評価もつけてくれると幸いです。
柴田美月は、何度目か分からないほど後ろを振り返った。
夕暮れに染まり始めた住宅街には、学校帰りの学生や買い物袋を提げた主婦の姿がちらほらと見える。車道を走る自動運転車のモーター音、遠くから聞こえてくる子供たちの声。いつもなら何も気にせず歩いている、ごく普通の帰り道だった。
けれど今日は、その『普通』が妙に薄っぺらく感じられた。
「……やっぱり、気のせいじゃない」
美月は眼鏡の位置を直し、小さく呟いた。
見えているわけではない。少なくとも、普通の意味では。
視界の端に何かが映ったと思って振り向いても、そこには誰もいない。電柱の陰にも、住宅の塀の向こうにも、不自然な人影はない。それなのに、彼女の持つ水晶眼だけが、周囲に漂う微かな異質さを捉え続けていた。
入学式の日、睦月綾人の傍らに見えた金髪の女性。そして彼の影に寄り添うように存在していた、髑髏の仮面をつけた男。
あれと似ている。けれど、同じではない。
綾人の近くにいた二人からは、確かに人間とは異なる気配を感じた。しかし恐怖は不思議なほど薄かった。特に髑髏の男は異様な外見とは裏腹に、綾人を守るような位置から動こうとしていなかった。
今、美月の周囲に漂っているものは違う。
もっと冷たい。自分という存在を遠くから観察し、何かを測っているような――。
「……っ」
背筋に悪寒が走り、美月は歩調を速めた。
その遥か後方。建物の屋上に、一つの影があった。
黒衣と白い髑髏の仮面。
気配遮断によって一般人の認識から完全に外れたそれは、第三陣営に召喚されたアサシン『百貌のハサン』、その人格の一つだった。
だが、美月を追っているのは一人ではない。一本向こうの路地には別の人格。美月がこれから進む交差点の先には、さらに別の人格。
そして周辺の建物の屋上にも、いくつもの目が配置されている。一人でありながら、一人ではない。それこそが百貌という英霊の最大の特異性だった。
狙いは現時点で美月の命ではない。マスターから与えられているのは観察。彼女の目がどの程度まで霊的存在を認識できるのか、それを確かめることだった。
だからこそ百貌は、あえてほんの僅かに存在感を漏らしていた。一般人なら決して気づかない。
魔法師であっても、通常なら違和感すら覚えない。
だが。
『……三度目だ』
一体の百貌が念話を送る。
『こちらを見た』
『偶然ではない』
『あの娘……我らを正確に認識しているわけではない。しかし、存在そのものは感知している』
複数の人格が、同じ結論へ辿り着く。
柴田美月。
英霊を見ることができる可能性を持った少女。聖杯戦争という秘匿されるべき戦いにおいて、それは決して無視できない存在だった。
『もう少し近づく』
一体が動いた。
屋上から音もなく降り、建物と建物の間へ消える。別の人格が美月の前方へ回り込み、さらに一体が退路を確認する。
徐々に美月を包囲する。ただし、まだ攻撃するためではない。あくまで逃走時の反応を見るため。
そのはずだった。
『――止まれ』
不意に、最も後方にいた人格から警告が飛んだ。
『何だ』
『誰かいる』
百貌たちの動きが、一瞬だけ止まる。
『どこだ』
『分からない』
その答えが返った瞬間、百貌たちの間に緊張が走った。分からない。それ自体が異常だった。
複数の人格を同時に展開し、それぞれが異なる角度から周囲を監視している。単独の暗殺者なら死角となる場所も、百貌にはほとんど存在しない。誰か一人が見落としても、別の人格が補う。
それなのに、声の正体が掴めなかった。
『いつからだ……?』
誰も答えられなかった。百貌が美月を観察していたように。いつの間にか、自分達もまた観察されていた。
「そこまでにしていただこう」
低く、静かな声がした。
百貌の一体が即座に振り向く。誰もいなかったはずの屋上にある給水設備の影から、ゆっくりと黒衣の男が姿を現した。
髑髏の仮面。細身ながら鍛え抜かれた長身。右腕には、布によって隠された異形。
百貌たちと同じ、暗殺者の頂点へ連なる名を持つ英霊。
「山の翁」
百貌の一人が呟いた。
その呼び名を聞き、呪腕のハサンは静かに目を細めた。
「その名を継ぎし者同士、余計な名乗りは不要だ」
『いつから気づいていた』
「さて」
呪腕はわずかに首を傾けた。
「それを敵に教える暗殺者がおられるかな?」
その声音は穏やかだった。挑発ですらない。だが、それゆえに百貌は理解した。
完全に後手に回った。
百貌は美月だけを見ていたわけではない。周囲に護衛がいないか、魔法による監視が行われていないか、第三者が接近していないか。あらゆる可能性を警戒していた。
それにも関わらず、この男はその網を抜けた。同じハサンだからこそ、その意味が分かる。
気配遮断。歩法。呼吸。視線。敵の意識の死角へ滑り込む技術。
どれか一つではない。暗殺者として積み重ねてきた全てによって、呪腕は百貌の索敵を突破していた。
『散開』
指示と同時に、百貌たちが動く。
屋上。路地。道路脇。それぞれ別方向へ展開して呪腕を中心に包囲を組み直し、美月からは距離を取る。
標的の観察より、目の前の同業者への対処を優先したのだ。その判断を見て、呪腕は内心で僅かに評価を改めた。
(やはり、愚かではない)。
己と同じ名を継いだ者。百貌という性質ばかりに目を奪われれば、足元を掬われる。
呪腕が一歩、前へ出ようとした次の瞬間だった。
左右から二人の百貌が飛び込んだ。一人が上段。一人が下段。
時間差は殆どない。
呪腕は上体を僅かに逸らして最初の攻撃を躱し、もう一人の手首を掴む。そのまま身体を捻り、最初の百貌の進路へ投げ込んだ。
「っ!」
二つの身体が交錯する。
その隙間を縫うように、三本の投擲武器が飛来した。呪腕は黒衣を翻して身を沈める。一つが仮面のすぐ横を通過し、残る二つは屋上の床へ突き刺さった。
だが、その回避先に既に別の百貌がいる。
拳が迫る。呪腕は掌で受け流し、肘を押さえ、その勢いを殺さないまま相手の体勢を崩した。追撃はしない。背後からさらに二人が来ている。
振り向かずに跳ぶ。百貌たちの攻撃が空を切った。呪腕は給水設備の側面を蹴り、一気に屋上の端へ移動する。
『五人を同時に相手取ってなお、守勢を維持するか』
「数は確かに厄介ですな」
呪腕は淡々と答えた。
「しかし――」
姿が消えた。
『――!』
百貌の一体が背後を振り返るが、遅い。肩を掴まれ、重心を崩される。
「数が多いということは、それだけ互いの動きを阻害する可能性も増える」
呪腕は百貌を別の人格へ押し込み、そのまま死角へ潜り込んだ。
攻撃を受け、躱す。受け流しながら位置を変える。百貌同士の射線を重ねさせ、互いに攻撃できない状況を作る。
派手さなどない。一撃で敵を吹き飛ばす怪力も、街区を焼き払う宝具も使わない。
ただ、ひたすらに効率的だった。
暗殺者が暗殺者を殺すための戦い。
百貌は人数で盤面を支配しようとするに対して、呪腕は盤面そのものを狭める。
一人を盾にすれば、後ろの一人は攻撃できない。狭い通路へ入れば、同時に襲いかかれる人数は減る。屋上の段差を利用すれば、投擲攻撃の角度も限定できる。
力ではない。技術と経験。
そして何より、互いが互いの思考を知っている。
『右へ追い込め!』
百貌が展開を変える。それを見た呪腕の視線が僅かに動いた。
右。そこには屋上から隣の建物へ続く細い空間がある。
普通なら逃げ道。だからこそ罠。
「なるほど」
呪腕は敢えて右へ跳んだ。
『掛かった!』
死角から百貌が飛び出す。その瞬間、呪腕は身体を空中で捻った。
「そう思わせるのもまた、暗殺者の常套であろう」
伸ばされた腕を掴み、勢いを利用して相手を壁へ押さえ込む。直後、着地した呪腕の足元を狙って別の百貌が滑り込んでくる。
跳ばない。呪腕は逆に踏み込んだ。距離を潰す。
肩。肘。手首。
最小限の動きで相手の体勢を崩し、そのまま地面へ転がす。
『……強い』
百貌の一体が認めた。それは単純な霊基の出力差ではない。
同じハサン。同じ暗殺者。
だからこそ分かってしまう。
この男は、真正面から戦っているように見えて、一度として真正面から戦っていない。
常に相手の意識の外へ動く。常に相手が嫌がる位置を選ぶ。常に次の一手を限定させる。
暗殺とは、気づかれず背後から刃を突き立てることだけではない。敵が選べる未来を削り、最後に一つしか残らなくする。
そこへ刃を置いて待つ。
呪腕のハサンという英霊が積み重ねてきたものが、そのまま戦い方に現れていた。
だが、百貌もまたハサンである。
『ならば――散れ』
今度は包囲を解いた事に、呪腕の目が僅かに細くなる。
一人、二人、三人。百貌たちが別々の方向へ離脱していく。
戦闘から逃げたのではない。狙いを戻したのだ。
「……まさか!」
呪腕が振り返った先には、柴田美月。そのうち一体が、既に彼女の進行方向へ回り込んでいた。
呪腕一人を倒す必要はない。百貌の目的は柴田美月の能力を調べること。
ならば数という利点を最大限に活かし、一部が呪腕を拘束している間に別の人格が標的へ接触すればいい。
合理的な判断だった。
だが。
「悪いけど」
百貌の一体が路地を抜けた瞬間。そこに、一人の少年が立っていた。
「そっちは通行止めだ」
第一高校の制服。黒髪。何処にでもいそうな高校生にしか見えない少年、睦月綾人。
百貌の動きが止まる。
いつからいた?
その疑問が浮かんだ時には、綾人の右手首にあるブレスレットが淡い光を放っていた。
「呪腕さんがあれだけ分かりやすく時間を稼いでくれてるんだ。俺まで遅刻したら格好つかないだろ」
『……第一陣営のマスター』
百貌の視線が鋭くなる。
「それで?柴田さんに何の用?」
声は穏やかだった。けれど、その立ち位置だけは決して譲らない。
百貌は綾人の背後を見る。数十メートル先にいる美月はまだこちらの存在を完全には認識していない。だが足を止め、不安そうに周囲を見回している。
ここで戦えば、確実に気づかれる。綾人もそれを理解していた。
「別に今此処で戦いたいわけじゃない。そっちもそうだろ?」
綾人の問い掛けに対し百貌からの返事はない。
「観察だけなら、今日のところは引いてくれないかな。こっちとしても、街中で英霊同士に暴れられると困るんだ」
『断れば?』
「全力で止める」
即答だった。声を荒らげることもない。殺気すらない。
それでも百貌は、目の前の少年から意識を逸らせなかった。
「柴田さんは聖杯戦争と関係ない。魔術師でもなければマスターでもないし、サーヴァントでもない。俺達の戦いに巻き込ませない」
その言葉には迷いがなかった。綾人は美月がなぜ英霊を視認できるのか、まだ正確には知らない。水晶眼について調べる必要もある。
だが、それは彼女が狙われて良い理由にはならない。
入学してまだ僅か。まともに話した回数だって多くない。それでも同じ学校の生徒であり、友人達と一緒に笑っていた少女だ。
綾人にとって、美月を守る理由はそれだけで十分だった。
『甘い』
「かもな」
綾人は肩を竦めた。
「それでも。甘いままで人を守れるなら、それで良いだろ」
その瞬間、百貌が動いた。綾人へではなく、横へ。建物の壁を蹴り、美月の方向へ抜ける。
「そうかよ」
綾人の姿が掻き消えた。百貌の目が見開かれる。
魔力放出ではない。サーヴァントの敏捷性でもない。現代魔法による速度干渉。
次の瞬間には、綾人が進路上にいた。
「言っただろ」
玩具箱が変形する。
ブレスレットから展開したそれが、一本の片刃の両手剣へ形を変えた。
ただし穂先は百貌へ向けない。刀身を地面へ突き立て、道を塞ぐ。
「通行止めだって」
百貌が急停止し、そして同時に悟った。この少年は、自分を倒そうとしていない。ただ美月から遠ざけようとしている。
殺すことではなく、守る事を優先している。
(厄介だ)
百貌がそう判断した、その時だった。
『主殿』
呪腕から綾人へ念話が届く。
『こちらは片付きました』
「早くない?」
『全てを倒したわけではございません。退かせただけです』
僅かに呆れたような気配が混ざった。
『それに、敵も我と同じハサン。こちらが時間を稼いでいることには途中で気づいておりましたゆえ』
「やっぱり?」
『ええ。ゆえに、そちらへ向かったのでしょう』
直後、百貌の背後に黒い影が降り立った。
綾人陣営のアサシン、呪腕のハサンである。
綾人が前、呪腕が後ろ。完全に挟まれた形となり、百貌は動きを止める。
しばし沈黙が続いた。
「退いて貰おうか。百貌」
呪腕が静かに告げる。
「同じハサンの名を背負った者を無益に討つ事は、我とて望むところではない」
『……それは情けか』
「まさか」
仮面の奥から、低い声が返る。
「暗殺者が情けだけで敵を逃がすとお思いか?」
百貌は沈黙した。
「今ここで貴殿らを追えば、我が主はあの娘の守りから離れねばならぬ。それは我らの目的に反する。貴殿らもまた、此処で我らと消耗する事が目的ではないはず」
敵の目的と自分たちの目的。双方を天秤に載せる。
感情ではなく、任務によって判断する。百貌にも、その理屈は理解できた。
『……我らを見逃したことを、後悔するぞ』
「そうであろうな」
呪腕は否定しなかった。
「されど」
僅かに身を低くする。ほんの一瞬。それだけで空気が変わった。
「次にあの娘へ害意を向けた時は、今日と同じようには参らんと思え」
百貌は答えない。やがて、その姿が闇へ溶けた。
別の場所に展開していた人格たちも、一つ、また一つと気配を消していく。
呪腕はすぐには動かなかった。
数秒から十数秒の間。目ではなく、暗殺者として培った感覚で周囲を探る。
「……撤退しましたな」
「追跡は?」
「ございませぬ」
「分かった」
そこで初めて、綾人は肩の力を抜いた。
『玩具箱』の形状をブレスレットへ戻す。
「助かったよ、呪腕さん」
「勿体なきお言葉」
「いや、本当に。俺だったら何人か見落としてたから」
「それぞれ役割が違うだけでございます」
呪腕は静かに首を振った。
「百貌は偵察において極めて厄介な相手。複数の人格を同時に展開されれば、我一人では全てを止めることは難しい。主が先回りしてくださったからこそ、守り切れました」
「そっか」
綾人は美月のいる方向を見る。彼女はまだ道の途中に立っていた。
しかも、こちらを見ている。
「……あ」
綾人の表情が固まる。
「どうされました」
「柴田さんと目が合った」
綾人の言葉に流石の呪腕が沈黙した。
「……我の姿は?」
「たぶん見えてる」
「…………」
「呪腕さん?」
「主よ」
「はい」
「我は暗殺者でございます」
「知ってる」
「気配遮断も有しております」
「うん」
「にも関わらず、あの娘には見えているので?」
「……たぶんね」
呪腕はしばらく黙った。
「些か、暗殺者としての自信を失いそうですな」
「そこは俺がフォローするところ?」
「出来れば」
あまりに真面目な声だったため、綾人は思わず笑いそうになる。だが、美月の方はそれどころではなかった。
「む、睦月君……?」
おそるおそる近づいてくる。
視線は綾人ではなく、その隣に立つ呪腕へ向いていた。
「その……隣にいる方って……」
綾人と呪腕は顔を見合わせる。
やはり間違いない。柴田美月は、気配遮断を使用しているサーヴァントすら視認出来る。
しかも先ほどまで百貌の存在も感じ取っていた。
第三陣営が彼女を調査していた理由。その一端が、はっきりした。
「……柴田さん」
「は、はい」
「今から言うこと、かなり変な話になるけど」
綾人は少しだけ困ったように笑った。
「たぶん君が見えてるもの、幻覚じゃないよ」
「……え?」
美月の目が大きくなる。綾人の隣で、呪腕は静かに頭を下げた。
「初めまして、柴田美月殿」
「しゃ、喋った!?」
美月が一歩後ずさる。その反応に、呪腕の肩がほんの僅かに落ちた。
「……やはり怖がられましたな」
「いや、呪腕さん。その仮面でいきなり喋ったら普通は驚くと思うよ」
「これは我が正装なのですが」
「そらは分かってるけど」
二人の妙に日常的なやり取りを前に、美月は完全に混乱していた。だが綾人は笑いながらも、心の奥では既に次のことを考えていた。
百貌は退いた。しかし諦めたわけではない。
むしろ今日の一件によって、第三陣営は確信したはずだ。
柴田美月は、サーヴァントを認識できる。そしてこちらが彼女を守ろうとしていることも知られた。
ならば、次は観察だけでは済まない可能性がある。美月を守るためには、ある程度の事情を話す必要がある。
だが聖杯戦争について全てを伝えれば、今度は彼女自身を戦いへ深く巻き込むことになる。
守るために遠ざけるのか。守るために真実を知らせるのか。
その境界は難しい。
綾人は少し考え込んで小さく息を吐いた。
「とりあえず、此処じゃ落ち着いて話せないな」
「え、えっと……睦月君?」
「送っていくよ。その間に説明する」
「説明って……?」
「そうだね……」
綾人は少し考え、隣の呪腕を見る。
「まずは、この人が幽霊じゃないってところから」
「我を基準に説明なさるので?」
「目の前にいるし、一番分かりやすいから」
「……承知しました」
三人が歩き始める。もっとも、周囲の一般人に見えているのは綾人と美月の二人だけだ。
美月は何度も呪腕を見ては、また綾人を見る。その度に呪腕が小さく会釈するものだから、ますます混乱している。
けれど綾人だけは一度、歩きながら振り返った。
夕暮れの街。もう百貌の気配はない。それでも油断はできない。
第三陣営。アサシンのサーヴァント、百貌のハサン。そして、まだ姿すら見せていないマスター。
これまでの聖杯戦争は、ギルガメッシュとエルキドゥの再会という例外を除けば、互いの存在を探り合う段階だった。
だが今日、初めて明確に別陣営のサーヴァント同士が目的を持って衝突した。
聖杯戦争は、静かに次の段階へ進み始めている。
そしてその最初の火種となった少女は、まだ自分がどれほど大きな戦いの入口に立っているのか知らない。
一方、街から離れた暗がり。撤退した百貌の一人が足を止めた。
『報告する』
遠く離れた主へ向け、念話を繋ぐ。
『柴田美月。対象は我らの存在を感知可能。恐らく視認も可能』
一拍置く。
『そして睦月綾人は、対象を明確に保護している』
さらに付け加える。
『敵陣営アサシンを確認』
髑髏の仮面の奥で、その目が細められる。
『真名、呪腕のハサン』
同じ名を継いだ暗殺者。今度は互いに手の内を知った。次に遭遇した時、同じ戦い方は通じない。それは呪腕も分かっているだろう。
だからこそ。
『次は今日のようにはいかない』
夕闇の中、百貌の姿が消える。
『ハサン・サッバーハ』。
同じ称号を背負いながら、異なる在り方を選んだ二人の暗殺者。
その戦いは、まだ始まったばかりだった。
前回のギルガメッシュvsエルキドゥの様なド派手な戦闘ではなく、アサシン同士による静かな戦闘にしました。
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