デジモンDワールド-Repair-(ユキアグモンと少女の冒険記)   作:山下敬雄

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第27話 穏健派のタスクモン

 ウルヴァモンとガルゴモン、二体のデジモンがタスクモンを圧倒し、勝負は誰の目にも決したように思えた。だが、まさにその時──。

 

 穴が空き綻んでいた上空から突如、巨大なデータ質量を伴った巨影が降り注いだ。

 

 不意に現れたその緑の恐竜は、倒れていた同族の腹をその凶悪な角で豪快に突き刺したのだ。

 貫かれたタスクモンは、多量のデータ片を宙に撒き散らしながら断末魔を上げ、消滅していく。

 

「な、なんだ!? 別のタスクモンが! 自分の味方を……攻撃した?」

 

 ジェンは舞い広がる激しい土煙にさらされながらも、確かにその目で目撃していた。上空から降ってきたもう一体のタスクモンが、仰向けでノックダウンしていたタスクモンをその角で真っ逆さまに貫いたのを──。

 

「くははは、何を言っている。手こずっていたから助けてやったというのに」

 

 降り立った味方殺しのタスクモンは、悪びれる様子もなくそう言い放った。

 

「助けたですって? どう考えてもあんたが弱ったところを上から不意打ちしただけじゃない! それも自分の仲間をッ……何考えてんの!」

 

 レーナは今飛び散った殺されたタスクモンのデジタマを、走り両手と胸に受け止める。そして語気を強め、余計な手を下した敵のことを睨んだ。

 

「そういう横取り、好かないわねッ」

「そーだそーだ!」

 

 ウルヴァモン、ガルゴモンまで同じにように激しい口調でレーナに同調する。いくら敵でも、迎えたその不測の結末は気持ちいいものではなかった。

 

「おぉ、ブラザーはバカなやつだからな。ここまで追い詰められるほどに、お前たちセイントの力をみくびっていた。だからこれ以上情けない姿をさらす前に、オレが慈悲のトドメを泣く泣く刺してやったのさ。ハハハ……こうしてな?」

 

 同族を仕留めた禍々しい形状をした角。タスクモンの左腕に刻まれた星のマークが、妖しく赤く明滅する。

 

(なんだ……? タスクモンの腕の星……今出てきた奴の方が…………)

 

 普通であればわざわざ同族の仲間を、駒を一つ失くしてまで殺す必要などないこと。今出てきたやけにインテリぶったタスクモンには何か裏がありそうだと、ジェンは怪訝な表情で目を細め警戒を深めた。

 

「はぁ? ずいぶんべらべらと喋るわね。嘘八百を!」

 

 顔を顰めたレーナは自分の手のひらに拳を叩きつけた。

 

「この牢屋に村の来訪者を閉じ込めるよう、アグモンたちへ悪事の指示もお前がやったのか? 少なくともさっきのタスクモンは、バトルでも小細工を好まないやつだったように感じるっ」

 

 ジェンの冷静な指摘に、賢ぶったタスクモンは牙を見せ不気味に笑った。

 

「悪事? フハハハ……いいやオレ様はその逆、実はお前ら人間ども、特にセイントと呼ばれる者たちの能力を高く買っている。できればこれから仲良くしたいと思っている。タスクモンの中でもきっての穏健派なのだよ。ハハハ、酔ったブラザーが失礼したな」

 

「穏健派? 俺たちテイマー……いやセイントと呼ばれる者たちと仲良く……?」

「ジェン、こんなヤツの言うことなんてまじめに聞いちゃダメ! どうせウソマンサイだよー!」

 

 真面目に受け答えをするジェンとは対照的に、ガルゴモンが耳を一瞬逆立て両腕のガトリングを構え直す。

 

「そうッ……コレカラキサマラ全員を踏み潰しッ、最後に生き残っていたやつを褒美にッ……! オレ様専用の〝セイント〟にしてやろうと言うのだーーーーッ!」

 

 この狂暴なデジモンに理知的な会話など求めてはいけない。突如、本能のままに叫んだタスクモンが、ジェンたちに向かい突進を仕掛けてきた。

 

「どこが穏健派なのよ! さっきのと変わらない猪じゃない!」

 

 レーナの思った通り、穏健派など真っ赤な嘘。味方殺しのタスクモンはやはり好き勝手に暴れ出した。

 

 警戒を最大限まで強めていたウルヴァモンとガルゴモンが即座に迎撃へ動く。二体のデジモンは、突進を仕掛けるその直進する巨体へと、たらふくの弾を斉射した。

 

 唸るガトリング、唸る武装アーム。たまらず足を止めたタスクモンへ怒涛の銃弾の雨が襲いかかっていく。

 

 だが、緑のターゲットに突き刺さった攻撃は、結果的に思ったダメージを与えることは叶わなかった。

 銃弾の音が森中に鳴り響いていた途中、起こったのは異変──いや変異。

 タスクモンの全身の厚い皮膚がみるみるうちに赤く変色すると、腕に刻まれた妖しい光を放つ星のマークは色味を失ったように白くなった。

 

「えー、これ効いてないーっ!?」

「さっきのより、手応えが硬い……!」

 

 ウルヴァモン、ガルゴモン一同が驚愕するそこに現れていたのは、聳え立つ赤いターゲット。緑から真っ赤に染まった見たことのない威容を放つタスクモンの姿だった。

 

「ハハハハハ、あんな不出来な二つ星のブラザーと一緒にされては困る。オレ様こそがタスクモンを超えた超新星【メガタスクモン】! ……盛大なる祝砲をご苦労ッ、ハーッハッハハ!」

 

 その巨大デジモンを覆う硬質の皮膚は、取るに足らない成熟期のデジモンが放つチャチな銃弾なぞ一片たりとも通さない。

 今、タスクモンを超えた存在──メガタスクモンと堂々と名乗り上げた赤い怪物が、ジェンとレーナたちの前に巨大な影を覆い立ちはだかった。

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