カードもできるギャルゲー世界に転生した(けど気付いてない)男のカードゲームライフ!   作:烏丸英

33 / 33
手が届いてしまった世界の話

 

「萌香ちゃん……?」

 

 私がその痛みを感じたのは、家で妹を待っている時だった。

 鋭く、そして強い痛み……この痛みを、私は知っている。

 

 忘れもしない、小学五年生のあの日……私を突き飛ばした萌香ちゃんがトラックに撥ねられる姿を目にした時に感じた激痛が今、再び襲ってきた。

 それが何を意味しているのかを理解した私は、その場に崩れ落ちると共に苦しみに呻く。

 

「また、守ってあげられなかった……! ごめんね、ごめんね……!!」

 

 私の萌香ちゃん。小さくてかわいくて、何があっても守ってあげたかった大切な妹。

 萌香ちゃんのためならどんなことだってできた。私はお姉ちゃんだから、妹を守るんだって……その想いを胸に、これからもずっと萌香ちゃんを守り続けるって、そう決めていた。

 

 それなのに、私は……肝心な時に何もできなかった。

 いや、違う。それどころか、私は守るべき存在だった萌香ちゃんに守られてしまったんだ。

 

 本当なら、トラックに撥ねられていたのは私だった。あの瞬間、駆け出した萌香ちゃんが私を突き飛ばしてくれたから、私は生きている。

 何もできなかった私が生きて、私を助けるために走った萌香ちゃんが死んだ。あの日、死ぬべきだったのは私だったはずなのに……私は萌香ちゃんに守られて、こうして生きている。

 

 でも、妹の命と引き換えに得た人生は、あまりにもつらく苦しいものだった。

 学校にも行かず、家に引きこもり、生き残ってしまったことを悔やみ続ける日々……唯一の慰めは萌香ちゃんと遊んでいた『エヴォルレジェンズ』の存在。擁立戦の内容を思い出しては再現し、萌香ちゃんが生きていたらこんなプレイングをしたんだろうなと想像しては現実に打ちのめされた。

 

 いくら『エヴォルレジェンズ』に逃げても、萌香ちゃんが戻ってくるわけがないなんてわかっていた。

 それでもやめられなかったのは、デッキに触れる度に笑顔を向けてくれる萌香ちゃんの姿が鮮明に浮かんできたからだ。

 

 擁立戦で勝つ度に笑ってくれる萌香ちゃん。すごいねって、自慢のお姉ちゃんだって、そう笑顔で私を褒めてくれる妹の幻影に縋るように、私は『エヴォルレジェンズ』に没頭していった。

 それは多分、暗い海の中に沈み続けていく感覚に似ていたと思う。

 先なんてないことはわかっている。それでも、深い海の底に何かがあるんじゃないかって期待を捨てられずに、息継ぎもしないでたった一人で潜り続けていくような……そんな人生を送ってきた私に、神が微笑んでくれた。

 

 ようやく出会えた、失ったはずの萌香ちゃん。大切な大切な、私の妹。

 今度こそ守ってみせる、二人で幸せになるんだって、その想いを胸に自分自身を打ち倒して、あと少しで理想を現実にできるはずだった。

 

「許さない……許せない……っ!!」

 

 その幸せを邪魔する奴を、萌香ちゃんを泣かせた奴を、そして、またしても何もできなかった自分自身を……私は絶対に許さない、許せない。

 この報いは受けさせる、二度と同じ過ちは犯さない。今度こそ私が、萌香ちゃんを守ってみせる。

 

「待っててね、萌香ちゃん。お姉ちゃんが助けてあげるから……!」

 

 まだ何も終わっていない。私がここに存在している以上、終わらせたりなんかしない。

 囚われた大切な存在を救い出し、二人でやり直す……そのためになら、なんだってする。

 

 たとえどんな罪に塗れようとも、萌香ちゃんを幸せにする、してみせる。

 怒りと憎しみと決意を入り混じらせた感情を渦巻かせながら、私は決戦に向けて己のすべきことをし始めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

キミの切札?俺の隣で寝てるよw(作者:ピッツァ煮込み焼き)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

▼コントロール奪取。▼相手の所有するカードの制御を奪い、支配することから、NTRとも言われる効果。▼一つのTCGが全てを支配する世界に転生した少年、寝捕 捲は、ある日自らの元にコントロール奪取を持ったカード達が集まっていることに気がつく。▼「せっかくなら、色んな人の切札寝取りますかw」▼そんな悪乗り少年は、気が付かぬ間にアニメ主人公のエースカード、悪の組織の…


総合評価:561/評価:7.3/連載:7話/更新日時:2026年09月30日(水) 21:00 小説情報

精霊が切り札の世界で、俺だけ孤独に成り上がる(作者:モナカパウマン)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

カードゲーム最高!▼全てがアニメみたいにカードゲームで回ればいいのに……そんな風に思って、日々を過ごし、気がついたらカードアニメみたいな世界に転生していた。だが問題があった。この世界においてSSRカードの証左である精霊たちが一切懐いてくれないのである。▼しかし構わない。▼俺は一人で成り上がってみせる。▼元よりカードゲームに精霊なんて、無粋なのだ。▼※他サイト…


総合評価:5679/評価:7.76/連載:19話/更新日時:2026年10月19日(月) 21:00 小説情報

カドゲ世界で「このカードが君の所に行きたがっている」屋さんになった(作者:ユ◯ギさんみたいになりたい)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

カードゲーム世界に転生したからには、一度はやってみたいことがある。▼「このカードが君の所に行きたがっている」と言ってカードを渡して去っていくやつ。▼折角なので、いっそこれを職業にしてみよう。▼そんな思いからカードショップ「このカードが君の所に行きたがっている」を開いた俺の元には、毎日いろんな客がやってくる。▼なにしろカドゲ世界は変人の宝庫。▼そんな彼らの元に…


総合評価:5561/評価:8.18/連載:5話/更新日時:2026年10月01日(木) 07:05 小説情報

貧乳好きなのにカードの精霊達の胸が大きすぎる(作者:匿名)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

カードで国境すら決める世界▼そんな世界に転生した貧乳好きのショタがおっぱいの大きなカードの精霊達に囲まれる話


総合評価:7044/評価:8.44/連載:9話/更新日時:2026年09月25日(金) 20:06 小説情報

(ガワだけ)胡乱なカードゲームおじさん(作者:十田心也)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

【バトルワールド】▼それはただのカードゲームに非ず▼それは世界中の人々を熱狂に導き、いまだ醒まさせない▼ある国では1枚のカードを手に入れるため、世界有数の富豪が一文無しになり都市が壊滅した▼またある国では、そのカードゲームが最も強い者が皆を率いるリーダーとなった▼長年争っていた両国が、1回のカードゲームの勝負で終戦に合意したこともある▼カードゲームの枠を超え…


総合評価:4913/評価:8.43/連載:33話/更新日時:2026年09月29日(火) 18:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>