仲間へのダメージを肩代わりすることしかできない魔法少女の日記 作:新人魔法少女
◯月×日
魔法少女になった。
よく分からないけれど、私には魔法少女としての適性があったみたいだ。
職員さんには「こんなに適性が高い子は久しぶりに見た」と言われた。その時は舞い上がりそうになったけど、冷静に考えてみれば、私なんかが天才であるはずがない。お世辞だったんだろう。
私の能力は、まだはっきりしていない。少なくとも攻撃型の能力じゃないっぽい。職員さんの見立てでは発動条件が限られたサポート型らしい。
結局、今日だけでは自分の能力の詳細は分からなかった。
とはいえ魔法少女になったことは確かだ。
誰かの助けになれるような、そんな魔法少女を目指して頑張ってみよう。
◯月×日
私の能力がついに分かった。職員さんの予想通りサポート型だ。
だけど、ちょっと癖が強い。職員さんも頭を悩ませていた。
能力の名前は『肩代わり』。近くにいる魔法少女が負った怪我を自分のものにすることができるというもの。
職員さんはあまり使わない方が良いと言っていた。だけど、私はこれを使っていこうと思う。
私一人が無理をすれば、他の魔法少女たちが気兼ねなく戦える。それなら、私は喜んで犠牲になってやる。
聞いた話によると、私のような魔法少女になったばかりの人間は、すぐに現場に出ることはないらしい。
それまではしばらく、この能力のより良い使い方を職員さんたちと考えていこう。
◯月×日
どうやら、私の体は他の人たちより治癒能力が高いみたいだ。
もともとす魔法少女は変身前と比べて回復が早いのだけど、私はそれにも増して怪我の治りが早い。
このことが分かった後、「これなら能力を積極的に使うことができる」と職員さんに言ったら、ちょっと微妙な顔をされた。
それ以外では攻撃魔法にチャレンジした。でもこっちは絶望的に才能がなかったこともあってこれといった成果はなかった。
やっぱり、私にサポート以外の才能はないんだと思う。
私を最初に褒めてくれた職員さんは、サポート以外の道も探してくれている。でもいくらやったところで私が攻撃魔法を使っている未来は想像できそうにない。
明日からは一旦、サポート用の魔法だけを練習してみることにした。
そういえば、私もそろそろ現場に出ることができるようになる。初めはペアを組むことが多いらしいけど、私の相方はどんな子なんだろう?
◯月×日
私の相方が決まった。ショートカットがよく似合う、王子様系の子だった。名前は優というらしい。
話すのはドキドキしたけれど、いざ話してみると案外王子様っていうわけでもなくて、そのギャップが結構可愛い。
でもちょっと低めの声で「可愛いね」って言われるとさすがに恥ずかしい。ごめん、やっぱり王子様だった。
そんな優ちゃんの戦い方は、魔法で作り出した剣で怪異を切り伏せるというもの。剣道をやっていたらしくて、めっちゃカッコいい。
ただ、真正面から怪異と戦うからその分、怪我をするリスクも大きい。それもあって、私がペアになったのだ。
優ちゃんには私の能力を『治癒』と説明した。実際、怪我の治りが早いのとサポートの適性があるのは本当だからたぶんバレないと思う。
訓練所で顔合わせをしたあとは、二人で個人的にスイーツを食べに行った。優ちゃんおすすめのお店で、めちゃくちゃ美味しかった。
魔法少女は、初めに組んだペアのまま活動することが多いと職員さんに聞いた。
まだ初めての戦いもしていない状態だけど、これから優ちゃんと仲良くなれたらいいな。
◯月×日
今日は優ちゃんとコンビネーションの確認をした。
私が怪異役の職員さんにデバフをかけて、動きが遅くなったところを優ちゃんが切りにいく。初めてにしてはなかなか良い連携だったんじゃないかな?
職員さんに「初めてとは思えない」とお墨付きをもらえた。心からの言葉だったらいいな。
それにしても優ちゃんがすごい。私は剣術については素人なのだけど、明らかに動きが洗練されている。
正直、私がいなくても一人で怪異を倒してしまいそうな勢いだった。
それを優ちゃんについ愚痴っちゃったら、私のサポートのおかげだって、真剣な顔で言ってくれた。
私にそんなことを言ってくれるのは、優ちゃんが初めてだった。
だから優ちゃんのその言葉が嬉しくて、情けないことにその場で泣いてしまった。
私の涙に戸惑いながらも優しく慰めてくれた優ちゃんは、さすがに王子様すぎる。
王子様扱いを嫌がっている気がするから、口には出さなかったけど。さすがにこれは天性の王子様だ。
その後はこの前も行ったお店にまた二人で行った。前回は控えめにしていたけど、あまりにも美味しいから今回はつい多く頼んじゃった。
優ちゃんにはそんなに食べられるのかって心配されたけど、実は私、結構食べれる方なのだ。今日は、三人前ぐらいのスイーツを食べた。
私が食べ終わった後、優ちゃんは目を丸くしていて面白かった。王子様っぽいのに意外と可愛いところもあるよね、優ちゃんって。
◯月×日
今日は、私たちの初陣だった。まだ怪異を相手にする予定はなかったんだけど、二人でお出かけしている時に怪異が発生したのだ。
ちょうど近くに魔法少女がいなかったこともあり、私たちに白羽の矢が立った。
急な初陣ではある。それでも、私と優ちゃんなら大丈夫。そんな根拠のない自信があった。
けれど、こういう時に限ってトラブルはつきもので。変身をして、怪異が発生した場所へと向かった私たちを待ち受けていたのは普通の怪異ではなかった。
そこにいたのは、鞭のような腕を持ったヒト型の怪異だった。明らかに普通とは違う、変異している怪異だ。
普通は、動物の形を模したりヘンテコな形をとったりする怪異。それが人を模しているということは、少なくとも一人は犠牲になっていることを表していた。
とはいえ、優ちゃん様様。私のデバフをものともしない怪異の攻撃を見事な剣技で捌いてくれる。
そんな中で私が活躍という活躍をしたのは、怪異が優ちゃんを縛り上げようとした時かな?
戦い始めてからずっと発動していた能力が、その時優ちゃんが負うはずだった傷を全て肩代わりしたのだ。
怪異の攻撃は思ったより痛いし、お腹が締め付けられて、息も結構苦しい。
だけど、それで優ちゃんを捕まえたと怪異が油断してくれて、実際にはなんのダメージも負っていない優ちゃんがトドメを刺してくれた。
自分は触れられていないのに、鞭のような手で締め付けられた感覚がお腹に残っていてちょっと気持ち悪い。
でも、これくらいなら全然耐えられる。明日からも頑張ろう。
初めて彼女を見た時、僕は、気づいたらどこかへ消えてしまいそう、そんな印象を抱いた。
例えるなら、病気がちで体の弱い令嬢というのが一番近いだろうか。
彼女の華奢な見た目が余計にそう思わせた。
とはいえ、無口っていうほどでもなくて、彼女と喋るのは結構楽しかった。
時折、自信のなさを見せることもあるけど、明るいし、これから一緒にやっていけそうだ。
「
「ふえっ!?」
「え、可愛い」
ちなみに、莉里花ちゃんのぴょこぴょこした動きが可愛いな、と思ってそれを伝えたら、すごい反応を見せてきた。
素でこれをやっているとしたら、さすがにちょっと可愛すぎる。
そのあとに二人で行ったスイーツ屋さんでは、パフェを頬張る姿がリスみたいでやっぱり可愛かった。
この子を見ていると癒される気がするし、能力が『治癒』なのもあながち無関係じゃないのかもしれない。
それから、莉里花ちゃんとは一緒に訓練をしたり、二人でお出かけをしたりした。
どんな時でも楽しそうにする彼女といると、自然と僕も笑顔になってしまう。
真剣な空気でピリピリしていても、彼女がいると空気が和らぐ。
李梨花ちゃんにしかできない、凄いことだ。
そんな訓練では、僕の考えていることが分かるのか一番欲しいときにちょうどバフをくれたり相手にデバフをかけたりしてくれる。
地味ではあるけど、僕からしたらめちゃくちゃ動きやすくて本当に助かった。
「……これ、優ちゃんだけで良くない?」
「っ、いやいや! そんなことない。僕がこんなに動けてるのは莉里花ちゃんのおかげだよ」
なのに、莉里花ちゃんは何故か自分がいらないんじゃないか、なんてことを考えていて。
僕は思わず、彼女の凄さを本人の目の前で熱弁してしまった。
もう恥ずかしいどころじゃない。
自分が耳まで真っ赤になっていることは容易に想像がついた。
そしたら、莉里花ちゃんは泣き出してしまって、どうやら、こんなことを言われるのは初めてだったらしい。
こんないい子なのに、感謝の言葉が一度も返ってこなかったなんて信じられない。
今までの分も含めて、僕は感謝をいっぱい伝えようと思う。
そんなこともあったりして、僕と莉里花ちゃんの仲はますます深まっていく。
訓練がなくても休日に二人で出かけたりすることも増えたし、これは親友と言ってもいいんじゃないか。
そういえば、こないだまで気づかなかったが、莉里花ちゃんはめちゃくちゃ食べる。
その小さな体のどこにあんな量の食べ物が入るのか、全く見当すらつかない。
そして、今日もまた二人で美味しいと噂のスイーツ屋さんに行こうとしていた時。
僕たちに、近くで怪異が発生したという知らせが舞い込んでくる。
どうやら、近くに僕たち以外の魔法少女がいないみたい。
完全に想定外の初陣になるけれど、何故か不安はなかった。
莉里花ちゃんの方を見ても緊張している様子は全く無くて、多分、僕たちの考えていることは一緒だったんだろう。
怪異は変異型で、決して侮れる相手じゃない。
それでも、莉里花ちゃんの的確なサポートで、怪異の攻撃を何とか捌けている。
それが変わったのは戦いが始まってから少しした、僕の油断からだった。
このままいけばいつか勝てる。
その慢心から鞭のような腕への対応を怠り、縛り上げられてしまったのだ。
「マズいッ!」
「大丈夫! そのまま行って!」
だけど、僕の後ろには莉里花ちゃんがいる。
かなりの強さで縛られているはずなのに、僕は
これが、莉里花ちゃんの『治癒』か。
凄いよ、そもそも傷がついていないみたいだ。
僕を縛り上げたことで、怪異は完全に油断している。
その隙を逃さず、剣を思いっきり振るう。
僕らの、勝ちだ。
「優ちゃん、ありがと〜」
「莉里花ちゃんも支援助かったよ」
「ええ〜、嬉しいなぁ」
終わった後は、二人でハイタッチをして喜びを分かち合う。
完璧なサポートをしてくれた莉里花ちゃんだけど、やっぱり疲れているのか、ちょっと手が震えている。
ということで、今日は打ち上げもすることなく、ここでお別れすることにした。
莉里花ちゃんは心配させまいと無理をするって最近わかったからね。
どうせなら二人で勝利の余韻を分かち合いたいというのが本音だけど、莉里花ちゃんに無理をさせるわけにはいかない。
二人の連携で怪異に勝てた。
今日は、それだけで十分だった。