「ったく、遅れやがって」
「アハハ、すみません」
これで二十回目だ、とぼやく男性に空は苦笑する。
彼の名は隼信。先程空に通信した人物だ。
空はバイクの後ろ側に座り、空を見上げていた。
「ま、素材が手に入ったからいいでしょ?」
「良くねぇよ。さっきマジでやばかったんだぞ?下手したら即死してたっての」
「アハハ~」
わざとらしく苦笑する空に隼信は舌打ちをする。
すると二人の行く道の先にボロボロになって打ち上げられた軍艦が見えてきた。
空は軍艦を見て少し眉を潜めた。
「…あそこ嫌だな~」
「我慢しろ」
隼信はハンドルを握り直し、軍艦へとバイクを走らせる。
空はゆっくり目を閉じた。
いつからこうなったのか分からない。
いつから変わってしまったのか分からない。
気がつけば白い部屋にいた。
そこに自分と同じよう位の子供がいた。
部屋が開き、白衣の男と兵隊が来た。
番号を呼ばれ、兵士に運ばれる子供。
無論見知らぬ人物に連れていかれるから泣き叫び、暴れだす。
しかし押さえ込んだ兵士に注射をさされ、子供は大人しくなった。
それからは地獄だった。
照らされる光。
手足に付けられた拘束具。
体に走る激痛。
嘲笑うかのように見下ろす白衣の男達。
鳴り響く絶叫。
「おい空」
目を開ければ隼信が空の顔の前に手を振っていた。
「…なにしてんのおっさん」
「ついたぞ」
「?…あぁ」
上を見上げて空は納得した。
目の前に遠くから見た軍艦が目の前なあり、いつの間にかついていたようだ。
空はバイクから降り、軍艦を見上げる。
岸から打ち上げられた軍艦は月日が経ち、所々錆び付いていて、苔や蔓が生えていた。
隼信はバイクから先程戦った海月の触手を担ぐ。
「空、ドクターに診てもらえよ?」
「え?」
隼信は空いた手で自身の肩を叩いた。
空は不思議に思い、自分の肩を触る。
すると鋭い痛みが肩に走り、手に赤い液体がついた。
「…あー」
「あーじゃねぇよ!!俺もついさっき気がついたがほんと鈍感だなお前!?」
「いや、でもかすり傷でしょ?」
「アホぉ!あの海月まだ分析できてねぇだろ!?そんなんでもし毒持ってたらどうする!?今無事でも後から効果でるヤツだってあんの知ってるだろ!!」
隼信の説教に肩を縮める空。
苦笑して分かりましたよ、と答える。
「ったく。俺達の中じゃトップのスピードを持つくせになんでそんなに鈍いんだお前は?」
「そ、それあんま言わないでくれよ…」
隼信は肩を竦め、そのまま軍艦の入り口に入る。
空は血のついた手をしばらく見て、中へ入っていった。