デジモンDワールド-Repair-(ユキアグモンと少女の冒険記) 作:山下敬雄
アーカイブ大陸南部、海に面した水と光の美しい都【アクアシティ】。個性豊かなデジモンと人間たちが共存共栄をする巨大な都市、その中央部に位置する噴水広場は、いつものように水浴びしはしゃぐデジモンたちの姿はすっかり失せ、白昼にも関わらず殺気立っていた。
シティ全域を守る防衛セキュリティウォールを突破し、シティ内部へと堂々と侵入してきたのは抜き身の刀を携えた一体の刺客、ムシャモンだった。
「どうした、ワレと一騎打ちのできる強い奴はいないのか? ハッハッハ、何がワレらデジモンを鍛えると噂のセイントだ。臆病、弱者、泣きっ面! どいつもこいつも斬りがいのない腑抜けどもめ!」
広場の石畳に転がる数多のデジタマ。それは侵入したムシャモンが、このシティに住むデジモンたちを切り捨てた証だった。
白昼に煌めかせる凶刃を握り好き勝手を言う、そんなたった一体の敵を前に恐れ慄くデジモンと、デジヴァイスを持つ人間──セイントたち。
デジタマにされるのを恐れてか、噴水広場に集う住人たちの中には、次第にムシャモンに挑もうとする者はいなくなっていた。
来ないのならばこちらから向かうまで──と、痺れを切らしたムシャモンが下げていた刀を上に構え直したその時だった。
『【ハープンバルカン】!』
「ぬっ! 殺気!」
突如、後ろから飛んできた殺気に反応したムシャモンは、飛んで降ってきた角の形をした面妖なミサイルを握る刀で切り捨てた。
「面妖な……隠れていないで出てこい!」
「待ってくれっ! その一騎打ち……僕と」
「このイッカクモン様がノってやるぜーーーーっ!」
街の中央に陣取る大きな噴水の中から、今噴火するように飛び出たのは一体の海獣型のデジモン、イッカクモン、そして周りの群衆を掻き分け現れた一人の人間の男だった。
「ほぉ。ワレとの一騎打ちに受けて立つとは、少しは骨のありそうな奴が出てきたか。──よかろうッ、今日っ、この愛刀【白鳥丸】の錆となる1000匹目のクビを飾るデジモンは、貴様らだ!」
どちらも他の者たちとは違う覚悟を決めた面構え、相手にとって不足なし。ムシャモンは今己の目の前に躍り出たその者たちのことを認め、血とデータに飢えていた愛刀【白鳥丸】を勇ましく構えた。
静まり返っていた凄惨な噴水広場に、活気あるデジモンと人間たちの声援が響き渡る。
もう引き返すことはできない。慣れぬ一騎打ち、慣れぬ役割、慣れることのない緊張感。眼鏡の男、シティガードのリーダーであるジョウは、まだ扱い切れていないデジヴァイスQをその手に構えた。
▽
噴水広場に光のデータの柱が立ち上った直後、一角の海獣の影がまた一段と大きくなった。
そしてハンマーと刀、それぞれの得物を持ち直し、再び激突する両者。
刹那──風を鋭く切る音と、重厚な金属音が打ち鳴らされる。
やがて、高く噴き上がっていた噴水は穏やかな水音へと変わり──。
「み、見事なり……」
赤い兜は天から割れ、ムシャモンの刀が真っ二つに折れた。すれ違った両者、イッカクモンから急速進化したズドモンが振り下ろしたトールハンマーが、ムシャモンの魂とも言えるその兜と刀を今、完全に砕き切った。
相手を褒め称えた捨て台詞を吐いたムシャモンは、その場に膝から崩れ倒れた。そして成長期のコテモンにまで退化したムシャモンが、無様にも噴水広場から慌てて走り逃げていく。
逃げていく無力なデジモンのことを追いかける趣味はない。
重なる歓喜の声とその輪の中で、ジョウは疲れた溜息を一つ吐くと、ズドモンから退化したゴマモンが勢いよく隣の噴水の中に飛び込んだ。
今日もまた、敵を退けることに成功した選ばれし人間とそのパートナーデジモンは、夕日に煌めくオレンジの水飛沫の中、互いの目を見て笑い合っていた。
砂雪たちがアーカイブ大陸に着くまでの間、しばらく各シティの描写をメインで転々となるかもです。
これからもデジモンDワールドRepairを応援お願いします!