STAR WARS マンダロリアン&グローグー〜銀河一自由な宇宙海賊〜   作:けーやん

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第三話 賞金首の宇宙海賊

タートル号はハイパースペースを疾走していた。

 

操縦席ではコブラが両足をコンソールへ投げ出し、今回の標的についてのデータを眺めている。

 

名前はガルド・ヴェイン。

 

元帝国軍兵士。

 

帝国崩壊後は軍から持ち出した装備を利用して海賊団を結成し、輸送船や辺境の集落を襲撃している。

 

賞金額もかなりのものだった。

 

「生け捕りならこの金額か」

 

コブラは口笛を吹く。

 

「悪くない」

 

「問題は別にあるわ」

 

レディが言った。

 

「ん?」

 

「今回向かう惑星には、賞金稼ぎが大勢集まっている」

 

「人気者なんだな、そいつ」

 

「ガルド・ヴェインの話じゃないわ」

 

レディは別のデータを表示した。

 

ホログラムに一人の男の顔が現れる。

 

金髪。

 

不敵な笑み。

 

赤い服。

 

コブラだった。

 

「…………」

 

コブラは数秒間、自分の顔を見つめる。

 

「男前だな」

 

「あなたよ」

 

「知ってるさ。鏡は毎朝見てる」

 

「そうじゃなくて」

 

レディが情報を拡大する。

 

そこには――

 

WANTED

 

の文字。

 

そして賞金額。

 

コブラは目を細めた。

 

「…………高いな」

 

「帝国残党だけではないわ。あなたに恨みを持つ犯罪組織や海賊団が、それぞれ賞金を上乗せしているみたい」

 

「人気者はつらいねえ」

 

「他人事みたいに言わないの」

 

「だって俺を捕まえるんだろ?」

 

コブラは笑った。

 

「広い銀河から俺を見つけ出すなんて『ウォーリーをさがせ!』よりも難問だぜ」

 

「その格好で?」

 

レディがコブラを見る。

 

真っ赤な服。

 

目立つ金髪。

 

特徴的な顔。

 

「…………」

 

コブラは自分の服を見る。

 

「確かにウォーリーより簡単かもしれないな」

 

「でしょう?」

 

「服を替えるか」

 

「それがいいわね」

 

「青にしよう」

 

「問題は色だけじゃないと思うけれど」

 

タートル号がハイパースペースを抜けた。

 

前方に惑星が現れる。

 

惑星ヴァルカス。

 

複数の犯罪組織が勢力争いを続ける無法地帯。

 

新共和国の影響力も弱く、賞金稼ぎや密輸業者が頻繁に出入りする場所だった。

 

「さて」

 

コブラが立ち上がる。

 

「賞金首を捕まえに行くか」

 

「あなたも賞金首よ」

 

「そこが今回の面白いところさ」

 

 

ヴァルカス。

 

交易都市グラン・ポート。

 

酒場には様々な種族が集まっていた。

 

密輸業者。

 

傭兵。

 

賞金稼ぎ。

 

元帝国兵。

 

そして、素性の知れない者たち。

 

その中を――

 

赤い服の男が堂々と歩いていた。

 

レディが隣を歩く。

 

「コブラ」

 

「ん?」

 

「何故変装しなかったの?」

 

「したぜ」

 

「どこが?」

 

コブラはサングラスを少し下げる。

 

「これ」

 

「…………」

 

「完璧だろ?」

 

「賞金稼ぎを甘く見すぎよ」

 

「大丈夫さ」

 

コブラは笑う。

 

「こういう場所じゃ、堂々としてる奴ほど怪しまれない」

 

その瞬間。

 

酒場中の視線がコブラへ集まった。

 

「…………」

 

レディが言う。

 

「全員あなたを見ているけれど」

 

「モテる男は困るねえ」

 

酒場の奥。

 

一人の賞金稼ぎが端末を見る。

 

画面。

 

コブラの手配書。

 

顔を上げる。

 

コブラ。

 

再び画面。

 

コブラ。

 

「…………!」

 

立ち上がった。

 

それを皮切りに、周囲の賞金稼ぎたちも次々と端末を確認する。

 

ざっと二十人。

 

コブラはカウンターへ座った。

 

「マスター」

 

酒場の主人を見る。

 

「一杯頼む」

 

店主はコブラを凝視している。

 

「……あんた」

 

「ん?」

 

「コブラか?」

 

「違う」

 

即答だった。

 

レディが横を見る。

 

「違うの?」

 

「今日は違う」

 

「今日は?」

 

一人の賞金稼ぎが立ち上がった。

 

「コブラ!」

 

コブラは肩を落とす。

 

「せっかく偽名を考えてたところなのに」

 

「その必要はない!」

 

ブラスターが抜かれる。

 

さらに周囲の賞金稼ぎも次々と武器を構える。

 

コブラは酒場を見渡した。

 

前。

 

六人。

 

左右。

 

九人。

 

背後。

 

七人。

 

「二十二人ね」

 

レディが静かに告げる。

 

「大人気だな」

 

「賞金額を考えれば当然よ」

 

賞金稼ぎの一人が叫ぶ。

 

「動くな!」

 

「動いてないぜ」

 

コブラは座ったままだ。

 

「両手を上げろ!」

 

「酒くらい飲ませてくれよ」

 

「早くしろ!」

 

「分かった、分かった」

 

コブラは右手を上げる。

 

そして左手も上げた。

 

「これでいいか?」

 

賞金稼ぎたちの視線が左腕へ集まる。

 

普通の義手。

 

少なくとも外見上は。

 

「武器を出せ!」

 

「持ってないぜ」

 

「嘘をつけ!」

 

「本当さ」

 

コブラはニヤリとする。

 

「俺は丸腰だ」

 

レディが少し離れる。

 

それを見たコブラが眉を上げた。

 

「おい、レディ」

 

「何?」

 

「助けてくれないの?」

 

「あなたなら大丈夫でしょう?」

 

「冷たいねえ」

 

「自分で撒いた種よ」

 

「美人にそう言われると傷つくな」

 

賞金稼ぎが叫ぶ。

 

「黙れ!」

 

コブラがため息をついた。

 

「仕方ない」

 

右手が左腕を掴む。

 

「酒も飲ませてもらえないんじゃ――」

 

義手が外れる。

 

サイコガン。

 

賞金稼ぎたちの表情が変わった。

 

「仕事するしかないな」

 

閃光。

 

サイコガンが火を噴いた。

 

光線が酒場を駆け抜ける。

 

賞金稼ぎたちが一斉に散開。

 

「撃て!」

 

無数のブラスターが飛ぶ。

 

コブラはカウンターを蹴って飛び越えた。

 

着地。

 

身体を低くする。

 

頭上をブラスターが通過。

 

「危ないな!」

 

左腕を向ける。

 

発射。

 

光線が曲がる。

 

一人。

 

二人。

 

三人。

 

それぞれが持っていたブラスターだけが正確に破壊される。

 

「また曲がったぞ!」

 

「遮蔽物に隠れろ!」

 

「そいつはおすすめしないぜ!」

 

コブラが笑う。

 

サイコガン。

 

最大の特徴は単なる威力ではない。

 

撃ち手の精神と結びついた射撃。

 

コブラの意志によって、その軌道を変化させる。

 

テーブルの裏へ隠れた賞金稼ぎ。

 

発射。

 

光線がテーブルを避ける。

 

横から回り込む。

 

「何!?」

 

武器だけが吹き飛ぶ。

 

別の賞金稼ぎが背後から迫る。

 

レディが動こうとする。

 

だが。

 

「大丈夫」

 

コブラは振り向かない。

 

「見えてるさ」

 

サイコガンを前方へ発射。

 

「外した!」

 

違う。

 

光線が天井近くで旋回する。

 

コブラの背後へ。

 

接近していた賞金稼ぎのブラスターを破壊。

 

「そんな馬鹿な!」

 

コブラが振り返る。

 

「悪いな」

 

笑う。

 

「俺の弾はちょっとばかり方向音痴なんだ」

 

数分後。

 

酒場。

 

静寂。

 

賞金稼ぎたちは全員戦意を失っていた。

 

床には破壊された武器が転がっている。

 

コブラは義手を戻した。

 

そしてカウンターへ戻る。

 

「さて」

 

椅子へ座る。

 

「今度こそ一杯――」

 

店主が震えながらグラスを差し出した。

 

「ありがとう」

 

一口。

 

「うん」

 

コブラは満足そうに頷く。

 

「やっぱり仕事の後の一杯は最高だ」

 

レディが近づく。

 

「まだ仕事は終わっていないわ」

 

「え?」

 

「私たちが捕まえに来たのはガルド・ヴェインよ」

 

「そうだった」

 

コブラは頭を掻いた。

 

「危うく忘れるところだったぜ」

 

その時。

 

「忘れてもらっては困るな」

 

低い声。

 

酒場の入口。

 

巨大な男が立っていた。

 

重装甲。

 

帝国軍由来と思われるブラスターライフル。

 

腰には複数の武器。

 

そして顔には古い傷。

 

レディが即座に認識する。

 

「コブラ」

 

「ああ」

 

ホログラムで見た顔。

 

ガルド・ヴェイン。

 

本人だった。

 

「探す手間が省けたな」

 

コブラは椅子に座ったまま笑った。

 

ガルドは周囲を見る。

 

二十人以上の賞金稼ぎ。

 

全員が倒されている。

 

「……お前一人でやったのか?」

 

「いや」

 

コブラはグラスを持ち上げる。

 

「こいつら全員、床で昼寝したかったらしい」

 

ガルドがブラスターを構えた。

 

「面白い男だ」

 

「よく言われる」

 

「お前の首には莫大な賞金が懸かっている」

 

「らしいな」

 

「俺がお前を捕まえれば――」

 

コブラが遮る。

 

「ちょっと待った」

 

「あ?」

 

「お前にも賞金が懸かってる」

 

コブラは自分を指差す。

 

「俺にも賞金が懸かってる」

 

次にガルドを指す。

 

「つまり賞金首同士だ」

 

ニヤリ。

 

「ここは公平にジャンケンで決めないか?」

 

「ふざけるな!」

 

ガルドが発砲。

 

コブラが椅子ごと後ろへ倒れる。

 

ブラスターが頭上を通過。

 

「やっぱり駄目か!」

 

床を転がりながら左腕へ手を伸ばす。

 

義手を外す。

 

ガルドが叫ぶ。

 

「その左腕か!」

 

「有名になったもんだ」

 

「未知の兵器を持っていると聞いた!」

 

ガルドが大型ブラスターを連射する。

 

コブラは柱の陰へ飛び込む。

 

「そいつを手に入れれば、賞金以上の価値になる!」

 

「売り物じゃないぜ!」

 

「なら腕ごと奪う!」

 

一瞬。

 

コブラの笑みが消えた。

 

「…………」

 

柱から顔を出す。

 

「そいつは困る」

 

サイコガンを構える。

 

「左腕がなくなると、美女を抱く時に不便だからな」

 

ガルドが再び発砲。

 

コブラが走る。

 

テーブルを蹴る。

 

跳躍。

 

空中で身体を捻る。

 

サイコガン。

 

発射。

 

ガルドが装甲で受ける。

 

「効かん!」

 

「へえ」

 

コブラが着地する。

 

「頑丈だ」

 

ガルドが笑う。

 

「帝国軍特殊部隊用の装甲だ!」

 

「帝国軍ってのは何でも残してるんだな」

 

再びサイコガン。

 

今度はガルド本人ではない。

 

天井。

 

「外したぞ!」

 

「そうかな?」

 

光線が軌道を変える。

 

背後。

 

ガルドが気づく。

 

「なっ――!」

 

背中に装着されていた装甲制御ユニットを撃ち抜いた。

 

火花。

 

ガルドの装甲が停止する。

 

「動かない!?」

 

「便利な装甲には欠点がある」

 

コブラが近づく。

 

「便利すぎることさ」

 

ガルドが必死にブラスターを向ける。

 

サイコガン。

 

一発。

 

ブラスターが吹き飛ぶ。

 

「終わりだ」

 

「くっ……!」

 

コブラはガルドの目の前に立った。

 

「安心しな」

 

義手を戻す。

 

「生け捕りの方が賞金が高い」

 

ガルドの顔が引きつる。

 

「貴様……本当に賞金稼ぎなのか?」

 

「違うぜ」

 

コブラは笑った。

 

「宇宙海賊だ」

 

 

数時間後。

 

タートル号。

 

ガルド・ヴェインを賞金稼ぎギルドへ引き渡したコブラは、大量のクレジットを手に入れていた。

 

「大儲けだ!」

 

「そうね」

 

レディが端末を見る。

 

「ただし悪い知らせもあるわ」

 

「聞きたくないね」

 

「あなたの賞金額が上がった」

 

「…………」

 

コブラの笑顔が固まる。

 

「なんで?」

 

「今日、二十人以上の賞金稼ぎを返り討ちにしたでしょう?」

 

「誰も傷つけちゃいないぜ」

 

「問題はそこじゃないわ」

 

新たな手配書。

 

宇宙海賊コブラ。

 

危険度、更新。

 

賞金額、増額。

 

コブラはしばらく画面を見つめる。

 

そして。

 

「レディ」

 

「何?」

 

「一つ気づいた」

 

「何かしら?」

 

「このまま俺の賞金が上がり続けたら――」

 

真剣な顔。

 

「俺自身を捕まえて賞金を貰えば、一番儲かるんじゃないか?」

 

「誰があなたを捕まえるの?」

 

「俺」

 

「どうやって?」

 

「…………」

 

コブラは腕を組む。

 

三秒。

 

五秒。

 

「難問だな」

 

レディが呆れたように首を振った。

 

タートル号が宇宙へ飛び出す。

 

だが。

 

二人はまだ知らなかった。

 

コブラの新しい手配情報が、既に銀河各地の賞金稼ぎへ送信されていたことを。

 

そして、その情報を受け取った者の中には――

 

腕利きとして知られる賞金稼ぎたちもいた。

 

コブラの顔写真。

 

莫大な賞金。

 

そして注意事項。

 

左腕に正体不明の高出力兵器を隠している可能性あり。

 

宇宙海賊を狩るため。

 

銀河中から賞金稼ぎたちが動き始める。

 

当の本人は――

 

「次は南国みたいな惑星がいいな」

 

まるで気づいていなかった。

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