デジモンDワールド-Repair-(ユキアグモンと少女の冒険記) 作:山下敬雄
デジタルな世界が突如として夕焼けのオレンジに染まった。そんな夕日に煌めくアクアシティの噴水広場では、飲めや歌えの祝勝のお祭り騒ぎである一方──。
噴水広場から少し離れた所。街中に設営した白いメディカルテントの外観には、注射器とハンマーのマーク、さらにデジ文字と英語で「次元なき医師団」となる看板が書かれていた。
そしてその白い医療施設のテントを目指して、負傷したデジモンや人間たちが今日も今日とて押し寄せていた。
「戦う度に怪我人が続出。シティを守るためとは言え、この状態がいつまで保つんだぁ……?」
最後の負傷デジモンを手当し終えたジョウは、ようやく仕事が一段落区切りがつき、弱気な愚痴を静まるテント内でこぼしていた。
「なぁーに、どんなヤツがしゃしゃり出てきても、また返り討ちにすればいいじゃねぇか。なっ、リーダー!」
隣で手伝ってくれていたゴマモンはそう元気そうに言うが、ジョウはゴマモンと同じようなその場その場での楽観視はしていなかった。
「おいっ! あの時、完全体のズドモンに進化できたのも一か八かだったんだぞぉ? この丸いデジヴァイスだって今までのものと勝手が違うんだ、簡単に言ってくれるな。それに僕はもともと立候補したリーダーなんかじゃ」
「そりゃオイラたちが、その一をこれから二にも三にもすんのよ! 大丈夫だぜ、オイラがジョウをここの立派なリーダーにしてやる!」
「はぁ……ゴマモンは相変わらず呑気だなぁ」
完全体のズドモンに進化できたからいいものの、ムシャモンは決して弱い相手ではなかった。これからシティ内部を守るには、地上での活動にも長けたズドモンの力が必要になる場面も出て来るだろう。
そして、彼の今の本職はデジモンドクター。街を守るシティガードのリーダーにも周囲の勝手な期待とゴマモンのやんちゃさが重なり抜擢されただけで、ジョウ自身がすすんで立候補した覚えはなかった。
そんな風にあれこれ難しく考え悩むジョウとは裏腹に、ゴマモンはリーダーの職務にますます乗り気であった。
「ハハハ! でもオイラはジョウのこと、少し見直したぜ! ムシャモンの一騎打ちの挑発にあんな風にノるなんてよ。言えるようになったじゃねぇか!」
「僕だって本当は、こうして治すよりも先に、怪我するデジモンは少ない方がいいんだ。その為には、襲ってくる敵と戦わなきゃならない時もあるって分かってるさ……」
かつてデジタルワールドで長いサバイバル生活をして来た彼にとって、デジモンの住む世界が一筋縄ではいかないことは分かっている。
「ジョウ……ま、最初の不意打ちの指示は、見損なったがなハハハ!」
「それを言ってくれるなよ……はいはい、僕は状況に流されて啖呵を切っただけさっ!」
すっかりデジモンと大人の男の笑い声が響き合っていた、そんなテント内に、緑と赤と青が丸く積み重なった異形のモンスターが、体を跳ねさせながら入って来た。
「おいメガネ先輩、市長が呼んでるってぇー! 褒美かな褒美かな?」
「市長が早くその白いの連れて来いってよ!(私にももふらせろっ!) 報告忘れてんぞこらっ!」
「街に思ったより被害がでてリリス市長がしちょー室で、胸を痛めてずっと泣いてるってぇー……かわいそうだね、しくしく……」
喜怒哀、そんな感情を軽い口調に乗せて口々に喋り出した。そのモンスターの名は、【メッセモン】。主にこのアクアシティの市長の秘書と、こうした伝令係を務めている。
「後方支援に異動を頼んでこようかな……」
「またまたぁ〜!」
お偉い市長からの呼び出し──本日の仕事はまだ終わっていなかったようだ。
ジョウが大きめの溜息を吐くと、ゴマモンはジョウの頭の上に乗っかり、手を叩きながら元気に笑った。
あと1話分、ジョウとゴマモンのお話が続きます。よろしくお願いします!