カードもできるギャルゲー世界に転生した(けど気付いてない)男のカードゲームライフ! 作:烏丸英
読んでくださってありがとうございます!これから少しずつ更新ペースが落ちていくと思うんですが、続きも楽しんでいただけたら嬉しいです。
「うぅぅぅぅ……! 負けた~……!」
「ホント、ギリギリだったよ! 萌香ちゃん、私が思ってたよりずっと強いんだね!!」
擁立戦は終わった。負けてしまった甘木は大いに凹んでいるが、復帰したばかりの実質初心者としては十分過ぎるプレイングを見せていたと思う。
お姉さんも同じことを思っているのか、やや興奮気味に妹を褒め称えているが、それでも甘木は悔しさを拭いきれないようだ。
「もうちょっとだったのに……! どこでミスったんだ……?」
「ミスらしいミスはなかったと思うよ。私が勝てたのは、ほぼ運みたいなものだしさ」
「くぅ……! 勝ったからって余裕たっぷりな態度見せてくれちゃって……!!」
「本当にそう思ってるよ! 久々に『エヴォルレジェンズ』をやる萌香ちゃんにここまで追いつめられるだなんて思ってなかったし、やっぱセンスあるよ!」
「……そんなんじゃないよ。私の力っていうよりかは、先生の教え方が上手なだけ」
「えっ? 俺?」
お姉さんからの賞賛の言葉に顔を顰めながら、俺を指差す甘木。
自分のプレイングの上手さは俺のおかげだという言葉には俺も驚いてしまったが、それ以上にお姉さんの方が驚いている。
「そっか! 一ノ瀬くんのおかげで萌香ちゃんも『エヴォルレジェンズ』に興味を持って、楽しんでくれるようになったんだ!」
「い、いや、そういうわけじゃあないですよ? 俺がいなくても甘木は『エヴォルレジェンズ』を始めてましたし……」
「謙遜しないで! 萌香ちゃんと仲良くしてくれるだけじゃなくって、『エヴォルレジェンズ』の楽しさも教えてくれて、本当にありがとうね!」
なんだか誤解されているような気がする。それを正そうとしても、お姉さんは話を聞いてくれない気しかしない。
好印象に誤解されているのは救いだが、それはそれで問題を生み出す気しかしないぞと俺が焦る中、ため息を吐いた甘木が声をかけてきた。
「一ノ瀬、本当にごめん! こういうわけだから、今日の予定はキャンセルってことで……」
「あ、そっか。そういう話だったな」
忘れかけていたが、これは甘木家の今晩の夕食作りを誰が担当するかを賭けた擁立戦だった。
負けた甘木がその担当を任された以上、今日のパック開封は残念ながらお預けということになる。
「申し訳ない! 私のために開封を待っててくれたっていうのに……」
「気にすんなよ。元々、忙しくって手を付けられてなかった感が強いしさ」
両手を合わせて謝りながらぺこぺこと頭を下げる甘木は、相当な申し訳なさを感じているようだ。
別にそんなに気にしなくていいのにと思いつつも残念な気持ちを抱かざるを得なかった俺であったが、そこでお姉さんが口を開いた。
「えっ? 萌香ちゃんの予定って、一ノ瀬くんと遊ぶことだったの?」
「まあ、うん。新弾を開封して、色々教えてもらおうと思ってたんだけど……」
「え~っ!? そうだったの!? もう! それを早く言ってよ~!」
そう言えば、何をするかは話してなかったのかとお姉さんの反応を見て、俺はそのことに気付いた。
口元を押さえながら何故か興奮気味にはしゃいでいた彼女は、咳払いをした後で(ほんの少しだけ)落ち着いてから甘木へと言う。
「そういうことなら、今日の晩ご飯は私が作るよ! 萌香ちゃんは楽しんでおいで!」
「えっ!? い、いいの?」
「もちろん! 妹のデートの約束を無理やりキャンセルさせるなんて、お姉ちゃん失格でしょ?」
「で、ででで、デート!?」
「はっ? えっ? ち、違いますって! そんなんじゃ――」
「あ~あ~! 大丈夫、みなまで言わないで! 萌香ちゃん、お姉ちゃんは応援してるからね! でも、今日は夕食までには帰ってくるんだよ! 約束だからね!」
マズい、誤解がさらに深まった。さっきから思ってたけど、このお姉さん想像力が逞し過ぎないか?
甘木と二人で必死に誤解を解こうとする俺であったが、やっぱり話を聞いてくれない。悪い人じゃないし、いい方向に話は進んでいるんだが、問題しかない気がする。
「一ノ瀬くん、萌香ちゃんのことをよろしくね! あっ! でも、えっちなことはダメだよ! お姉さんとの約束ね!!」
「心愛! だから、私と一ノ瀬はそんなんじゃ――!」
「あっ、もうこんな時間! それじゃあ、私はクラスに帰るね! 擁立戦、楽しかったよ~! またやろうね~! ってことで、ばいば~い!」
「心愛~っ! 好き勝手言って帰るな~! このトラブルメーカー!! 戻って私の話を聞け~っ!!」
「あは、あはははははは……」
嵐……いや、ビッグバンのような人だった。すごく眩いし激しいし面白い、本当になんていうか……すごくすごい人だ。
「はぁ、はぁ……! 心愛の奴、本当にもう……っ!!」
自分の教室へと走っていく姉の背中に叫び続けていた甘木であったが、その姿が見えなくなると共に肩で呼吸をしながら振り返ってくる。
俺と目が合った瞬間、何やら気まずそうに視線を逸らした彼女の顔がほんのりと赤く染まっているのは、怒りと興奮のせいなのだろう。
「あ~……とりあえず、良かったな。その、パック開封、できそうだしさ」
「そ、そうだね。まあ、うん。そこだけは感謝かな……?」
微妙に気まずい雰囲気の中、俺は甘木から視線を逸らしながら言う。
しどろもどろになりながらも応えてくれた甘木の顔がさらに赤くなっているのが見えたが、きっと俺はそれ以上に赤くなっているんだろうな~と、そんなことを思う中、ドタバタの昼休みは終わりを迎えるのであった。
ヒロイン『甘木心愛』と出会いました!
甘木萌香、甘木心愛の好感度が上昇しました!