STAR WARS マンダロリアン&グローグー〜銀河一自由な宇宙海賊〜   作:けーやん

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第二話 マンダロリアンとサイコガン

荒涼とした大地。

 

見渡す限りの岩山と砂。

 

その中に、不自然なほど無骨な建造物が存在していた。

 

かつて銀河帝国が使用していた前線基地。

 

帝国崩壊後、一度は放棄された施設だったが――現在は帝国残党の拠点として再利用されている。

 

周囲にはストームトルーパー。

 

屋上には固定式ブラスター砲。

 

さらに小型の監視ドロイドまで巡回している。

 

その様子を、岩山の陰から二人の男が観察していた。

 

一人は銀色のベスカー・アーマーを纏う賞金稼ぎ。

 

ディン・ジャリン。

 

もう一人は――

 

「いやあ、歓迎会にしては随分と物騒だな」

 

赤い服を着た金髪の男。

 

コブラだった。

 

ディンがヘルメット越しに基地を観察する。

 

「正面十二人。東側に八人。屋上に四人」

 

「二十四人か」

 

「見えている範囲だけだ」

 

「なるほど」

 

コブラはニヤリと笑った。

 

「じゃあ、中には美女が二十四人ってところだな」

 

ディンがコブラを見る。

 

「何故そうなる?」

 

「男ばっかりの基地なんて寂しいだろ?」

 

「帝国軍だぞ」

 

「帝国軍にも趣味くらいあるさ」

 

「…………」

 

ディンはそれ以上相手にしなかった。

 

少し離れた場所ではレディがグローグーと共に待機している。

 

今回の目的は帝国残党の司令官。

 

ヴァルド・ケイン少佐。

 

帝国崩壊後も降伏せず、残存兵力を集めて辺境宙域を襲撃している男だ。

 

さらに最近では周辺の集落から住民を拉致している。

 

「捕虜は地下区画にいる可能性が高い」

 

ディンが言った。

 

「俺が西側から侵入する。お前は――」

 

「正面」

 

「……何?」

 

「俺は正面から行く」

 

ディンが振り向く。

 

コブラは既に岩陰から出ようとしていた。

 

「待て」

 

「ん?」

 

「正面には十二人いる」

 

「ああ」

 

「固定砲台もある」

 

「ああ」

 

「監視ドロイドもいる」

 

「親切な場所だな。全部まとめて置いてある」

 

「そういう意味ではない」

 

コブラは笑った。

 

「大丈夫だって」

 

そして左腕を軽く叩く。

 

「俺には、とびっきりの相棒がいる」

 

「武器は?」

 

「持ってるぜ」

 

「どこに?」

 

コブラは左腕を持ち上げた。

 

「ここさ」

 

ディンが見る。

 

どう見ても普通の左腕だった。

 

「義手にしか見えない」

 

「よく出来てるだろ?」

 

「…………」

 

「高かったんだぜ」

 

「値段を聞いているんじゃない」

 

「冗談の通じない男だねえ」

 

コブラは歩き出した。

 

「おい」

 

ディンが呼び止める。

 

コブラは振り返らない。

 

片手だけ上げる。

 

「十分後に中で会おうぜ」

 

「どうやって入るつもりだ?」

 

「もちろん――」

 

コブラが笑った。

 

「玄関からさ」

 

 

帝国残党基地、正門。

 

「止まれ!」

 

ストームトルーパーたちが一斉にブラスターライフルを構えた。

 

その中央をコブラは悠然と歩いていた。

 

「止まれと言っている!」

 

「聞こえてるよ」

 

コブラは耳をほじる仕草をする。

 

「耳はいいんだ。女の子の囁き声なら三倍よく聞こえる」

 

「所属を名乗れ!」

 

「所属?」

 

コブラが顎に手を当てた。

 

「無職かな」

 

「ふざけるな!」

 

「じゃあ自由業」

 

ブラスターの銃口が一斉にコブラへ向く。

 

「最後の警告だ!」

 

「そう怒るなよ」

 

コブラは両手を軽く上げる。

 

「俺は話し合いに来ただけだ」

 

「武器を捨てろ!」

 

「持ってないぜ」

 

兵士たちがコブラを見る。

 

確かに。

 

腰にはブラスターがない。

 

背中にもライフルはない。

 

「身体検査をしろ!」

 

一人のストームトルーパーが近づいてくる。

 

コブラは動かない。

 

兵士が身体を調べる。

 

そして左腕を掴んだ。

 

「これは?」

 

「義手だ」

 

「外せ」

 

「おすすめしないね」

 

「外せ!」

 

「しょうがないな」

 

コブラが笑う。

 

「そこまで見たいなら――」

 

右手が左腕を掴む。

 

そして。

 

ガシャン。

 

義手が外れた。

 

その瞬間。

 

ストームトルーパーたちの動きが止まった。

 

義手の下から現れたもの。

 

人間の腕ではない。

 

銃身。

 

コブラの左腕そのものに装着された、未知の兵器。

 

サイコガン。

 

「……何だ、それは?」

 

「これか?」

 

コブラの口元が吊り上がる。

 

「俺の左腕さ」

 

閃光。

 

サイコガンから放たれた光線が大きく弧を描く。

 

正面の兵士たちが慌てて散開した。

 

だが――

 

「曲がった!?」

 

直進するはずの射撃が途中で軌道を変えた。

 

兵士たちのブラスターライフルが次々と撃ち抜かれ、使用不能になる。

 

「何だこの武器は!」

 

「知らないのか?」

 

コブラがサイコガンを構える。

 

「流行に遅れてるぜ」

 

固定砲台が旋回。

 

「撃て!」

 

砲撃。

 

コブラが横へ飛ぶ。

 

爆発。

 

砂煙。

 

その中からコブラが飛び出した。

 

サイコガンが光る。

 

一撃。

 

固定砲台の駆動部分を正確に撃ち抜く。

 

砲身が停止した。

 

「馬鹿な!」

 

別の兵士がブラスターを撃つ。

 

コブラは身を捻って回避。

 

さらに一発。

 

二発。

 

三発。

 

「おっと」

 

岩陰へ滑り込む。

 

「危ないじゃないか」

 

コブラはサイコガンを岩陰から僅かに出した。

 

敵の姿は見えない。

 

だが。

 

「そこだろ?」

 

発射。

 

光線が岩壁を回り込むように軌道を変える。

 

「なっ――!?」

 

ブラスターが撃ち抜かれた。

 

兵士が尻餅をつく。

 

コブラが岩陰から顔を出す。

 

「かくれんぼは得意なんだ」

 

その頃。

 

基地西側。

 

爆発音を聞いたディンが正門方向を見る。

 

次々と警報が鳴る。

 

『正門突破!』

 

『侵入者一名!』

 

『未知のエネルギー兵器を使用!』

 

『射線がおかしい! 遮蔽物が意味を成さない!』

 

ディンは数秒沈黙した。

 

「…………」

 

そして呟く。

 

「本当に正面から入ったのか」

 

 

数分後。

 

基地内部。

 

ディンは既に数人の兵士を倒し、地下区画へ向かっていた。

 

角を曲がる。

 

そこで足を止める。

 

「よう」

 

コブラが壁にもたれていた。

 

「遅かったな」

 

ディンが周囲を見る。

 

床には武器を破壊され、戦闘不能になったストームトルーパーたち。

 

「……殺していないのか?」

 

「賞金首はケイン少佐だけだ」

 

コブラは義手を装着する。

 

サイコガンが再び普通の左腕に隠れた。

 

「余計な仕事はしたくない主義でね」

 

ディンは義手を見る。

 

「さっきの武器」

 

「気になるか?」

 

「あれはブラスターではない」

 

「ご名答」

 

「何だ?」

 

コブラはニヤリと笑った。

 

「企業秘密」

 

「…………」

 

「そんな怖い顔するなよ」

 

「ヘルメットを被っている」

 

「じゃあ想像だ」

 

二人は並んで歩き始める。

 

やがて地下区画。

 

巨大な扉。

 

ディンが端末を操作する。

 

「ロックされている」

 

「開けられるか?」

 

「時間が必要だ」

 

「どれくらい?」

 

「三分」

 

コブラが扉を見る。

 

「三分か」

 

左腕の義手を外す。

 

「コーヒーが冷めちまうな」

 

サイコガンを構える。

 

「待て」

 

ディンが止める。

 

「中に捕虜がいる可能性がある」

 

「分かってる」

 

コブラは目を細める。

 

「だから――」

 

照準。

 

「鍵だけ壊す」

 

発射。

 

光線が扉そのものではなく、側面の制御装置へ命中。

 

火花。

 

ロックが解除される。

 

扉が開いた。

 

「ほらな」

 

ディンが無言でコブラを見る。

 

「便利だろ?」

 

「……便利という言葉で済ませていい武器なのか?」

 

「褒め言葉として受け取っとくよ」

 

地下収容区画。

 

そこには十数人の住民が捕らえられていた。

 

子供もいる。

 

ディンが檻を開けていく。

 

コブラは周囲を確認する。

 

その時。

 

拍手。

 

「素晴らしい」

 

奥から男が現れた。

 

帝国軍将校の制服。

 

ヴァルド・ケイン少佐。

 

その周囲には十人以上のストームトルーパー。

 

「噂以上だな、マンダロリアン」

 

ケインはディンを見る。

 

そして――

 

コブラを見る。

 

「そして、赤い服の男」

 

「俺も有名になったもんだ」

 

「お前については情報が少ない」

 

「ミステリアスな男はモテるんだぜ」

 

「特に――」

 

ケインの視線がコブラの左腕へ向く。

 

「その兵器」

 

コブラの笑みが少しだけ消える。

 

「我々に渡せ」

 

「嫌だね」

 

即答。

 

「帝国の科学力なら解析できる」

 

「帝国?」

 

コブラが笑った。

 

「まだその看板使ってるのか?」

 

ケインの顔が険しくなる。

 

「帝国は滅びていない!」

 

「いや」

 

コブラは静かに言う。

 

「滅びたさ」

 

その声には、先ほどまでの軽さがなかった。

 

「皇帝もいない。ベイダーもいない。デス・スターもない」

 

一歩。

 

「残ってるのは――」

 

もう一歩。

 

「帝国って名前にしがみついて、弱い連中から奪う奴だけだ」

 

ケインが手を上げる。

 

「撃て!」

 

ストームトルーパーたちが一斉に構える。

 

ディンもブラスターを抜く。

 

コブラは――

 

笑った。

 

「そうこなくちゃな」

 

サイコガンが輝く。

 

同時にディンが前へ出た。

 

ブラスター。

 

サイコガン。

 

二つの異なる光が地下区画を駆け抜ける。

 

ディンは正確な射撃で敵の武器を弾き、コブラは遮蔽物の向こうへ回り込む軌道でサイコガンを撃つ。

 

「右!」

 

ディンが叫ぶ。

 

「任せな!」

 

光線が曲がる。

 

右側から接近していた兵士のライフルが吹き飛ぶ。

 

今度はコブラが叫ぶ。

 

「後ろだ!」

 

ディンが振り向かずに腕を向ける。

 

リスト装備から射出されたワイヤーが敵兵を絡め取った。

 

「へえ」

 

コブラが感心する。

 

「そっちも便利な玩具を持ってるな」

 

「玩具じゃない」

 

「俺の左腕と交換する?」

 

「断る」

 

「即答かよ」

 

戦闘中とは思えない会話。

 

だが――

 

二人の連携は驚くほど噛み合っていた。

 

そして。

 

ケインだけが残った。

 

「くっ……!」

 

ケインが逃げる。

 

「コブラ!」

 

「分かってる!」

 

コブラが左腕を向ける。

 

だが。

 

ケインは捕虜の一人を掴み、盾にする。

 

「動くな!」

 

コブラが止まる。

 

ケインが笑う。

 

「その武器も人質がいれば撃てまい!」

 

「…………」

 

コブラはサイコガンを下げた。

 

「そうだ」

 

ケインが後退する。

 

「武器を捨てろ」

 

コブラはサイコガンを見る。

 

そして――

 

「悪いな」

 

ニヤリ。

 

「こいつは捨てられないんだ」

 

発射。

 

「馬鹿め!」

 

ケインが人質を前へ出す。

 

しかし。

 

光線は人質へ向かわない。

 

大きく横へ逸れた。

 

「何!?」

 

壁際へ。

 

そして――

 

曲がる。

 

ケインの背後から光線が迫った。

 

「なっ――」

 

手にしていたブラスターだけを撃ち抜く。

 

「ぐっ!」

 

ディンが一瞬で距離を詰めた。

 

ケインを床へ組み伏せる。

 

拘束。

 

戦闘終了。

 

静寂。

 

助けられた住民が呆然とコブラを見る。

 

ディンもサイコガンを見ていた。

 

「……やはりおかしい」

 

「何が?」

 

「今の射撃」

 

「ちょっと曲げただけだ」

 

「ブラスターは曲がらない」

 

「頑固な奴だな」

 

コブラは義手を装着する。

 

「だからブラスターじゃないって言ってるだろ?」

 

 

数時間後。

 

タートル号の前。

 

救出された住民たちは町へ戻る準備をしていた。

 

ケイン少佐は拘束され、ディンが賞金首として引き渡すことになった。

 

グローグーがコブラの前に立っている。

 

「よっ」

 

コブラがしゃがむ。

 

「退屈しなかったか?」

 

グローグーがコブラの左腕を見る。

 

「ん?」

 

小さな手が伸びる。

 

義手へ触れる。

 

その瞬間。

 

グローグーの耳が僅かに動いた。

 

「…………?」

 

コブラも目を細める。

 

グローグーは義手の奥にある何かを感じ取ったようだった。

 

精神。

 

意志。

 

生命エネルギー。

 

それらを力へ変えるサイコガン。

 

そしてフォース。

 

全く異なるはずの二つの力。

 

だが――どこかで似ている。

 

「面白いだろ?」

 

コブラが言う。

 

グローグーが嬉しそうに声を出す。

 

そこへディンが来た。

 

「行くぞ、グローグー」

 

グローグーは動かない。

 

「…………」

 

「おい」

 

まだコブラの左腕を触っている。

 

コブラが笑う。

 

「気に入られたみたいだな」

 

「珍しい」

 

「俺は子供と美女には人気があるんだ」

 

「自分で言うことなのか?」

 

「事実だからな」

 

レディがタートル号から降りてくる。

 

「コブラ」

 

「ん?」

 

「次の仕事が入ったわ」

 

「賞金首?」

 

「ええ」

 

ホログラムが表示される。

 

そこには一人の犯罪者。

 

そして――

 

賞金額。

 

コブラの目が輝いた。

 

「おお」

 

ディンも見る。

 

「高額だな」

 

「だろ?」

 

コブラが笑う。

 

「どうだ、マンダロリアン」

 

ディンを見る。

 

「次も一緒にやるか?」

 

「俺には俺の仕事がある」

 

「残念」

 

ディンはグローグーを抱き上げる。

 

「だが」

 

足を止める。

 

「また会うことはあるかもしれない」

 

「銀河は広いぜ?」

 

「それでもだ」

 

コブラは少しだけ笑った。

 

「その時は酒でも奢ってくれ」

 

「酒は飲まない」

 

「じゃあミルクでいい」

 

ディンは答えず、自分の船へ向かった。

 

グローグーだけが肩越しにコブラを見る。

 

小さな手を振る。

 

コブラも右手を上げた。

 

「またな、チビ助」

 

船が飛び立つ。

 

それを見送りながら、レディが隣に立った。

 

「気に入ったの?」

 

「誰を?」

 

「二人とも」

 

コブラは肩をすくめる。

 

「さあね」

 

そしてタートル号へ乗り込む。

 

「それより仕事だ」

 

「目的地は?」

 

「賞金首がいる場所」

 

「だから、それはどこ?」

 

コブラは賞金首の情報を見る。

 

目的地。

 

そこに表示された惑星名を見て――

 

笑った。

 

「こいつは面白くなりそうだ」

 

タートル号のエンジンが起動する。

 

宇宙へ。

 

再び広大な銀河へ飛び出していく。

 

帝国にも。

 

新共和国にも。

 

賞金稼ぎギルドにも縛られない。

 

宇宙海賊コブラの旅は、まだ始まったばかりだった。




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