花たちは嚮導者の夢を見るか 作:おこそつのぬほふもむよゆらわ
次からは新章です。
夜は静かだった。
先生が大赦から与えられた仮住まいへ戻った頃には、窓の外を歩く人影もほとんどなくなり、部屋には机の上に置かれた照明とシッテムの箱の淡い光だけが残っていた。先ほどまで広げていた本を閉じ、買ったばかりのノートを机の端へ寄せる。昼間は随分と歩いた。古本屋へ入り、うどんを食べ、海を眺め、喫茶店でコーヒーを飲んだ。久しぶりに何も起きない一日だったはずなのだが、シッテムの箱の画面に表示されたプラナの表情を見た瞬間、先生は今日という休日がまだ終わっていないことを悟った。
「どうしたの、プラナ」
『先生。少し確認していただきたい情報があります』
「今?」
『可能であれば今です』
声はいつもと変わらない。平坦で、感情をできるだけ排したような声音だった。ただ先生は、プラナがこういう話し方をするときほど、内容が軽くないことを知っていた。隣ではアロナも普段のような笑顔を見せず、画面の外側を気にするように黙っている。
「分かった。何を見ればいい?」
『先日の戦闘記録です。スコーピオン、キャンサー、サジタリウス。三個体について映像解析を続けていました』
「私が狙われてた件?」
『それも含まれますが、今回確認したいのは別項目です』
「別?」
『はい』
画面が切り替わる。樹海の中、巨大な三体のバーテックスが映し出された。先生にとってはまだ数日前の出来事なのに、映像として見ると妙に遠く感じる。スコーピオンが前衛として友奈たちを押し込み、キャンサーが射線を制御し、サジタリウスが後方から砲撃する。自分はその少し離れた場所に立ち、アロナとプラナの情報を頼りに指示を飛ばしていた。
「この辺は覚えてるよ」
『では、ここです』
映像が止まる。サジタリウスの上部が拡大された。戦闘中なら気にも留めなかった細部だ。白い光。砲撃前の発光。装甲の輪郭。そのさらに上、頭部と呼べるのかすら分からない位置に、ぼんやりとした輪が浮いている。
先生はしばらく何も言わなかった。
「……これ」
『はい』
「光ってるだけじゃない?」
『その可能性を第一仮説として検証しました』
プラナの返答は即座だった。
「第一仮説ってことは、違ったんだね」
『通常の発光現象として説明するには矛盾が多すぎます』
「具体的には?」
『順番に説明します。まず、発光中心がバーテックス本体の表面上に存在していません』
「浮いてるってこと?」
『見かけ上はそうです。ただし物理的な浮遊物体であるとも考えにくいです』
「理由は?」
『本体が急旋回した際にも相対位置が一切変化しません。慣性による遅延、振動、偏位が確認できませんでした。固定された構造物であれば本体側との接続部が必要ですが、それもありません』
「じゃあ投影?」
『投影源が確認できません。また投影である場合、観測角度の変化に応じて形状あるいは視認性に一定の変化が生じるはずですが、その変化が極端に少ないです』
「極端に、ってどれくらい?」
『サジタリウスが約三十七度姿勢を変化させた区間で、輪の見かけ上の位置偏差は映像解像度上ほぼゼロです』
「……それ、普通なの?」
『通常の三次元構造物としては不自然です』
先生は画面に映る輪をじっと見る。見れば見るほど、見慣れたものに見えてきた。けれど認めるには違和感が大きすぎる。
「アロナ」
『はい』
「これ、私が思ってるものに見える?」
アロナはすぐには答えなかった。少しだけ視線を伏せ、やがて小さく頷く。
『……はい』
「似てる、じゃなくて?」
『私には、そう見えます』
先生は椅子の背もたれへ身体を預ける。
「プラナは?」
『名称については慎重であるべきです。発生原理が同一である保証はありません。ただし現時点の観測情報から分類する場合、最も近いものは――ヘイローです』
部屋が静かになる。
先生は無意識にシッテムの箱を見る。その中にいるアロナにも、プラナにも、光輪がある。キヴォトスの生徒たちにもある。それは先生にとって、あまりにも当たり前の光景だった。学校へ行けば誰かの頭上にあり、街へ出れば人混みの中に無数に浮かんでいる。見慣れすぎて意識しなくなるほど日常的で、それでいて詳しい原理は分かっていない。
その同じものに見える何かが、今は巨大な敵の上に浮かんでいる。
「念のため聞くけど、映像のノイズとかじゃない?」
『検証済みです』
「カメラ一台だけの誤認とか」
『三系統の記録で確認されています』
「シッテムの箱、勇者側の端末、それ以外?」
『大赦から提供された限定映像にも同一構造を確認しました。ただし大赦側がそれを認識しているかどうかは不明です』
「加工の可能性は?」
『低いです。同一フレーム内の他の発光情報に改変痕跡はありません』
「……なるほど」
『さらに問題があります』
「まだあるの?」
『あります』
「嫌な言い方だなあ」
『先生が軽く扱わないようにしています』
「ちゃんと聞いてるよ」
プラナが別のフレームを表示する。今度はスコーピオン。こちらにも輪がある。形はサジタリウスとは違っていた。細く鋭角的で、ところどころが途切れ、複数の線が重なっているように見える。
「形は違うね」
『はい』
キャンサーも映る。こちらはより幅が広く、いくつかの円弧が重なっている。三体とも違う。それだけならキヴォトスの生徒たちと同じだ。ヘイローは一人一人形が異なる。
「ますます似てるな」
『外形のみなら、そう判断できます。しかし私が問題視しているのは外形ではありません』
「何?」
『光です』
「光?」
『正確には、光として振る舞っていない点です』
先生は眉を寄せる。
「もっと詳しく」
『映像上の見かけの輝度から通常の可視光源として逆算した場合、周辺物体への照度寄与が不足しています。サジタリウスの輪があの輝度で存在するのであれば、頭部周辺の装甲表面に一定量の反射光が生じるはずです。しかし実測値は推定値を大幅に下回っています』
「光ってるのに、周りを照らしてない?」
『はい』
「でも映像には映る」
『はい』
「……変だね」
『かなり』
プラナが映像を拡大する。サジタリウスの輪は確かに白く見える。それなのに、そのすぐ下にある装甲表面には、輪から照らされたような明るさの変化がほとんどない。
「じゃあ私たちが見てる“光ってる”っていう認識自体が間違ってる?」
『その可能性があります。光として視覚化されているだけで、通常の電磁波として発光しているとは限りません』
「見えてるけど光じゃない?」
『表現としては近いです』
アロナが不安そうに画面を覗き込む。
『私たちのヘイローも……そうなんでしょうか』
先生は答えず、プラナを見る。
『現時点では比較できる観測条件が不足しています。キヴォトス側で同一測定を実施していないため、同じ現象とは断定できません』
「でも違うとも言えない」
『はい』
また沈黙が落ちた。
先生は机の上に置いたコーヒーカップへ手を伸ばし、すでに冷めていることに気づいて戻した。
「他には?」
『遮蔽挙動にも不整合があります』
「遮蔽?」
『戦闘中、土煙や破片によって輪が視認不能になるフレームがあります。しかしほぼ同一の観測角度、距離、煙密度で、輪だけが背景側へ残るフレームも存在します』
「……手前に煙があるのに、向こう側の輪だけ見える?」
『はい。その直後のフレームでは通常通り遮蔽されます』
「カメラの処理落ちとか」
『複数記録で同期しているため可能性は低いです』
「つまり、そこにあるのかないのかが、普通の物体みたいには決まらない」
『適切な表現です』
「ヘイローって、改めて考えると結構変なんだね」
『先生はキヴォトスで慣れすぎています』
「そうかも」
先生は小さく息を吐く。これまで当たり前に見てきたものを、異世界で再び見せられたことで、初めてその異常さを突きつけられた気がした。
「でもさ。仮にこれがヘイローと同種の現象だとして、それだけなら“珍しい共通点があった”で終わるんじゃない?」
『その可能性もありました』
「ありました?」
『過去形です』
先生は嫌そうな顔をする。
「次だね」
『はい』
今度は時系列グラフが表示された。横軸は戦闘開始からの経過時間。縦には複数の数値が並んでいる。先生は数秒眺めた後、諦めた。
「ごめん、説明して」
『青線がシッテムの箱の防御機構出力。白線がサジタリウスの輪郭明瞭度。灰色線が輪の映像上の輝度変化です』
「輪郭明瞭度って?」
『画像解析上、輪の形状をどの程度明確に識別できるかを数値化したものです』
「なるほど」
『ここを見てください』
プラナが一点を示す。
先生が最初に防壁を展開した瞬間。
青線が跳ね上がる。それとほぼ同時に、白線と灰色線も上昇していた。
「……偶然?」
『私も最初はそう仮定しました』
「三体全部調べたんだね」
『はい』
別グラフ。
スコーピオン。
同じ。
キャンサー。
同じ。
「全部?」
『三個体すべてで確認しています。防御機構展開開始時刻を基準点として前後二秒間を比較した場合、輪郭明瞭度および見かけ上の発光強度が有意に上昇しています』
「有意ってどの程度?」
『サジタリウスで相関係数〇・八一、スコーピオン〇・七六、キャンサー〇・七九です』
「高い?」
『単一要因として処理するには十分高い値です。ただし因果関係を証明するものではありません』
「つまり、シッテムの箱が動くと向こうの輪もはっきりする傾向がある」
『はい』
「逆は?」
『通常状態では輪郭が不鮮明な時間帯が長いです』
「ずっとヘイローが見えてたわけじゃない?」
『存在自体は確認できます。しかし明瞭性が違います』
「……反応してるみたいだね」
『その表現を用いるのであれば、統計的には否定しにくいです』
アロナが小さく声を出す。
『先生……』
「うん」
『あの子たち、シッテムの箱が使われた時に、こっちを見たんでしょうか』
「分からない」
『でも……』
「まだ決めない方がいい」
先生はそう言いながらも、自分の中に浮かんだ考えを消せなかった。
見つけた。
あの戦闘の途中から、バーテックスの動きが変わった。勇者たちだけを狙っていたはずの敵が、明らかに自分へ向いた瞬間がある。
「プラナ。その時のデータは?」
『あります』
待っていたように映像が切り替わった。
スコーピオンが友奈から離れ、先生へ向きを変えた場面。キャンサーも位置を調整し、サジタリウスが射線を形成する。
「ここだ」
『はい』
「輪は?」
『三個体とも、戦闘中最大に近い輪郭明瞭度を記録しています』
「私に照準が変わった時?」
『正確には、シッテムの箱へ向けて複数個体の行動ベクトルが収束した時点です』
「行動ベクトルが収束……もっと簡単に」
『三体が同時に先生を意識した可能性が高い時点です』
「私じゃなくて」
『はい』
プラナが一瞬だけ言葉を切る。
『シッテムの箱を』
先生は黙った。
アロナも。
部屋の時計だけが、小さく音を立てている。
「……そういうことか」
『まだ断定はできません』
「でも可能性は高い」
『はい』
「最初の戦闘でも私の方に攻撃が向いた」
『映像情報が不足しているため比較精度は低いですが、類似傾向は確認できます』
「じゃあ今回だけじゃない」
『可能性があります』
先生は額へ手を当てる。
「何でだ」
『不明です』
「シッテムの箱を知ってる?」
『それも不明です』
「似た何かを知ってる?」
『不明です』
「嫌になるくらい分からないね」
『はい』
「でも、気づかれてる可能性がある」
『はい』
そこだけは明確だった。
先生はシッテムの箱へ視線を落とす。いつもなら安心するものだった。キヴォトスから唯一持ち込まれた、自分の世界との繋がり。アロナがいて、プラナがいる。守ってくれる。助けてくれる。
その箱が。
この世界の敵に、何かとして認識されている。
『先生』
アロナの声が小さくなる。
「どうしたの?」
『もし……』
言葉が止まる。
「うん」
『もしあれが、本当にヘイローだったら』
「……」
『私たちと何か関係があるんでしょうか』
先生はすぐに否定したかった。
違うよ。
関係ない。
大丈夫。
いつものようにそう言えば、アロナは少し安心するかもしれない。
でも。
分からないものを分かったふりで安心させるのは違う。
「……分からない」
『……はい』
「ごめん」
『先生が謝ることじゃありません』
「でも、一つだけ分かるよ」
アロナが顔を上げる。
「アロナとプラナが、あいつらと同じじゃないこと」
『先生……』
「ヘイローが同じだから同じ存在だ、なんて雑な話にはしない。どうして似てるのかは調べる。でもそれで二人が何か変わるわけじゃないよ」
アロナはしばらく黙っていた。
『……はい』
「プラナもね」
『私は不安を表明していません』
「してなくても言っとく」
『……了解しました』
僅かに声が柔らかくなった気がした。
「それで、プラナ。まだある顔してるけど」
『顔から判断できますか』
「何となく」
『では続けます』
「やっぱりあるんだ」
『今回の解析で、最も重要だと判断している項目です』
「さっきのより?」
『はい』
先生は背もたれから身体を起こす。
「聞こう」
画面に三つのヘイローが並ぶ。
スコーピオン。
キャンサー。
サジタリウス。
形は全く違う。
「これが?」
『外形比較では共通性は低いです』
「だよね」
『しかし外形を除去し、発光領域の時間変化だけを抽出した場合、異常な一致が確認されました』
「時間変化?」
『各ヘイローの局所的な輝度変化です。全体が均一に明滅しているわけではありません。微細な領域ごとに強度が変動しています』
「その変わり方が同じ?」
『完全一致ではありません。しかし独立した三個体としては説明しにくい同期があります』
「どのくらい?」
『特定周波数帯における位相差がほぼ一定です』
「……ごめん、もうちょっとだけ簡単に」
プラナは一秒ほど考える。
『三体が別々に光っているように見えて、細かく解析すると同じリズムに従っています』
「同じ信号を受け取ってるみたいに?」
『その可能性があります』
「三体同士で通信してるとか」
『それも検討しました。しかし三体間の距離変化に対して同期遅延が変化しません』
「距離が離れても?」
『はい』
「普通の通信なら多少ズレる」
『通信方式によります。しかし少なくとも、私が観測可能な範囲の信号伝播としては不自然です』
「じゃあ、三体が直接繋がってるんじゃない」
『その可能性もあります』
「別の何かを経由してる?」
『現時点では、その仮説が最も矛盾が少ないです』
先生の顔から少しずつ表情が消える。
「つまり三体それぞれが、同じ場所から何かを受け取ってる」
『受信であるかどうかは未確定です。制御、同期、参照、あるいは単なる共通状態共有の可能性もあります』
「もっと嫌な言葉が増えたね」
『事実です』
「分かってる」
先生は三つの輪を見る。
「じゃあ、あの時。私たちは三体と戦ってたわけじゃない?」
『物理的には三個体です』
「でも情報的には?」
プラナが黙る。
「プラナ?」
『まだ結論を出すには早いです』
「仮説でいい」
『……』
一拍。
『少なくとも、完全に独立した三つの存在として扱うのは危険です』
「一つのネットワーク?」
『近似的には』
「どこに繋がってる?」
『分かりません』
「樹海の中?」
『座標系そのものが通常空間と一致していないため判定不能です』
「大赦?」
『根拠がありません』
「神樹?」
『同様です』
「じゃあ何なんだ」
『分かりません』
プラナの「分かりません」が、今夜は妙に重かった。
普段なら、未知の情報があれば解析を続ければいい。データを増やせばいい。観測して、仮説を立て、潰していく。
でも。
今回の相手は、こちらを観測している可能性がある。
「……もう一つだけ聞く」
『はい』
「こっちが向こうを見つけたのと、向こうがこっちを見つけたの。どっちが先?」
アロナが先生を見る。
プラナは少し長く沈黙した。
『映像解析上』
「うん」
『シッテムの箱が初めて防御機構を展開した直後から、ヘイローの明瞭性が上昇しています』
「つまり?」
『先生たちがバーテックスのヘイローを認識したのは戦闘後です』
「うん」
『バーテックス側がシッテムの箱へ反応したと仮定するなら』
一拍。
『向こうが先です』
部屋が静かになる。
「……嫌だな、それ」
『同意します』
アロナが小さく身を縮める。
『私たちは、気づいてなかったのに』
「うん」
『向こうは、見てたかもしれない』
先生は返事をしなかった。
窓の外を見る。
普通の夜。
今日歩いた町がある。
古本屋も。
うどん屋も。
海も。
今頃はもう閉まっている店も多いだろう。
何も知らずに眠っている人がいる。
自分も数時間前までは、そんな普通の一日を過ごしていた。
その裏側で。
数日前の敵が残した映像の中に。
見慣れたはずの光輪が浮かんでいる。
「プラナ」
『はい』
「最後に一回だけまとめて」
『何をでしょうか』
「現時点で、確実に言えること」
プラナはすぐには答えなかった。
情報を整理しているのだろう。
『第一。三個体のバーテックス上部に、ヘイローに類似する非物質的光輪構造を確認しています。ただしキヴォトスで確認されるヘイローと同一現象であるとは断定できません』
「うん」
『第二。光輪構造は通常の発光体として説明困難です。物理構造、投影、単純な映像ノイズの可能性はいずれも低いと判断します』
「うん」
『第三。シッテムの箱の防御機構出力と、三個体の光輪明瞭度の間に強い相関があります』
「うん」
『第四。先生、より正確にはシッテムの箱へ三個体の行動が収束した時点で、その相関は最大値付近に達しています』
「……うん」
『第五。三個体の光輪は外形が異なる一方、時間的変動に同期性があります』
「つまり」
プラナの瞳が先生をまっすぐ見る。
『バーテックス三個体は、少なくとも情報的には完全に独立していない可能性があります』
「三体で一つみたいに動いてるって、戦ってる時にも思った」
『戦術上の連携だけではない可能性があります』
「もっと根っこから」
『はい』
「同じところに繋がってる」
『その可能性が高いです』
先生は目を閉じた。
数秒。
再び開く。
「一つの意思?」
『現時点では証明できません』
「でも」
『否定もできません』
「そっか」
先生は机の上のノートへ視線を落とした。
昼間書いた。
うどんはおいしい。
海が綺麗だった。
缶コーヒーを買い間違えた。
そんなくだらないことを書いたページ。
そのすぐ横、シッテムの箱では。
人ならざる敵の頭上に浮かぶヘイローが表示されている。
あまりにも違う二つのものが、同じ机の上にあった。
「今日はもう終わりにしよう」
『先生』
プラナが少し意外そうに言う。
「解析は続けてくれていい。でも私は一回寝る」
『睡眠は推奨します』
「でしょ」
『ただし』
「何?」
『大赦へ確認を行う必要があります』
「うん」
『ヘイローに類似する構造を彼らが認識しているかどうか』
「聞こう」
『いつ?』
「明日」
『了解しました』
「今日はもういい」
先生は立ち上がり、窓のカーテンへ手を伸ばす。
そこで止まった。
「アロナ」
『はい』
「怖い?」
アロナは少し迷った。
『……少し』
「プラナは?」
『恐怖という評価は適切ではありません』
「そう」
『ただし』
「うん?」
『警戒すべき状況だと判断します』
「それなら一緒だね」
先生はカーテンを閉めた。
外の夜が見えなくなる。
「分からないものは調べよう。でも、分からないうちから怖がりすぎても仕方ない」
『先生』
「大丈夫とは言わないよ」
アロナが目を瞬く。
「まだ何も分からないから」
『……はい』
「でも三人いる」
『先生と』
「アロナと」
『私』
プラナ。
「そう」
先生は笑う。
「だから一人で考えなくていい」
『……先生もですよ』
「ん?」
『先生も一人で考えないでください』
「分かった」
『本当に?』
「本当に」
『疑わしいです』
「プラナまで東郷さんみたいになってきたな」
『事実です』
少しだけ。
本当に少しだけ。
部屋の空気が戻った。
余談です。
先生の指揮やプラナの会話は原作ブルアカでも難しい会話が多いです。
この作品においてもそれを損なわない為に、物理などを自分なりに学習しましたがこれがまた難しい難しい笑。なので、正直その場面に合った言葉を言わせてる、という感じです。悪く言えばテキトーですが、余りにも整合性の無い会話はさせないように努力します。