カードもできるギャルゲー世界に転生した(けど気付いてない)男のカードゲームライフ!   作:烏丸英

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鮮血の暴君、【強欲の吸血姫 ルルリカ】※

 萌香の場に出現した、小柄な少女。

 尖った八重歯と蝙蝠を思わせる羽を生やし、胸の谷間やへそ、尻の上半分が見える露出の激しい衣装を纏うそのユニットが持つ真紅の瞳に見据えられた俺の体に、言いようのない緊張が走った。

 

「な、なんだ、そのレジェンドは……? 俺はそんなカード知らないぞ……!?」

 

「ふふっ……! そんなに焦らないでよ。この子の力なら、今から存分に思い知らせてあげるからさ……!」 

 

 思わず、そう呻いてしまった俺へと、嘲笑を浮かべたままの萌香が言う。

 異質な雰囲気を纏う彼女は、紅の光を纏う自分のレジェンドの力を解放してみせた。

 

「【強欲の吸血姫 ルルリカ】の効果発動。自分のユニット全てをハーツに移動(ハーツイン)!」

 

「み、味方のユニットを吸収した!? いったい何を……!?」

 

 吸血鬼と化したルルリカが、自分の場に存在するユニットたちから血を吸い始める。

 美しいメイドの首筋に牙を突き立て、恍惚とした表情を浮かべる彼女たちから力を吸い取っていくルルリカの姿に驚く俺の前で、萌香がその効果を解説していった。

 

「【強欲の吸血姫 ルルリカ】、第一の効果。こうしてハーツに入れたユニット一体につき、相手レジェンドのパワーを2000下げる。『ブラッド・サッキング』!!」

 

 【閃光騎士王 シャイニング】……白銀の鎧を纏った凛々しい騎士である俺のお気に入りのレジェンドの首筋に、ルルリカが牙を突き立てる。

 シャイニングの悲鳴が響く中、彼から血と力を奪い取ったルルリカが離れた時、そこには生気を失い、骨と皮だけになった惨めな騎士王の姿があった。

 

「そ、そんな……! 俺のレジェンドのパワーが、0に……!!」

 

 自分のレジェンドが弱体化させられたことに愕然とする俺であったが、萌香の蹂躙は止まらない。

 残されている効果を次々と発動し、俺を追い詰めていく。

 

「あははっ♥ よわよわ英雄のできあがり~♥ でも、まだまだだよ♥ 第二の効果、ハーツインしたユニットの数三体につき一回、ルルリカの攻撃回数を増やせる。効果でハーツインしたユニットは五体だけど……【クリミナルメイド・リズベッド】と【クリムゾンバット】はルルリカの効果で数える時、二体分になる効果を持ってる。これで合計七体分になって、二回分の増加攻撃をゲット」

 

「う、ああ……」

 

「まだあるよ? 第三の効果は、ハーツインしたユニットが五体以上なら、このターン中ルルリカが与えるダメージは一増える。つまり、今から一発でも食らったらアウトな攻撃が三回、クソ雑魚になっちゃった騎士王様に叩き込まれるってことになるんだけど……脳みそスカスカなカスは防ぎ切れるかな~?」

 

「こ、こんな、こんなっ……!」

 

 とても楽しそうに笑いながら俺を嘲る萌香の言葉に、背筋が震える。

 宙に浮かび、弱体化したシャイニングを見下すルルリカが魔力を爆発させる様を目にした俺が息を呑む中、萌香が攻撃を宣言した。

 

「それじゃあ、いっくよ~! まず一回目~!」

 

「が、ガードだ! 騎士たち、シャイニングを死守しろ!」

 

 まともに立ち上がることすらできないシャイニングに、ルルリカの魔の手が迫る。

 血で作られた爪での斬撃を俺が手札から出したユニットたちが身を挺して防ぐが、ルルリカも萌香もそれを楽しそうに笑いながら見つめていた。

 

「は~い、二回目~! これは防げるかな~?」

 

「が、ガード! ガードだっ!!」

 続く巨大な翼を羽ばたかせての突風攻撃によって、また騎士たちが吹き飛ぶ。

 シャイニングが何もできずに虚ろな目で仲間たちが蹂躙される様を見つめる中、荒い呼吸を繰り返しながらも俺は手札を確認し、自分を鼓舞していた。

 

(大丈夫、大丈夫だ! あと一発なら防げる! ここを耐えて、次のターンに反撃だ!)

 

 完全にダメージ計算を狂わされて、手札を想像以上に使わされてしまった。

 だけど、あと一発ならギリギリ防げる。ここを耐えることさえできれば、勝機はあるはず――!

 

「あっ、そうだ! 言い忘れてたことがあったんだ~!」

 

 ――そんな俺の淡い期待を見抜いたかのように、萌香が明るい声で言う。

 とても楽し気に、かわいらしい笑みを浮かべてこちらを見つめる彼女を見た俺が、強い恐怖を感じる中……萌香は、首を傾げながらこう言った。

 

「ルルリカの三回目の攻撃は、手札からユニットを出してガードできないんだよね~!」

 

「……は?」

 

 その言葉に、俺の思考が停止する。

 手札を使って防御できないということは、攻撃を防ぐ術がないということだ。そして、この攻撃を食らった俺のダメージは六になり……敗北が決定する。

 

「無駄な抵抗ご苦労様♥ ちょっとは楽しめたよ♥」

 

「そん、な……そんな……っ!?」

 

 絶望に沈んでいく俺を見つめながら、萌香はとても楽しそうに笑っていた。

 愉悦に満ちた笑みを浮かべているのは彼女だけではない。シャイニングにトドメを刺そうとしているルルリカもまた、同じ笑みを浮かべている。

 

「や、止めろ……! 止めてくれぇぇっ!!」

 

「ふふっ……! おやすみ、雑魚騎士王様……!」

 

 その瞬間、俺はシャイニングと一つになったかのような錯覚に襲われた。

 抵抗する術を失った騎士王が見ている景色、感じている絶望、その全てを共有する俺の前に、血で作られた巨大な牙が出現する。

 大きく口を開いたそれは、唸りを上げて狙い定めた俺を挟み込み……鋭い牙が体に突き刺さる痛みに、俺は泣き叫ぶことしかできなかった。

 

「『ブラッディ・ファング』!!」

 

「ぎゃああああああああっ!」

 

 シャイニングが纏う白銀の鎧が、俺の骨と肉が、牙に噛み砕かれる。

 その場に崩れ落ち、意識を遠のかせる俺に近付いてきた萌香は、嘲笑を浮かべながら口を開いた。

 

「あ~、つまんなかった。でもまあ、これで目的は果たせたわけだし、良しとしよっか! ああ、あと、もう二度と私に近付くなよ? お前、くっそキモいからさ! 理解できたよね、ざ~こ!」

 

「うぐ、う、ぐうぅ……」

 

 徹底的な罵倒にプライドを粉々に粉砕された俺は、心と体の痛みに負け、そのまま意識を失った……。

 

★ ★ ★

 

「萌香ちゃん、そっちは終わった?」

 

「うん、ばっちり! お姉ちゃんも問題なく済ませたみたいだね! さっすが~!」

 

「うう、ん……?」

 

 頭の中に響いてきた声に反応して、俺は意識を覚醒させる。

 なんだか長い夢を見ていたみたいだ。ぼ~っとする頭をどうにかするために首を振っていた俺の目に、大好きな双子ヒロインの姿が飛び込んできた。

 

(あっ……! 心愛と萌香……!)

 

 甘木姉妹、【エヴォルレジェンズLOVE】でも人気なヒロインたち。

 姉の心愛はお淑やかで包容力のある、落ち着いた姉タイプのヒロイン。妹の萌香はメスガキめいたムーブが特徴の、これまた人気のヒロインだ。

 

 これが甘木姉妹。甘木心愛と甘木萌香。前世で何度も攻略した正統派巨乳姉ヒロインとメスガキロリ巨乳ヒロインに目を奪われてしまう俺であったが、強い嫌悪の視線を向けてきた萌香が口を開く。

 

「ねえ、何ジロジロ見てんの? キモいんだよ、ざ~こ!」

 

「うっ……! ご、ごめんなさい……!」

 

 そう、萌香に罵倒された瞬間、俺は思わず体をビクつかせて縮こまってしまった。

 昔ながらこれもご褒美だと思って享受できたはずなのに、どうしてだか恐ろしく、そして申し訳なくて仕方がない。

 

 これ以上、二人の近くにいることに耐えられなくなった俺は、無言で立ち上がると教室を出ていく。

 背中に突き刺さる心愛と萌香の侮蔑の視線の痛みに耐えながら、俺は自分の中の大切な何かが壊れることを感じていた。




 転生者『成宮瑛斗』が甘木萌香ルートBADEND①【どうしようもない雑魚】を迎えてしまいました。
 転生者『三島歩』『向井大吾』が甘木心愛ルートBADEND①【絶望に沈む希望】を迎えてしまいました。

 残る資格者は一名です。
 全員が宿命シナリオの攻略に失敗した場合、このルートが確定します。
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