Persona4 : Side of the Puella Magica   作:四十九院暁美

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第13話

『我は影……真なる我……。さあ、お待ちかね。モロ見せタ〜イム! 特等席のお客さんには……メチャキッツーいのを特別サービスよ!』

 

「やっぱり色々悩みとかあったんだな……けど、必ず暴走は止めてやる!」

 

 花村くんが苦無を構えるのと同調して、私たちもそれぞれの得物を構えるとペルソナを召喚した。6体のペルソナが一挙に並ぶ光景は中々に壮観だ。

 

『あらぁ? ステージの上に手ェ出そうっての? 勘違いなお客……更にキツいのがいるかしら!!?』

 

 それを見た影はそんな事を言うと、ぬちゃぬちゃと滑った液体音を身体から発しながら、腰をくねらせて炎を放つ。なんとも気味の悪い動きだ。

 

「ツルヒメ、ガードを」

 

 ツルヒメを使って左手の小楯でその炎を防ぎ、次いでミリオンシュートを影に向けて放つ。無数の針は金切り声を鳴らして、影に飛来する。

 

『キャハッ!』

 

 しかし、影は愉しげにポールを登りながらそれを躱すと、嬌声をあげながら巽くんに氷塊を飛ばしてきた。

 

「ナメんなゴラァ!」

 

 彼の雄叫びに呼応して、タケミカヅチが稲妻型の鈍器を氷塊に叩きつけて粉々に粉砕すると、その影から2体のペルソナが躍り出る。

 

「ジライヤ!」

 

「サクヤ!」

 

ジライヤが旋風を、コノハナサクヤが火炎を放つがさっきと同じように、影は嬌声と共にそれを躱して魔法攻撃を放ってきた。

 

『どう、楽しんでる? ホントの私は、まだまだこっから……壊れちゃったりしないでよねッ!!』

 

 しかしこのシャドウ、ポールに掴まりながらくるくると回ったりして上手い具合に体勢を変えながら攻撃を避けるなど、ポールを軸にして戦っているのにかなり素早い。あれに攻撃を当てるには、まずはあのポールをなんとかしないと駄目なようだ。

 

「鳴上くん、里中さん。私が合図したら、ポールに攻撃を当てて」

 

「ポールに?」

 

「え、なんで?」

 

疑問の声をあげる2人に、私は作戦を伝える。上手くいけばこっちに形成が傾くだろう。

 

「見たところ、あいつはポールを軸にして行動をしている……なら、あのポールを破壊してしまえば、それが大幅に制限される筈よ」

 

「おお……! 成る程!」

 

「よし。分かった、任せろ!」

 

 頷く2人を背にして前へ飛び出すと、鋼線を使って飛来する身の丈程の氷塊を受け止めながらツルヒメに指示を出す。

 

「 っ……ツルヒメ、 "アローシャワー" !」

 

 ツルヒメが撃った光の矢は、空中で大きな魔法陣を形成する。それから数瞬の後、陣が輝くと同時にそこからおびただしい量の矢が発射され、影に降り注ぐ。

 

『そんなショッボイ攻撃当たるわけ――』

 

「今!」

 

「合わせるぞ、里中!」

 

「オッケー! いっくよー!」

 

 影の嘲笑を遮って叫ぶと、受け止めていた氷塊を投げつける。そして私の声を聞いた2人は、ペルソナを氷塊と共に肉薄させる。氷塊を影が蹴り砕くのとほぼ同じタイミングで、2人のペルソナが影の掴まっているポールに斬撃を叩きつけた。

 

『んなっ!?』

 

 斬撃を受けた部分が不快な高音を響かせながら大きくひしゃげ、掴まっていた影が大きくバランスを崩して背中から強かに地面へ打ち付けられる。

 

「チャンス! ボコボコにすんぞ!」

 

 潰れたカエルの様な無様な姿を晒した影を見て、花村くんが声を大きく張った。どうやら、白蛇のシャドウのように影を袋叩きにする気らしい。

 

「よし、やるぞ!」

 

「いい返事だ!」

 

 鳴上くんが応えると同時に、私たちは構えを取る。これだけの数だ、タダでは済まないだろう。

 

「観念しろぉー!!」

 

 里中さんの雄叫びと共に全員で倒れ伏す影に突撃、得物とペルソナで影をボコボコにする。しばらくして、巻き上がる煙の中で私たちは示し合わせた訳でもないのに、一斉に影から飛び離れ煙が晴れるのをじっと待つ。

 数秒の沈黙が過ぎた頃、幾度かの金属音が響く。何が起こっても良いように身構えていると、風が巻き起こり煙が吹き飛ばされる。

 

「折れた筈のポールが……!?」

 

 そこには、最初と同じようにポールに片足をかけてぶら下がっている影の姿があった。しかしあの猛攻は流石に効いたらしく、今までのような勢いがまるでない。

 

『クッ……なんなのよ!? 死ね! 死んじゃえ!!』

 

 影は苦しげにそう叫ぶと、緑色の光を身体から発した。私たちの身体やペルソナをすり抜けて光が部屋全体に広がると、影はおかしそうにケタケタと笑いながら勝ち誇ったように言う。

 

『もう、お触りは禁止だから!』

 

 あの様子を見るに、何か勝機があるらしい。さっき放たれた緑色の光、あれが身体をすり抜けた時、身体の中を見透かされるような嫌な感じがした。何か弱点でも解析されたかもしれない、ここは少し様子を見た方が良いだろう。

 

「……鳴上くん」

 

「ああ、何か怪しい。……イザナギ!」

 

「ツルヒメ!」

 

 取り敢えずは牽制としてツルヒメが無数の針を、イザナギの左手から迅雷を迸らせる。影は迫り来るそれらをひらりと躱すと、嘲笑と共に旋風を放つ。

 

『ざぁんねぇーん、はっずれー!』

 

 舌打ちと共に後方に飛び引くと、鋼線を近くの椅子に引っ掛けて地面に降り立った、その瞬間。

 

「うああっ!?」

 

「暁美! ぐあっ!?」

 

 降り立った場所に、突如として雷撃が降り注いだ。あまりに突然かつ的確な狙いで落とされた雷は、青白い閃光と共に私の身体を焼く。

 

「ほむらちゃん、鳴上くん!? 」

 

「大丈夫か鳴上、暁美!」

 

「テメェ、覚悟は出来てんだろうなァ!!」

 

 身体を駆け抜ける強烈な痺れと、久しく感じていなかった激痛。それは私の思考を鈍らせるには充分過ぎた。

 

「鳴上くん、ほむらちゃん! 今治すからじっとして!」

 

 地面に倒れ伏す私を癒しの光が包み、全身の傷を癒していく。徐々に痺れと痛みが消え、思考が正常に戻ってくる。

 

「つっ……ありがとう、天城」

 

「っ……助かったわ、天城さん」

 

 ある程度まで傷が治ると、回復魔法をかけてくれた天城さんにお礼を言いながら、私たちは3人の攻撃を躱しつづける影に向き直った。

 

「いけ、トモエ!」

 

『あぁん、またハズレ〜』

 

「この、逃げんなクソがッ! タケミカヅチ!」

 

『ほらほらァ……そんな攻撃、掠りもしなわよ!』

 

「なんで当たんねーんだ!?」

 

『アンタたちの事は全部お見通し……!』

 

 3人の攻撃を踊るように躱しながら、影は挑発を繰り返す。まるでどこに攻撃が来るか分かっているようだ。一体これはどういう事なのだろうか。

 

「何なの、アイツ!? 全然、こっちのが当たんないじゃん……」

 

「くそっ、攻撃が全部読まれてるみたいだ……」

 

 里中さんと花村くんが苦しげに言う。あの緑色の光を放ってから、影は異常とも言える程の読みで攻撃を回避し続けている。やはり、あの光には何か秘密があるらしい。

 全員が後ろへ下ってその挙動を警戒していると、再び影の身体からあの緑色の光が放たれた。

 

「な、何だ!?」

 

「また、この光……!」

 

 私たちが困惑していると、この光の正体に気が付いたらしいクマが叫ぶ。

 

「この力って……多分、こっちを探ってるクマ! ……ちょっとまずいクマ!!」

 

「マズイって、どんな風にだよっ!?」

 

 クマの言葉に巽くんが半ばヤケクソ気味で応えたその直後、影は勝利を確信したかのような声色で言う。

 

「はーい、解析完了ォ……! じゃ……反撃いくよォ! 躱せるもんなら、やってごらんッ!!」

 

「や、やめるクマ!!」

 

 私がその場から本能的に飛び引いた瞬間、辺りを凄まじい力が蹂躙した。声も出せない程の衝撃が身体を突き抜け、入り口近くに設置された椅子群に頭から突っ込んでしまう。

 

「ほ、ほむちゃん!? 大丈夫クマ!?」

 

 慌てて駆け寄ってきたクマに助け起こされてなんとか立ち上がったが、受けたダメージはあまりに大きい。身体を動かすどころか、声を出すのも億劫になる程だった。

 

「ウソだろ……こんな……」

 

「……か、勝てないって事?」

 

「わ、私たち……し、死んじゃうの……?」

 

「まだ……まだ、終わってない!」

 

 それぞれが諦めたように呟く中、私はペルソナをしまうと魔法少女に変身して影に飛びかかる。

 傷と痛みは魔力を身体に流す事で遮断、右手に矢を形成して左手に持った弓につがえると、間髪入れずにそれを放つ。空中で拡散するように仕込んだそれは、狙い通り15の光となって影に迫っていく。

 

『ムダムダ!』

 

 しかし、影は躱しながら大きく回転すると強烈な蹴りで私を吹き飛ばす。再び地面に叩きつけられた私は、バウンドした衝撃を利用して立ち上がると今度は相手を追尾するように仕込んだ矢を放とうと構えをとった。

 

『ざーんねーんでーしたー!』

 

 下品な笑い声を上げて、影がオレンジ色の光で私を包み込む。その場を離れようと足に力を込めた瞬間、風船が弾けるような音が響くと同時に変身が解除される。

 

「なっ、なに!?」

 

『バイバーイ』

 

「しまっ――」

 

 驚いて動きが止まった私に影は容赦なく蹴りを喰らわせ、彼らの近くへと吹き飛ばす。地面へみたび叩きつけられた私は、立ち上がることが出来ない。

 

「あ、暁美……!」

 

 全身に激痛が走り、声が出せない。視界が霞んで何も見えず、身体の感覚が麻痺して動く事すらままならなかった。

 

『はーい、またまた解析、完了ォ……! さよなら……永遠にね!!』

 

「ヤ……ヤバイ……来るぞ!」

 

 痛みに喘ぐ私の頭に、花村くんと影の声が響く。ここで終わりなのか、諦めが心をよぎったその時だった。

 

「か、考えるより先に、か、身体が……な、なに前に出てんだ、わしゃあ!?」

 

 クマが私たちを庇うように前へ進みでると、自分でも何が何だか分かっていないような口ぶりで叫ぶ。

 

「と、トンデモない事をしでかしそうでクマってしまっている自分っ!! こ、こうなったらやってやるクマ! クマの生き様……じっくり見とクマーッ!!」

 

『……!? なのこの反応、すごい高エネルギー……これ、あのへんなヤツ!? 突っ込んでくる気!?』

 

 身体から黄金色の力を漲らせるクマに、影は驚愕と困惑が入り混じった声をあげる。クマのどこにこんな力があったのか、疑問に思うほどに大きな力だ。

 

「クマ!! テメ、何する気だオイ!!」

 

 巽くんの声を無視してクマは突撃の構えをとると、力を更に高めながら影へと突貫していく。そして、聞こえてくる凄まじい衝撃音と光。

 影は、クマはどうなったのか。僅かながら傷の癒えた身体に、鞭を打って立ち上がる。全てが止んだそこに影の姿は無く、代わりにぺしゃんこに潰れたクマと倒れ伏す水着姿の影がいた。

 

「クマ!!」

 

 煤けてぺらぺらになったクマに、慌てて駆け寄る。

 

「クマ……みんなの役に立てたクマか……?」

 

 ぺしゃんこではあるが生きているらしい、クマは私たちの姿を見るとそう言った。

 

「立ったどころじゃねーよ……命の恩人だよ!」

 

「そか……よかった……独りぼっち、いやだから……」

 

 花村くんの言葉にそう返すと、クマは弱々しい笑みを浮かべる。

 

「クマくん……」

 

「う……ク……クマ……な、なんじゃこりゃああ!!」

 

 心配そうな声で名前を呼ぶ里中さんに、立ち上がりつつも何かを言おうとしていたクマは、途中で突然大声をあげて驚く。一体何事かと目を見開く私たちを余所に、クマはおいおいと泣き始めた。

 

「おおお……クマの自慢の毛並みが……おおぉぉぉ……」

 

 どうやら、自分の身体があまりにぼろぼろな事にショックを隠せなかったらしい。こういう場面でこんな砕けた空気になるのも、クマの愛嬌なのだろう。全く、心配するこっちの身にもなってほしい。

 

「……取り敢えず、死にそうではないな」

 

 苦笑しながらも、久慈川りせが寝かされた椅子に近づく。影が沈静化した所為なのか、私が近づくと彼女はゆっくりと目を開けて辺りを見回した。

 

「ん……ここ……って……?」

 

「大丈夫?」

 

 まだ意識が混濁しているようで、久慈川りせはぽつりとそんな呟きをもらす。彼女に優しく声をかけると、少しの間の後にはたと気がついて気まずそうな顔をする。

 

「ごめん……なさい……私のせいで……」

 

「貴女の所為じゃないわ。もう無理はしなくていいのよ」

 

「……え? ……うん」

 

 弱々しく謝る彼女を抱き起こして、ゆっくりと立ち上がらせた私はそう応える。すると、彼女は驚くと同時にどこか安心したような顔をして言った。

 

「いつ以来だろ……そんな事言ってもらったの……」

 

 影を取り囲んでいる彼らのところまで、彼女と一緒に歩いていく。影がいる場所まで行くと、彼女は前へと進み出ると倒れ伏す自分の影を見つめる。私は1歩後ろに下がって彼らと並び、事の行く末を見守る事にした。

 ここからは彼女の問題だ。私たちに出来る事は、もう何もないだろう。

 

「起きて……」

 

 久慈川りせの言葉を受けて、ゆっくりを立ち上がった影は、無表情のまま自分を見据える。彼女は深呼吸をすると、両手を握りしめて影に語りかけた。

 

「ごめん……今まで、ツラかったね。私の一部なのに、ずっと私に否定されて……。私……どれが "本当の自分" か、考えてた。けど、……それは違うね。そんな風に探してちゃ…… "本当の自分" なんて……どこにも無いあなたも……私も……テレビの中の "りせちー" だって……私から生まれた。全部…… "私" 」

 

 独白を終えると、影は笑顔を浮かべて暖かな光の粒子に包まれる。

 黒い肌の女性的な身体つきに白いスリット入りドレス、パラボラアンテナのような頭部に輪っかのようなものを両手に持ったそのペルソナは、1枚のカードにその姿を変えると久慈川りせの手の中に消えていった。

 

「おわっと、りせちゃん!」

 

 全てを見届けた彼女は振り向くと、急にその場で倒れこんでしまう。花村くんは慌てて受け止め、その場にゆっくりと座らせると久慈川りせは笑顔で言う。

 

「りせ、でいいから……確か、お店に来てくれた人だよね……」

 

「あ、うん、こいつらも……」

 

 花村くんに促されて私たちが簡単に自己紹介すると、彼女は嬉しそうに笑った。

 

「そっか……先輩になるんだ……みんな……ありがとう」

 

「後で全部ゆっくり説明するから、今は――」

 

 里中さんがそんな彼女に振り向きながらそう伝えようとしたその時、不意にその言葉が途切れる。

 

「どうしたの、千枝?」

 

 不審に思った天城さんが、里中さんに呼びかけながら振り向く。私たちも振り向くと、そこのは呆然と立っているクマがいた。

 

「本当の自分なんて……いない……?」

 

「お、おい、クマ……」

 

 巽くんが引き気味で呼びかけるが、まるで反応がない。私が1歩前に出てクマに近づこうとした瞬間、久慈川りせの鋭い声が背後から響く。

 

「ダメ、下がって! あの子の中から、何か……!」

 

 その声で、私は弾かれたように後ろに下がりクマと距離を取る。すると、どこからかクマの声が聞こえてきた。

 

「 "本当" ? "自分" ? 実に愚かだ……」

 

 だが、その声には嘲笑と侮蔑の色が含まれている。それは普段のクマではあり得ない、起こり得ないことだ。

 一体何が起こっているのか、そう疑問に思った直後、その声の主はクマの背後からゆっくりと現れる。

 それは、全てを見下したかのような目で私たちを見つめる、もう1人のクマだった。

 

「なんだよ、アイツ……!?」

 

「ま、まさか…… "もう1人のクマくん" ? クマくんの内面って事!?」

 

「多分、そう……でも、何かの……強い干渉を――」

 

「な、何がどーしたクマ!?」

 

 花村くんと里中さんの困惑した声に、久慈川りせは答える。しかし、途中でクマの叫び声がそれを遮ってしまう。

 状況を理解できていないクマは辺りをきょろきょろと見回して、背後を見た瞬間に大声をあげて驚く。しかし、クマの影はそれを無視して諭すような言い方で話し始めた。

 

『真実など、得る事は不可能だ。真実は常に、霧に隠されている。手を伸ばし、何かを掴んでも、それが真実だと確かめる術は決して無い……なら、真実を求める事に何の意味がある? 目を閉じ、己を騙し、楽に生きてゆく……その方がずっと賢いじゃないか』

 

「な、何言ってるクマか! お前の言う事、ぜ〜んぜん分からんクマ! クマがあんまり賢くないからって、わざと難しい事を言ってるクマね! 失礼しちゃうクマ! クマはこれでも一生懸命考えてるの!」

 

『それが無駄だと言ってるのさ……お前は "初めから" カラッポなんだからね。お前は心の底では気付いてる……でも認められず、別の自分を作ろうとしているだけさ……失われた記憶など、お前には初めから無い。何かを忘れているとすれば、それは "その事" 自体に過ぎない』

 

「そ……そんなの……ウソクマ……」

 

 クマの反論に対して、影は嘲笑を浮かべて一蹴する。

 

『なら、言ってやろうか。お前の正体は、どうせただの――』

 

「やめろってるクマー!!」

 

「クマさん!!」

 

 影の言葉を遮って体当たりをかましたクマは、跳ね返されてどこかへ吹き飛んでしまう。天城さんが心配した声で叫ぶと、影は標的を私たちに向けて話し始めた。

 

『お前たちも同じだ……真実など探すから、辛い目に遭う。そもそも、これだけの深い霧に包まれた世界……正体すら分からないものを、この中から、どうやって見つけ出すつもりだ?』

 

「真実は必ずある。探し続ければ、いつか絶対に辿り着ける!」

 

 影の言葉に、鳴上くんはそう答える。しかし影はそれをも嘲笑で返すと、黒い感情を高ぶらせながら言う。

 

『では、1つ真実を教えてやろう……お前たちは、ここで死ぬ。知ろうとしたが故に、何も知り得ぬままな……』

 

「くそ……まだ回復しきれてねぇってのに!」

 

 花村くんが悪態を吐く。みんなまだ、さっきの戦いから回復しきれていない状況だ。厳しい戦いになる事は間違いないだろう。

 

「……大丈夫、構えて」

 

 不意に、久慈川りせの静かな声が響く。振り向くと、いつの間にか立ち上がっていた彼女がいた。

 

「ちょ……まさか、その身体で戦う気!?」

 

「平気……私は多分、直接戦ったりしないから……!」

 

 里中さんの言葉に久慈川りせは頷くと、自身のペルソナを召喚しながら答える。ペルソナが両手に持つ輪っかが頭に装着されると、彼女は力強い笑みを浮かべて私たちに言った。

 

「今度は、私が助けてあげる……!」


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