カードもできるギャルゲー世界に転生した(けど気付いてない)男のカードゲームライフ! 作:烏丸英
「こういうこと……? どういう意味だ?」
「いや、だから、こんな感じで一緒にパック開封して、一ノ瀬が取り忘れてたパックの中からちょうど話してた『無敵』カードが……」
言っていることがよくわからずに聞き返す俺へと、甘木が今の状況そのままのことだと答えて……その途中で口を閉ざした。
我ながら滅茶苦茶なことを言っていると思ったのだろう。深いため息を吐いた後、俯きながら言う。
「……ごめん、何言ってんだって話だよね? 意味わかんないでしょ?」
「あ~……まあな。そういうデジャヴを感じたってことはなんとなくわかったけどさ」
「うん、そう。普通に考えて、あり得ない話だとは思うんだけど……なんか、すごいくっきり頭の中に残ってるっていうかさ……」
腕を組み、首を傾げて、ひどく真剣な表情を浮かべながら甘木が呟く。
結構本気で考え込んでいるであろう彼女を心配しながら見つめている俺の視線に気付いたのか、苦笑した甘木は元の雰囲気に戻ると共に口を開いた。
「あははっ! 変なこと言っちゃってごめんね! 開封の続き、やってこう!」
「ああ、そうだな!」
さっきの発言に対する気恥ずかしさもあってか、ほんのりと顔を赤くしている甘木に応えるように、俺も元気な声で返す。
変にテンションが上がったせいで妙な感覚に襲われてしまったんだろうと、先の甘木の言葉をそう片付けた俺は、話題を変えるべく彼女へという。
「さ~て、そろそろ箱一の特別レアが出る頃合いだな」
「ウルトラレア以上が狙い目なんだよね? いいのが出るといい、けど……?」
俺とそんな話をしながらパックを開けていた甘木の目が、今しがた出したカードたちへと向けられる。
何かいいカードが出たのかな~? と思いつつ、同じようにパックを開けた俺は……その中にあった派手な光り方をしているカードに視線を吸い込まれてしまった。
「えっ? あっ! おおっ!?」
「わっ!? わぁ……! わあ……っ!?」
カードを見つめる俺の口から、間抜けな声が飛び出す。
隣にいる甘木も同じ声を発していたが、それを気にする余裕は今の俺にはなかった。
青い炎と月をバックに、こちらを見つめるように立つ戦士。
蒼炎を宿した拳を握り締め、精悍な表情を浮かべるその青年の隣には、龍の頭部を模した紋章が金の箔押しで刻み込まれている。
「いいい、一ノ瀬! 当たった! ルルリカのウルトラレア、当たった!」
「こっちも、当たった……レジェンドレア……!!」
「えええええええっ!?」
興奮気味に自分が当てたカードを見せてくる甘木に対し、一周回って冷静になってしまった俺も今しがた当てたカードを見せつける。
自分を上回る引きを見せた俺と最高レアのカードの登場というダブルパンチに驚いた甘木が叫ぶ中、俺は改めて手の中のカードを見た。
「【蒼炎龍皇 クロス】……! 欲しかったカードじゃん……!!」
今回狙っていたカードの中の一つ、【蒼炎龍皇 クロス】。背景ストーリーでも重要な役割を持っていることを示唆されているこのレジェンドは、見た目も効果も何もかもが格好いい。
デッキ構築とプレイの難易度がやや高めなため、【紅蓮衆】デッキの後釜としてメインデッキにするかどうか悩んでいたが……こんな運命とでも呼ぶべき引きをしてしまった今、俺の中から組んで使う以外の選択肢は消え去っていた。
「こ、これがカートン二つ分の輝き……!! すっげえ……!!」
「やったじゃん、一ノ瀬!! マジでおめでとう!!」
「サンキュー! もしかしたらラッキーガールの甘木と一緒に開封したおかげかもな!」
「そんなことないって! 一ノ瀬の日頃の行いがいいから、『エヴォルレジェンズ』の神様がご褒美をくれたんだって! ほら、私にも色々教えてくれてるしさ!!」
屈託のない笑顔を浮かべて祝福してくれる甘木の言葉に、少し照れ臭さを感じてしまった俺はごまかすように笑った。
そうした後、気合いを入れた様子の甘木が開封していないパックを見ながら言う。
「よ~し! それじゃあ、そのレジェンドに合うカードを当てていこうか! ツイてる女の実力、見せてやるぞ~!」
「はははっ! めっちゃ頼もしいわ! 任せたぜ、ラッキーガール!!」
最高レアのカードがいきなり出てしまったからここからの開封は盛り上がりに欠けるかもと思ったが、そんなことはなさそうだ。
俺の新デッキ作りに必要なカードを集めるべく、俺以上に気合いが入っている甘木と一緒にパックを開け、カードを見ていく時間は、本当に楽しいものになったのであった。
☆ ☆ ☆
「このカードたち、本当に全部貰っちゃっていいの?」
「いいって。最初からそういう約束だっただろ?」
それから時間が過ぎて、時刻は夕方になった。
家に帰る甘木を途中まで送りながら、俺は申し訳なさそうにしている彼女へと言う。
約束通り、今日出たカードの内、甘木のデッキを強化できそうなものは全部渡した。
同時に、甘木が引いたウルトラレアのルルリカもプレゼントすることにしたわけだが、そのことに多少の引け目があるようだ。
「でも、ルルリカのウルトラレアまで貰うのは悪いよ。売れば結構な額になるんでしょ?」
「本当にいいんだって! どうせ俺は使わないしさ! 甘木なら、大切にしてくれるって信じてるから!!」
確かに売ればいい値段になるカードだが、惜しくはない。
なんとなくなのだが……あのルルリカは、甘木の下に行きたがっているように思えたからだ。
某アニメで決闘者の学園に通う主人公にカードをプレゼントした前作主人公はこんな気持ちだったんじゃないかと思いながら、俺は甘木へとこう続ける。
「俺も新デッキを仕上げていきたいしさ、良ければ調整に付き合ってくれよ。そうしてもらえると俺も助かるから」
「一ノ瀬がそう言うならそれでいいけど……心愛にリベンジするために、私も色々勉強しなきゃいけないしさ」
ぶっちゃけた話、身近に調整の相手がいてくれると本当に助かる。
中学までの友人たちもいるにはいるが、同じ学校に通う友達の方が予定も合わせやすい。
「よし! じゃあ、それで決まりな!」
「………」
甘木も乗り気になってくれたと判断し、それでこの話を決着させようとしたのだが……彼女はまだ、何か考え込んでいるようだ。
少し間が空いて、顔を上げた甘木は、俺へとこう言う。
「あのさ、デッキの調整ってずっと対戦をし続けるわけじゃないよね? その結果を元に、必要なカードとかを買いに行ったりもするでしょ?」
「え? ああ、まあ。そういうこともするな」
「じゃあさ、その時に私のおすすめのお店にご飯食べに行こうよ。カードのお礼ってことで、お金は私が出すから」
「えっっ!?」
予想外の甘木の申し出に、俺は思わず大声を出してしまった。
これってもしかしなくてもデートのお誘いってやつでは? と、前世を含めても一切経験がなかった女の子からのお誘いという状況に面食らう俺へと、少し恥ずかしそうにしている甘木が言う。
「……まあ、一ノ瀬が嫌だっていうなら無理しなくてもいいけど――」
「い、嫌じゃない! 嫌じゃないから!! ただ驚いただけで、甘木と一緒に出掛けるのは全然嫌じゃないし、むしろめっちゃ嬉しいから!!」
「そ、そこまで言う必要はないってば! もう、ばかぁ……!!」
「あ、ご、ごめん……」
こういう時、どういう反応した方がいいかわからない。多分、笑えばいいわけじゃないと思う。
セルフでボケて、ツッコんでを脳内でやった後、視線を泳がせることしかできなかった俺へと、甘木が自分のスマホを差し出してくる。
「……ん!」
「ん……?」
「連絡先を交換しようってこと! そうした方が、色々便利でしょ!?」
「はっ、はい!」
半ばヤケクソ気味の甘木の言葉に、思わず背筋を伸ばして返事をしてしまう。
自分でも驚くくらいにスムーズな動きでスマホを取り出し、連絡先を交換すれば、甘木は一つ息を吐いた後で満足気に笑ってくれた。
「よし! 今度連絡するから、無視しないでよね!」
「しないって! 絶対、ちゃんと出るから!!」
慌てっぱなしの俺の反応を見た甘木が、くすくすと笑う。
そんな彼女の様子を見ながら、夕焼けのおかげで多少はこの顔の赤みもごまかせているかなと、俺はそんなことを思うのであった。
甘木萌香の好感度が上昇しました!
甘木萌香の連絡先を入手しました!
条件
・甘木萌香の好感度が一定以上
・甘木萌香の連作先を入手する
を達成したため、イベントが発生します!
デートイベント『▲キド×の初〇ート!(萌▽編)』
………
……
…
運命のねじれを検出。修正を開始
修正実行中……実行中……エラー、修正不能
【異変】が露出します。それに伴い、シナリオが開始されます
警告・このシナリオにはヒロインが消滅する危険性が存在します
宿命シナリオ【シスターズクライシス】