終生のライバルに負けたオレ。女になってそいつの嫁になりました ~死んだことになった元公爵令息と、救国の英雄の辺境新婚生活~   作:APP3

17 / 17




第十七話

「ごめん。めっちゃ変なこと口走った」

 

「大丈夫だよ。俺の方こそごめん。紛らわしいことして」

 

「オマエは謝んな……オレが勝手に……っ、不安になっただけだ」

 

 

 カイルとルシアンは壁に背を預け、並んで床に座る。

 ひんやりとした壁とは対照的に、触れ合う肩は温かい。

 

 

「なぁ、カイル。オレ、多分オマエのことが好きだわ」

  

 

 

 ルシアンは首を傾け、カイルの肩に頭を預ける。

 

 

 

「……いいのか? 男同士だって言ってたろう?」

 

「わかんねぇよ……てか、オレが逆に聞かせろ。オマエもオレなんかでいいのかよ」

 

「もちろん。俺はルシアンが好きだから。気にしないよ」

 

「……少しは気にしろって。ばか」

 

 

 悪態をつくルシアン。

 そんなルシアンの手をカイルは握る。

 

 

「まぁ、オマエらしいな。昔からずっと真っ直ぐで……オレはそんなオマエが好きだ」

 

「──ッ! さっきから好き好きって…………言われるこっちの身にもなって欲しいな?」

 

「ばーか。オマエが先に言い出したんだろ。やり返してるだけだ」

 

 

 ルシアンはカイルの手を握り返す。

 

 

「カイル。オレと出会ってくれて、ありがと」

 

「……っ! こっちの方こそ、ありがとう。俺と一緒にいてくれて」 

 

 

 二人はさらに肩を寄せ合う。

 それからしばらく、どちらも何も言わなかった。

 やがて静かな部屋に、二人の寝息だけが混ざり始めた。

 

 

 

 

 

 ルシアンの銀白の髪が金色に光り始める。

 そして、その金色が毛先から抜け、形を成していく。

 

 現れたのはルシアンとよく似た女。

 その女はベッドから毛布を手繰り寄せると、壁を背に眠る二人に掛ける。

 

 女は薄く笑うと、ルシアンの頭に手を当て、壊れ物でも扱うかのように優しく撫でた。

 

 

 

 

◯────

 

 

「くっはっは!! 流石は王の器! 我の腕を持っていくとはな!」

 

「はぁ……はぁ…………クソがっ」

 

 

 荒廃した校舎を背に、血に濡れた銀白の髪を垂らす男が、剣を地面に突き立て、唾を吐く。

 

 そんな男に立ち塞がるのは、漆黒の毛を生やした巨大な猿。

 獣臭い古びた鎧を身に纏い、大剣を担ぐ猿は豪快に笑う。

 

 その猿の傍らには、銀白髪の男が切り落とした猿の腕が転がっている。

 

 

「貴殿が魔導を究める道を選べば、どれほど大成したか! 実に惜しい!!」

 

「はぁ……はぁ…………」

 

「しかし無念だ! 貴殿ほどの才なら、器にならずとも我らを従える偉大な王に成れると思っていたのだが! 致し方なし!」

 

 

 猿は大股で銀白髪の男に近付く。

 そして、大剣を地面に突き刺すと、大きな手のひらを男へ向ける。

 

 

「……もっと、もっとだ……力を、貸せ……!!」

 

 

 銀白髪の男は剣を杖代わりに立ち上がった。

 そして、その周囲を飛び回る金色の光を掴むと、全身を雷が包んだ。

 

 

「オレは、こんなところで負けられねぇんだよ……アイツに勝つまでは、誰にも負けられねぇんだよ!!!」

 

 

 雷が弾ける。

 男の肌を雷が焼く。

 

 剣を横に寝かせ、頬の前に構える。

 

 そして、地面が砕けるほど踏み込んだその時────雷が消えた。

 全身から力が抜け、剣を取り落として地面に倒れ込む。

 

 

「けほっ! ゴホッ!!」

 

 

 血を吐き、地面を汚す。

 ピクリとも動かなくなった男は、せめてもの抵抗とばかりに、近付いてくる猿を睨みつけた。

 

 猿の手が男に触れそうになったその時、猿は大きく後方へ跳び、何かから距離を取る。 

 

 そこに立っていたのは、黒髪の男だった。 

 

 

「強者の気配だ。貴殿、名は?」

 

 

 猿の問いを無視し、黒髪の男は倒れ伏す銀白髪の男を見つめ、

 

 

「よかった、間に合って。もう大丈夫。ルシアン、後は俺に任せてくれ」

 

 

 心底安心したように、笑みを浮かべた。





お気に入り、感想、ありがとうございます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

元剣豪のTS巫女が昔のライバルに抱かれるまで(作者:なほやん)(オリジナル:歴史/恋愛)

狐に魅入られ女となり、剣を捨てた信太新三郎。▼かつて彼には、互いの剣に焦がれ、共に天下一となることを誓った好敵手がいた。▼それから七年。▼山里の巫女として暮らす新三郎の前に、その男——鳴海兵馬が現れる。▼兵馬が七年ものあいだ探し続けていたのは、ほかならぬ新三郎その人だった。▼互いの剣に脳を焼かれた好敵手同士が、七年越しの劇重感情をこじらせた末、元剣豪のTS巫…


総合評価:927/評価:8.86/完結:5話/更新日時:2026年09月24日(木) 19:06 小説情報

TS娘と情緒をぐちゃぐちゃにされる相棒(作者:べべべたろう)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

▼なお、TS娘本人の情緒もぐちゃぐちゃな模様。▼【ちゃんとしたあらすじ】▼その日、冒険者ニコは女になった。物理的に。▼冒険者としての相棒兼幼馴染で親友のカイは無類の女好きである。ニコは当然、貞操の危機を覚えずにいられなかった。▼が、予想に反してカイはニコに手を出さなかった。なぜなら、奴はTSしたニコによって情緒をぐちゃぐちゃにされていたからである。▼*後天T…


総合評価:1135/評価:8.92/完結:15話/更新日時:2026年09月07日(月) 21:00 小説情報

『世界くらい救ってこい!』と送り出した子分、十年経ったら様子がおかしい(作者:べべべたろう)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

転生したら村娘だった。▼そんな俺の特筆すべき点は、勇者の幼馴染であること。▼「俺の子分なら、世界くらいパパッと救ってこい!」▼そう言って送り出して十年。▼帰ってきた勇者の様子が、なんかおかしい。▼*TS転生、精神的BLものです。


総合評価:676/評価:8.68/完結:10話/更新日時:2026年08月23日(日) 21:00 小説情報

異世界を救ったTS姫様と勇者は、現代に帰還しても男女カップルチャンネルの配信でてぇてぇ営業して生きていく。ダンジョン配信もやるよ(作者:vhuphje)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

「魔力もダンジョンも信じるのに、なんで異世界は信じないの?」「異世界帰り?設定乙w」▼魔王を倒したことは信じてもらえない。▼でも視聴者は、勇者とTS姫様の強さと、二人が付き合っていることだけ、なぜか信じている。▼リョウとイオリは、本物の異世界帰還者。▼リョウは、勇者として王国に召喚された。イオリは、異世界に召喚されたときに身体が女子に変わっていて、姫君として…


総合評価:277/評価:8/連載:30話/更新日時:2026年09月30日(水) 12:07 小説情報

女体化して母親になったよ!天使な子供たちとファンタジー世界で幸せになります(作者:きさまち)(オリジナル:ファンタジー/日常)

ファンタジー世界で真っ当に暮らしていた主人公は罠にハメられ意図せず女体化させられてしまう。▼待っているのは最悪のバッドエンド!そのピンチを救ったのは翼を持つ異種族の男(イケメン)だった。▼割と早い段階で女であることを受け入れイケメン旦那と結ばれた主人公は子宝にも恵まれて幸福の絶頂に…しかしそうは問屋がおろさない!?▼我が子との幸せのんびり生活のためお母さんは…


総合評価:1570/評価:8.27/連載:26話/更新日時:2026年09月26日(土) 19:03 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>