タイトルのネタ切れが発生したので分割した三話分の名称を統一することにしました。
下手に法則設定しているせいで新しいタイトル考えるのにも苦労してしまいこの体たらく……無念。
旅に出よう!
……あ。ごめん、言い忘れてた。
ただいま、かぐや。
で、とにかく聞いてくれ。僕達は今こそ盛大に旅に出るべきだ。
前に僕の夢を話しただろう? それに君の目的のためにも、もっと世界のことを知るべきだと思うんだよ。
今までは僕が廻った時のついでに動くくらいで、僕達の意思で大きく動いたことはまだない。
もと光る竹を直す技術。
未来のあの子につながる情報。
やちよを見つける手掛かり。
どれも重要な一手を打つことができていない。
時間の問題なのかもしれないけど、ただ待つのは僕達の性には合わないでしょ?
だからさ、行こうよかぐや。
せっかくの旅路だ、楽しいものをたくさん見に行こう。
「ほっほっほ、急げや急げ」
場所は変わり、ツクヨミ。
エネルギー補給を終えた僕はログインし、目的地に向かって急いで歩みを進める。
今日ここに来たのはもちろんKASSEN……ではなく、人と待ち合わせをしているからだ。既にメッセージは送っており、このあたりで落ち合う予定なのだが……。
『キャー♡!!』
「お、あちらですね」
明確な場所は決まってないが、どこにいるかはすぐにわかる。
なにせ彼らはツクヨミの人気者。歓声が上がる方向へ行けば、自然と会えるのだから。
「お」
「来たか」
「やっほー」
「やぁやぁブラックオニキスの皆様方、大変お待たせいたしました」
歩いた先、軽い人混みの向こう側。
そこでファンとの交流を深めていた三人がこちらに気づく。声をかけられたことで彼らのファンもこちらを見てきたので、いつもより大袈裟な口調とポーズで挨拶をした。
「悪い、予定が迫っててな。……また会おうぜ、子ウサギ共」
「じゃあな」
「ばいばーい」
中心に立つ赤髪の鬼男――帝アキラがそう言ってウィンクをする。絶叫とまではいかないが確かな熱狂を感じる歓声を尻目に、乃依と雷を含めた三人は僕の正面まで歩いてきた。
今回の切っ掛けは乃依で、彼が今朝方僕にDMを送ってきたのが始まりだ。内容としては『帝が一度会いたいってさ~』程度の事しか書かれていなかったが……まぁ、流石に建前だと察することはできている。
割とプライベートな話になるだろう。そうなると今も彼らの背後ではしゃいでいるファンたちに聞かせるわけにもいかないと思い、そちらの方に一瞬視線を向けてから、三人に戻して口を開く。
「場所を変えましょうか。人気の少ない……いや、いない場所が好ましい」
「そうだな。……よし、今回誘ったのは俺達だ」
アキラはそう言いつつ、画面を操作して僕に招待を送る。
「来いよ、俺らの城へ案内するぜ?」
「おぉ、身に余る光栄でありますな!」
城、詰まる所ギルドルームか。
それは好都合。そう思った僕は招待を受け、その場から姿を消した。
「――ここが」
光が収まって目を開けると、薄暗いが雰囲気のある空間に出る。
初めて見る空間。そう思っていたのだが、歩き出そうとした矢先に視界に映る物体を見て、ここが既知の場所だということに気がついた。
「ビリヤード台……あぁ、なるほど。取材を受けていたのはこの部屋だったのですね?」
「専用の部屋まで作っちゃってさ、凝り性だよねー」
「必要なんだよ、夢見せるためにはな」
「最適な演出を目指す場合、一から作った方が早い時が多いですからなぁ」
そう話しつつ、周囲を見渡して軽く確認作業を行う。
……うん、録音やら盗聴やらの介入はなさそうだな。とは言え聞かれる可能性もなくはない、話す内容は選ぶ必要がありそうだ。
考えを纏め、振り返って改めて三人と向き合う。そしてこちらから切り出すため、僕は口を開いた。
「では改めて……ブラックオニキスの皆様、お久しゅうございます。アキラ殿と雷殿はSENGOKU以来、乃依殿はSETSUNA以来ですねぇ」
「あぁ……」
「そうだな」
「今日は来てくれてありがとー」
「いえいえ、望まれれば舞台に立つのが道化の本懐。一向にかまいませんとも」
「粗茶だ」
「おぉ、ありがとうございます」
まず改めてあいさつを交わし、本題に入るために中心に立つアキラに視線を向ける。
彼は返事をしてくれたものの、僅かながら普段の快活さがない。これは機嫌が悪いというよりはなにを言うべきなのかいまだに迷っている、とでも言った感じだろうか。
乃依から話しかけられたのでそう返しつつ、雷から渡された粗茶(リアルで飲んだら絶対にやばい濃さの緑茶っぽい液体)を一口飲む。このまま彼の準備が整うのを待つ方がいいのだが、残念なことにお互い多忙の身だ。とりあえず話していく中でまとまればいいと思い、アキラの方を向いて問いかけることにした。
「ではアキラ殿、本日はこの道化に何の御用でしょうか?」
「わかっているくせによく言うぜ」
「はてさて、なんのことやら」
そう返すが、アキラは微笑を浮かべつつも真剣なまなざしでこちらを見る。
化かし合いは無用と判断したのだろう。人差し指でこちらを指差し、一息ついて口を開いた。
「じゃあド直球に行こうか。……この間の竹取合戦はどーも、してやられたよ」
「お楽しみいただけましたらこれ幸い。……と言っても、私が教えたのは勝ち方ではないのですが」
「そうなんだ?」
「えぇ」
乃依からの問いに答えつつ、当時の事を思い出す。
「かぐや殿の強みはあの自由奔放な突破力と、奇想天外な発想力。なれば土台を整えるより、手札を増やす方法を知った方がより楽しくなる。そう判断したまで」
おかげで十二分に面白いものが見れた。……まぁ下手すれば、かぐや以外の2人の方が想定していない分驚いたのかもしれないけど。
「楽しくなる、か。ヤチヨカップの優勝を優先していたってわけ?」
「いえいえ、噛み合いですとも。私のKASSENにおける信条と此度の竹取合戦は、相性が良かったのです」
「なんだっけ……楽しむこと優先~みたいな感じ?」
「えぇ。勝って楽しむのではなく、楽しんで勝つ。これこそわが信条」
普段から掲げているとはいえ、僕のこれを知っている人はあまりいない。とは言え乃依が答えたそれは近く、意外だと思いながらも補足するために話を続ける。
「誰かを楽しませたいのなら、まず誰よりも自分が楽しまなくては」
「なるほどね。だがよく彩……Pがそれを許したもんだ」
「そこは真摯に説明いたしましたとも。イロP殿一人なら説得は難しかったでしょうが、そこはかぐや殿がいましたから」
「一緒に説得したって事?」
「ある意味ではそうなるのでしょうか? かぐや殿のおかげでイロP殿に起きた変化の兆し、それがあったからこそ真意まで話そうと思ったわけで」
あくまであの状況だから話した、と言うことを伝えるために話す。
アキラはその内容を聞き、数秒だけ黙って思考していた。やがて一息つき、いつもの笑顔で口を開いた。
「オッケー、とりあえず事情は分かったわ」
「それならなにより。……とは言え意外ですな、アキラ殿が共演相手の事情を探るというのは」
「うぐっ」
「だよねー?」
「らしくはないな」
容赦のない身内からの追撃に、お前ら……と片手で頭を抱えるアキラ。
とは言えこれに違和感を抱いているのも事実。ブラックオニキス……と言うよりアキラの性格的に、相手の事情を汲んでも意図を探ろうとはしないはず。なのに先程からこちら、と言うより僕の事情を探ろうとしている節を感じる。
気になることが? ……なんて思うほど、生憎と僕は鈍感じゃない。
化かし合いはやめても、その真意を隠そうと考えているのなら。まずはその皮をはがさなければ話はできないってものだ。
「不安ですか?」
「なにが」
「大切なお身内が、どこぞと知れぬ者と関わっていることが」
「…………」
その場の空気が変わる。
チャラけた雰囲気は消え去り、互いに無言で見つめ合う。
先程から感じていた違和感の正体、それはアキラから感じる警戒心だ。僕と彼の関わりと言えばSENGOKUに他ならないのだが、中身としてはただのプレイヤー同士。こちらが基本野良で競技シーンにも出ていないので、戦う機会もそこまで多いわけではない。僕のプレイヤーとしての知名度はあれど、その内容は御察しの通りなわけで。
そんな僕が彩葉、ひいてはかぐやの近くにいることが気になっているのだろう。それにこの様子だと乃依からも話を聞いていそうだ。となると今回だけの関わりじゃないことも知っている、と言う前提で動いた方が都合がよさそうだ。
「あの会話を聞く限り、あまり連絡を取り合ってはいなかったご様子。かぐや殿と一緒に遊んでいる様子を見て安心したはいいが、その背後に私が見えた。……こんな所でしょう?」
「…………」
「答えず結構、そもそもご家庭の事情ですので深入りはいたしません。……とは言えこのまま警戒されるのも、私の本意と異なってしまう」
そう話しつつ、アキラに歩み寄る。
態と彼の射程に収まる位置まで接近し、そこで立ち止まって両手を広げて意思を示す。
「少し言葉を改めましょう、私に聞きたいことは何でしょうか?」
「…………」
……どうやら思っていたよりも僕のことを警戒しているらしい。
真剣な表情でこちらから目をそらさず、なにを聞くべきかと頭の中で吟味するアキラ。
「そうだな、じゃあ――――」
「はーい、あの子達との出会いは?」
「――乃依」
アキラの言葉を遮り、片手をあげて乃依が質問する。
先程まではアキラの様子を見ていたようだが、足踏みしないよう手助けに入ることにしたらしい。
「……あのな、それをあっさり答えるわけ」
「イロP殿は時間帯が合うのか、以前よりSENGOKUで度々遊んでおりました。かぐや殿とはふとした出来事で話すことになり、まだ初心者でしたので道案内をしたところイロP殿と合流。その後は主にかぐや殿を通じて交流が続いておりますな」
「なっ」
「へ~、そうだったんだ。じゃあさ、ライブの演出とかももしかしてやってる?」
「始まりは私ですね。贔屓のお店と初期設定を教えましたが、それ以降はお二人の努力の結晶です」
普通に答える僕に対し、アキラは驚いた様子でこちらを見る。……その様子、やっぱり変に勘ぐっていたか。
こればっかりは僕自身のキャラクター性の問題なのでしょうがないと割り切るしかない。こればかりは乃依の一手に感謝だな。
「帝さ~、気になるならさっさと聞いちゃえばいいじゃん」
「いや、でもよ……」
「まぁ信じる信じないはあなた方次第。とは言え、判断する材料は多ければ多いほど良いと思いますよ?」
「……ま、それもそうだな」
頬をかき、気持ちを切り替えるために一息つくアキラ。
そこからは雰囲気が変わり、彼らの質問に答えていく時間となった。
「確認だ、イロPの本名は?」
「知っております。理由は言わずもがなですが……アキラ殿もあの時さらっとおっしゃっていましたよね?」
「あれ聞こえてたのか?……念のためアーカイブでは音声切ってるよ」
「二人とはいつも遊んでいるのか?」
「たまに、と言うのが正しいでしょうな。何かあれば集まりますが、そうでなければ私は基本KASSENに入り浸っておりますし」
「あの時いた【まみまみ】って子も友達なのか?」
「然り。その他にもう一人、【ROKA】という方がおられます。そのお二人はイロP殿と特に親交が深いリアルでのご友人で、かぐや殿とも仲睦まじいとか」
「そっか。……それはよかった」
「一応聞こう。……好みのタイプは?」
「ド直球ですな? ……そうですね。強き意思を持つ者、そういった存在は本当に輝かせ甲斐がある」
「は~い、ケカタって何歳?」
「全部合わせて四捨五入すると8000歳になります」
「何を合わせてどこで四捨五入したんだよ……」
「好きな都市伝説は?」
「以前聞いたのですが、どうやらこの世全ての服になれるUMAがいたとか。持ち主が最も欲している服に変化し、魅了することで操ってくるらしいですよ」
「なるほど、試し甲斐があるな」
「二人とも、まじめな顔でトンチキな事言うのやめてくれる?」
「いつの間に乃依とフレンドになった?」
「帝?」
「SETSUNAで偶然戦った後、話をするための連絡手段確保のためになりました」
「話って?」
「それは答えられませぬ。秘密の花園に入りたいのなら、主の許可が必要ですな」
「……乃依?」
「……ダメ」
「――おっと」
突然眼前に画面が開き、念のため設定していたアラームが鳴り出す。
「失礼、本日はもう幕引きの様でして」
「っと、もうこんな時間か」
何分経っていたのだろうか。道中どう考えても脇道にそれたような気もするが、こうして長いこと僕達四人は言葉を重ねることができた。
「アキラ殿、乃依殿、雷殿。本日はお招きいただきありがとうございました。良き時間を過ごし、よりあなた方のことを理解することができたこと、心より感謝いたします」
時間切れが来てしまったので中断することになってしまったが、それさえなければもっといろんなことを話すことができたかもしれない。
そう思いつつ、深々とお辞儀をして感謝の意を述べる。妙に格式ばった言い方にアキラは苦笑しつつ、今日の内容を思い返しながら口を開いた。
「結局、お前のことはよくわからないままだったけどな。……理解するためにも、今度一戦やっていくか?」
「SETSUNAならば大歓迎!……と、言いたいところですが。申し訳ないことに忙しい身の上でして。しばらく先になってしまうかと」
「そうなの?」
「えぇ、リアルの事情でしばらくはログイン自体が不定期になってしまいます。おかげコラボライブの現地席も取れず、配信枠で見るしかなさそうで」
事情を説明し、やれやれといった様子で両手を横に向ける。
このことは以前のプチお疲れ様会でかぐや達にも説明してある。チケットを用意してくれていた二人には申し訳なかったのだが、絶対に当日見ることを伝えたことで何とかお姫様の機嫌を維持することはできていたと思う。
……まぁ実際の事情は違うのだが。とは言えツクヨミにあまりいられないのは本当の事なので、こう説明するのがスムーズだろう。
「ですのでこの度はご容赦を。ですが我々は共にKASSENプレイヤー。いつかは必ずぶつかり合います故、その時十分に確かめればよいのです」
「……わかったよ」
まぁいい、そう言いつつ右手をこちらに差し出すアキラ。それに手を重ねて握手をすると、先程よりは幾分か柔らかい表情でこちらを見る。
「色々言いたいことはあるが……とりあえず、竹取合戦は楽しかったぜ」
「それは重畳」
「あと、妹のサポートしてくれてサンキューな」
「私が何もせずとも、イロP殿は自力でゴールに辿り着いていたでしょう。私がしたのは、その道中を照らしただけ」
言葉を交わす。
そしてそのまま笑顔を崩さず、握る手に力を込めてアキラはこう言った。
「ま、お兄ちゃんは絶対認めないけどな!」
「出たよシスコン」
「重傷だな」
「うーん、容赦なし」
「――ん?」
まどろみから覚め、目を開ける。
……マズイ、知らぬ間に寝落ちしていたか。
数日前にあった黒鬼との会合を思い出しつつ、体を起こして周囲を見渡す。
「さて、と」
記憶の中の風景を照らし合わせつつ、起き上がって歩みを進める。
どこまでも色鮮やかな街並み。しかしそこに人の気配は少なく……いや、何も感じない。
誰もいない街並みを進み、広場に出る。そして体を浮かせ、一際大きな建造物の屋根上まで登る。そしてそこから周囲を見渡し、画面を操作して状況を確認する。
「……よし、大丈夫そうだな」
そう呟き、画面を閉じてゆっくりと目も閉じた。
「――ふぅ」
目を開き、ログアウトできたことを確認。
ベッドから体を起こし、目からスマコンを外して大きく伸びをする。長時間入り浸っていた分、凝り固まっている感覚を感じていた。
「イテテ……流石にやりすぎたかな」
本当の期日はまだ先なのだが、気づけば微調整を重ねる日々。
緊張しているのかもしれない。そう思っているとどこか窮屈に感じてしまい、移動してベランダへ続く窓を開ける。
「…………」
頬に風を感じる。
夜のおかげで涼しい……とまではいかないのが温暖化を感じてしまう所。とは言え心地よいのは間違いないので、何度か深呼吸して気分を切り替える。
そして頭上からわずかな光を感じたのでその方向へ視線を向け、その先に映る光景を見つめて呟いた。
「有明月、か」
その中でもかなり年を重ねているそれは、その姿をほぼ視認できず。
それが運命を決める日が近づいていることを、嫌でも実感させにきていた。
今の僕の状態って、〇〇〇は知ってるんだっけ?
知らない? ……そっか。
あいつが言うにはさ、僕って割と限界っぽいんだよ。
本来行われるべき初期化作業をしてこなかったせいで、魂が大分歪んでいるんだと。あっちと違って僕はただの人間、そういう想定をされていないからそうなるのもおかしくはないってことなのかな。
……え、なんで直さないのかって?
そりゃ、あいつなら簡単に直せるだろうね。僕としてもこうなった見当はもう着いているし、おそらく可能だとは思う。
でもそれじゃダメなんだ。
歪だからこそ、今の僕は成り立っている。直してしまった時、僕は僕のままじゃなくなる可能性が高い。それだけは避けなければならないんだよ。
健全なる魂は、健全なる精神と健全なる肉体に宿る。
これは格言を弄った漫画の台詞なんだけど、すごく面白いと思うんだよ。
この二つが揃ってこそ人間として正しく存在できる。元の格言とあまり意味は変わらないけど、より分かりやすく理解できる。
……でもさ、僕は少しだけ違うとも思うんだ。
器の状態で魂は変化しない。むしろ、魂に合わせて器の方が変化するんじゃないかってさ。
人は魂で生きている。
……うん、そう信じる方が今の僕にはしっくり来る。
え、もう休憩終わり?
うだうだ言ってないで特訓しろって?
疲れて指一本動かせないからこうして空を見上げている状態なのに?
あ~…………今日も空が青い。
※試し甲斐とは
某雑誌の黒鬼特集から小ネタ導入。あそこの雷ハッチャケまくってて超好き。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
ゲームenjoy勢零堵さん、赤坂灘崎さん。評価ありがとうございます!
ナメナメコさん。感想ありがとうございます!
よ、ようやくコラボライブに入れる……。
おまけのつもりで書き始めた日常話がこんなボリュームになるとは思いませんでした。おかげで前後の話も追加で考えなきゃいけなかったしえらいこっちゃ。