Persona4 : Side of the Puella Magica 作:四十九院暁美
「あれは……魔獣よ」
この時ほむらは "何故この場所に魔獣がいるのか" という疑問と同時に "魔獣にはペルソナの攻撃が効かない" のではないかという、非常に厄介な予測に歯噛みしていた。見た目からでは分からないそれは、なまじ先程の猛攻があった為にその予測は信憑性を増している。だが実のところ、ペルソナの攻撃は魔獣に対して効果があった。だがそれは通常の半分ないしはそれ以下の効果であり、殆ど効果が無いと同じ程度でしかない。そもそもほむらは、これを魔獣と判別したが見た目が似ているだけで全くの別物である。
このシャドウの名は "妄執の狂者" 。
「ウギャー! た、耐性多過ぎクマ!」
先の猛攻を見て、妄執の狂者が持つ特性に気が付いたクマが彼らに叫ぶ。
調整のアルカナに属するシャドウが持つ特性、それはひとつを除いた全ての属性に耐性がある事だ。弱点となる属性も無い上に異常なまでのタフネスを持つ、完全な耐久型のシャドウなのだ。
「私がいく。貴方たちは下がってなさい」
「え、ちょ!? 暁美さん!?」
指につけていた糸を捨て去りペルソナを内に戻して魔法少女に変身したほむらは、里中千枝の制止も聞かずに自身の得物である弓を携えて飛翔する。右手に矢を形成して弓に番ええ、シャドウに狙いを定めたその瞬間、ほむらに幾つもの糸状のレーザーが殺到した。
舌打ちをしながら空を蹴ってレーザーを躱し、ほむらは再び狙いを定める。ぎっ、と音を立てて弓がしなり矢の先に灯った紫炎が揺らめくと同時に、光の矢がシャドウへ向けて放たれる。風切り音と共に飛来したそれは、ほむらの狙いと寸分違わずシャドウの下顎を貫いた。
悲鳴とも雄叫びとも取れない奇妙な叫びをあげて小さく吹き飛ぶシャドウに対して、ほむらは更に空を蹴って加速すると右手にブレード状の矢を形成して追撃の構えをとる。
「消えろ……!」
呟きと共に繰り出されるのは刺突、呻き声と共に放たれるのは幾多の光線。ひとつの影と無数の光が交錯した結果は、舞い上がった瓦礫と粉塵に隠され見る事が出来ない。
「暁美さ――!?」
鳴上悠がほむらの名を叫ぶと同時に、粉塵から何かが彼の方に飛び出してきた――いや、吹き飛ばされてきたと言った方が良いだろう。
吹き飛んできたのは、先程シャドウに突撃したほむらだった。シャドウに手痛い反撃を受けたらしく、その唇は血で濡れている。
「木偶の割には動ける様ね……っ!」
ほむらは空中で体勢を立て直して荒々しく地面に着地すると、その姿にはおおよそ似つかわしくない悪態をついた。彼女にしては、随分とらしくない状態である。
口元を右袖で拭い、そのまま手に持ったブレード状の矢を番えて放つ。桃色の閃光が粉塵を吹き飛ばし、シャドウの姿を露わにする。無傷ではないところを見るに、効いていない訳ではない様だ。
「俺も加勢するぜ!」
「あたしもいくよ!」
ほむらの戦いを見ていられなかったのか、花村陽介と里中千枝はそう言うや否やペルソナと共にシャドウに突貫する。
「な……待ちなさい! そいつは私が――」
それに驚いたほむらが2人の行動を咎めようとするが、側に駆けつけた悠が突き出した腕によって動きを封じられてしまう。
「暁美さん、落ち着け。ひとりで突っ走り過ぎだ」
険しい顔のままで苛立った声をあげるほむらに、悠は言い聞かせる様に話しかけた。
「何を!」
「暁美さん。暁美さんがどう思っているかは分からないけど、俺は――俺たちは、暁美さんを仲間だと思ってる」
「……仲間?」
ほむらが驚いた様に呟いたその問いに頷くと、悠は彼女と向き合い眼を合わせて言い放つ。
「暁美さんは、自分があれを倒さなきゃいけない思ってるんだろう? 俺たちは関係無い一般人で、暁美さんは魔法少女だから守らないといけないって思ってるんだろ? 確かに "現実の世界" なら俺たちは無力だ。足手まといでしかない。けど、ここは "テレビの中" だ。俺たちだってあれに対抗するだけの力がある。ここなら、俺たちは足手まといなんかじゃないんだ! だから、もっと俺たちを頼ってくれ!」
悠の言葉を聞いて、ほむらはいつだったかマミと杏子に "ほんの少しで良いから頼ってほしい" と言われた事を思い出した。
まさか似たような事をもう1度言われるとは思っていなかった、ほむらの中で色々な感情がぐるぐると渦を巻く。
「……度し難いわね」
しばらくして何かを悟ったらしいほむらは、溜め息と共に首筋に手を当てて自嘲的に笑うと、悠の眼を見返して力強く言った。
「なら、今から頼らせてもらうわ。鳴上くん」
「本当か?」
「ええ、本当よ。……よろしく頼むわね」
そう言うと、ほむらは悠に右拳を突き出す。ほむらなりに、信頼度を示す精一杯の行動だ。
「ああ!」
悠もそれに応えて右拳を突き出し、ほむらの拳と合わせる。ほむらが、彼らを本当の意味で仲間だと認めた瞬間であった。
◇
彼らには随分と不甲斐ないところを見せてしまった。全く、私らしくない。けれど、何故だか今はそれを悪い事のようには感じない。むしろ清々しさまで感じる程だ。1周回ってなんとやら、というやつだろうか。
"鳴上くん" が魔獣に向き直ると、私も右手にブレード状の矢を形成して並び立ち彼に語りかける。
「期待、してるわ」
「任せろ」
お互いに笑い合うと私たちは魔獣に向かって駆け出した。鳴上くんは地上から、私は空中から攻撃を仕掛ける。
幾つもの光線が飛び交う空中に飛び出して、魔獣から発射されるレーザーの対処に苦戦している "花村くん" の側で刺突の構えをとる。味方の多い今の戦場では、この矢を当てるのは周りへの被害が大すぎる。花村くんの援護をもらいながら、自ら突撃した方が良いだろう。このままもう少し上昇して、天井を足場にするか。
「暁美さん! ジライヤの手に!」
そう思案していると、私がいる事に気が付いた花村くんが呼びかけてくる。私はその言葉に頷くと、彼の言う通りにジライヤの疾風を纏ったその手に乗った。
「さぁて、やっちゃいますか!」
ジライヤは私を手に乗せたまま腕を大きく振りかぶった後、数瞬の間をおいて全てを切り裂く風と共に、私を投げ飛ばす。狙いは腹部、ど真ん中ストレートだ。
「貫く!」
叫び声と共に腹部を粉砕、貫通する。悲鳴をあげる魔獣の反対側――背中側にいくと、そこには "里中さん" と彼女のペルソナであるトモエが待ち構えていた。
「まだまだいくよ!」
彼女が右の拳を突き上げ笑顔で言うと、トモエがその手に持った薙刀を構える。意図を察した私は、すかさず体勢を整えてトモエの薙刀に着地する。するとオレンジ色の光が私を包み込み、身体を流れる魔力がその勢いを増していく。右手に持つ矢は桃色のオーラを纏い、太陽の様に強く輝き始めた。
「気合いっぱーつ!」
ぉおん、という風切り音を発しながら振られた薙刀を足場に、私は再び魔獣に超高速で突撃する。狙いは後頭部の中心だ。
「砕けろ!」
凄まじい勢いで魔獣の頭を貫く。今度は悲鳴すらあげられない。再び空中に飛び出した私を迎えたのは "巽くん" のペルソナであるタケミカヅチだった。
「暁美先輩! まだ終わりじゃねえよなぁ!」
タケミカヅチが突き出した右手を中継して地面に着地すると、私は弓に矢を番えて魔獣の胸に狙いをつける。魔獣の周りに味方はいない、今なら矢が撃てる。
「吹き飛ばす!」
「たたんでやらぁッ!」
彼の言葉に呼応して、タケミカヅチは手に持っていた稲妻型の鈍器を地面に突き刺し、両拳で叩き割る。それを合図に私も矢を放つと、おそらくはタケミカヅチが放ったのであろう雷が魔獣のすぐ側まで迫った矢に直撃し、雷撃を纏った爆発が巻き起こった。
「暁美さん! 私もいくよ!」
"天城さん" の声で弾かれた様に駆け出した私が瓦礫を足場にしてみたび空中に飛び出して弓を構えると、コノハナサクヤは私の真後ろで両腕を大きく広げて赤い光を矢の先端に集約させる。
「焼き尽くせ……!」
矢は放たれたその瞬間、鷹の鳴き声にも似た唸りをあげながら火の鳥となって空を奔る。魔獣に到達した火の鳥は、その翼で魔獣の身体を包むと、天へと登りひときわ強く輝き辺りを照らした。
「奔れ、炎よ!」
魔獣を包む炎は徐々に渦を巻き、旋風となって辺り一帯に熱風を吹き散らす。先の爆発から回復しきれていない魔獣は、火炎を纏った旋風を受けて吹き飛びながら、醜く身悶えていた。
「流石」
「 "仲間" なんだから、当然でしょう?」
鳴上くんの側に降り立った私は、彼に笑いながらそう応える。するとその言葉を聞いた彼は、嬉しそうに笑いながら言った。
「ああ、そうだな。仲間だからな」
「ええ、仲間だもの」
再び右手に矢を形成して、狙いを魔獣に定める。流石にあの猛攻は効いたらしい、魔獣はぐったりとしていて反撃する気力すらない様だ。
鳴上くんはイザナギを召喚して、大きな力をその身から溢れさせる。私も矢を持つ手に力を込めると、弓を限界まで引き絞った。
「これで決めるぞ!」
イザナギから放たれる紫電が矢に集まり、巨大な槍を形作る。迸る雷によって、辺りの瓦礫が砕け粉塵が舞う。
「いっけぇぇぇ!」
全員の声が響くと同時に、項垂れる魔獣の頭に雷の大槍を放つ。紫の尾を引く雷光は、魔獣に直撃すると凄まじい音と衝撃を発生させて空間を軋ませ、耳障りな悲鳴をあげる魔獣の全てを焼き尽くしていく。
全てが終わると、魔獣は黒い粒子となってぐずぐずと消滅していった。
「……キャラじゃなかったかしら」
魔獣が倒した喜びに沸き立つ彼らを尻目に、私はぽつりとそんな事を呟く。つい熱くなってしまった。こういうのは柄ではないというのに、私らしくない。
「そんな事ないさ」
それを聞いた鳴上くんが笑顔で言った。
「凄くかっこよかった」
思わず眼を背ける。どうも自分は褒められ慣れていないらしく、こういうストレートな賛辞には弱いようだ。
しかし、よくもまあそんな事を面と向かって言える。恥ずかしくならないのだろうか。
「スゴイクマかっこいいクマシビれるクマー!あんなに強いシャドウを倒しちゃうなんて、やっぱりほむちゃんは凄いクマ!」
先の戦いを見ていたクマは、私に駆け寄ると興奮した様子で騒ぎ出した。
「え? シャドウ? ありゃ魔獣だろ?」
クマの言葉に花村くんがそう応えると、クマは呆れた様に言う。
「はぁ? なーに言っとるクマかヨースケ。あれはシャドウクマ、マジュウじゃないクマ」
「……え?」
時が止まった。
……あまり考えたくない事だが、もしかしすると私はかなり恥ずかしい勘違いをしていたのではないだろうか。
「あー……えっと、クマ。それってマジなのか?」
「モチのロンクマ。クマ、最初に言ったクマよ? 強いシャドウの気配を感じるって」
「……そういや言ってたな、お前」
花村くんが気まずそうに訊くと、クマは自信満々に頷く。心なしか私に向けられる視線には "そういう" 類の感情が混じっている気がする。
私は誤魔化す為に、若干震えた声で言った。
「……だ、誰にでも、間違いはあるでしょう……? ……そうよね巽くん」
「え、オレ?」
「そうよね、巽くん」
驚く巽くんに視線を向けて、同調するように仕向ける。するとその甲斐あってか、彼が焦りながら私の言葉に同意した。
「そ、そうスね! 誰にでも間違いはあるっス!」
「里中さんと天城さんもそう思うでしょう?」
「わ、私?」
「うぇ!? あたしも?」
「相当恥ずかしかったんだな、シャドウと魔獣を間違った事」
「まあ……あんだけ盛大にやらかしたらなぁ」
「そんな訳ないでしょう」
「ヤッベ、聞こえてた」
私が周りを巻き込んで誤魔化していると、彼らは段々と笑顔になっていく。
「ちょっと、何を笑ってるのよ!」
私がそう問いかけると、彼らはやはり笑いながら答えた。
「ごめんごめん。やっと暁美さんの "素の姿" が見られた気がして、なんか嬉しくて」
里中さんの言葉に、私を除いた全員が頷く。私の態度が軟化したのが嬉しかったらしい。
追い討ちを受けた私は、慌てて話題を逸らした。
「……そ、そろそろ戻りましょう。ここに来てからだいぶ時間が経ってるもの、暗くなる前に現実世界に帰りましょう」
そう言いながら、出口に足を向ける。恥ずかしくて死にそうだ。多分、私の顔は熟れたトマトよりも赤いだろう。全く、今日は私らしくないミスばかりしてしまう。本当になんなのだろうか。
私が歩き出そうとした時、不意に鳴上くんが何かに気が付いた。
「あれ、何か落ちてる」
彼の視線の先には、光を受けて煌めく輪様なものがあった。何かと思って近付いて見ると、束ねられたワイヤーがぽつんとその場に落ちていた。あの魔獣――シャドウが落としたものだろうか。
手に持ってみると、その量に反してかなり軽い。長さはざっと見で80m、微弱な魔力を感じる事から魔法で何かしらの処理されている様だ。強度の割には非常に柔らかいのは、それが原因なのだろう。
束を解いて魔力を通すと、淡い紫の光がワイヤーに浸透していく。完全に通ったのを確認して適当な長さに切り分けて、左右の指先に魔力で接合する。たったこれだけの工程をこなすだけで、ものの数秒でこのワイヤーは私専用の武器になった。
これで少しは誤魔化せただろうか。
「よし、それじゃあとっととここを出ましょう」
ここにもう用は無い、と私は足早に出口へ向う。後ろからついてくる彼らは、しきりに私の事を口にしていたが全て無視した。今は兎に角、顔を見られたくなかったから。
無事に現実世界へ戻った私は彼らと別れた後、ジュネスの出入り口でガラス越しに降りしきる雨を見ながら考えていた。
今日の私は何かおかしかった。シャドウと魔獣を間違うなど、随分とらしくないミスをしてしまう程に。今日の私はいうなればそう、浮かれていた。今の私は、酷く浮かれていたように思える。一体何に、どうして浮かれているのだろうか。ペルソナの力に期待していたからなのか、テレビの中に行く事を楽しみにしていたからなのか、それとも彼らと行動を共に出来るからなのか。
『だから、俺たちをもっと頼ってくれ!』
不意に、鳴上くんに言われた言葉が頭の中に響いた。あの時、私は自分が仲間を欲していたのだと悟った。自分から人を遠ざけておきながら、心の底では分かってくれる誰かを欲していたのだ。だから私は、今までずっと詩野さんを鬱陶しいと思いながらも突き放そうとは考えなかった。いつか彼女が、私の閉ざされた心を開いてくれる事を望んでいたのだ。
これに気が付けたのは、非常に良い事なのだろう。けれどその所為で私は、自分の気持ちが自分でも分からなくなった。これは、この気持ちは、一体何なのだろう。胸に渦巻くこの形容の出来ないもどかしい感情を、私はどうしたら良いのだろう。しとしと降る雨は何も教えてはくれない。小説の様に天気から答えを導く事が出来たら、どれ程に幸せなだっただろうか。
頭に結んだリボンを、そっと触れる。私はきっと、この感情の答えを探さねばならないのだろう。それが今の私を、ひいては未来の私を大きく変える事になる。
「見ていて、まどか。私は "私の世界" を変えてみせる。新たな世界を作ってみせるから」
雨雲に覆われた空を見上げて、私はそう誓う。降りしきる雨は、相変わらず何も答えてはくれない。けれど少しだけ、響く雨音が優しくなった気がした。
◇
時は遡り、6月13日の深夜。
八十稲羽から遠く離れたどこかの街の郊外にひっそりと聳える、寂れた鉄塔の上でひとりの少女と白い獣――キュゥべえが話をしていた。
「ふーん。それで、だからなんなの?」
少女がさも興味無さげに言う。するとキュゥべえは少女に、何事かを淡々と述べていく。
「もしそれが本当だとするなら、暁美ほむらの変質したソウルジェムを調べる事でシステムをより効率が良いものに変えれるかもしれないんだ。今のシステムではエネルギーの回収効率が良くないから、僕らとしては出来れば改善したいんだ。だからシステムを改善する事が出来れば――」
「あーはいはい。そっちの事情は分かったからもういいよ。それで、私は何をしたらいいの?」
少女は長話を遮ってキュゥべえに問いかける。するとキュゥべえはその問いに、淀みのない無機質な答えを返した。
「八十稲羽地方の調査、そして暁美ほむらを出来るだけソウルジェムを濁らせた状態で捕縛してほしい」
「……捕縛、ねぇ」
キュゥべえの頼みに興味を惹かれたのか、少女が綺麗なボブカットの髪を揺らして嗤う。彼女にはきっと、想像がついたのだろう。インキュベーターに囚われたほむらの末路が。
「うんうん、ナルホドナルホド。キュゥべえが私にやってほしい事はよぉく分かったよ。でもさ、捕縛って事はその暁美ほむらって人と戦わなきゃいけないんでしょ? そういう危ない事をするんなら、相応の報酬を貰わないと……ねぇ? キュゥべえは私に、何をくれるのかな?」
その幼さの残る顔に似合わない下卑た笑みを浮かべると、少女はキュゥべえに優しく問いかける。じわり、じわりと幼い身体からは陰湿で鬱屈とした空気が溢れ出し、彼女の本性が少しずつ露わになっていく。
そんな少女の対応を予測していたのか、キュゥべえはやれやれといった様子で報酬について話し始める。
「見滝原――確か、君の出身だったよね? もし暁美ほむらを捕縛出来たらあの街を君にあげるよ。既に他の魔法少女が2人いるけど、彼女たちには話をつけておくから」
「あの街を、丸ごと? 魔法少女が他にいるのに?」
信じられない、そう言って少女が胡乱げにキュゥべえを見ると、キュゥべえはその視線を受けて言葉を付け足す。
「あの街にいる魔法少女は、暁美ほむらのソウルジェムの秘密を知っている様だからね」
その言葉で全て察したらしい少女が、さも愉快そうに哄笑する。
「外道だ、本当に外道だなあ君たちは。きっと、私よりも外道だよ」
「外道だなんて心外だよ "あすみ" 。僕たちは宇宙を延命させる為に行動しているんだ。悪い事なんて何ひとつしてないじゃないか」
不満そうにキュゥべえが言うと "あすみ" と呼ばれた少女は、尚もくつくつと顔を歪ませながら応えた。
「そうだったそうだった、ごめんねキュゥべえ。お詫びと言ってはなんだけど……引き受けるよ、その依頼」
「本当かい?」
「もちろん。この "