デジモンDワールド-Repair-(ユキアグモンと少女の冒険記) 作:山下敬雄
ホログラムマップに敷かれた黄色のガイドルートに従い、歩を進めていった砂雪たち。道のりの8割近くを消化したその通路の途中で、ユキアグモンが何やら不安げな顔で砂雪に声をかけてきた。
「サユキぃ、ぼくぅ……」
「何? ──もしかして、おトイレ? なら……あっ、そこにあるわ」
ちょうど今出た通路の突き当たり、砂雪の指差すその左手側には、鉄のドアが二つ並んでいた。そして鉄ドアの上に設置された小さな看板には、デジモンの頭部をドット絵で模したものと、もう一つ奥には人間の形に見える二つのピクトグラムが並んで刻まれていた。
(人間のマークも……ここには誰かいる、いや、いたの?)
二つのピクトグラムの看板は、綻ぶような明滅を繰り返し薄らいで見える。それに哀愁を感じた砂雪はなんとなく、そう思ってしまった。
砂雪が突き当たりで立ち止まっている間にも、ユキアグモンが慌ただしくトイレへと駆け込んでいく。
用を足すユキアグモンを待つ間にも、何もしないでいるのもなんだと思い。砂雪は残りちょっとの道のりを消化し、一人で先に目的地点の「宝のありか」の下見に来た。
砂雪が近づくと自動で開いたドアの先は暗かったので、手にしたデジヴァイスQのライトを頼りに、また慎重に部屋の中を歩いていくと──。
「ここは……何かの制御室?」
ここは一層「メカメカ」しい。まるでSFの世界のように、並ぶ見知らぬ機器の数々を見てそう感じた砂雪。
だが、何から手をつけていいのか皆目見当がつかず、彼女がそれらをじっと遠くから眺めていたその時だった。
照明代わりに手にしていた彼女のデジヴァイスQが振動した。
「K──今度は何を教えてくれるのかしら」
機器の観察をやめた砂雪は、またも突然届いたKからの赤いメールを迷わずに開いた。
⬛︎
①まず電源レバーを入れ──この手順通りに、コンソールパネルを操作してみてください。
②できたらモニターに翳したデジヴァイスQで、表示されたデジ文字をスキャンしアクセス。
③周囲に情報源となるアナログの資料やアイテムが他にあるかないかを確認。あればカメラ機能かファイルバックで保存をしてくれると助かります。
※それと余談ですが……サユキさんが探索中、僕がざっと調べたかぎり、おそらくそこはワケあって廃棄された何らかの研究施設の可能性が高いです。
④あとはこっちがやります!
⬛︎
メールを展開すると──半透明のホログラムビジョンが飛び出し浮かび上がる。コミカルに踊るてんとう虫のアイコンを添えて、そこには①〜④の項目順にご丁寧な指示が記されていた。
「廃棄された研究施設の可能性……なるほど情報の宝庫と言いたいワケね? それに……まるで迷子を導く天の声ね」
Kの高い情報捜査能力と二度のメールによる手際のいい導きに、砂雪は感心したように口角を上げた。
「うん──私にできるかどうか分からないけど、用意してくれたこのマニュアル通りにやってみる価値はあるわね」
操作マニュアルを熟読した砂雪は、薄暗い部屋にあったコンソールパネルに向き合った。電源レバーを起こし、埃を被っていたパネルが今息を吹き返したように、カラフルな色彩を放ち明滅した。