文章構成改造工事も無事?に終わり、間に合ったので投稿します。
これまでの話全部が本文に統一され、活動報告にて行っていた後書きも移転させました。活動報告の方は23日になり次第削除する予定です。
また各話の後書きで簡単な補足も行えるようになったので、前に比べて多少は読みやすくなっていると幸いです。
では、どうぞ。
何とか泣いている君を慰め、話を聞く。
結論から言えば、やはり僕は僕らしい。
なんでこんなことになったのかはわからないし、次があるかの保証もない。
それなら、まずは始めなきゃ。
そこから残った人生のすべてを、君との交流に費やした。
村をめぐり、交流を重ね、人を探し。
様々な地を、ウミウシの君を連れて歩んだ。
ただ結局、『やちよ』なる人物の行方は手がかりすらつかめかった。
君の願いは叶えれなかったけど。
一緒にいる間は涙を流すことはほぼなく、たくさん笑う姿を見れた。
それだけでも、こうして次の機会をもらえたことを嬉しく思っていた。
だがそんな日が過ぎ去るのはあっという間で。
今度は突然ではなく、徐々に体が動かなくなってきた。
君はまた悲しそうな顔をしていたが、僕はあまり不安に感じていなかった。
なんとなくだけどわかったんだ、こんなことになった切っ掛けを。
僕はただ、君を独りにしたくなかったんだよ。
だからちょっとだけ待っていて。
君と決めた合言葉で、また君の名前を呼ぶからさ。
「なるほどなるほど。飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進したものの、頂にはいまだ届かず。さてどうしたものかと思ってみれば、大きな獲物があちらから。負けたら結婚を条件に、ブラックオニキスの皆様とKASSENコラボを行うことになったと」
「そゆこと!」
いや、どゆこと??
ヤチヨカップも終盤に入り、乃依と戦った次の日。
今日もSETSUNAで遊ぼうと思ってログインした所かぐやからDMが届いており、その内容を見てみれば『SENGOKU教えて!』とのこと。
突然なんだ?
そう思ったのもつかの間。トップニュース欄にとんでもない記事が見え、急いで状況を確認するために連絡して今に至るわけだ。
「いきなり竹取合戦が始まったかと思えば、そういうことでしたか」
「そう。で、絶対に勝ちたいから教えてよ!」
「無論!……と、言いたい所ですが」
「?」
もちろん、断る理由はない。
……けれど、それより先に聞かなくちゃいけないことがある。
「なぜイロP殿に聞かないので?」
彩葉は小遣い稼ぎの感覚でKASSENをしており、本格的にやり込んでいるわけではない。……が、逆に言えば小遣い稼ぎ程度のふじゅ~が貰えるほどの腕前をしているという事だ。
確かに僕の主戦場である以上、知識も腕前も彩葉には負けていないという自負はある。とは言え普段のかぐやなら、まず彩葉に教えてもらおうとしているはずだ。
なのにこうして僕からの返信を待っていた。そこに違和感を感じた僕は、こうして聞いてみることにした。
「えっと……彩葉最近忙しくてさ! 時間なさそうだし、あんま無理させたくないし……」
「ふむふむ」
「大丈夫! ちゃんとこの事話したし、そしたら『いってらっしゃい』って言ってたから!」
「…………ほう?」
かぐやはそう言いつつ、両手を合わせながらも視線を泳がせる。そしてその後に続けられた言葉を聞き、抱いていた違和感が逆に膨れ上がるのを感じていた。
……いや、違和感じゃない。これは予感だ。
あれだ、嫌なすれ違いが起きてる気がする。
このまま何もせずに話を進めた場合、あまり良い事が起きなさそうな気がする。
――よし、ならばここはいっちょ一肌脱ぐとしますか。
「かぐや殿は偉いですね」
「え?」
そう言いながら画面を操作しつつ腰を落とし、目線を合わせる。
こちらの気持ちが通じるよう、正面から。
悪意がないことを示すために、できる限り柔らかい声で話しかける。
「常に真っすぐ、全力で。素直でひたむきなその姿勢、とても素晴らしいものです」
「う、うん」
「そして私は道化。皆を笑顔にするため、様々な演出や演技を日々修めております」
「うん?」
「道化とは、造り物の笑顔に敏感な生き物なのです。……かぐや殿、本当はイロP殿に教わりたかったのでしょう?」
両指で自分の口角を上げつつ、ゆっくりと言葉にして伝える。
何度か話したことで分かったのだが、かぐやという少女は根っこの所ではとても純粋だ。
最近考えが変わった……と言うより成長したのだろうが、まだ加減をわかっていない。
思いやりは大切だが、自分の気持ちに蓋をするのが正解というわけでもないのだから。
「……え、と」
「しかし最近何かが起こり、イロP殿に遠慮しているご様子。……今は大丈夫なので?」
「あ、うん。もう治ったって」
「なるほど、なるほど。……とは言え無理をしてほしくない、これも間違いなく」
「うん」
……本当に、この子は。
「なら大丈夫。私が指南役に回れば、イロP殿の負担も少なくなりましょう。これならば、共に歩むことができるはずです」
「…………」
「ですから、かぐや殿。この道化に、動く意味を教えてくださりませんか?」
そう言いながら片膝をつき、胸に手を当てて目を閉じる。
数秒の沈黙の後、かぐやはゆっくりと口を開いた。
「……彩葉に、KASSEN教えてほしい」
「はい」
「彩葉に、笑ってほしい」
「えぇ」
「彩葉と、もっと一緒に遊びたい!」
「委細承知!」
うまく引き出せたことに内心安堵したが、それをおくびにも出すわけにはいかない。
勢いよく立ち上がり、両手を広げて口を開く。
「このDO・KEKATA、力の限りを尽くさせていただきます!!」
「うん!」
「では早速イロP殿に連絡し、待ってる間はとりあえずKASSENで遊んでみますか?」
「……あ、でもどうしよう。彩葉には、おじさんに教えてもらうって言っちゃった」
これにて、まずかぐや側はクリア。
次に移るために画面を操作していると、かぐやが気付いたように声を上げて話しかけてくる。
「あぁ、それならば問題ないかと」
「?」
疑問符を浮かべるかぐやにそう返しつつ、開いた画面を彼女に見せる。
続いて彩葉を対処する必要があるのだが、同じ手は使えない。
同じように思いあった末にすれ違っているのだが、如何せん彼女は自分のことを騙しながら生活している。ゆっくり本音を引き出そうとしても、彼女は本気で大丈夫だと思ってしまっているのだ。これでは意味がない。
そんな彼女の本音を引き出す方法だが……まぁ、実はこっちの方が対処は簡単だったりする。
なにせ、特効薬が目の前にいるのだから。
「まずこちらをご覧ください」
「これ、おじさんのフレンドリスト?……あ、彩葉もいる」
そう、私の数少ないフレンドリストの中に『イロP』の文字があるのだ。
これは前に初めてかぐやのライブを見に行った際、僕とフレンドになっていることを知った彩葉からの提案でなっていた。
……まぁこれ、どう考えても彼女のことが心配だったからだと思うんだよね。多少の交流があるとはいえ、僕の普段はあんなだし。
「以前お会いした際になりまして。そしてこちら、先程の会話の音声データになります」
「え?」
「はいこれをドーン!」
「えーー!?」
それを説明しつつ、先程画面を操作した際に録音しておいた音声データを見せる。
そしてかぐやがそれを理解するよりも早く、彩葉宛に『共に学びましょう』と題名をつけて爆速でメッセージを送信した。
「ちょ、え、なんで!?」
「あなた方は強い絆で結ばれていますが、思う余りすれ違ってしまっているのですよ。こういう時は、一直線に思いをぶつけるのが一番」
ワタワタしながら手を伸ばし、送信を取り消させようとするかぐや。しかしそれは僕のメニュー画面であり、操作できるはずもない。
やがて諦め服を掴んで揺らしてくるが、笑いながらそれをスルー。
とは言え意図を理解してもらうためにも言っておく必要はあるので、説明のために言葉を続ける。
「イロP殿はイロP殿で自分を騙してしまっていますから。かぐや殿の素直な気持ちを聞いてこそ、ようやく自ら動けるでしょう」
「…………な~んか」
「?」
こちらを見上げるかぐやを見つつ、両手を横に出しながらやれやれといった様相で説明する。
ただそれを見た彼女はどこか意外そうな表情をし、何度か瞬きながら僕の顔を見つめる。そしてしばらく見つめた後、若干ジト目になりながら口を開いた。
「彩葉のこと、よく知ってるんだね」
「なんとなくですよ。年の功というやつです」
「好きなの?」
「どうなんでしょうね」
「?」
それっぽい返事を返しつつ、この後彼女達に教える内容について脳内で計画を建てていく。
……あれだけ本音を言った方が良いと言いながら、当の僕ははぐらかすのだから世話がない。
言えるかそんなもん。
そんな権利、とっくの昔に失ってるんだから。
「も~、いつも余計なこと言って~!」
「だって~!」
「だってじゃない~!」
「と、言うわけで改めまして。本日共に策を練らせていただきます、DO・KEKATAと申します」
「お~、本物だ。まみまみで~す、よろしくお願いしま~す」
時は流れ……と、言うほどでもなく。
正直何度か遊んでいればそのうち来るかと思っていたのだが、なんと一試合やってフィードバックを行っている間に彩葉はログインしてきた。
今回は色々設定を弄れるよう、カスタムマッチでやっている。
そのためあらかじめ他二人には許可を出し、SENGOKUの待機場で話し込んでいたのだが、息を切らせながら入ってきた彼女は挨拶もそこそこにかぐやを連れ去ってその場から離れたわけで。
やいのやいのと言い合う様子を遠目から眺めていた所、当日彼女達と一緒に戦うアバターネーム『まみまみ』が合流。せっかくなので挨拶をバッチリ決めたのだが、彼女は朗らかな雰囲気でぺちぺちと拍手をしながらそう答えてくれた。
……ん、本物?
記憶が正しければ、彼女はグルメインフルエンサーのはず。SENGOKUで対面した記憶もなく、ライバーでもない僕の事なんて知らないと思っていたのだが、そういうわけではないらしい。
「私の事をご存じで?」
「ちょっとだけ。帝様との試合凄かったですよ~」
「あぁ、なるほど」
大分前のことだが、偶然フルパのブラックオニキスとランクマッチで戦ったことがある。
その時僕は全力を尽くし、大立ち回りを演じていた。ありがたいことにその試合はファンの間でもたびたび話題になるほどの盛り上がりを提供できていたとは聞いている。
どうやらその時の試合を向こう側視点で見ていたらしく、故に僕のことを知っていたのだろう。
ブラックオニキスのファンか……なら、事前知識は必要ないかな。
「彩葉ぁ、お願い……」
「ッ、グ……」
「彩葉……一緒に遊ぼ?」
「~~~~ッ!!」
「うむ、勝負あり」
「ノックアウト~」
そうこうしているうちに、向こうの決着も付いたようで。
すっごい表情をした彩葉が葛藤の後、崩れ落ちるのが見える。
もしこれがSETSUNAだったら、頭上に【K.O.】の文字が表示されていたことだろう。
「やぁやぁ、無事終わったようで何よりです」
「イェイ!」
「イェイじゃないわ!……あの、今日はありがとうございます」
「いえいえ。……此度のお相手はプロゲーマー。まともにぶつかれば、十中八九敗れるでしょう」
無事話し合いも終わり。三人とも準備ができたようなので、本来の目的を開始する。
まず必要なのは、現状の認識だ。これに対しかぐやは負けない! と張り切っているようだが、彩葉は不安そうに目を伏せる。
「ならばやることは、今回にその一二を持って来ること。幸い相手はブラックオニキス、私だからこそ話せることもあります」
「なんで?」
「無論、彼らと私は大きく違う。……が、合致している点もありまして」
それ即ち、【ミせて勝つ】こと。
彼らはファンのために夢を見せる。
私は私を見ている人達の笑顔のために生き様を魅せる。
人気や戦法はかけ離れているものの、この点において僕達は合致しているのだ。
そして今回はそこを利用するつもりだ、一切の遠慮なく。
……とはいえそんなことを三人に伝える気は微塵もないし、彼ら以外に察させる気もないんだけど。
「では一先ず、皆さまの実力を確認させていただきましょう」
そう言いながら設定画面を開き、チームを振り分ける。
もちろん、ルールはSENGOKU。
基本ルールはそのままに、ある点のみ弄っていく。
「四人でやるってことは、2vs2?」
「いえいえ、本番戦うのはあなた達です。連携も重要な要素ですから、無論三人で組んでいただきますよ」
かぐやからの質問にそう返しつつ、設定を確認し終えてボタンを押す。
すると僕の身体が光り、反対陣営の待機場にワープする。すぐにかぐやにビデオ通話をつなぎ、お互いの顔が見えるように表示した。
「え、1vs3? 流石に舐めすぎじゃね?」
「お~、自信満々」
「まさかまさか、そこまで驕ってはおりません」
少なくともかぐやと彩葉の実力が判明している現在、そんな舐めプで戦える相手じゃないのはわかっている。
とは言えできる限り本番形式に近づけて実力を見たい。だからこその方法を考えていたのだが、ある意味僕にとっても都合のいい方法で手段を見つけることできた。
「仕掛けがあります。ですので始まっても通信は切らず、少々お待ちを」
「仕掛け?」
「……まさか」
お、彩葉は勘付いたかな?
そう思いつつ、開始ボタンを押す。
カウントダウンが始まり、0になると同時に開戦の法螺貝が鳴り響く。とは言え事前に伝えておいたのもあり、三人とも動かずに待ってくれていた。
「さて、基本ルールは一本勝負であること以外は本番そのままです。この通信が終わり次第、通常のSENGOKU通りに動いていただければ」
「で、結局どうすんの? 誰か連れてくるの?」
「これは秘密の特訓、誰かを呼んでは意味がないでしょう?」
「じゃ、どうやって……」
「「こうします」」
「うぇ?」
かぐやが言い終わる前に準備が整ったのを確認し、即座に起動する。
すると僕の身体がブレて、隣に全く同じ姿をした人物が現れた。
「誰かに頼めないのなら、私が三人分の働きをするまで」
「そんなわけでこちらの数値を弄り、
「代わりにこちらは追加で
話している間にも次が溜まったので、もう一人分身を生成する。
一人は日本刀を構え。
一人は鎖鎌を手に持ち。
一人は苦無を大量に抱えている。
本来はアサシン職で同時使用できる武器なのだが、今回はブラックオニキスを意識してそれぞれ特化させることにしている。流石に本業の彼らには及ばないが、今の彼女たちにとってはちょうどいいだろう。
「「「…………」」」
「「「では、始めましょうか」」」
三人が絶句しているのを笑顔でスルーし、通信を切ることで開戦の狼煙を上げた。
――うぉ~、やってやらぁ~!――
――とんでも罠だらけ~!?――
「おぉ、悲惨飛散」
戦況は進み、やぐら戦。
しかし攻撃範囲内に入る前に歩みを止め、振り向きながら刀を振るう。それは迫ってきていたブーメランを弾き飛ばし、空中でそれをキャッチした彩葉が地面に降り立った。
「やぁ、イロP殿」
「……あれ、もしかしなくてもマニュアル操作ですよね?」
「無論」
「うっわぁ……」
僕の返答を聞き、先程予想がついていた彩葉は顔を青ざめさせる。
アサシン職の
他からは見分けがつかない分身を生成し、撃破された際に任意のデバフを付与することができるスキルだ。
一見強力そうに見えるこのスキルだが、実際の所あまり人気がない。
なぜなら実質二人分を操作する必要があり、オート操作にもできるのだが、それだとどうしても稚拙になってしまうからだ。
マニュアル操作でやるということは、自身も含めた二人分の行動を常にイメージするということ。
キーマウ操作の頃ならともかく、より精密な動きが再現可能なVR機器を利用したイメージ操作が主流の現代。オート操作では本物との動きが違いすぎて即座に見破られる上、本物そっくりの分身操作を行うことは至難を通り越して無謀の領域だった。
……そう、無謀の領域
「分身のマニュアル同時操作。……いつ見ても、どれが本物かわかりません」
「イロP殿には既知の内容。かぐや殿やまみまみ殿が驚いてくれただけでも、思いついた甲斐があるというもの!」
「いや、三人操作は流石に私も驚いてますけど!?」
「ハッハッハ!」
一先ず狙い通りに驚いてくれたことを喜びつつ、改めて彩葉を正面から見据える。
――おわ~!?――
――のわ~!?――
ちなみに、向こう側は大分面白い状況になっている。
あっちで戦っているのは矢を苦無で代用した遠距離型と、設置型の罠を主軸にした支援型。駒沢兄弟を意識した分身だ。
で、これが本当に相性が良い。
無理やり遠距離型に近づこうとすれば設置罠が火を噴き、罠を踏まないよう足を止めた瞬間に射撃の雨が降る。
これを突破するには、相手の罠地帯を攻略しなければならない。やり方はいくつかあるのだが、今回は対策を思いついてもらうというよりは、厄介さを体感してもらうつもりだ。
「向こうは向こうで順調そのもの。では、こちらも――――」
「あ、えと……その前に」
「おや?」
正直な話、彩葉の実力はよく知ってる。
なにせ他二人とは違い、何度も戦ってきた間柄だ。本来は実力はとっくに把握しているのだが、だからと言って手を抜く理由にもならない。
なので早速始めようと思ったのだが、なんと彩葉から待ったがかけられる。意外な展開に少々驚いたのだが、彼女は彼女でそれを言うか迷っていたらしい。
何度か視線を彷徨わせ、やがて一息ついてこちらを見ながら口を開いた。
「あの、その節はご迷惑をおかけしました」
……あぁ、かぐやに声が届いていないか確認していたのか。
軽く会釈をしながら彩葉が話す内容を聞き、脳内で得心がいく。その表情から、僕がかぐやと行ったやり取りのことを気にしているのだろう。
「お気になさらず。もう体調は治ったので?」
「へ?……あ、はい。もう大丈夫です」
「ならば重畳。……あぁもちろん、聞いた事は墓まで持っていくのでご安心を」
内心ホッとしつつ、今後のために自分の意見を伝えておく。
正直な所イロPの本名が彩葉であることは最初から知っているし、それ以前に何度もかぐやの口から聞いている。
最初こそ諫めていたが、途中からは逆に突っ込むのも野暮かと思い黙っていた。今回の件もあったし、ここではっきりと明言しておいた方がいいだろう。
「アハハ……ありがとうございます」
「で、聞きたいことがあるのでしょう?」
「はい。……方針を、聞きたくて」
「なるほど」
まぁそりゃそうか。
かぐやは現在、自身のゲームセンスだけで戦っている状態。基礎から教えることこそ、確実な一歩だと思っているのだろう。
「本来なら、基礎の立ち回りとかを教えた方がいいのでしょうな。しかしかぐや殿の強み、それはあの自由奔放な発想力です」
「……発想力」
「下手に常套手段を植え付けない方が、突飛な一手を生み出せるかもしれません。普通のランクマならいずれ対策されて終わりでしょうが……」
「……プロ相手の一発勝負なら」
「その通り。なので敢えて土台を固めず、世界を広げようと思っております」
こちらの思惑を理解してくれたようで、彩葉はその先を言葉にする。それに僕は頷きつつ、得物を構える。
そろそろこちらも始めないと、かぐや達に勘付かれそうだ。その想いを彼女も感じたのだろう、同じように得物を構える。
「そういう事だったんですね。……じゃあ、ここからは遠慮なく」
「えぇ。……いざ!」
同時に走り出し、互いに振り上げた得物を大きく振り下ろした。
そんなわけで何度か実戦形式で試合を行い、その都度フィードバックと称した感想会を繰り返した。
その中でガチガチの対策や戦法が生まれたわけではなかったが、十分に彼女達のSENGOKUにおける世界を広げる一助にはなれたらしい。
いやー、かぐやにねだられて今まで使ってきた構成を片っ端から引っ張り出してきた甲斐があったってものだ。どんな色物ビルド出しても喜んでくれるし、彩葉やまみまみはいいリアクションしてくれるし。実にやりがいがあった。
そしてなにより成果として一番重要なのは、三人での連携。お互いに考えていることが分かるようになれば、より滑らかな連携が取れる。まだ完壁というわけではないが、十分に目にもの見せてやれる程度には教えることができたと思う。
これならきっと、たくさんの人々の感情を震わせる神戦になるはずだ。
『てか真美、大丈夫?』
『……ダメだ、起きない』
『えぇーー!?』
そして訪れる、運命の決戦日。
「あっちゃ~…………」
そして僕はそれを、観客席から半笑いで見つめることしかできなかった。
ようやく完成した。
彼女が何度も歌ってくれたあの歌。
あれを基に僕が音を作り、彼女が改めて歌詞をつけた一曲。
遠い記憶の彼方にあるそれは参考にするにも途方もない手間がかかったが、どうしても必要だったらしい。
あの大喧嘩した翌日。
手伝えることはないかと聞いた僕に対してすごく気まずそうに答えていたが、まあそれはお互い様ということで。
完成した曲を彼女に送り、パソコンの電源を落とす。
ここからは、基本的に連絡をとることはなくなるだろう。
……覚悟を決めていたとはいえ、流石にちょっとキツイものがあるな。
気分転換に外に出て歩くと、真っ青な空と分厚い入道雲が頭上に広がっているのが見える。
夏真っ盛りの炎天下。
この先の行動方針を考えながら信号が変わるのを待つ。
……そうだな。
せっかくだ、あの子が帰ったら続きを始めよう。
他にも話を聞いたり、サッカーに付き合ったりしよう。
今まで欠かしてきたつもりはなかったけど、十分だとも思っていない。
時間ができるんだ。
今まで足りていなかった分、しっかり付き合っていこう。
……ん、なんか妙に通知が鳴っているような?
時間帯を考えると、時間を忘れて作曲した僕に対する奥さんからの鬼電ではない。
じゃあ誰が?
そう考えつつスマホを取り出し、内容を確認しようとしたその瞬間。
大きな警告音が聞こえ、目の前にその光景は飛び込んできた。
心より先に、身体が動く。
持っていたスマホを落とし、全力で前に向かって走る。
そして車道に飛び出た子供を反対側に向け、思いきり突き飛ばした。
……あぁ、これはやった。
視界の端に迫る車と、その先に待つ結末を悟る。
ギリギリで気づけ。
ギリギリ間に合い。
どう足掻いても車の進路方向からは逃げ切れそうになかった。
……なんてことだ、そういうことか。
最悪だ、なんでこの瞬間まで気づけなかったんだ。
当たり前だ、あの二人の仲が悪くなるわけがない。
現状悪化するわけがない。
前に感じていたこの予想は当たっていた。
――あの子にとっての試練は、今この瞬間から始まるらしい。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
えー……はい、そういうことです。
本編中音沙汰がなかった必須タグ【憑依】はこういう理由でした。主人公が廻ってきた人生の中で、今の一個手前が彼だったんですね。
なのでこの話までの間、ずっとあの姿の主人公が動いていました。あそこに至るまでのお話は、後々別の所で語られる予定です。
そして本文への物語統一工事も無事終了。
私は一話あたり5000文字を一つの目安としているのですが、こうしてみると大部分がオーバーしていて驚きました。そら思ったより長いって言われるわな……。
ではまた。
ご縁がありましたら、次話でお会いしましょう!