デジモンDワールド-Repair-(ユキアグモンと少女の冒険記)   作:山下敬雄

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第26話 フルスピード

「で、文句は?」

「……ない! むしろ消耗せず助かりました!」

「ハハっ、含みがありそうだけど、オーケー! あとは……」

 

 あとで報酬の取り分や、デジタマの処理の仕方などでいざこざになってはいけない。念の為に、加勢してもいいかどうかをもう一度確認するレーナ。ジェンは指に挟んでいた白いカードを胸のポケットに仕舞い込むと、感謝と承諾の言葉を返した。

 

「うぐ……白いやつ、なんで……」

「ぼくがノンキじゃないところ、キミたちにたっぷり見せないとねっ!」

「パタモン、最後にこの子たちをお願い」

「うん、任せて! さぁこっちだよ、オトコならすぐに泣かないんだよー! なさけないレオの分もぼくたちでがんばるんだ!」

「ぐすん……うんっ……」

 

 ユキアグモンが負傷した黒いアグモンに肩を貸す。他にも手の空いているデジモンたちに負傷した者たちを運んでもらい、砂雪は最後にレオの相棒のパタモンに頼み、牢から助け出した子供とギザモンを安全圏へ誘導していく。

 

「ふむふむ……よし、じゃあやるよっ! 大丈夫、合わせろなんて贅沢は言わないから!」

「あぁっ、合わせる。無問題(もうまんたい)……!」

 

 レーナは背後の救護対象たちが避難していくのを確認すると、前線にいたジェンの横に今並び立ち、独特の言い方で共闘を要請する。

 ジェンもレーナの呼びかけに応じ、再度まだ扱い慣れないデジヴァイスQを握りしめる。

 

「イカしてるじゃない?」

「そっちもねー」

 

 ウルヴァモンがガルゴモンの巨大なガトリングを見てそう言った。ガルゴモンもウルヴァモンの赤い武装アームを見て笑い、陽気に言葉を返す。

 

 軽いご挨拶を終えると二体のデジモンは二手に分かれ、左右から揺さぶるように各々の武器をターゲットに向けて乱射した。

 

 もちろん敵も黙って棒立ちをする気はない。体勢を立て直したタスクモンが巨大な角を突き出し、突進で一気に前に仕掛けてきた。先ほどの横槍を入れられた腹いせか、ガルゴモンを無視してウルヴァモンへ一直線に狙いを定める。

 

「それで本気?」

 

「ナ!?」

 

 しかし肩に備わる堅牢な角を活かし、得意のショルダータックルをかましたタスクモンのその角の上には、──華麗に両足をつけて乗るウルヴァモンの姿があった。

 嘲笑うように敵の攻撃をいなした銀毛のデジモンが、クールに微笑する。

 

「悪いけど初っ端から全開(ホンキ)よ!」

 

 パートナーデジモンの煽りに乗っかってか、レーナは両手をぐっと握りしめ、全身に気合いを込めた。

 

 

【ATTACK ORDER──トムボーイブレイズ】

 

 

 両手の赤い武装から激しい火炎を放射するウルヴァモン。

 本来デジヴァイスQに内蔵されているオーダーシステム。デジモンと人間が一時的に高度なリンクを果たし、より強力な技と精密な指示を与えるこのシステムを、レーナはデバイスを使わずにやってみせたようにジェンには見えた。

 

「デジヴァイスもなしに……デジモンにオーダーシステムを……。よし、こっちもさっきの技だ、かませッ、ガルゴモン!」

 

「【ダムダムアッパー】!」

 

「シラフで二度もウケるかぁー! ハハハ、バカみたいに叫んでればなあああ!」

 

 だが、タスクモンは火炎に眩まされた視界の中でも機敏に顎を引き、下からのアッパーを引きつけるように見切った。

 空を切った渾身のアッパー。そしてまんまと目の前の高さに無防備な姿勢で釣り出された長耳のデジモンに、タスクモンは大きく顎を開き一噛みに襲い掛かかる。

 

「と見せかけてぇー! ダダダダダダダダ!」

「こっちだ! 【ガトリングアーム+ブレイジングファイア】!」

「あぐあぐあっぐあああああ!?」

 

 しかしこれもまたガルゴモンとジェンの用意した巧妙なブラフだった。本命はもう片方のガトリングでのゼロ距離射撃。大きく開いたその恐竜の恐ろしいお口に、成長期テリアモンの技をブレンドした緑の炎弾を、これでもかとオーダーシステムで威力を強化し喰らわせていく。

 

「へぇ。レーナも、あぁいう機転どうかしら?」

「ちょっとウルヴァモン、嫌味? まっ、今度使わせてもらってもいいかな! よーし、いけええええ!」

 

 最後、高々と飛び上がったウルヴァモンが、炎弾の雨にさらされたタスクモンの顔面に向かい強烈なパンチを叩き込んだ。

 

 驚異的なタフさを誇っていた巨躯のタスクモンが、ついに仰向けに倒れ伏した。

 

 とどめとなった一撃を放ったウルヴァモンは尻尾をふりふりと振りながら振り返り、お茶目にウインクしてみせる。

 ガルゴモンも熱を吐くガトリングを持ち上げ、長い耳をぱたぱたと動かして応えた。

 

「いけいけーーっ! やったぁーー! って、あーーーー!? そうだ、ぼくのぶんをたおしちゃ……ん、サユキぃ……?」

 

「あれがデジモンと人間の戦い方……思ったよりも、激しいのね」

 

 大声で応援していたものの、最後に出番を取られてしまったことを知ったユキアグモン。また大袈裟に頭を抱えたユキアグモンが、ふと、隣にいた砂雪の顔を覗くと──。

 

 彼らの戦いの模様と、四つの影を伸ばす頼もしい後ろ姿を、砂雪の緑の瞳がじっと静かに見つめていた。

 

 二体の成熟期デジモン、ウルヴァモン、ガルゴモン。そしてレーナとジェン、彼らの即興の連携が上手くはまり、早くも狂敵タスクモンとの決着はついたのだった。

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