カードもできるギャルゲー世界に転生した(けど気付いてない)男のカードゲームライフ! 作:烏丸英
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宣言に合わせ、二人のレジェンドが立体映像となって出現する。
甘木はおなじみ、紫属性のケモ耳美少女ルルリカ。
お姉さんの方は黄属性のレジェンドで、銀河を股に掛けるアイドルとしても有名なミリーを使うようだ。
(ミリーか……かわいい女の子だから選んだのか、それとも……?)
お姉さんが使うミリーはルルリカとはタイプの違う、正統派アイドル的な美少女のカードだ。
その見た目から男女ともに人気で、発売前に公式サイトで行われていた第一弾に収録されているレジェンドの人気投票企画でも上位にランクインしていた。
発売から数日しか経っていない今現在、どれだけのプレイヤーがミリーを握っているかはわからないが……個人的には強いレジェンドだと思っている。
経験者であるお姉さんがどうミリーを扱うかを楽しみながら擁立戦を見守る中、先攻を取った甘木がプレイングを開始した。
「私のターン、ドロー! 手札から【スイートメイド クッキー】を召喚! 登場時効果でデッキトップをハーツインして、進化条件達成!」
甘木は早速、ハーツを増やすカードを場に出してルルリカの力を最大に発揮するための準備を始めている。
同時に進化条件を達成した甘木は、レベル1のレジェンドを召喚してみせた。
「レベル1【
先攻は攻撃を行えない。ルルリカを進化させたところで、甘木はターンをお姉さんに回した。
ふんふんと楽し気に鼻を鳴らしたお姉さんは、デッキからドローをすると共にプレイングを開始する。
「それじゃあ、私のターンだね。まずは、アイドルに相応しい舞台を用意してあげなくっちゃ!」
ただ普通にカードで遊んでいるだけなのに、お姉さんの所作の一つ一つには俺たちにはない柔らかさと美しさがあった。
クラスの男子はもちろん、女子たちもお姉さんに目を奪われる中、彼女は手札から一枚のカードを選び、場に出す。
「コマンドカード【デビュー・オブ・アース】を発動! さあ、ライブの始まりだよ!」
金色の長髪を靡かせるミリーの背後に、眩い光が点滅する。
一瞬の間にライブステージが出現し、その上に立ったレジェンドが手を上げれば、陽気な音楽が流れ始めたではないか。
「なっ、なにこれ!? なんでライブ!? ってか、コマンドカードって何!?」
「一ターンに一枚だけ発動できる、特殊な効果を持つカードのことだよ! いくつか種類があるんだけど、私が発動したのはコマンドゾーンに残り続けるセットコマンドってやつだね!」
コマンドカード……レジェンドでもユニットでもない、『エヴォルレジェンズ』における三種類目のカードタイプ。
俗に言う、魔法カードのようなもので、召喚に制限のないユニットたちとは違い、基本的に一ターンに一枚しか発動できないことになっている。
種類は主に三つ。メインフェイズ時に発動できる、ノーマルコマンド。
相手の攻撃時などの特定のタイミングで発動できる、クイックコマンド。
そして、発動後にドロップゾーンには行かず、コマンドゾーンと呼ばれる場所に残り続けるセットコマンド。
ミリーが属する黄属性はこのコマンドカードを活用して戦うカードが多く、それに伴ってデッキ構築も複雑になるため、扱いが少し難しい。
だが、その分、上手く回った時の破壊力は相当なもので、それが故に人気も高い属性だ。
「【デビュー・オブ・アース】の効果発動! 手札を一枚捨てて、デッキから二枚ドローするよ! そして、場にライブステージが出たことで進化条件達成! ミリーを【
ライブステージに相応しい、デビュー衣装を纏ったミリーがウインクをした瞬間、男子たちの間から歓声が上がった。
手札交換と進化の恩恵によるドローによって三枚のカードを新たに手にしたお姉さんは、それを存分に使ってさらなるプレイングを見せる。
「【しごできマネージャー ホシミー】を召喚! 効果で山札の上から五枚を見て、その中にあるライブステージ一枚を回収するね!」
「ぐっ……! 次のカードも引かれちゃったか……!!」
甘木もミリーの進化条件が場にライブカードを揃えることであることは理解したのだろう。
姉が必要なカードを順調に集めていくことに歯噛みする中、フェイズは進み、戦闘に入る。
「それじゃあ、攻撃に行っちゃおうか! ミリーでルルリカに攻撃!」
攻撃宣言と同時に、ミリーの歌によって生み出された音符がルルリカを襲う。
軽い衝撃を受けてよろめくレジェンドがダメージを受ける中、お姉さんは追撃を宣言した。
「まだまだ! 次は【しごできマネージャー ホシミー】で攻撃だよ!」
「それは通さない! 【ボンバー・ブラウニー】でガード!」
ルルリカに突っ込もうとした眼鏡をかけた細身の男性ユニットの前に、プレゼントボックスが出現する。
ボンッ! という音を響かせながら爆発したそれが生み出した煙によって男性が動きを止められる中、ルルリカは箱の中から飛んできたお菓子をもしゃもしゃと食べていた。
「【ボンバー・ブラウニー】はガードに使用した時、ドロップゾーンじゃなくてハーツに入れられる!」
「むむぅ……! ハーツの枚数を増やされちゃったか……!」
(やるな、甘木。教えたことをきちんと実践できてる)
ルルリカの真価を発揮するためにも、進化のためにも、ハーツは多くそろえる必要がある。
そのためのテクニックを一昨日、昨日と教えていたわけだが、甘木はそれをしっかりと活かしたプレイングを見せてくれていた。
お互いにしっかりと終盤に向けての準備を整えていくことを感じさせる立ち上がり。
両者一歩も譲らない戦いを胸を躍らせながら見守る俺の前で、ターンをもらった甘木がカードを引く。
「私のターン。さっきの【ボンバー・ブラウニー】も合わせてハーツの枚数は三枚。もう進化条件は達成してる! レベル2! 【
進化恩恵でまず一枚ドロー。続いて、レベル2のルルリカの効果を発動した甘木がデッキトップから三枚を見る。
その中の一枚を手札に、一枚をドロップゾーンに、最後の一枚をハーツへと振り分けた彼女へと、お姉さんが感心した様子で言う。
「うわ~っ! やっぱその効果、強過ぎじゃない!? コスパ良過ぎだよ~!」
「へっへ~ん! どんなもんだ~い!」
姉からの言葉にえっへんと大きな胸を張り、ドヤ顔になる甘木。
別に何をしたというわけではないのだが、このルルリカの効果を考えると自慢したくなる気持ちもわかる。
ダメージブラスト①というお手軽コストで山上三枚を手札、ドロップゾーン、ハーツに好きなように振り分けられるのだ。
『エヴォルレジェンズ』にはドロップゾーンやハーツから効果を発動できるカードも多数あるし、そういったカードを仕込みながら手札補充もできてしまう上に進化条件の達成を進められる【
「これで終わりじゃないよ! 【スイートメイド キャンディ】と【ムキムキお化けのデイビス】を召喚! 攻撃だ~っ!!」
「むむぅ……!! ノーガード……!!」
ペロペロキャンディを思わせるカラフルな髪色のメイドさんと、お化けなのに筋肉質という矛盾した容姿を持つユニットを召喚した甘木が、ルルリカを含めた三体で攻撃を仕掛ける。
その全てを受けたお姉さんが顔を顰めながら唸る中、甘木は得意気に言った。
「どうだ、見たか!? この調子でガンガン攻めて、次のターンには終わらせてあげるよ!」
「ほほ~う? 萌香ちゃんも随分と言うようになったね~! でも、そう簡単にはいかせないよ? 私のターン!」
一気に三ダメージを与えて優位に立った甘木だが、このまま擁立戦が終わるとは思えない。
そんな俺の予感通りに、お姉さんもまた反撃の準備を進めていく。
「手札からコマンドカード【ホットロック・マーズ】を発動! このターン中、ミリーのパワー+5000!! コマンドゾーンにこのカードを置いて……進化条件達成!! さあ、輝いて! レベル2! 【
先ほど、手札に加えたであろうライブステージを発動してレジェンドを強化しつつ、進化条件を達成したお姉さんがニヤリと笑う。
反撃の予感を感じさせるその笑みを見ながらプレイングを観察する俺の前で、彼女は次々とカードを繰り出していった。
「ホシミーを後衛へ! 空いたエリアに【ギタリスト プラズマックス】を召喚! もう片方のエリアとミリーの後ろに【バックダンサーガール】をそれぞれ召喚するよ!」
一昔前のロックバンドにいそうな派手な恰好のギタリストに続き、アイドル衣装を纏ったかわいらしい女の子二人が場に召喚される。
少しずつ整っていく盤面にプレッシャーを感じているであろう甘木が険しい表情を浮かべる中、お姉さんはカードの効果を説明していった。
「【バックダンサーガール】は自分のターン中、場にあるライブステージカード一枚につき、パワーが1000アップする! 私の場には二枚のライブステージがあるから、合計2000アップだよ!」
「攻撃にも援護にも使える便利なカードね……! 地味に邪魔……!!」
【バックダンサーガール】はレベル1のユニット。後衛に配置することで自分のパワーを前衛に与えることができる『援護』効果を持っている。
自身の効果も合わせれば前衛に配置できるだけのパワーもあるわけだから、状況に応じて配置を変えられる便利なユニットだ。
(【ホットロック・マーズ】の効果でミリーのパワーも上昇してる。やられた分、きっちり返す盤面は整ってるな……)
甘木にやられた三連打攻撃をそのままそっくり返す布陣。
パワー上昇も含めると、甘木よりも強力な盤面を作り上げたお姉さんは、そのまま攻撃を宣言した!
「このまま全員で攻撃! さあ、萌香ちゃんはどうする!?」
「ぐっ……! 【バックダンサーガール】の攻撃はガードして、それ以外は受ける!」
一番ガードに必要な値が低い=手札の消費が少ない攻撃のみを防ぎ、残り二発の攻撃を受ける甘木。
これでダメージは三対三。繰り広げられる互角の勝負を見守るギャラリーたちは、大いに盛り上がっているようだ。
発売されて間もないカードを使っているからだとか、戦っているのが美少女双子姉妹だということもあるのだろうが、こういう雰囲気を見るとやっぱここってカードゲームアニメの世界だよなぁとしみじみ思ってしまう。
(おっと、そんなことを考えてる場合じゃなかったな。ここからが本番、見逃さないようにしないと)
良くも悪くもカードで盛り上がる世界について思いを馳せていた俺であったが、いよいよ勝負が佳境に入ることに気付き、再度勝負する二人へと視線を向け直した。
次の甘木のターンには、レジェンドが最高レベルの3に到達する。強力な効果を発動しながら、本格的な殴り合いが始まる時間だ。
甘木はハーツ、お姉さんはライブステージ。双方、自分のレジェンドの効果を最大限に発揮するための準備を着実に整えている。
それが一気に爆発するのがこのターンだと……一気に動き出す展開を見逃さないように注意深く見守る俺の前で、甘木がドローを宣言した。