八千代に響け、この魂   作:zelga

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UA1000突破、お気に入り10突破感謝!

結構読んでくれている人が多くてありがたい限りです。
これからも頑張っていきますので、何卒よろしくお願いします。





6:『アイを歌って』

 

 

 

 

 

聞いてくれよ、さっき面白い話を聞いたんだ。

 

輪廻転生、って知ってる?

例の別大陸から来たっていう爺さんに教わったんだけど。

 

ちゃんとは知らない?

……へぇ、ちょっと意外。

 

まあ超ざっくり言えば、死んだら魂となって裁判を受け、その生での行いによって次に生きる世界が決まるって話らしい。

そしてその世界は六つあり、吾……僕達の生きる世は上から二番目なんだってさ。

 

それがどうしたのか、って?

 

いやさ、ふと気になったんだよ。

今の僕はどんな状態なんだろうって。

 

何度も廻ってきたけれど、その全てがこの世界だ。

それに裁判は本来長い時間がかかるって話なんだけど……君から聞く限りだと、僕はそれを一切受けてないってことになる。

そして本来なら浄化されて全部消えるはずなのに、こうして全部持ってくることもできている。

 

この話が嘘なのか、僕が特別なのか。

これが分かるのは一体いつになるのやら。

 

……とまぁこんな事を、息抜きとして考えてたってわけ。

 

ま、その癖記憶が戻る瞬間は毎回違うんだけど。

 

……え? あぁ、ごめん、ごめんって!

まだそんな引きずっているとは思わなかったんだ。

 

僕だってまさか、今際の際まで思い出せないなんて事になるとは思わなかったんだよ。

 

でもまぁその事もわかったわけだし、次からは多少僕がいなくても不安には…………。

 

ごめん、言い方が悪かった。

だから涙ぐみながら僕の頭の上で跳ねないでくれ。

 

はい、この話は終わり。

もっと楽しい話をしよう、ね?

 

僕は涙に弱いんだよ。

特に君の場合は、どうにかしなきゃって困ってしまう。

 

 

 

ほら、君は笑っている方が良く似合うんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世紀の竹取合戦、ブラックオニキスvsかぐやいろPちゃんねる。

 

 宣戦と求婚を同時に行い、始まる前から大きな盛り上がりを見せていたKASSEN企画。

 

 

「う~む……」

 

 

 ブラックオニキス陣営、その開始陣地。

 

 まずは先制の狼煙を上げた帝アキラ率いるブラックオニキスだったが、その大将たる彼はどこか腑に落ちない表情で考え込んでいた。

 

 

「ん~~……?」

「どうしたのさ?」

 

 

 その様子を見た乃依が声をかけるが、アキラは頬杖をついて生返事を返す。

 

 今回の内容は、SENGOKUルールで行われる三本勝負。先に二勝したチームが勝利となる。

 

 その一本目。ブラックオニキスはすべてのレーンに1人ずつ送る作戦【トライデント】で挑んだ。本来人数不利を負うリスクの方が高く、所謂舐めプとも取られる戦法なのだが、彼らはそれを実力で覆す。

 

 結果から言うと敵チーム全員を落としながらこちらは全員生存という、完勝に近い内容で終えていた。

 

 そんな素晴らしい幕開けだったというのに、彼は素直に喜べずにいた。

 

 

(な~んか、動きの解釈がズレているような……?)

 

 

 その対象は、推しであるかぐや。

 

 彼が考える彼女の戦い方とは、センスに振り切った一直線タイプだ。その予想は大方正解しており、事実先程の戦闘ではその点を見抜いて撃破している。

 

 

(……あの時、かぐやちゃんは明らかに何かしようとしていた)

 

 

 しかし、最後の瞬間。結果的にそのまま倒されたものの、あの場面でかぐやはこちらの動きに対応しようとしていた。

 

 それは彼女自身のセンスが光った、直感に任せた行動。……と言えば簡単だが、アキラはそれだけではないように感じていた。

 

 

(研究してきたんか?……の割には、戦法が定まっていないんよな)

 

 

 確かに試合前に挨拶した結果、相手チームに一人欠員が出るというハプニングが起きている。そこはやちよが参戦するという形でカバーできたものの、本来立てていた作戦が瓦解している可能性はある。

 

 が、それすらも彼にとって解釈違い。

 ……いや、そもそもの前提が違うのかもしれない。

 

 彼女達だけで、この戦に備えてきたという前提が。

 

 

(コーチングを受けた? 誰や?)

 

 

 ヤチヨは例外として、あの中で一番KASSENが上手いのは彩葉だ。

 

 実の妹である彼女とは子供の頃に度々一緒にゲームをしており、その実力は折り紙付きだと思っている。正体に気づいた後に様子を確認した際も、変わらず光るセンスを持っていると感じていた。

 

 

(ちゃうな、彩葉やない。俺達……特に俺のことをよう知っとる感覚がする)

 

 

 しかし違う、彩葉ではない。

 

 そうアキラは判断した。

 

 細かく言うと、彩葉がKASSENを教えてもかぐやはああならないと思ったのだ。

 

 ゲームの遊び方ではなく、ゲームの楽しみ方を教えるやり方。そんな順番で、彼女が教えるとは思えなかった。

 

 ひたすらに手札を増やし、その中で最も輝く選択肢を取る。

 己の我を通すだけではなく、相手も舞台に引き込んで演出に加える。

 敵、味方、観客。その全てを対象に、何かするかもしれないという期待感で満たしていく。

 

 そんなことを狙ってしでかす人物を、アキラは朧気ながらも一人だけ思い浮かべることができていた。

 

 

「で、どうすんのさ?」

「……あぁ、そうだな。次もこのままでいこう」

「は~い」

「油断は禁物だ」

「わかってるって」

 

 

 とは言え、推測の域は出ず。

 

 再び乃依が声をかけてきた事で思考を中断し、アキラは手短に次の作戦を伝える。内容としては変更なし。元から相手が対応できるまで、擦り続けていく方針だった。

 

 伝え終わった後、ふと自分の足元を見る。

 

 時間は昼設定のため、視線の先には影が見える。それを見つめていると頭の中に浮上していた一人の道化の影が重なり、彼は静かに呟いた。

 

 

 

 

 

「推しと妹に、悪い男の影が見える」

「何言ってんの?」

「大丈夫か?」

 

 

 わずか数分とは言え。

 

 アキラは残り時間を、駒沢兄弟から冷ややかな目を向けられながら過ごすこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――一方その頃、かぐや達一行は。

 

 

「で、どうだった?」

「帝速すぎ!!」

「さいですか」

「……でも~」

「?」

 

「いいこと思いついちゃったんだよね~。ふっふっふ……」

「わぁ、わっるいお顔」

「…………」

 

 

 まるで悪役のような笑みを浮かべて含み笑いをするかぐやを見て、彩葉はほんのちょっぴりだけコーチングを受けたことを後悔するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――なるほど、そう来ましたか」

 

 

 二本目が終わり、思わずそう呟く。

 

 結果から言えば、かぐや達の勝利だ。

 

 トライデントを継続するブラックオニキスに対し、かぐや達も同じように展開。先程とは違って彩葉から攻撃を仕掛け、アキラと交戦を開始する。

 

 ここで彼は合流するかぐやへの反撃に備えていたのだが、なんとそれはブラフ。ゲーム開始時や復活時に運んでくれるレプトケファルス。それにかぐやは騎乗し、ハンマーのブースト機能を使って一気に反対側に移動した。

 

 そしてヤチヨと戦う乃依に奇襲を仕掛けて撃破し、そのまま二人がかりで雷も倒してやぐらを占拠。アキラもやぐらを占拠したが彩葉からの足止めが効いて陣地に間に合わず、そのまま大将落としをヤチヨが叩きこむことで決着したわけだ。

 

 ……いやまぁ、確かにある程度まで高度を上げれば雑兵からの迎撃はなくなる。けどそんなの、開始時や復活時に誤ってダメージを受けないための仕様のはずだ。まさかとは思うが、昨日のカスタムでマップ確認した時にはもう思いついていたのか?

 

 とまぁこの結果を見れば、どうやら僕の教え方は間違いではなかったらしい。

 

 一先ずそれにホッとしつつ、最終試合の開始を待つつもりで待機していたのだが―――――。

 

 

「ッ、……おやおや」

 

 

 どうやら結末を見届けることはできないらしい。

 

 網(・)に反応があった。

 

 今回は向こうも事を荒立てないようにするためか、かなり慎重に侵入してきている。これなら余程の警戒状態にでもなっていない限り、運営側が気付くことはないだろう。……まぁそもそも、彼女は気づいても動かないと予測しているのだが。

 

 とは言え生憎だが、僕は用事がある。偶然だがせっかくの機会だ、みすみす逃すつもりはない。

 

 

「終わり次第賛辞を送りたかったのですが。……吉報を待つのも一興、ということで」

 

 

 そう考えた僕は席を立ち、会場から離れるために踵を返そうとする。

 

 ただその際に正面の大画面を見ると、かぐやとハイタッチした後に彩葉を巻き込み、三人で手をつないでグルグル回っている様子が映っていた。

 

 

「……よかったね」

 

 

 まさかの展開だったが、結果として例の日より早く彩葉達と同じ舞台で輝いている。

 

 まみまみには悪いのだが。僕はどうやら、これはこれでよかったと心のどこかで思っていたらしい。

 

 本当に楽しそうに笑う彼女をもっと見ていたいのだけれど、これってアーカイブとか残るよな?

 監視している間にもライブ配信で試合を見ることはできる。これならもっと――――

 

 

 

 

 

「っと、いけません」

 

 

 思考が戻りつつあるの自覚し、目を閉じて息を整える。

 

 何度か深呼吸を繰り返し、再び目を開いた時にはいつもの微笑を浮かべる道化の姿になっており。

 

 そのまま画面を操作し、設定してある地点にワープする形で会場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

「真美、どうしたの?」

「……いや、なんでもないよ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『試合も終盤戦! 互いにやぐらは占拠済み。天守の攻防でヤチヨ、雷、乃依の三名が同士討ちの末に残機を使い果たして退場!』

 

 

 ずっと、憧れていた。

 ずっと、敵わないと思っていた。

 ずっと、届かないと思っていた。

 

 

『勝利の行方は、生き残った3人に委ねられた!』

 

「なんでこっちに? 中央(ミドル)から天守攻めりゃ勝ちだったじゃん」

「ブラックオニキスはな、皆に夢見せなきゃいけねーんだよ」

「……あっそ」

 

 

 家を出る前から。

 ツクヨミで活動を始めてから。

 私がヤチヨに支えてもらっている時から。

 

 その間もずっとずっと、あの人は腕を磨き続けてきた。

 

 

「おりゃああああ!!」

「ふっ!」

「ッ!」

 

 

 かぐやと一緒に攻め立てているのに、崩れる気配がない。

 

 練習の成果もあり、私達はかなり連携が取れるようになっている。それでも難なく対処され、拮抗を崩すには一歩届かない。

 

 状況を鑑みて、こっそり用意したあの手を使うのは無理。本来の私達の力だけで、帝アキラを――兄を突破しなければならないんだ。

 

 

「甘いって!」

「ぐ……ッ!」

 

 

 背後から攻撃するも防がれ、離脱のために出したワイヤー移動も先読みされて掴まり、投げ飛ばされる。

 

 壁に衝突し、地面に転がる。すぐに起き上がって正面を見ると、かぐやと対峙する姿が映る。

 

 

(上手だな……)

 

 

 これまでの攻防を通して、改めてそう思う。

 

 当たり前のことだ。なにせ兄は、ずっとこれをやっていたんだから。

 

 

「……勝てんわ」

「ぐぇッ」

 

 

 しみじみ呟いた直後、大振りを回避されたかぐやが勢い余って私の隣まで転がってくる。

 

 

「ちくしょ~……ヘヘッ」

「……あぁ」

 

 

 すぐに起き上がり、かぐやは相手を見据える。

 

 あれだけボコボコにされているのに、その笑顔に影が混じることはなく。目の前の相手をどう倒してやろうかと考え、全力で楽しんでいるのが伝わってくる。

 

 それを見た時。脳内にとある日の光景と、昨日のとある会話が思い浮かんできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――これはイロP殿にだけ伝えようかと――

 

――今回はあくまでコラボ配信。勝敗がそのまま、ヤチヨカップの結末に繋がるわけではありません――

 

 

 

 

 

 小さい頃、お兄ちゃんと一緒にやったゲーム。

 

 あまりにも強いボス相手に二人で挑み、何度も負け続けたあの戦い。

 

 お互いに言い合いながらも協力し、遂に倒したあの瞬間。

 

 とても嬉しくて、楽しかった。

 

 達成感に身を包まれ、お兄ちゃんと一緒に笑いあった。そんな日の光景を思い出す。

 

 

 

 

 

――故にあなたが目指すは勝って楽しむのではなく、楽しんで勝つこと――

 

――全力で、どうしようもなく、思いのままに!――

 

 

 

 

 

 この強敵を、どう攻略してやろうか。

 この状況を、どう打開してやろうか。

 この選択を、どう楽しんでやろうか。

 

 ……こんなことを考えたの、そういえばあの日以来かもしれないな。

 

 相手はプロゲーマー、帝アキラ。

 

 あの時のように……いや、それよりも強力なボス。私だけじゃ到底勝てない相手。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――最高ですよ? 誰も予想がつかないことをやってのけた時、皆がどれほど驚くかを想像するのは!――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 立ち上がり、かぐやと肩を並べてボス(お兄ちゃん)を見据える。その際一瞬だけ見つめ合い、それだけで意図も伝える。

 

 

 

 そう、相手はあの日と違って格上。

 

 でもこれは、あ(・)の(・)日(・)と(・)同(・)じ(・)な(・)ん(・)だ(・)。

 

 だってあの日と同じで、私は一人で戦っていないんだから。

 

 

「「でも(だが)、勝つ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『鬼あち~! 見事な連携により、かぐやいろPが起死回生の鬼退治~!!』

 

 

 ツクヨミ、その中央街。

 

 現在開かれている世紀の竹取合戦に注目が集まっている今、多くの神々が実況画面を見つめている。それに興味がない者たちも、各々の目的のために日常を謳歌している。

 

 

 

 

 

 ――そしてその様子を、僕は遥か上空から見下ろしていた。

 

 翼が生えているわけでもなく、列車のような乗り物によるサポートを受けているわけでもなく。

 

 あたかもそこにいるのが当たり前のように、上空で風を浴びながら佇んでいた。

 

 

「……御美事」

 

 

 視界に映る実況画面から、彩葉達がアキラを撃破した瞬間が映されている。

 

 その様子を見て賛辞の言葉を呟きつつ、視線をそらして主目的を再開する。

 

 

(違う)

 

 

 ズーム機能を応用し、誰の目にも止まらない位置から主要マップ全域を眺めていく。

 

 かれこれ始めて数十分が経過するが、未だに探し人は見つからない。

 

 

(違う)

 

 

 今日も今日とて、神々は己を表現する。

 

 誰もが自由に、誰もがのびのびと。

 

 

(違う)

 

 

 この自由奔放さは、人間だからこそ。

 

 侵入者は恐らくその辺りが不完全。その点でも見分けがつくかと期待していたのだが……。

 

 

【SIGNAL LOST】

「……駄目、か」

 

 

 視界の端にその表記が見え、目を閉じて失敗を悟る。

 

 今回接触するつもりはなく、事前に決めていた確認を前倒しできればと思っていた。

 

 しかしそこは流石のお相手。侵入及び退出をしたことは検知できたのだが、結局その姿を見ることすら叶わなかった。

 

 

「……一応、悪い可能性も想定するべきか」

 

 

 もし僕が探していることに気づいた場合はどうする?

 

 ……だからなんだって感じだな。結局見つけられなかったんだし、多分放置されるだろう。まだ警戒されるほどの脅威は見せていないのだから。

 

 なら実は見つけていて、見分けがついていない場合は?

 

 こっちはちょっとまずいかもしれない。この場合は前倒しがほぼ不可能になる。本格的に侵入を試みるあの日でないと、ツクヨミ外での活動なんて事をするはずがないのだから。

 

 

 

 

 

『彩葉が危なくなったら、かぐやが助ける!』

『かぐやがミスっても、私は置いてく~』

『なんでッ!?』

 

「フフッ。……と、流石に時間切れかな」

 

 

 そこまで考えていた時、再び視界内に映る配信画面から二人の会話が聞こえてくる。

 

 思わず吹き出してしまったが、同時に試合が最終盤に入っていることを察して地上に降りることにした。

 

 今こうして浮遊しているのも、彼女の意識があの試合に向いているからだ。試合が終わっていつものようにツクヨミ中を見た場合、彼女と同じように飛び回っている様子なんてすぐに感知されるだろう。そんな面倒を今ここで起こす気はない。

 

 

「よいしょっと。……さて、試合は決まりましたかね?」

 

 

 一分もしないうちに地面に降り立ち、意識を切り替えるために仮面をかぶる。

 

 そして街中にワープし、試合を最後まで見ようと画面に視線を向けた。

 

 

『帝復活、かぐやチーム側の天守閣に向います!』

『これは流石に、かぐやの方が早いか~!?』

 

 

 実況をしている忠犬オタ公と乙事照琴の声が聞こえ、どうやらかぐやがブラックオニキス側の天守閣まで攻め込んでいるらしい。

 

 撃破されたアキラも復活し、最速で移動する。そして到着と同時に奥の手(ウルト)を使って突っ込んでいくが、流石にこれは彼女の方が一歩先に届くはずだ。

 

 

『うぇ~い、勝ち確ぅ!』

 

 

 ハンマーを振りかぶり、勝利を確信するかぐや。

 

 

 

 

 

「あ」

『あ』

『あ?』

 

 

 ――そしてそのまま大将落としに触れる直前。

 

 彼女の足元が光ると同時に模様が浮かび上がった。

 

 そして光は爆ぜ、かぐやの全身を包み込む。

 

 ……設置型の爆発罠。これを仕掛けることができるのは、参加者の中で一人しかいない。

 

 

『あぁ~! 雷の地雷トラップー!』

「……終わった」

 

 

 思わず、手で目を覆って空を見上げる。

 

 そう言えば雷も雷で結構エンターテイナー気質なんだよな……。

 

 ここぞという場面、ここぞという展開でのみ輝く地雷。恐らく三本目が始まった時から置いておいたのだろう、なんという度胸だ。

 

 

『帝、急ぐ!』

 

 

 こうなった以上、大将落としは彩葉が打ち出すしかない。

 

 しかし彼女一人では突破力不足。今現在も奥の手(ウルト)を使用しているアキラの方が逆転の王手を撃つのは、誰の目に見ても明らかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは流石に…………ハイ??」

 

 

 思考が固まる。

 

 視線が画面に集中する。

 

 

 

 なぜならその先には、彩(・)葉(・)が(・)振(・)る(・)う(・)武(・)器(・)を(・)足(・)場(・)に(・)し(・)て(・)撃(・)ち(・)だ(・)さ(・)れ(・)る(・)彩(・)葉(・)の(・)姿(・)が(・)映(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)の(・)だ(・)か(・)ら(・)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『試合終了ー! いや~、見事な内容でした!』

 

『選手の皆様が戻ってくるまでの間、最後に何が起きたのかを振り返ってみましょう』

 

『帝選手を撃破したかぐや、いろPコンビ。雑兵(ミニオン)に対処しながら、鮮やかなコンビネーションでブラックオニキス側の天守閣に攻め込みます』

 

『残機が残っていたため、帝選手は時間で復活。彼もまた即座にかぐやチーム側の天守閣に向かいますが、流石に差がありました』

 

『先に辿り着いたのはもちろん、かぐやチーム! かぐや選手が雑兵(ミニオン)を薙ぎ払い、一足先に大将落としに辿り着く!』

 

『……までは良かったんですがね。なんとここで、雷選手の地雷トラップが炸裂。全く想像していない一撃をくらい、かぐや選手は退場!』

 

『すでに帝選手は天守閣にたどり着き、あわや逆転かと思われたその時! いろP選手がまさかの一手!』

 

『なんと今まで使っていなかった奥の手(ウルト)は分身! 本来操作がむずすぎて極一部の変態しかやらないマニュアル操作を駆使し、分身が全力で振り回す刀身の峰に足を乗せ、まるで弾丸のように撃ちだされます!』

 

『そして帝選手といろP選手、ほぼ同時に大将落としを発射! まさかまさかの同時撃墜に見えましたが……結果が出たようです』

 

 

 

『画面が表示する勝者の名は――――!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間が惜しい。

 

……とは言え見落としがあるとまずい。

指を動かす練習がてら、できるだけ簡潔に現状を纏めよう。

 

その一、爆速で記憶戻せた。

 

死ぬ気(死んだけど)で気合を入れたおかげか、すぐに記憶が戻った。

強いて問題を上げるなら戻った年齢が0歳であり、且つ捨て子スタートとかいうウルトラハードな展開だったということくらいだ。

あいつらいなかったら普通に詰んでいた。持つべきは事情を知っている特別な友人だと心から思う。

 

その二、舞台の土台の準備が整った。

 

僕だけじゃ絶対に無理だった、サンキュー協力者。

なんでも日本で長年使われていたスパコンが代替わりしたらしく、その一部を入手することができたらしい。……これだけの数、よく揃えられたものだ。

スペックを確認したが、これなら十分。

今から始められるんだ、絶対に間に合わせてみせる。

 

現状の僕が把握できていることはこんな感じだ。

 

知覚は元より掴めていた物がより明確になっただけであり、未だ確信には至っていない。これは結局の所、例の日を待つしかないのだろう。

 

そして、これが書けるようになるまでにかかった五年間で起きたこともある。

 

ツクヨミが生まれ、運営として月見ヤチヨの姿があった。

 

色々思うところはある。

……が、今それをここで吐き出しても意味がない。

 

重要なのは、ツクヨミが始まったということだ。

 

あの時聞いた状況から好転するとは考えづらい。

それなら彼女は定期的に、調整のため休眠状態になる必要があるはず。

 

狙うはその時だ。

 

 

 

時間帯を探り、タイミングを見極め。

 

彼女に気づかれずに、誰よりも彼女の傍にいたあいつに接触しなければならない。

 

 

 

 

 




※原作KASSENとの差異
全体的に彩葉&かぐやにバフ。
基本的な流れはそのままだが、二本目で駒沢兄弟撃破。三本目でヤチヨがアキラと、彩葉&かぐやが駒沢兄弟と相打ちになって残機を減らしてから原作映画の流れになっている想定。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

竹取合戦まで書いておいて何なんですけど、これ書いている内容ってちゃんと伝わっているんですかね?
実は私の脳内で自己補完していて、初見で読んだ場合訳わかんないパターンになっているんじゃないかと若干不安……。


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