終生のライバルに負けたオレ。女になってそいつの嫁になりました ~死んだことになった元公爵令息と、救国の英雄の辺境新婚生活~   作:APP3

15 / 15




第十五話

 雷が弾け、銀白の髪に金色が混ざり始める。 

 

 

「立て」

  

 ルシアンはベッドから身体を起こし、同じく身体を起こしたカイルを突き飛ばす。

 

 

「ぐぁっ!?」

 

 

 雷によって強化された身体で突き飛ばされたカイルは、そのままベッドから転がり落ちる。

 

 

「立てよ」

 

「うぅっ」

 

 

 倒れるカイルの胸倉を両手で掴み、無理矢理立たせ、そのまま壁に押し付ける。

 

 

「なぁ。お前は何が言いたいんだ? え? 言ってみろよ」

 

「…………俺が君と出会わなければ、君に勝たなければ、君があんな無茶な魔法を編み出すこともなかった。あの日だって、俺がもっと早く助けに行けていれば、君があそこまで無理をすることもなかったって」

 

 

 俯くカイル。

 ルシアンは更に力を込めて壁に押し付ける。

 

「──ッ!! お前がオレの人生を評価してんじゃねぇ!!」

 

 叫ぶ。

 

 

「オレはな、お前に勝ちたくて努力したんだよ!! 同じ天才って呼ばれてたお前の鼻をへし折りたくて、あの魔法を編み出したんだよ!!」

 

 

 声を荒げる。

 

 

「それをお前は失敗だと、馬鹿だと評価すんのか!? あぁそうだろな、世間様から見たら大失敗もいいところだ!! 剣士になんかならず、魔法だけ使ってりゃ、こんなことにはなってなかっただろうしな!!」

 

 

 髪を振り乱す。

 

 

「オレの今までの人生はな、お前を倒すためだけに費やしてきたんだ!! そのせいでオレの人生はめちゃくちゃだ! でもな、後悔なんて一つもねぇんだよ!!!」

 

 

 視界が歪む。

 

 

「なんでか分かるか!?」

 

 

 頬に涙が伝う。

 

 

「それはな──お前に負けたことが、何よりも悔しかったからだ!!!」

 

 

 胸倉を掴んでいた手から力が抜け、ルシアンはその場にへたり込む。

 

 

「お前がそうやって思うのは勝手だ……でも、こうやってオマエといることを選んだオレの選択まで間違いだって、言わないでくれ…………」 

 

「ルシアン……」

 

「オマエは覚えてねぇかもしれないけど、小さい頃、オレがお前に勝ったら、その後自分はどうなるのかって聞いてきただろ……? オレはな、その時オマエを部下にしてこき使ってやるって言おうと思ってたんだ……」

 

 

 ぽたり、ぽたりとカーペットが濡れる。

 

 

「でも、それを決めるのはオレじゃねぇ……オマエの人生はオマエだけのものだから」

 

「本当は、オレはあの時からずっと、オマエと一緒にいたかったんだ……オマエだけなんだ……オレに媚びず、機嫌を伺わず、ただのルシアンとして見てくれたのは……」

 

 顔を俯け、膝の上でぎゅっと手を握り込むルシアン。

 

 そんなルシアンを──カイルは抱き締めた。

 

 

◯───

 

 

 ──俺と、同じだったんだな。

 ルシアンを抱き締める腕に力がこもる。

 

 同じように他者から勝手に天才と誉めそやされて、勝手に期待されて。

 

 俺は勘違いしていた。

 ルシアンは強くて、俺なんかよりも立派で、俺みたいにウジウジ悩まなくて、俺よりももっともっと素晴らしい人生が相応しいのだと。

 

 唯我独尊を地で行く彼の、その心の内まで見ようとはしていなかった。

 誰よりもルシアンの側にいたはずなのに。

 

 俺もまた、俺達を勝手に評価した人間と同じように、ルシアンはこうあるべきだと押し付けていたのだ。

 

 

「ルシアン。ごめん…………俺は、君をちゃんと見ていなかった」

 

「……俺は、君なら何でもできるって思ってた。君にはもっと凄い人生が相応しいって……勝手に思ってたんだ」

 

「でも違った。今、やっとそれに気付いたんだ」

 

 

 ルシアンの頬を伝う涙を親指で拭う。

 

 

「君は最初からずっと────ルシアンだったんだね」

 

 

 赤く腫れたルシアンの目が、痛いほど真っ直ぐ向けられる。

 

 

「そうだ……オレは、ずっとオレなんだ…………ルシアンなんだよぉ……!」

 

 

 ルシアンがカイルの胸元に縋り付く。

 

 

「カイル、頼む……オレを…………オレを選んで。他の誰でもない、ただのオレを選んでくれ……」

 

「ルシアン、大丈夫だよ」

 

 

 カイルは縋り付くルシアンの両肩に手を添え、僅かに身体を離し、目を見合わせる。

 

 海のように蒼い瞳が揺れる。

 ルシアンは身体を震わせ、顔をみるみるうちに青ざめさせていく。

 

 

「待って。嫌だ……嫌だ……!! オレを一人にしないで! オレを見て!!」

 

「ごめんね。後で殴っていいから」

 

「──ッ!?」

 

 

 カイルは、そんなルシアンの──唇を奪った。

 

 





  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

元剣豪のTS巫女が昔のライバルに抱かれるまで(作者:なほやん)(オリジナル:歴史/恋愛)

狐に魅入られ女となり、剣を捨てた信太新三郎。▼かつて彼には、互いの剣に焦がれ、共に天下一となることを誓った好敵手がいた。▼それから七年。▼山里の巫女として暮らす新三郎の前に、その男——鳴海兵馬が現れる。▼兵馬が七年ものあいだ探し続けていたのは、ほかならぬ新三郎その人だった。▼互いの剣に脳を焼かれた好敵手同士が、七年越しの劇重感情をこじらせた末、元剣豪のTS巫…


総合評価:872/評価:8.86/完結:5話/更新日時:2026年09月24日(木) 19:06 小説情報

TS娘と情緒をぐちゃぐちゃにされる相棒(作者:べべべたろう)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

▼なお、TS娘本人の情緒もぐちゃぐちゃな模様。▼【ちゃんとしたあらすじ】▼その日、冒険者ニコは女になった。物理的に。▼冒険者としての相棒兼幼馴染で親友のカイは無類の女好きである。ニコは当然、貞操の危機を覚えずにいられなかった。▼が、予想に反してカイはニコに手を出さなかった。なぜなら、奴はTSしたニコによって情緒をぐちゃぐちゃにされていたからである。▼*後天T…


総合評価:1113/評価:8.94/完結:15話/更新日時:2026年09月07日(月) 21:00 小説情報

『世界くらい救ってこい!』と送り出した子分、十年経ったら様子がおかしい(作者:べべべたろう)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

転生したら村娘だった。▼そんな俺の特筆すべき点は、勇者の幼馴染であること。▼「俺の子分なら、世界くらいパパッと救ってこい!」▼そう言って送り出して十年。▼帰ってきた勇者の様子が、なんかおかしい。▼*TS転生、精神的BLものです。


総合評価:670/評価:8.68/完結:10話/更新日時:2026年08月23日(日) 21:00 小説情報

主人公に全てを託して死ぬタイプのヒロインにTS転生したっぽいし、きっちり役割を果たすぞ!(作者:匿名退場予定)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

いい感じのところで主人公に未来を託して死ぬヒロインにTSしちゃった▼でも、原作再現とかできるなら楽しくね?▼だから死ぬまでの余生を楽しむぞ!▼……なんかいきなり主人公くんと仲がいい状態から物語がスタートしちゃったけど、まあいっか▼そんな話


総合評価:929/評価:8.59/連載:11話/更新日時:2026年09月27日(日) 19:03 小説情報

異世界を救ったTS姫様と勇者は、現代に帰還しても男女カップルチャンネルの配信でてぇてぇ営業して生きていく。ダンジョン配信もやるよ(作者:vhuphje)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

「魔力もダンジョンも信じるのに、なんで異世界は信じないの?」「異世界帰り?設定乙w」▼魔王を倒したことは信じてもらえない。▼でも視聴者は、勇者とTS姫様の強さと、二人が付き合っていることだけ、なぜか信じている。▼リョウとイオリは、本物の異世界帰還者。▼リョウは、勇者として王国に召喚された。イオリは、異世界に召喚されたときに身体が女子に変わっていて、姫君として…


総合評価:255/評価:8.5/連載:28話/更新日時:2026年09月28日(月) 12:07 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>