人型機動兵器を流行らせたい   作:マイmk3

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一応、今の所は原作開始の3年前を想定しております。
また、漫画版の設定等を参考にしている部分がございます。
(今回出て来る老執事は、漫画で出て来る)




第7話

「……全く動かんな」

 

橋の上。

 

大渋滞に巻き込まれた車内で、メルダ・ディッツは窓の外を眺めながら、小さく溜息を吐いた。

 

前を見ても、後ろを見ても車。

隣の車線も車。

 

帝都各地に非常事態宣言が発令され、市民へ避難命令が出された結果、主要道路には避難しようとする車両が一斉に殺到していた。

当然、交通網は完全に麻痺している。

 

「この調子では、橋を渡り切るだけでも随分と掛かりそうでございますな」

 

運転席に座る老執事が、困ったように呟いた。

 

「仕方ないだろう。皆、同じ事を考えているんだ」

 

メルダはそう答えながら、座席へ深く身体を預ける。

 

普段なら、今頃は航空士官学校の寮に居る筈だった。

 

だが今日は休日。

久し振りに外出許可が出た為、朝から爺と共に帝都へ出掛けていた。

 

まさか、その日に限って敵の超巨大空母が帝都上空へ現れ、6000機を超える人型兵器が降下して来るなど、誰が予想出来ただろうか。

 

「爺。父上には?」

「先程から何度もお掛けしておりますが……」

 

老執事が車載通信機を操作する。

 

『現在、通信回線が大変混雑しております――』

 

数秒後、無機質な音声が返って来た。

 

「……やはり駄目ですな」

「そうか……」

 

メルダの表情が曇る。

 

父――ガル・ディッツ。

大ガミラス帝星の航宙艦隊総司令官。

 

このような状況であれば、間違いなく軍務に就いている。

むしろ、誰よりも忙しい立場に居る筈だ。

 

「お父様なら、ご無事でしょう」

 

爺が安心させるように言う。

 

「あのお方ならば、今頃は我々の心配など余所に、軍の指揮を執っておられますよ」

「……分かっている」

 

分かってはいる。

しかし、だからといって、心配が無い訳ではない。

 

メルダは小さく息を吐き、再び窓の外へ視線を向けた。

 

現状、自分に出来る事は何も無い。

まだ航空士官学校の学生に過ぎない自分が、戦場へ飛び出したところで足手纏いになるだけだ。

 

それくらいは、彼女も理解していた。

 

「…………ん?」

 

遠くから、低い爆発音が聞こえた。

 

メルダが顔を上げ、橋の遥か向こうを見る。

帝都郊外に存在する航空基地の上空で、無数の光が飛び交っていた。

 

「戦闘か!」

 

ガミラス軍の主力戦闘機ツヴァルケや、重戦闘機ゼードラーⅡが次々と基地から発進し、上空に侵入した敵へ襲い掛かっている。

 

対するのは――。

 

「ドロスの人型兵器……!」

 

メルダも、その存在くらいは知っていた。

 

ここ数ヶ月、ガミラス軍を散々苦しめ続けている、ニセールジオンの兵器。

実物を見るのは初めてだった。

 

緑色の巨人が空を飛び回っている。

 

いや、飛ぶなどという、生易しい動きではない。

 

「……何だ、あれは」

 

メルダが思わず身を乗り出した。

 

1機のツヴァルケが、ザクⅡの背後へ回り込む。

完璧な位置だ、あそこからなら逃げられない。

 

そう思った次の瞬間、ザクⅡが横へ跳んだ。

翼を持たない人型兵器が、空中で突然進行方向を変えた。

 

ツヴァルケの射撃が、虚しく空を切る。

ザクⅡが反転、ザク・マシンガンを構えた。

 

一瞬の射撃。

 

それだけでツヴァルケの機体から炎が噴き出し、黒煙を引きながら高度を落としていく。

 

「……速い」

 

メルダの目付きが変わった。

 

先程まで父親を心配していた少女の目ではない。

航空士官学校で戦闘機乗りを目指す者の目になっていた。

 

更に2機のゼードラーⅡが、左右からザクⅡを挟み込む。

片方が正面から攻撃、もう片方が死角へ回り込む。

 

教本通りの連携だ。

 

だが、ザクⅡは正面から迫る攻撃を避けながら急上昇。

そのまま身体を反転させると、追尾していたゼードラーⅡの更に背後へ回った。

 

「馬鹿な……!」

 

メルダが目を見開く。

 

戦闘機ならば、あんな動きをすれば速度を失う。

急激に進行方向を変えれば、機体にも搭乗者にも凄まじい負荷が掛かる。

あの人型兵器には、それが無い。

 

少なくとも、メルダにはそう見えた。

 

「お嬢様?」

 

老執事がバックミラー越しにメルダを見る。

 

返事は無い。

 

彼女は完全に、遠方で繰り広げられる空戦へ見入っていた。

 

ツヴァルケ3機が、ザクⅡ1機へ襲い掛かる。

数的には圧倒的に有利だ。

それでも、ザクⅡを捉えられない。

 

攻撃を避け、背後へ回り、僅かな射撃で1機ずつ確実に落としていく。

そうして気付けば、ザクⅡを包囲していた筈のガミラス機が、逆に追い回されていた。

 

「…………」

 

メルダは無意識に拳を握り締める。

 

認めたくないが、パイロットを目指しているからこそ、分かってしまう。

操縦技術だけの問題ではない。

機体そのものの性能に、あまりにも大きな差がある。

 

「あれでは……勝負にならない」

 

遠い空でまた1機、ガミラスの戦闘機が炎を噴いた。

その向こうを、緑色の巨人達がまるで自らの空であるかのように飛び回っている。

 

メルダは、その姿から目を離す事が出来なかった。

 

その目が、こちらに向かって来る1機のゼードラーⅡと、それを追うザクⅡの姿を捉えた。

 

「まずい、こっちに来てる! 爺、車を捨てて逃げるぞ!」

 

2人は慌てて外へ飛び出した。

 

周囲でも、同じ光景が広がっている。

人々が車を捨て、逃げ始めていた。

 

「お嬢様、お気を付け下さい! 皆、パニックを起こしております!」

「分かっている!」

 

我先にと逃げる人の群れに、押し潰されぬようメルダと老執事は先に進む。

 

彼女らの頭上で、轟音が鳴り響く。

よりにもよって、2機は橋の上で戦闘を始めたのだ。

 

マシンガンと機関砲の弾が交差する。

 

ザクⅡが機関砲を避けた隙を付き、ゼードラーⅡが6発の空対空ミサイルを放つ。

だが、ミサイルは全て空を切った。

 

ザクⅡは重力下でありながら、まるで宇宙空間にでも居るかの如く、縦横無尽に空を駆け回る。

 

「爺、待て!」

 

激しい戦闘が、民衆に更なるパニックを起こさせる。

最早、他人を気遣う余裕など無い。

人々は我先にと前の者を押し退け、転んだ者すら踏み越えて逃げ始めていた。

 

その結果、親とはぐれてしまったのだろう。

泣き喚く少女を、メルダは見つけてしまった。

 

「お嬢様!?」

 

少女を救うべく走り出したメルダを、老執事が呼び止める。

 

「大丈夫だ! 爺は親の方を探してくれ!」

 

メルダは、放置された車を飛び越え、人の波を掻き分けながら少女の元へ急ぐ。

 

「大丈夫か? 此処は危険だ。私と一緒に行こう」

 

彼女が少女へ優しく声を掛け、橋の向こうへ歩き出した時だった。

 

「メルダお嬢様ァァァ!!!」

 

老執事が叫ぶ。

 

メルダが其方を向くと、火を噴き制御を失ったゼードラーⅡが、彼女へ向かって来ていた。

 

逃げるには、もう間に合わない。

 

ならば、せめてこの子だけでも――。

そう考えたメルダは、咄嗟に少女を抱き寄せ、その小さな身体へ覆い被さった。

 

迫り来る轟音。

 

(父上……ごめんなさい)

 

脳裏に父の顔が浮かんだ。

 

メルダは強く目を瞑り、訪れるであろうその瞬間を待つ。

 

だが――。

 

「…………?」

 

いつまで経っても、彼女が覚悟した衝撃は訪れなかった。

 

爆発も、痛みも、何も無い。

 

少女を抱いたまま、恐る恐る目を開け、ゆっくりと後ろを振り返った。

 

そこに――。

 

巨人が、飛んでいた。

 

橋の目前で、制御を失い突っ込んで来たゼードラーⅡを、両腕で受け止めている。

 

まるで、メルダ達を守るかのように。

深緑色の巨人が、宙に浮かんでいた。

 

「……鬼神?」

 

メルダの口から、無意識にその言葉が零れ落ちる。

 

知っている。

その機体を。

 

父から何度か話を聞いた事がある。

航空士官学校でも、何度となく話題になっていた。

 

ガミラス艦隊を幾度となく蹂躙し。

数多くの軍艦を沈め。

今では軍人なら知らぬ者など居ないと言われる、ニセールジオンのエース機。

 

「深緑の……鬼神……」

 

ガミラス軍が。

 

否。

 

今やガミラスという国家そのものが恐怖している敵が――。

 

メルダの目の前に居た。

 

高機動型ザクⅡは、掴んでいたゼードラーⅡへ視線を向けると、機体の装甲へ指を食い込ませた。

 

「何を……?」

 

メルダが見守る中。

鬼神は、墜落寸前のゼードラーⅡからコックピット部分だけを慎重に引き千切った。

搭乗者ごと収められたコックピットを、橋の上へそっと置く。

残された機体は橋から離れた方向へ放り投げられ、遠方で大きな爆発を起こした。

 

「…………」

 

メルダにはもう、何が何だか分からなかった。

 

何故、敵のパイロットを助けた?

何故、敵国の市民である自分達まで助けた?

 

そもそも。

 

何故、ガミラスが最も恐れる『深緑の鬼神』が、こんな場所に居る?

 

疑問ばかりが頭の中を駆け巡る。

 

その時、深緑の鬼神がゆっくりとこちらへ顔を向けた。

赤いモノアイが、メルダを捉える。

 

「…………」

 

目が合った。

ほんの数秒。

実際には、それだけだった。

 

だが。

 

メルダには、その時間が酷く長く感じられた。

 

巨大な赤い単眼。

何度もガミラス艦隊を破った存在。

本来なら、恐怖を感じて当然の相手。

 

なのに、不思議と。

今だけは、恐ろしく感じなかった。

 

やがて、深緑の鬼神が静かに踵を返す。

全身のスラスターへ光が灯り、轟音と共にその巨体が空へ舞い上がった。

見る見る内に高度を上げ、去って行く。

 

「…………」

 

メルダは、少女を抱いたまま。

ただ、遠ざかっていく深緑の背中を、見送る事しか出来なかった。

 

敵である筈なのに、自分達の命を救った巨人を。

 

その姿が見えなくなった後も。

メルダは暫く、空から目を離す事が出来なかった。

 

==========

 

「危ねぇ危ねぇ。しれっと主要キャラが死ぬところだった」

 

いやぁ……。

ビビったわ。

マジでビビった。

 

適当に空を飛びながら戦闘を眺めてたら、橋の上に見覚えのある赤髪を発見。

しかも、よりにもよってその真上で空戦が始まりやがった。

 

こりゃ不味いと思って、慌てて飛んで来たっちゅうねん!

 

余りにも気が動転してたせいで、本当なら墜落する戦闘機をそのまま橋の外へ放り投げるつもりだったのに。

何故かコックピットだけむしり取って、橋の上へ置いて来ちまった。

 

……まあ。

 

搭乗員ごと戦闘機を投げ捨てるのは、流石にエグ過ぎるから良いか。

 

助かったならヨシ!

 

『総帥。ちょっと良いですか?』

「なんぞよ?」

『ガミラス星から約0.2光年離れた宙域に、艦隊が集結し始めています』

「ほう?」

『現在確認出来ている総数は1231隻。尚も増加中です。どうしますか?』

 

ふぅん、誰だろ。

 

……あ、ゼーリックか!

 

そういや演説の時、ゼルグートⅡ世に乗って逃げてたな。

てっきり、そのまま何処か遠くへトンズラこくのかと思ってたんだが。

 

「戦力引き連れて戻って来たかぁ」

 

やるやん。

ちゃんと反撃する気だったんだ。

感心感心。

 

じゃあ、殺すね。

 

「次元潜航させてるゴッグ、居るじゃん?」

『はい』

「アレ、全部向かわせて。今すぐ」




アイアンネイルをぶら下げて、ゴッグは行くよ何処までも。
(バトオペ2で、逃げる敵を追いかけながら)

モチベ維持の為に、高評価、感想をよろしくお願いします。
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