基本ゆったりペースです。
ところどころひび割れた道路を一台のバイクが走る。
運転しているのは灰色の髪をオールバックにし、ゴーグルをした四十代の男性。
黒いレザージャケットを羽織り、はたから見れば渋い男性がバイクでかっ飛ばしているように見える。しかし、その背後からは通常ではあり得ないものが男性を追いかけていた。
それは一見してみれば海月。しかしその海月は宙を浮かび、色も禍々しい紫。伸びた触手の先は槍のように鋭く、太陽の光に反射してギラリと光る。
「全く!あのクソ餓鬼何時になったら来んだ!」
愚痴を溢しながらバイクを飛ばす男性。
次の瞬間、彼の横の地面に海月の触手が突き刺さる。
槍のような触手は易々と地面に穴を空け、それを見た男性の背筋に冷や汗が流れる。
「あんなの食らったら流石に死ぬな…」
当たらなくてよかったと思いながら男性はバイクを飛ばす。
何度か海月の攻撃が来るが、男性は見事なテクニックで触手を避ける。
しかし、触手の一撃がバイクのタイヤを掠める。
「ヤベッ!」
バランスが崩れ、バイクは転倒。
男性は受け身を取り、軽傷で済んだが目の前にあの海月がいた。
万事休すかと思われたその時、海月の前を何がよぎった。
その瞬間、海月の触手の何本かが地面に落ちる。
正確には、目に見えない何かにより海月の触手は切り落とされたのだ。
男性は空を見ながら笑みを浮かべる。
「来んのがおせーぞ」
見上げた空、海月の頭上に赤茶色の翼を広げた青年がそこにいた。
「すみませ~ん。遅れちゃいました」
笑いながら謝る青年。
海月が触手を操り、青年を捕まえようとする。
それに対し青年は踊るように飛び回り触手を避ける。
そして手に握ってあるナイフで触手を切りつける。
海月は痺れを切らしたのか捕まえようとしなくなり、先端の槍で青年を串刺しにしようとする。
「おっと、流石にこれはキツいかな?」
さっきの動きとは全く違い、攻撃的になった触手の動きに青年は驚く。
しかし、青年は笑っていた。
笑いながら隙をついて触手にナイフを滑らせる。
何度も何度もやるうちに触手は機能を失い、青年の一撃で切り落とされる。
触手の数も減り、海月が弱くなってきたその瞬間、男性の声が飛ぶ。
「そこまでだ空!引き上げんぞ!」
男性は転倒したバイクに乗っており、その後ろには、さっき青年が切り落とした触手の何本か乗っていた。
空と呼ばれた青年は攻撃を止め、海月から距離をとる。
「おっさん。もういいのか?」
「あぁ。もう充分だ!」
空は頷き、海月から離れ、男性と共にその場から走り去っていくのであった。