて。あ、いや、ちょっと待てよ」
「どうしたんです?」
「ガンダムシリーズってさ、出撃する時に名前言うじゃん。この世界での俺の名前、まだ決めてなかったなぁって」
危ない危ない。
大事な事を決めていなかった。
MSに乗って出撃するなら、絶対にやらなきゃいけない。
「ふむ……取り敢えず、クワトロとでも名乗るか」
「せめて、もうちょっと捻りましょうよ」
「じゃあ、クトロワで良いや」
設定でクワトロを名乗ると言ったが、あれは嘘だ。
すまんな、読者の皆んな!
「クトロワ! 高機動型ザクⅡ、いっきまーす!」
カタパルトが作動し、高機動型ザクⅡが一気にドロスから射出される。
俺はそのまま機体を加速させ、一直線にガミラス艦隊の居る宙域へ向かった。
そして、俺の後を追うように。
ドロスの巨大な発進口から、ザクⅡの群れが次々と飛び立っていく。
その数、1200機。
ガミラスの皆んなぁ!
待っててねぇぇぇぇぇ!
==========
ドロスより、およそ40億km。
ガミラス艦隊が、周囲に何も存在しない漆黒の宇宙空間を進んでいた。
多数のクリピテラ級を先頭に、ケルカピア級、デストリア級が続く。
その後方には、ガイデロール級とガイペロン級が少し距離を置いて航行していた。
「少将。間も無く、例の超巨大空母が射程圏内に入ります」
「うん。では、そろそろ準備を始めようか。空母部隊は艦載機の発艦準備に入れ。前衛艦隊はデータリンクを開始。5分後、ミサイル及び魚雷による一斉攻撃を仕掛ける」
ガイデロール級航宙戦艦のブリッジ。
その中央では、歴戦の軍人を思わせる風貌のガミラス人が、自ら指揮する艦隊へ次々と指示を出していた。
「この距離であれば、幾ら敵の人型兵器が高速であろうと、我々との交戦距離へ到達するまでには時間が掛かる」
司令官である少将は、正面モニターへ映る敵艦を見詰めながら続ける。
「加えて、342機のデバッケと対空陣形を組めば、そう易々と手は出せまい」
6隻全てのガイペロン級が、空間艦上戦闘機デバッケを57機ずつ搭載している。
合計342機。
敵人型兵器が接近した場合、まず前衛艦隊の対空砲火で足を止める。
そこへデバッケを差し込み、数の優位で撃破する。
その間に、艦隊本隊は遠距離から超巨大空母を攻撃。
理に適った作戦である。
相手が、魔改造されたザクⅡでなければ。
「超巨大空母から、艦載機の発艦を確認!」
「数は?」
「100機……300機……500機……」
レーダー手の表情が強張る。
「700……900……! まだ増えます!」
「何と!?」
やがて反応数は、1000を超えた。
ブリッジに僅かな動揺が走る。
「むぅ……何という数だ。だが、数だけでこの陣形を崩せる訳では――」
「し、少将!」
レーダー手が悲鳴にも似た声を上げた。
「て、敵人型兵器が、ゲシュタムジャンプしました!」
「何!?」
レーダーから、1200機もの反応が一斉に消失した。
ブリッジは、驚愕と困惑の渦に包まれる。
「馬鹿な! あれ程の小型機でジャンプなど――」
司令官の表情が変わった。
「――しまった!?」
ほんの一瞬。
司令官である少将は、余りにも予想外の事態を前に思考を止めてしまった。
そして、その一瞬が命取りとなった。
「下方に反応有り!」
「何だ!?」
「人型兵器です!!」
艦隊直下。
何も存在しなかった宇宙空間に、幾つもの白い渦が発生する。
その白い渦から1200機ものザクⅡが、一斉に姿を現した。
もし、あと1秒早く撤退命令を下していれば。
損害を出す事無く、敵人型兵器がゲシュタムジャンプを使用可能という、極めて重要な情報を持ち帰る事が出来ただろう。
もし、瞬時に全艦へ警戒と対空戦闘準備を命じていれば。
多少なりともザクⅡを撃墜する事が出来たかもしれない。
だが、現実は非情である。
そして更に。
彼らの下へ、追い打ちを掛ける凶報が届く。
「後方より、高速で熱源接近!」
「数は!?」
「1です!」
「ミサイルか!?」
「いえ……この動きは……」
レーダー手の顔から血の気が引く。
「人型兵器です!」
前回の戦闘を生き延びたガミラス艦が観測した、人型兵器。
その性能を、更に上回る速度で接近する敵影。
ブリッジに居る者達の表情が、一斉に強張った。
明らかに、小型艦載機が出して良い速度ではない。
「いかん! 奴の狙いは空母か!?」
少将が即座に叫ぶ。
「本艦とデルムガルで盾になるんだ! 他の艦は下方の敵へ対処! 空母部隊、艦載機の発艦を急げ!」
2隻のガイデロール級が、急接近する人型兵器の進路へ割り込もうとする。
だが、間に合わない。
人型兵器は、稲妻の如く2隻の間を駆け抜けた。
「何という速度だ……!」
誰かが、呆然と呟く。
高速で宇宙を駆ける人型兵器。
深緑色に塗装された高機動型ザクⅡは、空母部隊最後尾を航行していたガイペロン級へ一直線に接近。
速度を殆ど落とさぬまま、肩に担いでいたザク・バズーカを構えた。
無論、空母部隊も黙って接近を許している訳ではない。
船体側面に備えられた速射砲とカノン砲が、一斉に火を噴く。
赤い陽電子ビームとオレンジ色の弾幕。
無数の砲火が、高機動型ザクⅡへ殺到した。
だが速い。
余りにも速過ぎる。
カノン砲から放たれる赤い陽電子ビームは勿論。
速射砲が形成したオレンジ色の弾幕すら、高機動型ザクⅡには擦りもしない。
増設された脚部スラスターと、大幅に推力を強化された大型バックパック。
そこから生み出される、常識外れの速度。
それでいて動きは硬くない。
急加速と急減速に加え、横滑りするような軌道変更。
腕や脚まで利用した、柔軟かつ俊敏な姿勢制御。
まるで巨大な機械ではなく、生身の人間を相手にしているのではないか。
そう錯覚する程の動きだった。
これまで1度として相対した事の無い未知の兵器。
その性能に、ガミラス軍人達は完全に圧倒されていた。
そして遂に。
空母部隊最後尾のガイペロン級が、深緑色の巨人に捉えられる。
高機動型ザクⅡは、ガイペロン級の艦後方へ一気に回り込んだ。
バズーカを構え、発射。
続けて、もう1発。
放たれた2発の量子弾が、左右に配置された巨大な推進口へ吸い込まれるように飛び込んだ。
直後、艦後部が、内側から大きく爆破。
巨大な推進機が吹き飛び、炎と破片が宇宙空間へ撒き散らされる。
更に、その爆発が艦内部へ連鎖。
船体各所で次々と誘爆が発生した。
外装が吹き飛び、構造材が折れる。
ガイペロン級の巨大な船体が、至る所から炎を噴き出しながら崩れ始めた。
高機動型ザクⅡの攻撃は、まだ終わらない。
次の標的となったのは、空母部隊中央を航行していた1隻。
艦載機の発艦作業を急いでいた、別のガイペロン級である。
高機動型ザクⅡは機体を急上昇させ、ガイペロン級上方へ回り込む。
そこから急降下し、今まさに第2飛行甲板から飛び立とうと加速していたデバッケを――。
そのまま踏み潰した。
機体を発艦甲板へ叩き付けられたデバッケが、装甲を歪ませながら爆発。
その炎の中から、第2飛行甲板へ着地した高機動型ザクⅡが姿を現す。
「て、敵襲!」
「逃げろぉ! 逃げろぉ!」
「クッソォ! おい、逃げるな! 発艦作業を急げ!」
大混乱に陥っている甲板の様子を意にも介さず、巨人がバズーカを構える。
その先には。
発艦を待つ、多数のデバッケ。
「ま、待て――!」
量子弾が放たれた。
強烈な爆発が、第2飛行甲板を丸ごと飲み込む。
発艦を待っていたデバッケ。
機体へ乗り込もうとしていたパイロット。
作業中だった整備員。
そして、装填作業中だったミサイル。
それら全てが爆発へ巻き込まれた。
更に、ミサイルや燃料が次々と誘爆し、最初の爆発とは比較にならない巨大な炎が、飛行甲板から噴き上がる。
やがて爆発は船体内部へまで広がり、ガイペロン級の船体各所から次々と炎が噴き出した。
その光景を背後に深緑色の巨人が、ゆっくりと赤く輝く単眼を、次なる獲物を探すように左右へ振る。
「……化け物めぇ」
司令官は、歯を食い縛りながら呟いた。
戦闘開始から、まだ5分も経っていない。
それにもかかわらず。
既に空母2隻が、たった1機の人型兵器によって喰われた。
「前衛はどうなっておる!?」
「敵人型兵器に肉薄され、混乱状態です!」
少将が正面モニターへ視線を向ける。
そこに映っていたのは――。
1200機もの薄緑色の巨人に群がられ、完全に陣形を崩されたガミラス前衛艦隊の姿だった。
艦隊直下へワープした1200機のザクⅡが、一斉にクリピテラ級80隻へ群がる。主砲では近過ぎて狙えず、速射砲も激しい機動に追い付かない。
ザク・マシンガンがミサイル発射管や艦橋、推進機を次々と撃ち抜き、動きを止めた艦にはザク・バズーカの量子弾が叩き込まれる。
幾度となく爆発が起こり、クリピテラ級が次々と火球へ変わる。
その間を縫ってザクⅡはケルカピア級とデストリア級へも殺到。
前後左右、果ては上下から襲い掛かる人型兵器に、ガミラス艦隊は反撃すら満足に出来ない。
本来なら援護に入る筈だったデバッケも、空母部隊が高機動型ザクⅡの襲撃を受けた為、1機たりとも発艦出来ていなかった。
最早これは戦闘ではない。
一方的な蹂躙である。
「……負けたな」
少将が、静かに呟いた。
正面モニターに映るのは、既に艦隊と呼べる状態では無い味方艦。
120隻存在した艦隊は見る影も無く、クリピテラ級、ケルカピア級、デストリア級の残骸が至る所で炎を上げている。
生き残っている艦は、既に40隻にも満たない。
そして今も、1200機ものザクⅡが残存艦へ襲い掛かっていた。
「少将……」
「これ以上は無意味だ」
副官の言葉を遮り、少将は大きく息を吐く。
「全艦へ通達。本作戦を中止する。生存艦は直ちに反転、ゲシュタムジャンプで戦域を離脱せよ」
「では、本艦も――」
「いや」
少将は首を横に振った。
「本艦とデルムガルは、此処に残る」
ブリッジが静まり返った。
ガイデロール級には、多数の対空砲が搭載されている。
加えて、他の艦より遥かに頑丈な船体を持つ、この艦隊で最もザクⅡの攻撃に耐えられる艦だった。
ならば、役目は1つしかない。
「我々が殿を務める。残存艦がジャンプするまで、人型兵器を引き付けるぞ。………すまんな、諸君」
「……ザーベルク!」
「「「ザーベルク!」」」
ブリッジに居た全てのガミラス軍人が、敬礼を取る。
「デルムガルにも伝えてくれ。……済まないとな」
通信士が無言で頷く。
間も無く、僚艦デルムガルから返信が届いた。
『謝罪は不要です、少将。我々もガミラス軍人。最後までお供します』
少将は僅かに目を伏せた。
「……感謝する」
その間にも、生き残った艦艇が次々と反転していく。
それを追おうとしたザクⅡの前へ、2隻のガイデロール級が割り込んだ。
「対空射撃、開始!」
船体各所の対空砲に主砲、副砲までもが一斉にビームを放つ。
無数の光弾とビームが宇宙を埋め尽くし、迫るザクⅡを強引に押し返した。
「敵を逃げる艦へ近付けるな!」
「了解!」
側面へ弾丸が突き刺ささり、爆発。
対空砲が1基吹き飛ぶ。
どれ程、攻撃を受けても2隻は退かない。
盾になるように並び、残存艦とザクⅡの間へ立ち続ける。
「残存艦、残り12隻!」
「続けろ!」
「残り5隻!」
ダメージにより、船体が大きく揺れる。
「最後の艦、ジャンプしました!」
その報告を聞いた瞬間、少将は僅かに笑った。
「そうか」
逃げ延びた艦は40隻未満。
120隻の大艦隊を率いて来た結果としては、完全な敗北だった。
それでも、情報を持ち帰る者達だけは残せた。
「……さて」
正面から、無数のザクⅡが迫って来る。
「殿の仕事を、最後まで果たすとしよう」
隣を飛ぶデルムガルも、残された対空砲を一斉に旋回させる。
2隻のガイデロール級は逃げる事無く、薄緑色の巨人の群れへ、真正面から砲口を向けた。
昔、ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079というゲームがあってじゃな。
ワシはこのゲームを、連邦の白いヤツとビーム兵器が如何に恐ろしい存在か、身に染みるまで遊んでたのじゃ。
警告音が鳴った瞬間、ビームが飛んできてのう。
味方が、何も出来ずに死んで行くんじゃ。
は!ふう、ひぃ――以下発狂した文。