すまんな!
モチベ維持の為に、高評価、感想をよろしくお願いします。
総統府バレラスタワー。
その最上部に位置する総統執務室では、慌ただしく情報が飛び交っていた。
巨大な窓の向こう。
普段なら、恒星サレザーが帝都の街並みを照らす時間帯なのだが、異物としか言いようのない巨大な影が、その光を遮っていた。
超巨大空母――ドロス。
全長40kmを優に超える巨体が、帝都バレラスの空を覆っていた。
そして、その艦から降下した無数の人型兵器が、帝都各地へ散開している。
「総統!」
執務室へ駆け込んできたレドフ・ヒス副総統は、息を整える暇もなく報告を始めた。
「敵人型兵器、総数約6100機が帝都へ降下! うち6000機はこれまで確認されていたザクⅡ! 残る100機は、青色の新型と思われます!」
「…………」
デスラーは答えず、窓辺に立ったまま上空に浮かぶドロスを見上げていた。
その表情には普段と変わらぬ余裕が残っている。
だが。
僅かに寄せられた眉。
固く結ばれた口元。
明らかに機嫌が良いとは言えなかった。
「敵部隊は現在、バレラス周辺の陸軍基地、航空基地、宇宙軍港へ向けて進撃中! 既に複数の基地が攻撃を受けています!」
「帝都防衛隊は?」
デスラーが静かに尋ねる。
「目下、応戦中であります! ですが……」
ヒスが言葉を詰まらせる。
「人型兵器の機動力に、地上部隊が対応し切れておりません。更に例の青い新型は、ザクⅡ以上の戦闘能力を持つ可能性があります」
「そうか」
デスラーが返した言葉は、それだけだった。
「それと総統、帝都バレラス全域へ非常事態宣言を発令しました。市民には地下避難施設への退避を命じていますが……」
ヒスの顔が更に険しくなる。
「突然の敵襲により、主要道路には避難する市民が殺到。交通網の一部が完全に麻痺しております」
「市民の避難を最優先にしたまえ」
「はっ!」
「軍には、市街地で無闇に重火器を使用しないよう通達を。敵を撃退する為にバレラスそのものを破壊しては意味が無い」
「直ちに!」
ヒスが端末へ指示を打ち込む。
デスラーは再び窓の外へ視線を向けた。
その先には、小さな黒点が幾つも飛び交い時折、地上から赤い閃光が空へ向けて伸びている。
帝都で、戦闘が行われているのだ。
他ならぬ、大ガミラス帝星の中枢で。
「……随分と、思い切った真似をしてくれたものだ」
デスラーが、小さく呟く。
声こそ穏やかだったが、その言葉を聞いたヒスは思わず顔を引き攣らせた。
「デスラー総統。このバレラスタワーにも、いつ敵が来るか分かりません。そろそろ避難を」
「安心したまえ、ヒス君。敵の狙いは私でも、バレラスの制圧でも無いよ」
「え?」
「そういう動きをしている」
ガミラスの政治中枢を狙うでもなく、軍需工場や研究所を襲撃し、モビルスーツ開発を妨害する訳でもない。
ニセールジオンの戦力は、軍事基地や軍港ばかりを狙っている。
だからこそ。
デスラーには、敵の目的が理解出来なかった。
これだけの戦力を持ちながら、何故そのような非効率な攻撃を行う?
(もしや――ガミラスに勝つ事そのものが、目的ではないのか?)
戦争とは、本来勝利する為に行うものだ。
勝利へ繋がらない行動など、ただの愚策でしかない。
だが。
デスラーには、あのクトロワと名乗った男が、そこまでの愚か者には思えなかった。
「総統」
今度は別の声が響く。
執務室の一角に立っていたミーゼラ・セレステラ宣伝情報相だった。
彼女の前には複数の立体映像が展開され、ガミラス各地から送られてくる情報が次々と表示されている。
「帝都以外についても、ご報告があります」
「聞こう」
「先程のクトロワと名乗る男による演説ですが、帝都だけではありません。ガミラス本星全土、並びに一部の属領でも確認されています」
ヒスが振り返る。
「まだ放送網を取り戻せんのか!?」
「既に敵からの侵入自体は遮断しました」
セレステラは冷静に答える。
「ですが、遅過ぎました。映像は既に十分過ぎるほど拡散されています」
「…………」
「現在、各地の情報網は混乱しています。政府機関への問い合わせも殺到。一部地域では通信そのものが正常に機能していません」
新たに届いた情報に目を通した瞬間、セレステラの表情が僅かに険しくなった。
「更に問題が発生しました」
「何かね?」
デスラーが視線だけを向ける。
「バレラス以外の複数都市において、暴動が発生しています」
「暴動だと!?」
ヒスが声を上げた。
「はい。現在確認されている限り、その中心となっているのは二等臣民です」
執務室に短い沈黙が訪れる。
それに構わず、セレステラは淡々と続けた。
「クトロワの演説が引き金になったものと思われます」
『我々は、決してガミラスには服従しない』
その言葉。
一等ガミラス臣民にとっては、ただの傲慢な挑発だった。
だが。
征服され、服従を強いられた者達にとっては違う。
何度大艦隊を差し向けられても屈せず。
遂には帝都バレラスの上空まで乗り込んできた存在が、公然とガミラスへの服従を拒否したのだ。
その意味は。
決して小さくない。
「親衛隊は何をしているんだ!」
ヒスが声を荒らげる。
「現在、本星に残っている親衛隊の戦力は僅かです。各星系で相次いでいる反乱を鎮圧する為、主力の大半がガミラスを離れています」
「こんな時に……!」
ヒスが苦々しげに呟いた。
皮肉な話だった。
ドロスとの度重なる戦闘によってガミラスの威信が揺らぎ、各地で反乱が発生。
その鎮圧の為に親衛隊を派遣した結果、今度は本国の治安を維持する戦力が不足していた。
「現地の警察と残存する治安部隊へ鎮圧を命じていますが、帝都への攻撃と重なった事もあり、対応は遅れています」
「……クトロワ」
デスラーが、初めてその名を口にした。
静かな声で。
「中々、賑やかな男ではないかね」
「総統……」
ヒスが恐る恐る顔色を窺う。
デスラーの表情には、既に普段の薄い笑みが戻っていた。
しかし、目だけは笑っていない。
「他には?」
「こちらを」
セレステラが別の画面を開いた。
そこには、帝都から急速に離脱していく1隻の巨大艦が表示される。
「ヘルム・ゼーリック国家元帥が、ゼルグートⅡ世に乗艦。本星を離脱しました」
ヒスが目を見開く。
「ゼーリック国家元帥が!?」
「はい」
「奴め! この非常時に逃げ出したと言うのか!?」
「いえ」
セレステラは否定し、自身が得た情報を告げる。
「ゼーリック国家元帥は周辺宙域に展開する艦隊へ招集命令を発しています」
立体映像上へ、次々と艦隊を示す光点が表示されていく。
「現在、近隣の戦力を可能な限り集結させ――」
セレステラがドロスを示す巨大な光点を見る。
「巨大空母ドロスへの反撃準備を進めています」
「ほう」
デスラーの口元が、僅かに吊り上がった。
「ゼーリックにしては、随分と殊勝な行動ではないか」
「ですが、総統」
セレステラは慎重に言葉を選ぶ。
「現在のドロスへ正面攻撃を仕掛けた場合、集結させた戦力まで失う危険があります」
「分かっているとも」
デスラーは窓辺から離れ、ゆっくりと執務机へ向かった。
椅子へ腰掛け、巨大なドロスを映し出している立体映像へ視線を向ける。
青い瞳が細められた。
余裕を崩さないデスラーであったが、流石に40kmを超え、極めて強靭な防御力を誇る巨船をどう対処するべきか、未だ答えを出せずにいた。
唯一、有効打となり得そうな兵器は、第二バレラスで未だ開発中。
惑星間弾道弾を使用する事も一瞬頭を過ぎったが、大気圏内に居座るドロスへ撃ち込めば、バレラスも無事では済まない。
いずれ、古き衣を脱ぎ捨てる時は来る。
だが――今ではない。
どうするべきか、そうデスラーが様々な考えを巡らせていた、その時。
執務室の通信機が、けたたましい警報音を鳴らした。
『総統府警備隊より緊急報告!』
ヒスが振り返る。
「今度は何だ!?」
『敵人型兵器1機が――』
一瞬、通信兵が言葉を詰まらせる。
『バレラスタワーへ向け、高速接近中!!』
「何だと!?」
ヒスの顔から血の気が引いた。
「デスラー総統! 此処は危険です! 直ぐに地下へ避難して下さい!」
緊急報告を聞いたセレステラが、珍しく声を荒らげて避難を促す。
だが、3人が行動を起こすよりも早く。
既に1機のMSが、バレラスタワー目前まで迫っていた。
『敵機接近! 全車、迎撃開始!』
タワー周辺に展開していた警備部隊が、一斉に攻撃を開始する。
装甲車に戦車、固定砲台から放たれた赤いビームが、深緑色の機体へ殺到した。
しかし、当たらない、掠りすらしない。
深緑色のMSは、ビーム同士の僅かな隙間を縫うように飛翔し、猛烈な速度でバレラスタワーへ接近していく。
「何故当たらん!?」
警備部隊の隊長が叫ぶ。
「弾幕を張れ! 奴をタワーへ近付けるな!」
その命令に呼応し、迎撃の密度が更に増した。
幾重にも重なる赤い閃光。
普通ならば、逃げ道など存在しない。
それでも。
深緑の機体――高機動型ザクⅡは止まらなかった。
まるで、撃たれる場所を、最初から知っているかのように避け続ける。
「奴には……未来でも見えていると言うのか!?」
照準を合わせるより早く回避行動へ移る敵を前に、兵士達が慄く。
高機動型ザクⅡは、そんな警備部隊の頭上を一気に飛び越え、遂にバレラスタワーの根元へ到達した。
全身のスラスターが、一斉に火を噴き巨体が垂直に舞い上がって行く。
「攻撃中止! 攻撃中止!!」
隊長が慌てて命令する。
「今撃てばタワーに当たるぞ!」
警備部隊は砲撃を止めるしかなかった。
深緑色の高機動型ザクⅡが、バレラスタワーの外壁に沿うように上昇していく姿を、ただ見送る事しか出来ない。
そして遂に。
深緑の高機動型ザクⅡは――。
デスラー達が居る総統執務室の目前まで辿り着いた。
巨大な窓の向こうに、18m近い深緑の巨人が、空中に静止している。
「そ、そんな……」
余りの事態にヒスの顔が恐怖に染まり、その機体を見たセレステラは、息を呑んだ。
「深緑の……鬼神!」
ガミラス艦隊を幾度となく蹂躙してきた、正体不明のエース機。
それが今、デスラー達の目の前に居る。
セレステラは咄嗟にデスラーの前へ飛び出し、自ら盾になろうとした。
「随分と派手なご登場だね」
デスラーの顔から、先程までの薄い笑みが消える。
代わりに、鋭く険しい表情が浮かぶ。
その時。
『ご機嫌よう、デスラー総統!』
高機動型ザクⅡから、聞き覚えのある声が響いた。
デスラーが僅かに目を細める。
「……その声」
そして、確信する。
「クトロワ総帥か」
『如何にも!』
機体の外部スピーカーから、随分と楽しそうな声が返ってきた。
『人様の家に上がり込んでおきながら、家主へ挨拶せんのは失礼だと思ってな! こうして挨拶に来させてもらった!』
「家に上がる前に、まずベルを鳴らすのが礼儀だと思うのだが?」
『おっと、それは失礼した。次からは気を付けるとしよう』
「次があるとは思いたくないものだね」
『ハッハッハッハッ!』
場違いなほど陽気な笑い声が響き渡る。
そのやり取りを聞きながら、セレステラは静かに目を細めた。
意識を集中させ、ジレル人が持つ精神感応能力を使い、クトロワの心へ触れようとする。
(――そう言えば)
「……!」
突然、クトロワの声がセレステラの頭の中へ直接響いた。
(君は、他人の心を読めるんだったな)
セレステラの目が大きく見開かれる。
(悪いが、今は本心を読まれると面白くない)
何かが閉じた。
先程まで微かに感じていたクトロワの精神が、完全に遮断される。
(少しばかり、蓋をさせてもらうぞ)
「なっ……!」
セレステラが思わず後退った。
「何故、それを……!?」
自分がジレル人である事は隠していない。
故に、その能力を知られている事自体は不思議ではない。
だが、精神感応そのものを遮断された。
そんな経験は、セレステラにも無かった。
「セレステラ?」
「……いえ。何でもありません、総統」
そう答えながらも、セレステラは窓の向こうに浮かぶ深緑の巨人を睨み付ける。
その中に居る男。
一体、何者なのか。
『まあ、安心してくれたまえ』
再びクトロワの声が響く。
『貴方達へ危害を加えるつもりは無い。今日は本当に挨拶へ来ただけだ』
そこで高機動型ザクⅡが、両腕を広げる。
『ご覧の通り――丸腰だ!』
確認させるように、その場でクルリと1回転した。
デスラーが呆れたように眉を上げる。
「丸腰?」
高機動型ザクⅡを見上げる。
「MSに乗って現れておきながら、よく言えたものだ」
『ふっふっふっふ……私もそれなりに忙しくてね。徒歩で来るには、少々時間が足りなかったのでな』
「なるほど。では仕方あるまい」
「総統!?」
ヒスが思わずデスラーを見る。
しかし、そんな冗談めいたやり取りを交わしながら、デスラーはクトロワを冷静に観察していた。
殺気が無い。
敵意も感じない。
少なくともこの男は、本気で自分を殺しに来た訳ではない。
デスラーはそう判断した。
「では、1つ質問しても良いかね?」
『良いとも』
「クトロワ総帥」
デスラーは、巨大な窓越しに高機動型ザクⅡを見据える。
「君達は――本当に我々へ勝つつもりがあるのかな?」
『…………』
「ドロスは確かに巨大だ。強力でもある。しかし――」
デスラーの目が細められる。
「君達には、あの船しかないのだろう?」
僅かな、沈黙の後。
『…………ハッ』
クトロワが笑った。
『ハハッ……ハッハッハッハッハッ!!』
楽しそうな高笑いが、執務室に響き渡る。
『この短期間で! それも僅かな情報だけで、そこまで辿り着くか!』
心底感心したような声だった。
『流石はアベルト・デスラー! 大小マゼランを統一した、大ガミラス帝星の頂点に立つ男なだけはある!』
「お褒め頂き光栄、とでも言っておこう」
笑いを収めたクトロワが、言葉を続ける。
『さて、質問への答えだが』
そこで声色が変わった。
ほんの僅かに、先程までのふざけた雰囲気が消える。
『デスラー総統が考えている通りだ』
ヒスとセレステラが息を呑む。
『我々は、ガミラスに勝つ気など無い』
「なっ……!?」
ヒスとセレステラが驚愕の表情を浮かべた。
デスラーだけは驚かなかった。
むしろ、予想が確信へ変わったかのように、僅かに目を細める。
『そして貴方は既に、我々の本当の目的にも、勘付いている』
「……やはり、そうか」
デスラーが静かに呟いた。
「総統?」
ヒスが困惑した顔でデスラーを見る。
『まあ』
クトロワが楽しそうに笑う。
『今更気付いたところで――もう遅い!』
声が大きくなる。
『我々が此処に居る時点で、目的は既に達成された!!』
その言葉を聞いた瞬間。
デスラーの中で、これまでの不可解な行動が全て繋がった。
ガミラスを滅ぼそうとしない。
政治中枢を破壊しない。
軍需生産能力も奪わない。
わざわざモビルスーツの残骸を回収させ。
その存在を研究させ。
戦力を見せ付け。
そして。
全ガミラスへ向けて宣戦を告げた。
目的は――。
「起こす気なのだな?」
デスラーの低い声が響く。
『…………』
「ガミラスと君達だけではない」
デスラーは窓の向こうのクトロワを、真っ直ぐ見据える。
「大小マゼランに存在する、あらゆる国家と種族を巻き込んだ――」
そして。
その答えを口にした。
「大戦争を!」
一瞬の静寂。
直後、クトロワの高笑いが響き渡った。
『然り!!!』
深緑のザクⅡが、両腕を大きく広げる。
『我々が望むものは――!』
堂々と言い放った。
『一心不乱の大戦争を、である!!!』
これから何が起こるのか。
ヒスには、それが予測出来てしまったのだろう。
その表情が、驚愕と恐怖の入り混じったものへと変わっていく。
「や、止めろ……!」
震える声が漏れる。
「止めてくれ! そんな事になれば、どれ程の臣民が傷付き、倒れると思っているのだ!?」
だが、クトロワは止まらない。
『ガミラスの帝都が襲撃されたという情報は、既に他の星々へ広がり始めている!』
高機動型ザクⅡが、ゆっくりと頭部を上へ向ける。
『今まで不当な扱いを受け、それでも耐え忍んできた者達は、この情報に感化され――立ち上がる!』
そのモノアイが見据える先。
今はドロスの巨体によって隠されているが、その向こうには青い星が浮かんでいた。
『最早、この流れを止める事は誰にも出来ない』
クトロワの声が、静かに響く。
『例え――遍く星々、その知的生命体の救済を掲げる、イスカンダルの女王であろうともな』
「そんな……!」
セレステラが声を上げる。
「無理よ! 仮に二等臣民達が立ち上がったとしても、ガミラスとの技術力、軍事力の差はあまりにも――」
そこまで言った所で、セレステラの言葉が止まった。
「…………まさか」
何かに気付いたように、目を見開く。
「最初から……それが狙いで?」
『ほう』
クトロワが楽しそうに笑う。
『気付いたか』
「技術力や軍事力が無いのなら――」
セレステラが、ゆっくりと言葉を続ける。
答え合わせをするように、クトロワが言い放った。
『与えてやれば良いだけの話だ』
「……っ!」
彼女の中で、全てが繋がった。
「バレラスを襲撃したのは、二等臣民達へ反乱の火を灯す為だけではない……!」
セレステラが窓の向こうの高機動型ザクⅡを睨み付ける。
「モビルスーツ……!」
そして、苦々しげに続けた。
「モビルスーツという兵器そのものを、大小マゼラン全土へ宣伝する為……!」
帝国の中枢。
大ガミラス帝星、その帝都。
ガミラス軍が絶対の自信を持って守っていた筈の場所へ、6000機を超える人型兵器が降下。
次々と軍事施設を襲撃し、その圧倒的な戦闘能力を見せ付けた。
しかも。
その光景は、クトロワ自身が乗っ取った情報網によって広く知れ渡っている。
これ以上の宣伝など、存在するだろうか。
「……宣伝効果としては、実に見事なものだろうね」
デスラーが静かに呟いた。
その表情には、不快感が滲んでいる。
自分の読みが正しかった。
だからこそ、余計に腹立たしい。
セレステラもまた、苦虫を噛み潰したような表情で高機動型ザクⅡを睨み付けていた。
『さて、そろそろ時間か』
高機動型ザクⅡが、ゆっくりとバレラスタワーへ背を向ける。
『私はこれで、お暇させてもらうとしよう』
「…………」
誰も、その言葉へ答えなかった。
『ああ、そうだ』
思い出したように、クトロワが言葉を続ける。
『最後に1つだけ』
高機動型ザクⅡの頭部が僅かに振り返る。
赤いモノアイが、真っ直ぐにデスラーを捉えた。
『デスラー総統』
「何かね?」
『MSを開発するつもりなら――急いだ方が良い』
「…………?」
クトロワは、まるで何でもない事のように告げる。
『さもなければ、この星の時間が無くなるぞ?』
「――っ!?」
その瞬間。
デスラーの表情が変わった。
これまで何が起ころうとも崩さなかった余裕が、一瞬だけ消える。
「貴様……!」
珍しく声を荒らげ、窓際へ1歩踏み出した。
「何処まで知っている!?」
返ってきた答えは、たった一言だった。
『何処までも、だ』
次の瞬間。
高機動型ザクⅡの全身から、猛烈な光が噴き出した。
スラスターが一斉に点火し、深緑の巨人は凄まじい速度でバレラスタワーから離れ、そのまま帝都の空へと飛び去っていく。
「…………」
「…………」
「…………」
残された3人は、暫く誰も言葉を発する事が出来なかった。
帝都への襲撃。
各地で始まった暴動。
親衛隊の不在。
ゼーリックによる反撃準備。
大小マゼラン全土へ広がろうとしている反乱の火。
そして――。
クトロワが最後に残した、不吉な言葉。
対処しなければならない問題は、あまりにも多い。
デスラーは、遠ざかっていく深緑の機体を無言で見つめ続けた。
その表情からは。
先程までの余裕が、完全に消えていた。
クトロワ「ヤマト宇宙のアナハイムに、俺はなる!!!」
マリリン「流石のアナハイムも、ここまで大規模な戦争起こそうとはしてませんからね!?」