「そう言うのって自分でやんなきゃいけないの?私のは勝手に全部無くなったんだけど……これって普通じゃないの?」
今回に関してはマジで私悪く無くない?本気でそう思う。だってこれが普通だと思ったんだもん。だなんて、これは言い訳でしかないのだろう。調べてみれば良かったし、聞いてみれば良かったのだろうから。それでもやっぱり大事にすぎるのでは?と思うのは間違いないのであった。
─────
「いろっぴぃ~……え~……諸事情により、一人での配信禁止令が出されてしまいましたいろPで~す……」
ほんとどういう事かね?一人で配信していると問題があった時にすぐに対応できないとか言う理由を付けられ、一人配信自粛令が出されてしまった。いよいよもってお子様扱いである。許せねぇよ、悔しいよ私……なんて抗議してみるも。
『お願い彩葉……かぐやたちの安心の為なの……お願いだから……』
と、これまた泣かれてしまった。泣かれると弱い。迷惑掛けちゃうことになる。だから素直に受け入れる他には無い……だけどやっぱり完全納得してはいないと言う矛盾。う~む、私はかぐやたちに甘いしな~……仕方ないと言えば仕方ないのかな~……
『残当だろ』
『むしろ遅すぎた感』
『配信止めてちゃんと休むべきでは?』
コメ欄からも心配事の嵐。いやこれ心配かな?なんか心配の種類が『重病患者への気遣い』的なサムシングな気がする。多分気のせいだと私は信じている。
「いやいや、こうしてちょっとでも外との繋がりを持たないとね。ほんとに鬱になっちゃったら困るでしょ?なんちゃって……」
『お前冗談でもそれかぐやちゃんとヤチヨちゃんの前では言うなよ?』
『監禁で済んだら僥倖だろ来れ』
『自覚症状無しと……お薬出しときますね~……』
いやいや冗談じゃん……そんなガチ説教染みたコメント怖いってば……はいごめんなさい。
「て、てなわけでね。今日は旧知の親友であるこの人と一緒に配信しようと思いま~す」
「え~、特に挨拶の某はありませ~ん。美容系インフルエンサーとして活動中、ROKAで~す」
そう、今日の協力配信者は芦花である。例の如くかぐやとヤチヨは外せない研究所関連の色々があって二人して出勤。しかし私を一人で放置して置いたらまた可笑しな配信が始まるだろうと言う事で急遽彼女が一緒に配信をすることになったのだ。何とも信用のない話だよね?私は可笑しな配信なんてしないってばよ。
「信用って言うのは日々の積み重ねだよ~?今のいろPはそこのところ底値なのを自覚しようね~?」
「は、はい、分かりました、分かりましたから……その、もうちょっと優しい視線を……」
「ん?」
何でもないっす。めっちゃ刺さる視線じゃん。めっちゃ怖いじゃん。何だってこんなに責められねばならんのだ……?やはり私の普段の色々がヤバいのか?こんな一般常識人の私だと言うのに。
「一般と言う言葉を辞書で引こうね~?はい、雑談ばっかりしてないで。今日はね、折角の二人配信なので!ずばり!女の子の美容談義と題して!いろPと色々語っていこうかなって思ってま~す!普段は新作化粧品だとか、お肌の手入れ方法だとかの配信ばっかりだから、こうして誰かと談義って形は新鮮で~す♪よろしくね~♪」
『おお、これはこれで良いね』
『わい、男やけどお肌の手入れは普通に参考になるので見ている』
『いろPの事もしっかりケアしてやってくれ』
かぐや『頼んだよROKA!』
ヤチヨ『ROKAならいろPの手綱も握れるだろうしね!』
……もうすでにかぐやたちには特定されている、と。これは迂闊なことは言えないぞ……か、可能な限り普通に、普通に……普通とは何だろう?私は普通ではない?普通……いや、普通にすればいいんだよね?だ、大丈夫だよねきっと……?
「さて、早速ですが~……この肌何!?めっちゃガサガサだよ!?ちゃんとスキンケアしている!?」
「え?あ、あ~……そう言うのは良く分かんなくって……かぐやが偶に買ってきてくれる化粧水を使う程度かな~……」
かぐや『言ってやって!もっと言ってやってROKA!』
ヤチヨ『ヤッチョたちが幾ら言ってもスキンケア蔑ろにするんだよ!?酷いよね!?ヨヨヨ~!』
『嫁たちが泣いているぞいろP?』
『あんま心配かけたら駄目だよ?』
べ、別に全然してない訳じゃないのになぁ……ただ面倒って言うか、必要性を感じないって言うかさぁ……そもそも、肌のケアなんて『毛も生えてないのに必要ない』と思わない?
「でも毛の処理はちゃんとしてあるねぇ。うんうん関心。綺麗なお肌を保つのにはあんまり毛深いのはちょっとだしね。まぁちゃんと洗っていればそうそう汚くはなんないけどさ。いろPは処理派なんだねぇ。どうやって脱毛しているのかな?脱毛クリーム?それとも剃っているの?」
「え?クリーム?剃る?何それ?」
「へぁ?」
どれほど勘違いしていようとこれだけは言わせてもらうのが様式美無きがするので言わせてもらいたい。別に皆に心配を掛けたいわけじゃないんだよ私は?ただ、そうただね?これが普通だと思っているだけなの。これだけは信じてください……無理?そうかぁ……
「そう言うのって自分でやんなきゃいけないの?私のは勝手に全部無くなったんだけど……これって普通じゃないの?」
「……は?」
かぐや『……何言ってんの……?』
ヤチヨ『……彩葉……?』
おいヤチヨさんや?私はもう身バレしているから別に大丈夫だけどさ?名前、名前出ているよ?他の人とコラボした時にそんなことしちゃったらめっちゃ困ることになるから直した方が良いよ?
「話逸らさないで?いろP?あの……勝手に無くなったって何?」
「え?あ、あの?ROKA?なんでそんな怖い声出してんの……?わ、私何かやっちゃった?変なこと言ってないよね?」
「……自覚無し……?嘘でしょ……い、何時から……?」
何時からって、何が?
「あの……変な事聞くね……?腕とか脛に、少なからず毛って生えるんだけどさ……い、いろPは、その辺どうしているの……?」
「え?だから、もう全然生えなくなっちゃったよ?全部抜けちゃったな~」
「ぬけ、たって……い、何時!?何時の話!?」
うおこわっ!?なんで今度はそんな焦った声になったの!?そんな大したことないでしょ?毛が抜けたくらいで。まぁ頭髪が抜けたら私でも焦るかもだけれど……ねぇ?
「あ、あの、何時って言われても……もう随分前の事だし……中学三年生になる頃には、としか……え?これって不味いの?勝手に抜けちゃうし、別に痛かったりしなかったし……身体を洗うのとかに楽になって寧ろありがたかったって言うか……」
「……凄く嫌な事聞く……下の毛は……?」
「下……ああ、そっちも全部抜けたよ……え?これって不味いことなの……?」
『……脱毛症……?』
『しかも全身って……明らかにストレス性の……』
『皮膚科行け!今すぐ!早く!』
えぇぇ……ま、また受診する科が増えるのぉ?これくらい大丈夫だよ。唯毛が抜けただけで死ぬわけでもないし。ねぇROKA?
「う、うぅぅ……なんでわだじ……ぎ、ぎがづがないなんで……びよういんぶるえんざー、じっがぐだぁ……」
「ちょまっ!?なんで泣くの!?待った待った!?おかしいっ!?毛が抜けただけだよ!?」
「それが問題だって言っているのぉっ!なんでわかってくれないのぉっ!?」
怒鳴られてしまった……なんでって言われても……こ、これが普通だと思ったとしか……
バタン!ガチャン!ギィィィッ!
「彩葉っ!すぐに皮膚科受診するよっ!早く行くよっ!」
「ごめんね芦花……でも大丈夫。芦花は悪くないよぉ……や、やっちょたちだってぇ……ぎがづがながっだんだもん……うぐぅぅ……」
……結局こうなっちゃうのかぁ……もうどれだけ迷惑掛ければ気が済むんだろうなぁ私っていう奴は……はぁ……
─────
「直ちに大きな影響はないでしょうが……ホルモンバランスの乱れが原因でしょう。この状態で10年以上とは……ちょっとこれはね……」
皮膚科の先生が難しそうな顔でそう告げたが、直ちに影響はないらしい。ほらね、皆聞いたでしょ?問題ないってさ。良かった良かった。これで安心したでしょ?
「う……うぅ……ぅ……お願い、お願いします……これ以上彩葉から奪わないでください……お願いします……」
「なんで……なんで彩葉がこんな目に合わなきゃいけないのぉ……?」
……うわぁ……全然安心させられてない……かぐやは神頼みを始めちゃってるし、ヤチヨはどうしてなんだと泣き続けるばかりだよおい……
「まみぃぃぃ……わだ、わだじ、ばがだよぉ……いろばのはだ、ぎれいだなっでおもっでだだげで……ぜんぜんぎがづがなっだぁ……」
「ううん。私だって同じだよ。ほんと……友達失格だよね……」
「中学って……お前……家に居た頃からやんか……そんな前から……?お母さんは、気付かんかったって事か……はぁぁ?」
芦花と真実も大号泣だし、お兄ちゃんはすっごい怖い顔している……ううむ……またしても迷惑掛ける結果で終わるかぁ……あはは、ほんっと……どうしようもなく駄目だねぇ私は。早く治して、お仕事に戻んなきゃなぁ。
「ごめんね皆。私、もっともっと頑張るからね。早く治して皆を安心させられるようにするからさ。だから心配しないで?ね?」
そう言ったら益々泣かれた。解せぬ。可笑しなこと言ってないのに……ねぇ?
何が異常なのか分からない。