カードもできるギャルゲー世界に転生した(けど気付いてない)男のカードゲームライフ! 作:烏丸英
燃え盛る蒼い炎が龍の形になり、宙へと舞う。
降下してきた蒼炎の龍を受け止めたクロスは、その身に炎と龍の力を宿すと共に目を開いた。
「あれが、一ノ瀬の新しい切り札……!」
「【蒼炎龍皇 クロス】!!」
「ふ~ん……派手だね。でも、見た目だけじゃ意味ないよ?」
煌めく蒼炎を拳に纏った俺の切り札に対し、甘木たちが口々に感想を漏らす。
その声を受けながら、俺はカードをプレイしていった。
「【蒼炎龍皇 クロス】の進化時効果、デッキから【龍装】カードを一枚選び、ハーツインできる。そして、この効果でハーツに入れた【
今、ハーツの中には三枚の【龍装】カードがある。
その効果で二枚目のイズチと【ブルーマグナドラゴン】、【デュアルソードドラゴン】を場に出した俺は、盤面を整えると共にバトルフェイズへの突入を宣言した。
「攻撃だ! イズチの支援を受けた【ブルーマグナドラゴン】でアタック!!」
「ノーガード」
青みがかった色合いのドラゴンが吐いた炎がルルリカを包み、彼女に手傷を負わせる。
吸血姫が苦し気に表情を歪める中、その隙を見逃さぬようにして巫女が火炎弾を放った。
「続けて、イズチの支援を受けたミハヤで攻撃!!」
「それもノーガード」
二発目の攻撃も直撃、これでダメージは並んだ。
しかし、余裕の表情を崩さない赤い甘木は、小さく笑みを浮かべながら俺へと言う。
「ダメージ三で並んだ……とか、思ってないよね? まだ全然、勝負は決まってないよ?」
「わかってるさ。だけど、これで終わりじゃない! 【デュアルソードドラゴン】の支援を受けた【蒼炎龍皇 クロス】で攻撃する時に、ダメージブラスト①で効果発動!!」
俺の言葉に呼応するように、クロスの右拳に炎が集まっていく。
拳を振り抜くと共に解き放たれた炎が一直線にルルリカへと飛び、その一撃で彼女が吹き飛ばされる中、クロスは今度は左拳に蒼炎を集めていた。
「コストを支払うことで【蒼炎龍皇 クロス】はパワー+10000され、このターンもう一度攻撃を行うことができる! そして、【デュアルソードドラゴン】は一ターンに二度まで支援可能! もう一度攻撃だ!!」
「ちっ……! その攻撃は通さない。今出たドローマーカーでルルリカのパワーを上昇させて、さらに手札から【クリミナルメイド ペリエ】を切ってガードする」
続けて繰り出されたクロスの二回目の攻撃は壁となったメイドによって阻まれてしまった。
燃え盛っていた炎が消えたことで真っすぐにお互いを見れるようになった俺と赤い甘木は、視線を交わらせながら口を開く。
「残念だったね。すっごく頑張ったのにトドメまでいけなくてさ」
「ああ、残念だ。でも、勝てなかったことをそう思ってるんじゃない。お前とこんな形で擁立戦をしてることが、残念で堪らないよ」
俺の言葉に対し、赤い甘木が予想外とばかりに目を細める。
そんな彼女を見つめながら、俺はそう思った理由を語り始めた。
「今の攻撃、全部を受けたとしても甘木のダメージは五……つまり、どのみちトドメまではいけなかった。お前はそれを承知で全部の攻撃を受けようとしてた。途中でマーカーを引いて、パワーアップと手札の補充ができたから最後の一撃は防いだけど、そういう柔軟なプレイングもできるってことだ」
「それが何? どうして残念に思うの?」
「……これが普通の擁立戦だったら、すっげえ楽しかったんだろうなって、そう思ったんだ」
赤い甘木がギリギリまでダメージを受けようとしたのは余裕を見せるためではない。この後に出てくる切り札の効果とそれによるリスクを考えた上でのプレイングだ。
【
仮にそのターンの攻撃を防がれてしまえば、返しの相手の攻撃を凌ぎつつ再度盤面展開を行う必要があり、そのためには大量の手札を消費することになるだろう。
だからこのターン、赤い甘木は手札を温存するために敢えて攻撃を防がなかった。
さらにそういうプランを立てつつもドローマーカーでのパワー上昇と手札補充ができたことでプレイングを修正する柔軟さも持ち合わせている。
こちらの甘木が持つセンスを開花させ、熟練プレイヤーへと成長した存在……それがこの赤い甘木だ。
だからこそ、思ってしまう。何のしがらみもなくこの甘木と擁立戦ができたら、絶対に楽しかっただろうな、と。
「見たこともないカードを使う、滅茶苦茶強いプレイヤーとの擁立戦……そんなの、絶対に楽しいに決まってる。甘木の存在や未来なんてかかってない、友達同士で楽しむ普通の『エヴォルレジェンズ』だったら、きっと……」
「………」
「甘木だって、そのデッキをずっと使ってきたんだろ? こっちの甘木もルルリカが大好きなんだ。だからきっと、お前もそのデッキをずっと使い続けて、大切にしてきた。そうなんだろ?」
「……だったら、何?」
「そんなふうにカードを大切にできる人間が悪い奴だとは思えない。そんな人間が、あの甘木萌香が、どうしてこんなことをするんだ? 教えてくれ、俺は……お前の力になりたいんだ」
「……力になる? 馬鹿言わないでよ。私が、私たちが幸せになることを現在進行形で邪魔してる人間が、どの口でそんなことを……!!」
「甘木、俺は――!」
「うるさいっ!! 何もできない、邪魔することしかしない奴が、ふざけたこと言うなっ!!」
赤く禍々しい光が、赤い甘木の悲鳴にも似た叫びに呼応するように膨らんだ。
息を荒げながら顔を上げた彼女の目に、薄っすらと涙が浮かんでいることに気付いた俺が口を閉ざす中、複雑な感情を表す表情を浮かべた彼女が叫ぶ。
「そんなに知りたいなら教えてあげる! 自分自身の存在を奪ってでも、私がこの世界で生きることを望む理由を!!」