花たちは嚮導者の夢を見るか 作:おこそつのぬほふもむよゆらわ
銃声が樹海を切り裂いた。
東郷美森が放った一撃は、友奈へ迫っていた白い光へ横から食らいついた。空中で二つの力が衝突し、眩い閃光と爆発が広がる。友奈は反射的に腕で顔を庇い、その向こうに立つ親友の姿を見た。
「東郷さん……!」
「友奈ちゃん。今度は私が助ける」
東郷の声は震えていた。
それでも武器を構える手は下がらない。
怖さが消えたわけではなかった。バーテックスの巨体を見れば今も心臓は激しく鳴り、今すぐ逃げ出したいという本能が身体の奥で叫んでいる。
だが、それ以上に守りたいものがあった。
それだけで十分だった。
「東郷さん!」
地面に座り込んだ先生が声を上げる。
「先生は動かないでください!」
「いや、でも――」
「動かない!」
「……はい」
思わず先生が返事をすると、シッテムの箱の中からアロナが勢いよく頷いた。
『東郷さんの言う通りです!』
『全面的に同意します』
「二人まで……」
先生は右肩を押さえた。
額を伝う血が頬まで流れている。直撃こそシッテムの箱の防壁が防いだが、爆発の衝撃までは完全には殺せなかった。耳鳴りが残り、視界も時折揺れる。
戦場全体を見ることはできる。
だが情報を処理し、即座に三人へ指示を飛ばし続けるほど頭が働かない。
「プラナ……敵の情報だけ」
『先生は休んでください』
「私じゃなくて、みんなに伝えて」
一瞬の沈黙。
『……了解しました』
先生はそこで口を閉じた。
悔しい。
だが今の自分が無理に指示を出せば、それは助けではなく混乱になる。
そして戦場は、先生が黙ったからといって待ってくれるほど優しくはなかった。
『サジタリウス、高エネルギー反応。再射撃準備に移行しています!』
プラナの声が響く。
「また来る!」
風が叫んだ。
東郷は遠方のサジタリウスを見る。
遠い。
これまで友奈たちは、あの距離にいる敵へまともに干渉できなかった。近づこうとすればスコーピオンが前を塞ぎ、サジタリウスへ攻撃が届きそうになればキャンサーが射線上へ入る。
だから三体は崩れなかった。
しかし。
「届く」
東郷が呟く。
武器を構える。
「私なら、届く」
照準の先でサジタリウスが発光を始める。
『発射予測、二秒前後です!』
プラナ。
「東郷さん!」
友奈が呼ぶ。
「大丈夫」
東郷は息を吐く。
狙うのは本体ではない。
先ほど一度見た。
光が集中する一点。
「撃たせなければいい」
引き金。
銃声。
一発目。
サジタリウスの発光部付近で爆発が起こる。
照準が僅かにずれた。
それでも敵は発射動作を止めない。
「まだ!」
二発目。
三発目。
連続する射撃。
遠距離から一方的に攻撃していたサジタリウスが初めて明確な妨害を受け、巨大な身体を揺らした。
集まっていた光が散る。
砲撃は放たれない。
「止めた!」
樹の声に喜びが混じった。
その瞬間。
キャンサーが動く。
「来る……!」
東郷の射線とサジタリウスの間へ、巨大な甲殻が滑り込んだ。
東郷が次弾を撃つ。
着弾。
しかし弾丸は硬い装甲に阻まれた。
「やっぱり守るんだ……!」
『キャンサーの行動パターン変化を確認。東郷美森さんの攻撃に対して優先的に遮蔽行動を行っています』
プラナの報告。
「ということは」
風が前を見る。
キャンサーがサジタリウスを守るために移動した。
今まで崩れなかった場所が。
空いている。
「友奈!」
「うん!」
今度は先生の指示ではなかった。
二人はほとんど同時に走り出した。
スコーピオンが迎え撃つ。
尾が友奈へ向かって振り下ろされる。
「させない!」
風の大剣が横からぶつかった。
金属とも石ともつかない激しい音。
風の肩に痛みが走る。
「っ……!」
「風先輩!」
「平気! 樹、後ろお願い!」
「はい!」
樹が周囲へ注意を向ける。
前までなら、姉が苦しそうな顔をした瞬間にそちらへ走っていたかもしれない。
だが今は違う。
風が任せた場所を見る。
スコーピオン。
キャンサー。
サジタリウス。
そして。
「お姉ちゃん、右!」
「!」
樹の声に風が飛ぶ。
スコーピオンの尾がすぐ横を通過する。
「助かった!」
「任せてって言ったでしょ!」
「言うようになったじゃない!」
風が笑う。
樹も笑った。
戦況はまだ有利ではない。
ただ。
さっきまで一方的に削られていた形ではなくなっていた。
三体のうち一体が東郷を見る。
キャンサーが東郷の射線を意識する。
それだけで、これまで友奈たち三人だけへ集中していた圧力が分散した。
わずかに。
本当にわずかに。
天秤が戻っただけ。
「東郷さん!」
友奈がスコーピオンの攻撃を避けながら叫ぶ。
「そっちお願い!」
「任せて!」
東郷は答えた。
その返事を聞いた瞬間。
友奈の顔が笑う。
「よし!」
友奈は正面を見る。
もう東郷の心配をしなくていい。
自分の後ろには友達がいる。
それだけで身体が少し軽くなるような気がした。
「行くよ!」
友奈がスコーピオンへ飛び込んだ。
右拳。
避けられる。
左。
尾が迫る。
身体を捻って躱し、その勢いのままもう一歩入る。
「やああっ!」
拳がスコーピオンの外殻へ突き刺さった。
鈍い衝撃。
亀裂。
敵が大きく傾く。
「効いてる!」
「友奈、離れて!」
風の声。
友奈が地面を蹴った直後、キャンサーが身体を動かす。
東郷への防御を止めた。
「東郷さん!」
「分かってる!」
キャンサーが角度を変える。
サジタリウスが再び発光。
東郷には見えた。
二体の位置。
サジタリウスから伸びる射線。
その先に入ろうとするキャンサー。
「反射させるつもり……!」
『高エネルギー反応増大!』
プラナ。
「友奈ちゃん、風先輩、樹ちゃん! キャンサーの正面から離れて!」
三人が反応する。
友奈が右。
風と樹が左。
サジタリウスが撃つ。
白い光線がキャンサーへ到達する。
反射板。
軌道が曲がる。
しかし。
誰もそこにはいなかった。
光線が地面を抉り、巨大な爆発を起こす。
「避けた!」
友奈が叫ぶ。
「まだよ!」
東郷は喜ばない。
キャンサーが再び向きを変える。
サジタリウスの次弾。
これまでと同じ。
三体はまだ戦術を失ってはいない。
東郷が加入したことで優位性が崩れただけだ。
先生はその様子を遠くから見ていた。
「……すごいな」
『先生?』
アロナが振り返る。
「私がいなくてもちゃんと戦ってる」
『先生がいらないという意味ではありませんよ!』
「分かってるって」
『先生』
プラナが割って入る。
『会話を控えてください。呼吸が安定していません』
「はいはい」
『返事が軽いです』
先生は苦笑する。
だが心の中では、少し違うことを考えていた。
第一戦では自分が指示した。
誰がどこを見るか。
いつ動くか。
どこへ逃げるか。
それで勝てた部分もある。
だが。
それを続けるだけではいけない。
自分がいなければ戦えないのでは意味がない。
今。
彼女たちは自分たちで見て。
自分たちで声を掛け。
自分たちで助け合っている。
「……先生って難しいな」
『今考えることですか?』
「こういう時だからかな」
◇
戦場の中央で風が息を吐く。
「友奈!」
「何!?」
「スコーピオンをもうちょっと引きつけられる?」
「やってみる!」
「無茶はしない!」
「分かってる!」
友奈はスコーピオンへ向き直る。
攻撃する。
避ける。
また攻撃。
真正面から倒し切ろうとはしない。
風の意図が分かったからだ。
少しずつ。
スコーピオンをキャンサーから離す。
キャンサーは東郷を警戒している。
東郷がサジタリウスへ銃口を向けるたびに、防御へ戻る。
敵の連携が。
僅かずつ伸びる。
三体の距離が開いていく。
「東郷さん!」
風が叫ぶ。
「もう少しサジタリウスを引きつけて!」
「分かりました!」
東郷が連射。
サジタリウスが発射動作に入るたび妨害する。
一発では止まらない。
二発。
三発。
狙いを外させる。
そのたびキャンサーが反応する。
「樹!」
「はい!」
「今度は私についてきて!」
「うん!」
風と樹がキャンサーへ走る。
キャンサーはサジタリウスを守ろうとしている。
背後から二人。
反応が遅れる。
「樹、右!」
「はい!」
樹の攻撃がキャンサーの側面を叩く。
僅かに甲殻がずれる。
「そこ!」
風の大剣。
全身の力で振り抜く。
硬い。
肩が痛む。
それでも止めない。
「――っ!」
巨大な音。
キャンサーの装甲に亀裂。
「入った!」
「もう一回!」
樹が援護。
風が踏み込む。
だがキャンサーが急旋回した。
「お姉ちゃん!」
「分かってる!」
反射板のような構造が風へ向く。
遠方。
サジタリウスが光る。
「まずい!」
東郷が銃口を向ける。
間に合うか。
キャンサーに当たれば、どこへ跳ねるか分からない。
だったら。
狙う場所は一つ。
「そっちじゃない……!」
照準を上げる。
キャンサーではなく。
その後ろ。
サジタリウス。
引き金。
一発。
二発。
光の収束部に命中。
サジタリウスの身体が傾く。
発射。
だが射線が逸れた。
キャンサーの反射板へ届かず、空へ伸びていく。
「今です、風先輩!」
「ええ!」
風が剣を振り抜く。
亀裂へ。
真っ直ぐ。
装甲が割れる。
「樹!」
「はい!」
追撃。
キャンサーの身体が大きく揺れる。
そして。
崩れる。
光の粒となって砕け始めた。
「一体!」
友奈の声。
その一言で。
戦場の空気が変わった。
キャンサーが消えた。
サジタリウスの攻撃を自在に曲げる壁がない。
スコーピオンとサジタリウスを繋いでいた中央が抜けた。
『敵性個体一体の反応消失』
プラナ。
「……いける」
先生が小さく呟く。
それは指示ではない、ただの確信だった。
◇
スコーピオンが動きを変えた。
これまでより激しい尾が何度も友奈へ迫る。
「友奈!」
「大丈夫!」
友奈は避ける。
一撃。
二撃。
地面が抉れる。
身体は疲れている、腕も重い、さっき受けた攻撃の痛みも残っている。
でも。
「東郷さんが頑張ったんだから!」
拳を握る。
「私も!」
踏み込む。
尾。
避ける。
もう一つ。
真正面。
「頑張る!」
拳。
スコーピオンの外殻へ。
大きな亀裂。敵が反撃。
友奈の脇腹を掠める。
「っ!」
後退。
でも転ばない。
「友奈ちゃん!」
東郷の声。
友奈は振り返らない。
「大丈夫!」
「本当に!?」
「今回は本当!」
「信用できません!」
「東郷さんまで先生みたいなこと言ってる!」
こんな状況なのに。
少しだけ笑った。
その瞬間。
友奈の横を弾丸が抜ける。
東郷の援護射撃。
スコーピオンの尾へ命中。
軌道がずれる。
「今!」
東郷。
友奈が笑う。
「うん!」
踏み込む。
敵の懐。
拳を引く。
「勇者――!」
全身の力を乗せる。
「パァァァンチ!」
一撃。
亀裂が広がる。
中心まで。
スコーピオンの身体が止まる。
数秒。
そして光の粒となって崩れ始めた。
「二体目!」
樹が喜ぶ。
残るのは一体。
サジタリウス。
◇
遠方。
最後のバーテックスが大きく身体を開く。
『サジタリウス、高エネルギー反応!』
プラナの声。
『これまでより出力上昇。推定一・六倍――訂正、一・八倍!』
「全員、散開!」
風が叫ぶ。
先生ではない、部長の声。
四人が動く。
先生はそれを見ていた。
「……」
『先生』
「うん」
『退避を推奨します』
「分かってる」
先生は立とうとする。
「っ……」
右肩に痛み。
『先生!』
「ごめん」
『動かないでください!』
「でもさすがにここは――」
「先生!」
遠くから友奈が叫んだ。
先生が顔を上げる。
「そこにいて!」
「結城さん?」
「今度は私たちの番!」
友奈が笑っていた。
先生は。
一瞬だけ何も言えなかった。
「……そっか」
身体から力を抜く。
「じゃあお願い」
「任せて!」
東郷がサジタリウスへ銃口を向ける。
風と樹がその左右へ。
友奈が前。
「東郷さん!」
「うん!」
銃声。
サジタリウスの発光部へ弾丸が集中する。
一発。
二発。
三発。
光が乱れる。
それでも敵は撃とうとする。
「まだ!」
東郷は引き金を引き続ける。
反動。
腕が痺れる。
怖い。だが止まらない。
「撃たせない……!」
さらに一発。
サジタリウスの攻撃が逸れる。
白い光が空を貫いた。
「風先輩!」
「行くわよ!」
風と樹が前へ。
遠距離型。
近づかれれば弱い、だが距離はある。
「友奈!」
「うん!」
三人が走る。
東郷が援護する。
サジタリウスが次の射撃へ移ろうとするたび、弾丸が飛ぶ。
一度も自由に狙わせない。
距離が縮まる。
半分。さらに半分。
サジタリウスの身体が揺れる。
「もう少し!」
風。
「お姉ちゃん!」
「樹は右!」
「はい!」
三方向。
サジタリウスが迷う。
どこを狙う。
誰を撃つ。
その僅かな迷い。
「友奈ちゃん!」
東郷が叫ぶ。
友奈は既に走っていた。
「任せて!」
跳ぶ。
勇者の脚力。
高く。
サジタリウスへ。
拳を握る。
風の剣が外殻を削る。
樹の攻撃が身体を止める。
東郷の弾丸が発光部を撃ち抜く。
そして。
友奈。
「これで――!」
拳。
「終わりぃぃぃっ!」
衝撃。
サジタリウスの中心に亀裂が走る。
一筋。
二筋。
無数。
光が溢れ出す。
友奈が離れる。
巨大なバーテックスが。静かに崩れた。
◇
三体目の反応が消えた瞬間。
誰もすぐには声を出さなかった。
静かだった。
本当に終わったのか。
全員が確認するように周囲を見る。
『敵性反応……全て消失しました』
プラナ。
一拍。
「……勝った?」
樹。
「勝った……みたいね」
風。
友奈が東郷を見る。
東郷も友奈を見る。
友奈の顔が一気に明るくなった。
「東郷さぁぁん!」
「えっ、友奈ちゃ――」
抱きつく。
「わっ!」
「東郷さん! 東郷さん! 東郷さん!」
「友奈ちゃん、近い、近いです!」
「だって東郷さんが!」
「分かりましたから!」
「すごかった!」
「友奈ちゃんだって!」
東郷の顔にも笑みが浮かぶ。
震えは、もう止まっていた。
「お姉ちゃん」
「ん?」
「終わったね」
「ええ」
風は樹の頭へ手を置いた。
「よく頑張ったわ」
「お姉ちゃんも」
「私は部長だからね」
「肩痛いくせに」
「それは言わない!」
先生は少し離れた場所から四人を見る。
アロナが画面の中で大きく息を吐く。
『よ、よかったぁ……』
「そうだね」
『先生は後でちゃんと診てもらいますからね!』
「分かってるよ」
『本当に?』
「本当に」
『疑わしいです』
「プラナまで」
先生は笑った。
少し痛んだ。
それでも笑えた。
友奈が先生に気づく。
「先生!」
四人がこちらへ向かってくる。
「動かないで!」
「いや、動いてないよ」
「そのまま!」
「だから動かないって」
友奈が目の前まで走ってくる。
「大丈夫!?」
「大丈夫」
四人全員の目が細くなった。
「……何?」
「信用できません」
東郷。
「信用できないわね」
風。
「先生、血が出てます」
樹。
「全然大丈夫じゃないよ!」
友奈。
「四対一かあ」
『六対一です!』
アロナ。
『私も含みます』
プラナ。
「増えた」
先生は観念したように息を吐く。
「じゃあ大丈夫じゃないです」
「最初からそう言ってください」
東郷が少し怒ったように言う。
「ごめん」
先生は素直に謝った。
それから東郷を見る。
「東郷さん」
「はい」
「怖かった?」
東郷は一瞬だけ黙る。
そして。
「はい」
はっきり答えた。
「すごく怖かったです」
「そっか」
「でも」
東郷は友奈を見る。
「動けました」
「うん」
「先生」
「何?」
「これが勇気なんでしょうか」
先生は少し考えた。
勇気。
簡単そうで。簡単ではない言葉。
「そうだね」
少し笑う。
「少なくとも私は、すごく格好いいと思ったよ」
東郷の目が少し丸くなる。
「……答えになってません」
「こういうのに正解ってあるのかな」
「またそういうこと言って」
「でも本当だよ」
先生は四人を見る。
「みんな格好よかった」
友奈が嬉しそうに笑った。
「先生も!」
「私は倒れてただけだよ」
「でも一緒に戦った!」
「途中までね」
「だったら一緒!」
「結城さんは強引だなあ」
先生は苦笑した。
樹海が消えていく。
無数の花。
巨大な樹木。
幻想的な光景。
その全てが光へ溶けていく。
やがて夜の讃州中学校が戻ってきた。
◇
その日の勇者部部室は、いつもより少し静かだった。
四人とも疲れている。
先生は簡単な応急処置を受け、額には小さなガーゼ、右腕は固定されていた。
「……」
友奈がじっと見ている。
「何、結城さん」
「先生」
「うん」
「無茶したね」
「……」
「無茶したよね?」
「結果的には」
「無茶した!」
「はい」
「もう!」
「ごめんって」
友奈が頬を膨らませる。
「先生が前に出るなって言ったのに、自分が出るじゃん!」
「今回は敵がこっち向いたから」
「それでも!」
「結城さん」
「何?」
「心配してくれてありがとう」
「……ずるい」
「何が?」
「そう言われたら怒りづらい!」
「計算して言ったわけじゃないよ」
「本当?」
「本当」
東郷が横から口を挟む。
「先生の本当は信用度が低いです」
「東郷さんまで」
「自業自得です」
「厳しいなあ」
風が笑った。
「でも、今日は本当に東郷がいなかったら危なかったわ」
「私だけじゃありません」
東郷が首を横に振る。
「みんながいたからです」
「それ言ったら全員じゃない」
「そうですね」
樹が小さく笑う。
友奈も笑った。
「勇者部全員で勝ったんだね!」
「……全員?」
風が先生を見る。
「先生まで含めるとどうなるのかしら」
「私は部員じゃないよ」
「仮部員!」
友奈が即答する。
「まだ続いてたんだ、それ」
「もちろん!」
先生は疲れたように笑った。
少し前まで。
勇者部という言葉を聞けば、先生は戦う少女たちを思い浮かべていた。
今は違う。
誰かが倒れれば誰かが手を伸ばす。
誰かが怖がれば誰かが隣に立つ。
そして。
一人では持てなかった勇気を。
互いに渡していく。
そんな場所なのだと。
少しだけ分かってきた。
先生は机に置かれたシッテムの箱を見る。
その画面の奥でプラナが何かを確認している。
「プラナ?」
『はい』
「どうしたの?」
『……戦闘記録を保存しています』
「何か変だった?」
一瞬。
プラナが黙った。
『詳細な解析が必要です』
「そっか」
先生はそれ以上聞かなかった。
今日くらいは勝ったことを喜んでもいい。
東郷が立った。
四人が一緒に戦った。
全員生きて帰った。
それだけで十分だった。
少なくとも。
今夜だけは。
先生の影響でこの作品の東郷美森は原作ゆゆゆの3割り増し位強いです。