デジモンDワールド-Repair-(ユキアグモンと少女の冒険記)   作:山下敬雄

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第11話 Evolution

 【Project infinity】──その研究の狂気に囚われたナノモンの背が見える。

 これ以上の口での説得はできない。このまま捕らわれたまま何もできずにいるしかないのか。それでも砂雪は拘束台の上で、まだ諦めずに思考を巡らせつづけた。

 その時だった。

 

『忘れてはなりません。時は一瞬の煌めき──決して遡れない、強く信じた先にあることを────』

 

 背中を押す風のような声が、脳に体に直接吹き及ぶように響いた。なおも吹く不可解だが暖かい風に、砂雪は身を任せてみる。

 すると彼女が目を瞑ったその瞬間(とき)、胸に秘めた砂時計のペンダントは輝きを増し流れ始めた。

 

 ナノモンが砂雪から奪い取ったデジヴァイスQに、接続した膨大なデータを研究所のメインコンピューターから転送していく。その転送作業の67パーセント程が完了し、今か今かとナノモンが歓喜と完成の瞬間を待っていた──まさにその時だった。

 

 ナノモンの見つめていたモニターが、全面に映る0と1の数字と、その数字で象られた謎の女の顔に埋め尽くされた。予期せぬエラーの発生に、狂気の笑みを見せていたナノモンが一転、慌てふためく。そしてまた次の瞬間、不測の事態が立てつづけにも起こり、メインコンピューターの電源が突如落ちた。

 

「研究の時間はおしまいよ。ユキアグモンは私の友達っ。あなたの望む最強のデジモンじゃなくたっていい」

 

 チカチカと明滅していたコンソールパネルが、死んだように光をなくす。

 拘束台は堅牢にロックされたまま、だが何の脱出マジックか、その台に磔にされていたはずの砂雪の身は抜け出し、メインコンピューターに繋がる電源レバーを自らの両手でしっかりと落としていた。

 

「クッッギィ……ナゼだ、ナゼ抜け出している! やってくれたな小娘が……! 友達などという知性も合理性もない戯言で、ワタシの、ワタシタチの価値ある研究の邪魔をするなーー!」

 

 予期せぬ研究の邪魔をされたナノモンは怒り叫んだ。そして自在に伸びる機械の手が、まっしぐりに砂雪の方へと向かい、その身を再び拘束し締め上げていく。

 

「ずーずー……やまもり……ういんなー……ずぅ〜…………ハッ!?」

「サユキっ! サユキ、サユキをかえせーーっ!」

 

 遅れて目覚めたユキアグモンは目覚めるとすぐに、飛び込んできたその危うい光景。砂雪を締め上げる謎の機械のデジモンにユキアグモンは叫び、四肢と尻尾を縛る拘束台の上で激しく暴れ続けた。

 

「クックック、返すものか。成熟期スペックのデジモンでもその台は壊せやしない。無駄なっ、ワっ────な、ナンダこのヒカリ!?」

 

 嘲笑うナノモンの言葉を遮るように──床に落ちていたデジヴァイスQが眩い純白の光を放った。

 一条の光の帯は、ナノモンの頭上を掠めて研究所のモニターを反射し、拘束台の上のユキアグモンへと向かい降り注いだ。

 

 どこからともなく吹き荒れる雪と風。

 研究室全体を包み込むほどの強大なエネルギーと数多なデータ片が、ユキアグモンの身体へと積もっていく。

 

 

 

【YUKIAGUMON ──Evolution──> YUKIDARUMON】

 

 

 

 積もり切った真っ白な雪のデータが、新たな力と存在を構成する。拘束台を粉砕して今堂々と立ち上がったのは、氷雪のデータを宿した巨躯の戦士。

 

「ぼくのサユキをいじめるな! メカやろうーーッ!」

 

 ユキダルモンへと進化した一匹のデジモンの咆哮が、地を、天を、激しく揺らした。

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